SRQ-Dとは?18項目版の目的と位置づけ
評価ハブで全体像を確認する
SRQ-D(東邦大式抑うつ尺度)は、抑うつ状態の可能性を確認し、面接や専門的評価につなげるための自己記入式スクリーニング尺度です。本記事では、18項目からなる旧版SRQ-Dについて、採点方法、加点しない6項目、判定目安、結果の記録・共有方法を整理します。
SRQ-Dだけでうつ病を診断することはできません。合計点は気づきと連携のきっかけとして使用し、本人の訴え、生活状況、身体症状、服薬、医療者による面接などと合わせて解釈します。記事内のA4記録シートと自動計算ツールを使うと、採点と再評価条件を同じ形式で残せます。
本記事で扱うSRQ-Dは18項目・合計0〜36点の旧版です。2017年に発売されたSRQ-DⅡは15項目の別尺度です。SRQ-DⅡを使用する場合は、公式の検査用紙・実施要領・採点基準に従ってください。
SRQ-Dの実施手順
実施は、目的の説明、本人による回答、採点、背景情報の記録、共有の順に進めます。再評価する可能性がある場合は、回答方法や実施状況も一緒に記録してください。
- 目的を説明する:診断ではなく、現在の心身の状態を整理し、必要な支援につなげるための質問紙であることを伝えます。
- 使用する用紙を確認する:18項目版のSRQ-Dか、15項目版のSRQ-DⅡかを確認します。
- 本人に回答してもらう:原則として本人が各項目に回答します。
- 必要な補助を記録する:読み上げ、指差し、記入代行などを行った場合は、その方法を残します。
- 採点する:各回答を0〜3点に置き換え、加点しない6項目を除いて合計します。
- 背景を確認する:睡眠、疼痛、食欲、身体症状、薬剤変更、生活上の出来事などを確認します。
- 共有先と次の対応を決める:必要に応じて医師、看護師、心理職などへ共有し、面接や専門的評価につなげます。
読み上げや記入代行を行う場合は、回答を誘導しないよう、使用している用紙の質問文と選択肢をそのまま提示します。本人以外が推測して回答する代理評価とは区別してください。
SRQ-Dの採点方法|加点しない6項目
18項目版SRQ-Dでは、各回答をいいえ=0点、ときどき=1点、しばしば=2点、つねに=3点として採点します。ただし、質問2・4・6・8・10・12は、どの回答でも加点しません。

| 確認項目 | 採点方法 | 実務上の確認 |
|---|---|---|
| 通常項目 | いいえ=0点/ときどき=1点/しばしば=2点/つねに=3点 | 回答と転記した点数が一致しているか確認する |
| 質問2・4・6・8・10・12 | 回答にかかわらず0点 | 合計前に6項目をチェックする |
| 合計点 | 0〜36点 | 点数だけで診断しない |
質問2・4・6・8・10・12を0点にしたか、合計前に確認します。自動計算ツールを使用した場合も、入力した項目数と使用した尺度の版を記録してください。
SRQ-Dの判定目安と結果の解釈
判定は、0〜10点、11〜15点、16点以上の3段階を目安にします。いずれの点数でも、合計点だけで診断や支援の要否を決めないことが重要です。
| 合計点 | 判定の目安 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 0〜10点 | 抑うつ傾向は低い | 点数が低くても、本人の訴えや急な変化があれば個別に確認する |
| 11〜15点 | 境界領域 | 面接所見で補完し、生活上の負担、身体症状、相談希望を確認する |
| 16点以上 | 抑うつ傾向が疑われる | 医師や専門職へ共有し、必要な診断評価や支援につなげる |
身体疾患や生活環境の変化がある人では、疲労、疼痛、不眠、食欲低下、息苦しさなどが点数に影響することがあります。記録では、合計点とともに、本人が困っていることや生活・リハビリテーションへの影響を残します。
「死にたい」「消えたい」などの訴え、自傷行為、自殺の計画や準備、急激な精神状態の変化、安全を保てない状況がある場合は、SRQ-Dの合計点を待たず、施設の緊急対応手順に沿って医師・看護師などへ直ちに共有してください。
記録と多職種共有の方法
記録は、合計点だけで終わらせず、背景、生活やリハビリテーションへの影響、共有先、今後の対応を一続きで残します。
| 記録項目 | 確認内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 尺度と版 | 旧版SRQ-DかSRQ-DⅡか | 18項目版SRQ-Dを実施 |
| 合計点 | 6項目を0点固定にした合計 | SRQ-D 14/36点 |
| 実施条件 | 場所、回答方法、補助の有無 | 病室で自己記入。質問文の読み上げなし |
| 背景 | 睡眠、疼痛、食欲、薬剤、生活上の変化 | 夜間覚醒が増加。退院後の生活への不安あり |
| 生活・リハへの影響 | 離床、練習参加、活動量、会話など | 自主練習が中断し、離床時間が減少 |
| 共有と対応 | 誰に共有し、何を行うか | 看護師・主治医へ共有。面接後に再評価を検討 |
