下腿周囲長はなぜ測る?GLIM基準とリハ栄養連携

栄養・嚥下
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下腿周囲長を測る目的は低筋量の見逃しを減らすこと

下腿周囲長(calf circumference:CC)は、BIAやDXAなどによる筋量評価が難しい患者で、低筋量の可能性を簡便に確認するために測定します。GLIM基準では低筋量が表現型の一つですが、下腿周囲長だけで低栄養と診断するわけではありません。療養病院や回復期病棟では、同じ条件で経時的に測り、体重、摂取量、浮腫、ADL、活動量の変化と合わせて解釈することが重要です。本記事では、測定依頼が増えた背景、GLIMでの位置づけ、毎月測る意味、栄養科とリハ科の共有方法を整理します。

GLIM基準全体の診断手順は「GLIM基準の使い方|診断フロー・重症度・記録」で確認できます。

下腿周囲長はなぜ測るのか

下腿周囲長を測る主な目的は、特別な測定機器を使えない環境でも低筋量の可能性を拾い、栄養・リハ介入の必要性を検討できるようにすることです。

GLIM基準では、低栄養の表現型として、非意図的な体重減少、低BMI、低筋量の3項目が示されています。しかし、療養病院や回復期病棟では、すべての患者にBIA、DXA、CTなどを使用できるとは限りません。

特に、立位が難しい患者、認知症がある患者、全身状態が不安定な患者では、ベッドサイドで短時間に測定できる下腿周囲長が実用的です。下腿周囲長を定期的に確認することで、体重だけでは分かりにくい筋量低下の可能性や、栄養状態と活動量の変化に気づくきっかけになります。

下腿周囲長を測定する主な目的
目的 確認できること 次に検討すること
低筋量の症例抽出 筋量低下の可能性 体重、BMI、握力、身体機能などを追加評価する
経時変化の確認 前回値からの増減 摂取量、活動量、浮腫、疾患経過と照合する
介入効果の共有 栄養・離床介入後の変化 介入継続または内容変更を多職種で検討する
測定機器の補完 BIAやDXAを使用できない患者の身体計測 測定条件と限界を記録して解釈する

GLIM基準では低筋量を確認する補助指標として使う

GLIM基準における下腿周囲長は、低筋量を評価するための身体計測の一つであり、下腿周囲長だけで低栄養を診断するものではありません。

GLIM基準では、栄養スクリーニングでリスクを確認した後、次の表現型と病因を評価します。

GLIM基準の診断構造と下腿周囲長の位置づけ
区分 評価項目 下腿周囲長との関係
表現型 非意図的な体重減少 直接的な評価には使用しない
表現型 低BMI BMIとは別に評価する
表現型 低筋量 機器による評価が難しい場合の身体計測として利用される
病因 食事摂取量低下または吸収不良 食事摂取量や消化器症状を別に確認する
病因 炎症または疾患負荷 疾患、経過、炎症所見を別に確認する

低栄養と判断するには、原則として表現型から1項目以上、病因から1項目以上を満たす必要があります。そのため、「下腿周囲長が細いからGLIM低栄養」とは判断できません。

また、AWGS 2019では、男性34cm未満、女性33cm未満がサルコペニアの症例抽出に用いる目安として示されています。ただし、これはサルコペニアの確定診断値ではなく、握力、筋量、身体機能などの追加評価へ進むための入口です。

判断のポイント:下腿周囲長の低値は「低筋量の可能性を疑う所見」です。GLIMによる低栄養診断、サルコペニア診断、栄養介入の必要性は、それぞれ必要な評価項目をそろえて判断します。

下腿周囲長測定の全体像

下腿周囲長を測る目的とGLIM基準、リハ栄養連携の実施ポイント
GLIM基準、リハ栄養、測定方法、測定値がブレやすいポイントの全体像

下腿周囲長は、「目的」「測定条件」「数値の解釈」「次の対応」をセットにして運用します。測定値だけを栄養科へ提出するのではなく、浮腫や活動量など、値へ影響する情報も共有することが重要です。

測定条件は施設内で統一する

下腿周囲長を経時比較するには、測定側、姿勢、測定部位、メジャーの張力、時間帯などを可能な範囲で統一します。

測定方法が担当者ごとに異なると、変化が筋量によるものか測定誤差によるものか判断できません。毎月測定する場合は、特に「誰が測っても近い値になる仕組み」が必要です。

下腿周囲長測定で統一したい条件
項目 基本的な考え方 記録する内容
測定部位 下腿の最大周径を探す 最大周径で測定したことを記録する
測定側 同じ患者では原則として同じ側を継続する 右・左、麻痺や左右差の有無
測定姿勢 施設で採用した姿勢にそろえる 座位、背臥位など
メジャー 皮膚を圧迫せず、水平に当てる 測定困難や拘縮があれば併記する
浮腫 有無と程度を確認する 浮腫あり・なし、左右差
時間帯 可能な範囲で同じ時間帯にする 大きく条件が違う場合のみ記録する

