角回と縁上回の違い|場所・機能・障害症状と評価

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角回・縁上回とは

角回と縁上回は、頭頂葉の下頭頂小葉を構成する連合野です。大まかには、角回は意味理解・読字・書字・計算、縁上回は音韻処理・復唱・言語性ワーキングメモリとの関連が重視されます。ただし、実際の症状は一つの脳回だけで決まるのではなく、前頭葉・側頭葉・頭頂葉を結ぶ言語ネットワーク全体の障害として評価することが重要です。

この記事では、角回と縁上回の場所と見分け方、機能の違い、障害時に起こりやすい症状、臨床で確認したい項目をPT・OT・STなどの医療者向けに整理します。

このページの位置づけ

このページは、脳ランドマークシリーズの頭頂葉連合野編です。言語ネットワークの全体像を先に確認したい場合は、ブローカ野・ウェルニッケ野の記事から読むと整理しやすくなります。

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角回と縁上回の違い

角回と縁上回の違いは、下頭頂小葉内での位置と、関与しやすい情報処理にあります。

角回と縁上回の違い
比較項目 角回 縁上回
英語名 Angular gyrus Supramarginal gyrus
位置 下頭頂小葉の後方 下頭頂小葉の前方
画像上の目印 上側頭溝の後端を取り囲む 外側溝の後端を取り囲む
関連が強い処理 意味処理、読解、書字、数処理、異種感覚統合 音韻処理、復唱、言語性ワーキングメモリ、感覚運動統合
障害時の着眼点 失読・失書・失算・左右や手指の認識 音韻性錯語・復唱・語音の保持・系列処理
角回と縁上回の位置、機能、障害症状の違いを整理した図。縁上回は下頭頂小葉前方に位置し、音韻処理や復唱に関わる。角回は下頭頂小葉後方に位置し、読字、書字、計算、左右認識に関わる。
角回と縁上回は隣接していますが、位置と関与しやすい情報処理に違いがあります。

覚え方は、「前方の縁上回は音をつなぎ、後方の角回は意味や文字につなぐ」です。ただし、これは学習用の大まかな整理であり、各機能が一つの脳回だけに局在するわけではありません。

角回・縁上回は下頭頂小葉で見る

角回と縁上回は、頭頂葉外側面の下頭頂小葉に含まれます。

外側面では、縁上回が外側溝、いわゆるシルビウス裂の後端を取り囲み、その後方に角回が続きます。角回は上側頭溝の後端を取り囲むように位置します。

角回と縁上回の役割を整理した図。角回は読字、書字、意味理解、縁上回は復唱、音韻処理との関連を示している。
角回は下頭頂小葉後方、縁上回は前方に位置し、互いに隣接しています。

臨床では、画像上で脳回を一点だけ特定するよりも、外側溝・上側頭溝・中心後回・頭頂間溝など周囲のランドマークから位置関係を確認します。

角回は意味理解・読字・書字に関わる

角回は、異なる感覚情報と既存知識を結びつけ、意味のある情報として扱う過程に関わる連合野です。

特に左角回は、意味処理、文章理解、読字・書字、数処理などを含む複数の認知ネットワークに関与します。そのため障害時には、文字を読めない、書けない、計算できないといった症状だけでなく、課題の意味を統合しにくい状態がみられることがあります。

角回障害を疑うときの確認項目
機能 確認例 注意点
読字 単語や短文を読んでもらう 視力や視野障害を除外する
書字 氏名、自発文、書き取りを確認する 麻痺や失行による書きにくさと分ける
計算 一桁の加減算から確認する 注意障害や教育歴も考慮する
左右認識 自分と検者の左右を指してもらう 言語理解障害との重なりを見る
手指認識 指定した指を示してもらう 身体失認や感覚障害と区別する

縁上回は音韻処理・復唱に関わる

縁上回は、聞いた言葉の音を一時的に保持し、並びを処理する機能との関連が重視されます。

特に左縁上回は、音韻処理や言語性ワーキングメモリを支えるネットワークの一部です。障害時には、言葉の意味はある程度理解できても、音の並びを正確に保持できず、復唱や呼称で音韻性錯語がみられることがあります。

