胸骨角とは
胸骨角は、胸骨柄と胸骨体の境目にある前胸部の骨性ランドマークです。
臨床では、第2肋骨や第2肋間を探す目安として使われ、呼吸評価、胸郭評価、聴診位置の確認などで役立ちます。
新人PT・OT・STの方は、「胸骨角=胸骨の段差」「第2肋骨を探す基準点」と整理すると理解しやすくなります。
この記事では、胸骨角の位置、触診方法、第2肋骨の見つけ方、胸骨上切痕との違い、臨床評価での使い方を整理します。
この記事でわかること
- 胸骨角の位置
- 胸骨角の触診方法
- 第2肋骨の見つけ方
- 胸骨上切痕との違い
- 呼吸評価・聴診位置での使い方
- カルテ記録例
胸骨角の位置と解剖
胸骨角は、胸骨柄と胸骨体の移行部にあるわずかな段差です。
前胸部の中央を上から下へ触れていくと、胸骨上切痕の下方に、少し盛り上がるような骨性の段差として確認できます。
位置関係を整理すると、以下のようになります。
- 上方:胸骨上切痕
- 中央:胸骨柄
- 移行部:胸骨角
- 下方:胸骨体
- 左右:第2肋軟骨
胸骨角は、第2肋骨が胸骨に接する高さの目安になります。
そのため、肋骨を数えるときや、第2肋間を探すときの起点として使われます。
胸骨角の触診方法
胸骨角は、胸骨上切痕から下方へたどり、胸骨の段差を確認すると触診しやすくなります。

STEP1:胸骨上切痕を確認する
まず、左右の鎖骨内側端の間にある胸骨上切痕を確認します。
胸骨上切痕は、首の付け根中央にある浅いくぼみです。
STEP2:胸骨柄を下方へたどる
胸骨上切痕から、胸骨の中央を下方へゆっくり触れていきます。
いきなり強く押し込まず、指腹で軽くなぞるように確認します。
STEP3:胸骨の段差を確認する
胸骨柄と胸骨体の境目に、わずかな段差として触れる部分があります。
この段差が胸骨角です。
STEP4:左右の第2肋骨へたどる
胸骨角を確認したら、その左右にある第2肋軟骨を確認します。
そこから下方へ肋間を数えることで、第2肋間、第3肋間と確認しやすくなります。
触診のコツ
- 胸骨上切痕から始める
- 胸骨中央を下方へたどる
- 段差を軽く確認する
- 左右の第2肋骨へ移動する
第2肋骨の見つけ方
第2肋骨を探すときは、胸骨角を起点にすると迷いにくくなります。
手順は以下です。
- 胸骨上切痕を確認する
- 下方へたどり胸骨角を触れる
- 胸骨角の左右にある第2肋軟骨を確認する
- その下のスペースを第2肋間として確認する
肋骨を数えるときは、胸骨角を起点にして、上から順にたどると間違いを減らしやすくなります。
特に聴診位置や胸郭評価で肋間を確認する場合、胸骨角を基準にすると位置が揃いやすくなります。
| 確認する部位 | 触診の目安 | 臨床での使い方 |
|---|---|---|
| 胸骨上切痕 | 首の付け根中央のくぼみ | 前胸部中央の開始点 |
| 胸骨角 | 胸骨柄と胸骨体の段差 | 第2肋骨を探す基準 |
| 第2肋骨 | 胸骨角の左右にある肋軟骨 | 肋骨カウントの起点 |
| 第2肋間 | 第2肋骨の下のスペース | 聴診・胸郭評価の位置確認 |
胸骨上切痕・剣状突起との違い
胸骨角は、胸骨上切痕や剣状突起と混同しないように位置で整理します。
| ランドマーク | 位置 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 胸骨上切痕 | 胸骨柄の上縁中央 | 左右の鎖骨内側端の間のくぼみ |
| 胸骨角 | 胸骨柄と胸骨体の境目 | 前胸部中央の段差。第2肋骨の目安 |
| 剣状突起 | 胸骨下端 | 胸骨体の下方にある小さな突起 |
胸骨上切痕は「上のくぼみ」、胸骨角は「中央の段差」、剣状突起は「下端の突起」と考えると見分けやすくなります。
臨床で確認するポイント
胸骨角は、胸郭・呼吸・聴診位置をそろえるための基準点として使えます。
呼吸評価で使う
呼吸評価では、胸郭の左右差、上部胸郭の動き、肋骨の動き方を観察します。
胸骨角を確認しておくと、上部胸郭の高さや第2肋骨周囲の位置関係を整理しやすくなります。
聴診位置の確認で使う
胸骨角は第2肋骨の目安になるため、第2肋間を探すときに役立ちます。
聴診位置を確認するときは、胸骨角から肋骨・肋間を数えると位置のズレを減らしやすくなります。
胸郭アライメントの確認で使う
円背や胸郭の回旋がある場合、胸骨の向きや胸骨角周囲の左右差を観察します。
胸骨角は前胸部中央の基準点として使えるため、姿勢評価でも参考になります。