麻痺、拘縮、疼痛、浮腫などがある患者では、必ずしも一律に非麻痺側だけを採用する必要はありません。重要なのは、どちらを測るかを施設または患者単位で決め、同じ条件で追跡することです。

測定位置、姿勢、基準値、記録方法の詳細は「下腿周囲長の測定方法|測定位置・基準値・記録のポイント」で解説しています。

下腿周囲長を毎月測るかは目的と患者状態で決める

下腿周囲長を全患者で毎月測定しなければならないという一律のルールはなく、対象患者、介入目的、施設の栄養管理体制に応じて再評価時期を決めます。

定期測定が有用なのは、低栄養リスクが高い患者、食事摂取量が低下している患者、長期臥床が続く患者、栄養介入や離床介入の効果を追いたい患者などです。

下腿周囲長の再評価を検討しやすい場面
患者の状況 再評価の目的 同時に確認する項目
低栄養リスクが高い 低筋量の進行を見逃さない 体重、BMI、摂取量、炎症、疾患経過
摂取量が低下している 栄養状態と身体変化を追う 食形態、摂取率、嚥下状態
離床量が低下した 廃用による筋量低下を疑う ADL、座位時間、歩行量、筋力
栄養介入を開始した 介入後の経過を共有する 摂取エネルギー量、体重、活動量
浮腫が変化した 周囲長変化が水分によるものか確認する 圧痕、左右差、体重、水分出納

月1回は運用しやすい間隔の一例ですが、状態が急変した患者では予定日を待たずに再評価し、状態が安定している患者では測定頻度を見直す方法もあります。測定回数を増やすことより、結果が介入判断へつながる仕組みを作ることが重要です。

下腿周囲長の増減は原因を分けて解釈する

下腿周囲長が増えた場合も減った場合も、筋量変化と即断せず、浮腫、体液量、測定条件、活動量、摂取量を確認します。

下腿周囲長の測定から解釈、栄養科とリハ科での共有までの判断フロー
下腿周囲長を同じ条件で測定し、増減の原因を整理して多職種で共有する流れ
下腿周囲長が変化したときの判断ポイント
変化 考えられる原因 確認すること
下腿周囲長が減少 筋量低下、体重減少、浮腫軽減、測定誤差 体重、摂取量、活動量、浮腫、測定条件
下腿周囲長が増加 筋量維持・増加、浮腫増悪、体重増加、測定誤差 浮腫、体重、水分出納、離床量、測定条件
左右差が拡大 麻痺、局所浮腫、廃用、疼痛、荷重量の差 左右の浮腫、筋力、活動状況、局所所見
値が大きく変動 測定位置や姿勢の違い、担当者差、体液変動 前回記録、測定側、姿勢、時間帯

療養病棟では、浮腫の増悪によって下腿周囲長が大きくなっていても、実際には食事摂取量や活動量が低下している患者がいます。反対に、浮腫が改善したことで周囲長が減少する場合もあります。数値だけを見て「改善」「悪化」と判断しないことが重要です。

測定後は5分フローで次の対応を決める

下腿周囲長を測定した後は、前回値との差、測定条件、浮腫、栄養・活動状況を確認し、再測定または多職種共有へ進みます。

下腿周囲長測定後の5分確認フロー
順番 確認すること 対応
1 前回値との差があるか 変化量と測定日を確認する
2 測定側・姿勢・部位が同じか 条件が違えば単純比較を避ける
3 浮腫や体液変動があるか 浮腫所見と体重変化を併記する
4 摂取量・活動量・ADLが変化したか 管理栄養士、看護師、リハ職で情報をそろえる
5 介入変更が必要か 栄養計画、離床計画、再評価時期を決める

栄養科とリハ科では数値と背景を共有する

栄養科とリハ科の連携では、下腿周囲長の数値だけでなく、その変化を説明できる背景情報まで共有します。

管理栄養士は、摂取量、必要栄養量、体重、疾患負荷などを把握しています。一方、リハ職は、離床時間、歩行量、筋力、ADL、麻痺、拘縮などの変化を把握しやすい立場です。両者の情報を合わせることで、下腿周囲長の変化をより適切に解釈できます。

栄養科とリハ科で共有したい情報
項目 共有内容 判断につながること
下腿周囲長 測定値、測定側、姿勢、前回値との差 変化が実測上のものか確認する
浮腫 有無、左右差、前回からの変化 筋量と体液変動を分けて考える
食事摂取量 摂取率、低下時期、食形態変更 エネルギー・たんぱく質不足を疑う
体重 減少率、測定条件、浮腫との関係 GLIMの体重減少や低BMIを確認する
活動量 離床時間、歩行量、訓練量 廃用や負荷不足の可能性を確認する
ADL 移乗、歩行、食事動作などの変化 筋量変化の臨床的影響を確認する