縁上回障害を疑うときの確認項目
機能 確認例 注意点
単語の復唱 短い単語から長い単語へ進める 聴力と理解を先に確認する
文の復唱 語数を段階的に増やす 文が長くなるほど記憶負荷が増える
呼称 物品名や絵の名称を答えてもらう 意味性錯語と音韻性錯語を分ける
音韻操作 語頭音や音の並びを確認する 専門的評価はSTと共有する
系列保持 数字列や複数語を繰り返してもらう 注意障害の影響も考慮する

ブローカ野・ウェルニッケ野との関係

角回と縁上回は、ブローカ野・側頭葉後部などと連携する言語ネットワークの一部です。

従来は、ブローカ野を発話、ウェルニッケ野を言語理解、縁上回を復唱、角回を読み書きと対応させる説明がよく用いられてきました。しかし、実際の言語機能は前頭葉・側頭葉・頭頂葉と、それらを結ぶ白質線維が協働して成立します。

言語ネットワークを評価するときの大まかな役割分担
領域 関連しやすい機能 臨床で見ること
下前頭回周辺 発話産生、統語、構音計画 発話量、努力性、文法、構音
側頭葉後部 語音認知、語彙・意味処理 会話理解、語の選択、錯語
角回 意味統合、読解、書字、数処理 読み書き、計算、左右・手指認識
縁上回 音韻処理、音韻保持、復唱 復唱、音韻性錯語、系列保持
弓状束などの白質 前頭葉・側頭葉・頭頂葉間の情報伝達 理解に比べた復唱低下、自己修正

そのため、復唱障害があるから縁上回、失書があるから角回と即断するのではなく、複数課題の結果と病巣・白質損傷をあわせて判断します。

角回・縁上回の障害で起こりやすい症状

角回・縁上回周辺の障害では、言語症状に加えて、計算、身体認識、注意、感覚統合など複数の問題が重なることがあります。

角回・縁上回周辺の障害で確認したい症状
主に着目する領域 起こりうる症状 病棟・リハ場面の例
左角回周辺 失読、失書、失算、左右失認、手指失認 掲示が読めない、記録を書けない、金額や回数を扱えない
左縁上回周辺 音韻性錯語、復唱障害、音韻性短期記憶の低下 長い指示を保持できない、言葉の音を入れ替える
下頭頂小葉周辺 失行、注意障害、身体認識の障害 道具操作や模倣、左右の身体部位指定で混乱する
右半球の対応領域 空間認知、注意、身体認識、社会的認知の問題 左側の見落とし、自己身体や周囲空間の把握困難

左右半球で役割は完全に同じではありません。言語症状を考える場合は、多くの人で言語優位半球となる左半球が中心ですが、利き手や個人差によって側性は異なります。

角回とゲルストマン症候群の関係

左角回周辺の障害では、ゲルストマン症候群の4徴がみられることがあります。

ゲルストマン症候群の4徴
症状 内容 簡単な確認例
失書 後天的に文字を書くことが難しくなる 氏名、自発文、書き取り
失算 計算や数概念の操作が難しくなる 一桁の加減算、金額の扱い
手指失認 自分または他者の指を識別しにくくなる 指定された指を示す
左右失認 言語的に左右を区別しにくくなる 右手・左足などを示す

4徴がすべてそろうとは限りません。また、角回皮質だけでなく、周辺領域や下頭頂小葉に接続する白質の障害でも類似した症状が生じる可能性があります。

縁上回と伝導失語の関係

縁上回周辺の障害では復唱障害や音韻性錯語がみられますが、伝導失語を縁上回だけの障害として説明することはできません。

伝導失語では、比較的保たれた理解と流暢な発話に対して、復唱が強く障害されることがあります。発話中には音韻性錯語がみられ、自分の誤りに気づいて何度も言い直そうとする接近行為が認められる場合があります。

関連病巣には、縁上回を含む下頭頂小葉、側頭葉後部、弓状束や上縦束などの白質ネットワークが含まれます。復唱だけで局在を決めず、呼称、理解、自発話、音韻性錯語、病巣分布を総合して判断します。

3分で行う臨床確認フロー

臨床では、読む・書く・復唱・計算・左右と手指を短時間で分けて確認すると、角回・縁上回周辺の問題を整理しやすくなります。

  1. 会話理解を確認する:一段階の口頭指示が入るか確認します。
  2. 復唱を確認する:単語から始め、短文へ進みます。
  3. 読字を確認する:単語、短文、動作指示文を読んでもらいます。
  4. 書字を確認する:氏名、自発書字、書き取りを分けます。
  5. 計算を確認する:一桁の加減算から始めます。
  6. 左右・手指を確認する:右手、左足、示指などを指してもらいます。

