ミオトームとは
ミオトームとは、特定の神経根が主に支配する筋群や運動機能のまとまりを指します。
臨床では、筋力低下があるときに「どの神経根が関与していそうか」を推定するために使います。
たとえば、肘関節屈曲が弱い場合はC5〜C6、膝関節伸展が弱い場合はL3〜L4、足関節背屈が弱い場合はL4〜L5などを考えます。
ミオトームは、頸椎症性神経根症、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、末梢神経障害などを評価するときに重要です。
デルマトームとの違い
ミオトームとよくセットで覚える用語に、デルマトームがあります。
簡単にいうと、ミオトームは運動、デルマトームは感覚をみる考え方です。
| 項目 | ミオトーム | デルマトーム |
|---|---|---|
| みるもの | 筋力・運動 | 感覚 |
| 評価の例 | 肘屈曲、膝伸展、足関節背屈 | しびれ、感覚鈍麻、痛覚低下 |
| 臨床での使い方 | 神経根ごとの筋力低下を推定 | 神経根ごとの感覚障害を推定 |
デルマトームや末梢神経領域との違いについては、以下の記事でも整理しています。
デルマトームと末梢神経領域の違い|感覚障害の見方をわかりやすく整理
ミオトーム一覧
まずは、臨床でよく確認するミオトームを一覧で整理します。

| 神経根 | 主な運動 | 確認しやすい筋・動作 |
|---|---|---|
| C5 | 肩外転、肘屈曲 | 三角筋、上腕二頭筋 |
| C6 | 肘屈曲、手関節背屈 | 上腕二頭筋、手関節伸筋群 |
| C7 | 肘伸展、手関節掌屈 | 上腕三頭筋、手関節屈筋群 |
| C8 | 手指屈曲 | 深指屈筋など |
| T1 | 手指外転・内転 | 骨間筋 |
| L2 | 股関節屈曲 | 腸腰筋 |
| L3 | 膝伸展 | 大腿四頭筋 |
| L4 | 足関節背屈 | 前脛骨筋 |
| L5 | 母趾伸展 | 長母趾伸筋 |
| S1 | 足関節底屈 | 下腿三頭筋 |
ミオトームは教科書や資料によって多少表現が異なることがあります。臨床では、単一の筋だけで判断せず、筋力、感覚、反射、疼痛、動作を合わせて確認します。
上肢のミオトーム
上肢のミオトームでは、C5〜T1を中心に確認します。
| 神経根 | 主な確認動作 | 臨床での見方 |
|---|---|---|
| C5 | 肩外転、肘屈曲 | 肩を上げる、肘を曲げる力 |
| C6 | 手関節背屈 | 手首を反らす力 |
| C7 | 肘伸展 | 肘を伸ばす力 |
| C8 | 手指屈曲 | 指を曲げる力 |
| T1 | 手指外転・内転 | 指を開く・閉じる力 |
上肢では、頸椎由来の神経根症状と末梢神経障害を分けて考えることが重要です。
上肢の末梢神経を理解するには、腕神経叢の整理も役立ちます。
C5ミオトーム
C5では、肩外転や肘屈曲が確認しやすい運動です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な運動 | 肩外転、肘屈曲 |
| 確認しやすい筋 | 三角筋、上腕二頭筋 |
| 臨床での視点 | 肩が上がりにくい、肘屈曲が弱い |
C5だけでなくC6も肘屈曲に関与するため、単独の神経根だけで判断しないことが大切です。
C6ミオトーム
C6では、手関節背屈や肘屈曲が確認しやすい運動です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な運動 | 手関節背屈、肘屈曲 |
| 確認しやすい筋 | 手関節伸筋群、上腕二頭筋など |
| 臨床での視点 | 手首を反らす力の低下 |
C6は、手関節背屈や母指側の感覚、腕橈骨筋反射などと合わせて確認することがあります。
C7ミオトーム
C7では、肘伸展が確認しやすい運動です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な運動 | 肘伸展、手関節掌屈 |
| 確認しやすい筋 | 上腕三頭筋など |
| 臨床での視点 | 肘を伸ばす力の低下 |
C7は、上腕三頭筋反射や手指伸展機能と合わせて考えることがあります。
C8・T1ミオトーム
C8とT1は、手指の運動を確認するときに重要です。
| 神経根 | 主な運動 | 確認しやすい動作 |
|---|---|---|
| C8 | 手指屈曲 | 指を曲げる |
| T1 | 手指外転・内転 | 指を開く・閉じる |
手指の巧緻動作低下がある場合は、神経根だけでなく、尺骨神経、正中神経、橈骨神経などの末梢神経も含めて確認します。
下肢のミオトーム
下肢のミオトームでは、L2〜S1を中心に確認します。
| 神経根 | 主な確認動作 | 臨床での見方 |
|---|---|---|
| L2 | 股関節屈曲 | 股関節を曲げる力 |
| L3 | 膝伸展 | 膝を伸ばす力 |
| L4 | 足関節背屈 | 足首を上げる力 |
| L5 | 母趾伸展 | 母趾を反らす力 |