記録では測定条件と解釈まで残す

下腿周囲長の記録では、数値だけでなく、測定側、姿勢、浮腫、前回値との差、関連する臨床所見を残します。

記録例

右下腿最大周径29.5cm、端座位で測定。前月30.2cmから0.7cm減少。下腿浮腫なし。直近2週間で食事摂取率が8割から5割へ低下し、離床時間も短縮している。体重変化と栄養摂取状況を管理栄養士へ共有し、栄養計画と離床量を再検討する。

※数値の増減だけで筋量変化と断定せず、測定条件と関連所見を併記します。

よくある失敗は測定して終わること

下腿周囲長の運用で最も避けたいのは、測定値を入力するだけで、介入や再評価へつながらない状態です。

下腿周囲長の運用でよくある失敗と改善策
よくある失敗 問題点 改善策
測定目的が共有されていない 書類業務として形骸化する 対象患者と測定後の対応を明文化する
毎回測定条件が違う 前回値と比較できない 側、姿勢、部位、浮腫の記録を統一する
低値だけで低栄養と判断する GLIMの病因評価が抜ける 表現型と病因を分けて確認する
増加を筋量改善と判断する 浮腫を見逃す可能性がある 体重、浮腫、水分状態と照合する
全患者へ機械的に毎月実施する 負担に対して介入効果が乏しくなる 対象患者と再評価間隔を設定する
結果がカンファレンスで使われない 測定が介入変更につながらない 変化時の報告基準と担当者を決める

現場の詰まりどころは担当部署と報告基準が曖昧なこと

療養病院で下腿周囲長の運用が止まりやすいのは、誰が測定し、どこへ記録し、どの程度変化したら報告するかが決まっていない場合です。

栄養科からリハ科へ測定が依頼されても、目的や結果の使い方が共有されていなければ、リハ科側は単なる定期業務として受け取りやすくなります。反対に、低栄養リスク患者の抽出、離床計画、褥瘡対策、食事摂取量低下への対応に使われていることが分かれば、測定の意味を共有しやすくなります。

施設内では、少なくとも次の項目を決めておくと運用が安定します。

  • 測定対象となる患者
  • 測定担当者と代行者
  • 測定側、姿勢、部位
  • 浮腫がある場合の記録方法
  • 再評価の間隔
  • 変化時の報告先
  • 栄養・リハ計画へ反映する場

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

下腿周囲長が低ければGLIM基準で低栄養になりますか?

下腿周囲長の低値だけではGLIMによる低栄養診断は成立しません。GLIMでは、栄養スクリーニングでリスクを確認した後、体重減少、低BMI、低筋量の表現型から1項目以上、摂取低下・吸収不良、炎症・疾患負荷の病因から1項目以上を確認します。

下腿周囲長は毎月測る必要がありますか?

すべての患者に毎月測定する一律の決まりがあるわけではありません。低栄養リスク、摂取量低下、長期臥床、栄養介入中など、経時変化を確認する必要がある患者を対象に、施設で再評価間隔を決めます。

男性34cm未満、女性33cm未満ならサルコペニアですか?

この数値はAWGS 2019で示されたサルコペニアの症例抽出の目安です。下腿周囲長だけで確定診断するのではなく、筋力、筋量、身体機能などの追加評価へ進むために使います。

片麻痺患者ではどちら側を測りますか?

麻痺、浮腫、拘縮などを考慮し、施設または患者単位で測定側を決めます。非麻痺側のみ、両側測定、同一側の継続測定などの方法がありますが、前回値と比較できるよう同じ条件を維持することが重要です。

浮腫がある場合も測定できますか?

測定はできますが、浮腫によって実際より大きな値になる可能性があります。浮腫の有無と程度を記録し、下腿周囲長だけで筋量を判断せず、体重、水分状態、摂取量、活動量と合わせて解釈します。

リハ科が測定する意味はありますか?

リハ科は、離床時間、歩行量、筋力、ADL、麻痺、拘縮などを把握しているため、下腿周囲長の変化を活動面から解釈しやすい立場です。管理栄養士が把握する摂取量や体重変化と組み合わせることで、栄養・運動介入の検討に役立ちます。

次の一手


参考文献

  1. Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: a consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. DOI: 10.1016/j.clnu.2018.08.002
  2. Barazzoni R, Jensen GL, Correia MITD, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the Global Leadership Initiative on Malnutrition diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(6):1425-1433. DOI: 10.1016/j.clnu.2022.02.001
  3. Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 consensus update on sarcopenia diagnosis and treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. DOI: 10.1016/j.jamda.2019.12.012
  4. Piodena-Aportadera MRB, Lau S, Chan YH, et al. Calf circumference measurement protocols for sarcopenia screening: differences in agreement, convergent validity and diagnostic performance. Ann Geriatr Med Res. 2022;26(3):215-224. DOI: 10.4235/agmr.22.0057

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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