異常がみられた場合は、聴力、視力、視野、運動麻痺、感覚障害、注意障害、失行の影響を除外しながら、STや医師と詳細評価を共有します。

病棟・リハ場面で見るポイント

机上検査だけでなく、実際の生活場面で情報を扱えるか確認することが重要です。

療養病棟や脳卒中リハでは、日常会話が成立しているために、読み書きや計算の問題が見落とされることがあります。特に、予定表を読む、訓練回数を数える、ナースコールの表示を理解する、署名する、左右を含む動作指示に従うといった場面を観察します。

  • 読字:掲示物、予定表、服薬説明を読めるか
  • 書字:氏名や短いメモを書けるか
  • 復唱:複数語の指示や名称を正確に繰り返せるか
  • 計算:回数、時間、金額などを扱えるか
  • 左右認識:更衣や運動指示で左右を取り違えないか
  • 自己修正:誤りに気づき、言い直そうとするか

角回・縁上回を評価するときのよくある失敗

よくある失敗は、一つの症状だけから障害部位を断定することです。

  • 失敗1:角回を「読み書きだけの部位」と覚える
  • 失敗2:縁上回を「復唱だけの部位」と覚える
  • 失敗3:復唱障害があれば伝導失語と即断する
  • 失敗4:書字障害を上肢麻痺や失行と区別しない
  • 失敗5:計算障害を注意力や教育歴の影響と分けない
  • 失敗6:左半球の説明を左右両側へそのまま当てはめる

脳回の名称は病巣を整理するための手がかりです。最終的には、症状の組み合わせ、画像、白質損傷、時間経過をあわせて評価します。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

角回と縁上回の違いは何ですか?

角回は下頭頂小葉の後方にあり、意味処理、読字・書字、計算などとの関連が重視されます。縁上回は前方にあり、音韻処理、復唱、言語性ワーキングメモリなどとの関連が重視されます。ただし、いずれも広い脳内ネットワークの一部です。

角回と縁上回は画像上でどう見分けますか?

外側溝の後端を取り囲む脳回が縁上回、その後方で上側頭溝の後端を取り囲む脳回が角回です。実際には周囲の脳溝と連続スライスを確認して判断します。

角回が障害されるとどのような症状が出ますか?

左角回周辺の障害では、失読、失書、失算、左右失認、手指失認などがみられることがあります。ただし、病巣の広がりや周辺白質の損傷によって症状は異なります。

縁上回が障害されると伝導失語になりますか?

縁上回周辺の障害は伝導失語と関連しますが、縁上回単独で決まるわけではありません。側頭葉後部や弓状束・上縦束などを含む言語ネットワークの障害として評価します。

ゲルストマン症候群の4徴は何ですか?

失書、失算、手指失認、左右失認の4徴です。4つすべてがそろわない不完全型もあり、ほかの失語症状や認知症状を伴う場合があります。

まとめ

角回と縁上回は、下頭頂小葉を構成する隣接した連合野です。角回は意味理解、読字・書字、計算との関連が強く、縁上回は音韻処理、復唱、言語性ワーキングメモリとの関連が重視されます。

ただし、症状と脳回は一対一に対応しません。臨床では、読む、書く、復唱、計算、左右・手指認識を分けて確認し、失語、失行、注意障害、感覚障害、周辺白質の損傷を含めて判断することが重要です。

次の一手

角回・縁上回を言語ネットワークと病巣の両面から理解するには、次の記事を順番に確認すると整理しやすくなります。


参考文献

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  3. Kuhnke P, Kiefer M, Hartwigsen G. Task-dependent functional and effective connectivity of the left angular gyrus during semantic processing. Prog Neurobiol. 2023;221:102399. doi:10.1016/j.pneurobio.2022.102399
  4. Ardila A. Gerstmann syndrome. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(11):48. doi:10.1007/s11910-020-01069-9
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  6. Catani M, Mesulam M. The arcuate fasciculus and the disconnection theme in language and aphasia: history and current state. Cortex. 2008;44(8):953-961. doi:10.1016/j.cortex.2008.04.002

著者情報

この記事は、脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級の資格を持ち、療養病棟で脳卒中リハや高次脳機能障害の評価に携わる理学療法士が作成しています。画像診断そのものではなく、脳ランドマークをリハ評価・症状理解・多職種共有につなげる目的で執筆しています。