現場の詰まりどころ
胸骨角の触診で迷いやすい場面は、「段差がわからない」「第2肋骨へ移れない」「胸骨上切痕と混同する」の3つです。
触診が苦手な背景には、個人の努力不足だけでなく、見本となる先輩・共通の評価手順・記録の型が少ない環境要因もあります。
記録例
胸骨角を基準に評価した場合は、何を確認したのかを明確に記録します。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 位置確認 | 胸骨角を触診にて確認し、第2肋骨位置を同定。 |
| 呼吸評価 | 胸骨角を基準に上部胸郭の左右差を観察。吸気時の右上部胸郭拡張がやや低下。 |
| 聴診位置確認 | 胸骨角より第2肋間を確認し、前胸部聴診位置を同定。 |
| 姿勢評価 | 胸骨角周囲の前方突出と胸椎後弯増大を認める。 |
記録では「胸骨角を確認した」だけでなく、「何の基準として使ったか」まで書くと伝わりやすくなります。
新人が間違えやすいポイント
胸骨角の触診では、以下のような間違いが起こりやすいです。
- 胸骨上切痕を胸骨角と間違える
- 胸骨中央を強く押しすぎる
- 第2肋骨ではなく第1肋骨を探そうとする
- 胸骨角から左右へ移動できていない
- 肋骨ではなく肋間を起点に数えてしまう
- 左右差や姿勢の影響を確認していない
まずは胸骨上切痕から下方へたどり、胸骨の段差を確認してから左右の第2肋骨へ移動することが基本です。
触診時の注意点
胸骨角は骨性ランドマークですが、強く押し込む必要はありません。
- 指腹で軽く確認する
- 疼痛がある場合は圧を弱める
- 胸骨部の外傷歴がある場合は慎重に行う
- 呼吸苦がある場合は無理に長く触診しない
- 肋骨カウントは左右差も確認する
特に高齢者や外傷後の患者では、疼痛や骨折リスクにも配慮して触診します。
関連して確認したいランドマーク
胸骨角は、前胸部・胸郭のランドマークとセットで確認すると理解しやすくなります。
- 胸骨上切痕:胸骨柄上縁のくぼみ
- 鎖骨内側端:胸鎖関節の目安
- 第2肋骨:胸骨角の左右にある肋骨
- 剣状突起:胸骨下端のランドマーク
- 肋間:聴診や胸郭評価で確認するスペース
胸骨上切痕から胸骨角、胸骨角から第2肋骨へ進む流れを覚えると、前胸部の位置関係を整理しやすくなります。
FAQ
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
胸骨角はどこにありますか?
胸骨角は、胸骨柄と胸骨体の境目にある前胸部中央の段差です。胸骨上切痕から下方へたどると確認しやすくなります。
胸骨角は何の目安になりますか?
胸骨角は第2肋骨を探す目安になります。そこから第2肋間や他の肋間を確認する際の起点として使えます。
胸骨上切痕と胸骨角はどう違いますか?
胸骨上切痕は左右の鎖骨内側端の間にある上方のくぼみです。胸骨角はその下方にある胸骨柄と胸骨体の移行部の段差です。
胸骨角は呼吸評価で使えますか?
はい。胸骨角は上部胸郭や第2肋骨周囲の位置確認に使えます。胸郭の左右差や肋骨の動きを観察する際の基準点になります。
胸骨角を強く押してもよいですか?
強く押す必要はありません。指腹で軽く段差を確認します。疼痛や外傷歴がある場合は、圧を弱めて慎重に行います。
次の一手
前胸部ランドマークを続けて整理するなら、次は胸骨上切痕と剣状突起をあわせて確認すると理解しやすくなります。
参考文献
- Ball M, Falkson SR, Adigun OO. Anatomy, Angle of Louis. StatPearls. 2025. PubMed
- Altalib AA, Miao KH, Menezes RG. Anatomy, Thorax, Sternum. StatPearls. 2023. NCBI Bookshelf
- Ernstmeyer K, Christman E, editors. Nursing Skills. Chapter 10 Respiratory Assessment. 2021. NCBI Bookshelf
- Tuteur PG. Chest Examination. Clinical Methods. 3rd ed. 1990. NCBI Bookshelf
著者情報
この記事は、臨床での評価・記録・新人教育に活用しやすい形を意識して作成しています。触診は患者の疼痛や不快感に配慮し、必要に応じて医師・看護師など多職種と情報共有してください。