| S1 | 足関節底屈 | つま先立ちの力 |
下肢では、腰椎疾患や坐骨神経領域の症状と関連して確認することが多いです。
腰仙骨神経叢については、以下の記事でも整理しています。
腰仙骨神経叢まとめ|L1〜S4・主要神経・支配領域を図で整理
L2・L3ミオトーム
L2とL3は、股関節屈曲や膝伸展を確認するときに重要です。
| 神経根 | 主な運動 | 確認しやすい筋 |
|---|---|---|
| L2 | 股関節屈曲 | 腸腰筋 |
| L3 | 膝伸展 | 大腿四頭筋 |
股関節屈曲や膝伸展の低下がある場合は、大腿神経や腰椎由来の症状も合わせて確認します。
L4ミオトーム
L4では、足関節背屈が確認しやすい運動です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な運動 | 足関節背屈 |
| 確認しやすい筋 | 前脛骨筋など |
| 臨床での視点 | 足首を上げる力の低下 |
L4は膝蓋腱反射や下腿内側の感覚と合わせて整理されることがあります。
L5ミオトーム
L5では、母趾伸展が確認しやすい運動です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な運動 | 母趾伸展 |
| 確認しやすい筋 | 長母趾伸筋など |
| 臨床での視点 | 母趾を反らす力の低下 |
L5は腰椎疾患で確認されやすい神経根のひとつです。足関節背屈や股関節外転なども含めて総合的に確認します。
S1ミオトーム
S1では、足関節底屈が確認しやすい運動です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な運動 | 足関節底屈 |
| 確認しやすい筋 | 下腿三頭筋など |
| 臨床での視点 | つま先立ち、アキレス腱反射 |
S1はアキレス腱反射や足部外側の感覚と合わせて確認されることがあります。
臨床でよくみる筋力検査
ミオトームを確認するときは、左右差や疼痛の影響をみながら筋力を評価します。
| 神経根 | 確認動作 | 見方 |
|---|---|---|
| C5 | 肩外転 | 肩を横に上げる力 |
| C6 | 手関節背屈 | 手首を反らす力 |
| C7 | 肘伸展 | 肘を伸ばす力 |
| C8 | 手指屈曲 | 指を握る力 |
| T1 | 手指外転 | 指を開く力 |
| L2 | 股関節屈曲 | 股関節を曲げる力 |
| L3 | 膝伸展 | 膝を伸ばす力 |
| L4 | 足関節背屈 | 足首を上げる力 |
| L5 | 母趾伸展 | 母趾を反らす力 |
| S1 | 足関節底屈 | つま先立ちの力 |
筋力低下がある場合は、疼痛による抑制、廃用、筋損傷、中枢神経疾患、末梢神経障害なども鑑別します。
神経根障害で確認するポイント
神経根障害を疑うときは、ミオトームだけで判断しないことが大切です。
次の要素を合わせて確認します。
- 筋力低下
- 感覚障害
- 深部腱反射
- 疼痛の分布
- しびれの範囲
- 姿勢や動作による症状変化
深部腱反射については、以下の記事でも整理しています。
深部腱反射とは?見方・評価方法・亢進と低下をわかりやすく解説
ミオトームを覚えるときの注意点
ミオトームは、一覧表だけを丸暗記しても臨床で使いにくいです。
まずは、代表的な確認動作と神経根をセットで覚えるのがおすすめです。
- C5:肩外転
- C6:手関節背屈
- C7:肘伸展
- C8:手指屈曲
- T1:手指外転
- L3:膝伸展
- L4:足関節背屈
- L5:母趾伸展
- S1:足関節底屈
ただし、実際の筋力は複数の神経根が重なって支配することが多いため、「この筋力低下=この神経根」と単純に決めつけないことが大切です。
まとめ
ミオトームとは、特定の神経根が主に支配する筋群や運動機能のまとまりです。
臨床では、筋力低下から神経根障害を推定するときに役立ちます。
- ミオトーム:運動・筋力をみる
- デルマトーム:感覚をみる
- 反射:神経経路の反応をみる
ミオトームを使うときは、筋力だけでなく、感覚、反射、疼痛、動作、末梢神経障害の可能性も合わせて評価することが重要です。
FAQ
ミオトームとは何ですか?
ミオトームとは、特定の神経根が主に支配する筋群や運動機能のまとまりです。筋力低下から神経根障害を推定するときに使います。
ミオトームとデルマトームの違いは何ですか?
ミオトームは運動や筋力をみる考え方です。デルマトームは感覚領域をみる考え方です。
L4のミオトームは何ですか?
L4では足関節背屈が確認しやすい運動です。前脛骨筋などを通して足首を上げる力を確認します。
L5のミオトームは何ですか?
L5では母趾伸展が確認しやすい運動です。長母趾伸筋などを通して母趾を反らす力を確認します。
ミオトームだけで神経根障害を判断できますか?
ミオトームだけで判断するのは避けます。感覚障害、深部腱反射、疼痛の分布、画像所見、動作評価などを合わせて総合的に判断します。


