下腿周囲長はなぜ測る?GLIM基準とリハ・栄養連携を解説
療養病院や回復期病棟で、栄養科から「下腿周囲長( calf circumference:CC )を測ってほしい」と依頼される場面が増えています。特に近年は、GLIM 基準やサルコペニア評価の普及により、リハ科へ定期測定が依頼される施設も少なくありません。
一方で現場では、「なぜ毎月必要なのか」「加算と関係あるのか」「測定方法が人によって違うのでは?」と疑問を感じることもあります。実際、下腿周囲長は測定条件で値が変わりやすく、運用が曖昧なまま測定だけがルーチン化している施設もあります。
本記事では、療養病院で下腿周囲長の測定依頼が増えた背景、GLIM 基準との関係、測定方法の標準化ポイント、栄養科とリハ科の連携実務について整理します。
なぜ下腿周囲長の測定依頼が増えたのか
下腿周囲長の測定依頼が増えた背景には、低栄養診断の国際基準である GLIM 基準の普及があります。GLIM 基準では、低栄養診断に「筋肉量低下」が含まれており、高齢者では筋量評価の簡便指標として下腿周囲長が使われる場面が増えました。
特に療養病院では、BIA や DXA のような筋量測定機器が使用しづらく、立位困難・認知症・重症例も多いため、ベッドサイドで実施できる下腿周囲長が実用的です。最近は NST やリハ栄養の運用強化もあり、「体重だけではなく筋肉量も追う」流れが強くなっています。関連:低栄養患者の初回評価ポイント
下腿周囲長(CC)測定の全体像
下腿周囲長は、「なぜ測るのか」「どう測るのか」「どう比較するのか」が揃って初めて意味を持つ評価です。特に療養病院では、毎月測定する施設も増えているため、測定条件の統一が重要になります。
下腿周囲長は何を見ているのか
下腿周囲長は、下腿部の筋肉量を簡便に反映する指標として扱われます。高齢者では、筋量低下やサルコペニアと関連することが知られており、AWGS の流れでも筋肉量低下のスクリーニングに利用されています。
一方で、下腿周囲長は「純粋な筋量」だけを見ているわけではありません。浮腫、水分貯留、拘縮、活動量低下、麻痺などの影響も受けます。そのため、単独で判断するのではなく、体重、摂取量、ADL、活動量、浮腫所見などと合わせて解釈することが重要です。
下腿周囲長の測定方法
下腿周囲長は簡便な評価ですが、測定条件が揃っていないと値が大きくブレます。施設内で測定方法を統一しておくことが重要です。
| 項目 | 基本 | 注意点 |
|---|---|---|
| 測定姿勢 | 背臥位または端座位 | 毎回同じ条件に統一する |
| 測定部位 | 下腿最大周径 | 「なんとなく中央」は避ける |
| 左右 | 原則は非麻痺側または両側記録 | 施設ルールを統一する |
| メジャー | 皮膚へ軽く接触 | 締め付けすぎに注意 |
| 浮腫 | 有無を記録 | 浮腫脚のみの比較は危険 |
| 測定時間 | 可能なら同時間帯 | 夕方浮腫で増加しやすい |
特に療養病院では、「誰が測っても近い値になる」ことが重要です。測定誤差が大きいと、栄養状態の変化なのか、測定者差なのか判断できなくなります。
測定でブレやすいポイント
現場で多いのは、「測定しているが条件が揃っていない」ケースです。特に毎月測定になると、担当者変更や時間帯変更でブレが生じやすくなります。
| よくある状況 | 問題点 | 対応 |
|---|---|---|
| 測定位置が毎回違う | 比較不能になる | 最大周径を探す方法を統一 |
| 浮腫が強い | 筋量を過大評価する | 浮腫所見を併記 |
| 片麻痺で左右差が大きい | どちらを使うか曖昧 | 施設ルール化する |
| メジャーを強く締める | 実際より小さくなる | 張力を統一 |
| シーツ越し測定 | 誤差が大きい | 直接測定を基本にする |
療養病院では浮腫や拘縮を伴う患者も多く、「数値だけ」で評価すると危険です。むしろ、「なぜ増えたか」「なぜ減ったか」を臨床的に考えることが重要です。
栄養科とリハ科の連携ポイント
下腿周囲長の測定は、単に「栄養科の依頼業務」ではありません。本来は、栄養科とリハ科が患者状態を共有するための指標の一つです。
例えば、下腿周囲長が低下している患者では、摂取量低下、離床量低下、ADL 低下、感染、活動性低下などが背景にある場合があります。逆に、リハ介入や栄養介入によって維持・改善しているケースもあります。
そのため、理想的には以下を共有できると実用性が高まります。
| 項目 | 共有内容 |
|---|---|
| 食事摂取量 | 低下時期や食形態変更 |
| ADL | 離床量や活動量変化 |
| 浮腫 | 急な増悪や左右差 |
| 筋量変化 | 下腿周囲長の推移 |
| リスク | 褥瘡・誤嚥・廃用など |
現場の詰まりどころ
実際の療養病院では、「測定して終わり」になりやすい点が課題です。毎月測定していても、カンファレンスで共有されなかったり、栄養計画やリハ内容に反映されなかったりすると、現場負担だけが増えてしまいます。
また、「なぜ測るのか」が共有されていないと、リハ科側は“書類業務”として受け取りやすくなります。逆に、低栄養リスク患者の抽出や、栄養介入・離床計画・褥瘡対策につながっていると、測定の意味が見えやすくなります。
よくある質問
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下腿周囲長は毎月測る必要がありますか?
施設方針や対象患者によります。低栄養リスクが高い患者や NST 介入患者では、経時変化を見る目的で毎月測定されることがあります。一方で、全患者へ機械的に実施すると、運用負担だけ増える場合もあります。
片麻痺患者ではどちらを測りますか?
施設ごとにルールを統一することが重要です。非麻痺側のみ、両側測定、常に同側測定など運用はさまざまですが、「毎回条件を揃える」ことが最も重要です。
浮腫がある場合はどう考えますか?
浮腫では実際より大きな値になるため、筋量を過大評価する可能性があります。下腿周囲長だけで判断せず、浮腫所見や体重変化も併せて評価します。
リハ科が測定する意味はありますか?
あります。リハ科は活動量、ADL、筋力、離床状況を把握しているため、筋量変化を臨床的に解釈しやすい立場です。栄養科との連携で、低栄養や廃用の早期発見につながることがあります。
次の一手
評価・栄養・離床の連携は、個人技より「環境と共有の型」で差が出やすい領域です。教育体制や働き方に悩む場合は、環境面を整理する視点も重要です。
参考文献
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. DOI: 10.1016/j.clnu.2018.08.002
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. DOI: 10.1016/j.jamda.2019.12.012
- Maeda K, Akagi J. Sarcopenia is an independent risk factor of dysphagia in hospitalized older people. Geriatr Gerontol Int. 2016;16(4):515-521. DOI: 10.1111/ggi.12486
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