「18項目版SRQ-Dは14/36点。夜間覚醒と退院後の不安があり、自主練習と離床時間が減っています。看護師へ共有済みで、主治医への相談を予定しています。」
再評価するタイミング
SRQ-Dの再評価間隔を、すべての対象者に一律で設定する必要はありません。症状や生活状況の変化、支援内容の見直しなど、再評価の目的を決めて実施します。
- 睡眠、食欲、活動性、会話量などが変化したとき
- 疼痛や身体症状が増悪または改善したとき
- 薬剤が開始・変更されたとき
- 入院、転棟、退院、復職など環境が変化したとき
- 支援や治療の前後で変化を確認するとき
- 医師や多職種から再評価を依頼されたとき
経時変化を見る場合は、同じ版の尺度を使用し、本人記入か読み上げか、実施場所、補助の有無などを記録します。前回と条件が異なる場合は、点数の変化と条件差を分けて解釈してください。
抑うつ尺度の選択そのものに迷う場合は、PHQ-9・HADS・SRQ-Dの違いと使い分けで目的別の選び方を確認できます。
SRQ-Dでよくある間違い
特に注意したいのは、尺度の版の混同、加点しない6項目の採点ミス、合計点だけによる判断です。
| よくある間違い | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| SRQ-DとSRQ-DⅡを混同する | 項目数や採点方法が一致しなくなる | 実施前に尺度名、版、項目数を確認する |
| 質問2・4・6・8・10・12を加点する | 合計点が実際より高くなる | 6項目を0点固定にしてから合計する |
| 合計点だけを申し送る | 本人の困りごとや支援の優先順位が伝わらない | 背景と生活・リハへの影響を一緒に共有する |
| 16点未満なら問題ないと判断する | 強い訴えや安全上の問題を見落とす可能性がある | 点数にかかわらず、本人の訴えと安全性を確認する |
| 再評価ごとに条件が変わる | 点数変化の理由を判断しにくい | 回答方法、場所、補助の有無、背景変化を記録する |
SRQ-D記録シート・自動計算ツール
採点結果と実施条件をまとめて残せるSRQ-Dスコア記録シートと、18項目の回答から合計を算出する自動計算ツールを用意しています。いずれも質問項目の全文は掲載せず、採点と記録を補助するための資料です。
SRQ-Dスコア記録シート(A4 PDF)
合計点、実施条件、背景、生活・リハへの影響をA4用紙1枚に記録できます。
PDFをこの場でプレビューする
SRQ-D自動計算ツール(合計0〜36点)
各項目の回答を入力すると、質問2・4・6・8・10・12を合計対象から除外し、加点対象12項目の合計点を自動計算します。旧版SRQ-Dの18項目専用であり、15項目のSRQ-DⅡには使用できません。
質問文は使用中の正規用紙で確認し、各項目の回答だけをツールへ入力してください。
SRQ-Dはスクリーニング尺度であり、うつ病を診断するものではありません。本人の訴え、生活状況、身体症状、服薬、面接所見と合わせて解釈します。希死念慮、自傷行為、急激な精神状態の変化などがある場合は、合計点にかかわらず直ちに共有してください。
SRQ-Dについてよくある質問
各質問をタップすると回答が開きます。
Q1. SRQ-Dでうつ病を診断できますか?
診断はできません。SRQ-Dは、抑うつ状態の可能性を確認し、面接や専門的評価につなげるためのスクリーニング尺度です。点数だけでなく、本人の訴え、生活状況、身体症状、服薬状況などを合わせて確認します。
Q2. 加点しない項目はどれですか?
18項目版SRQ-Dでは、質問2・4・6・8・10・12は、回答にかかわらず0点です。それ以外の12項目を0〜3点で採点し、合計0〜36点で判定します。
Q3. 11〜15点の場合はどう対応しますか?
境界領域として、睡眠、身体症状、生活上の負担、本人の困りごとを確認します。合計点だけで経過観察にせず、相談希望や生活・リハへの影響を確認し、必要に応じて医師や多職種へ共有します。
Q4. 16点未満なら専門職への共有は不要ですか?
点数だけでは決められません。強い抑うつの訴え、希死念慮、自傷行為、急激な精神状態の変化、安全を保てない状況がある場合は、合計点にかかわらず直ちに共有してください。
Q5. SRQ-DとSRQ-DⅡは何が違いますか?
本記事で扱う旧版SRQ-Dは18項目・合計0〜36点です。SRQ-DⅡは2017年に発売された15項目の別尺度です。SRQ-DⅡを使用するときは、正規の検査用紙と実施要領に従ってください。
Q6. 再評価はどのくらいの間隔で行いますか?
一律の間隔ではなく、再評価の目的に合わせて決めます。症状や生活状況の変化、薬剤変更、環境変化、支援前後などが主なタイミングです。経時比較では、同じ版と回答方法を使用し、前回との条件差も記録します。
次の一手
SRQ-Dの結果は、点数を出すだけでなく、誰に共有し、何を追加確認し、いつ見直すかまで決めることで臨床に生かせます。
- 実践へ進む:抑うつ評価の流れ(5分フロー)で、評価・共有・再評価の手順を確認する
参考文献
- 綾瀬市. 心の健康チェックシート:自己診断チェックシート(SRQ-D)東邦大式. Accessed July 25, 2026.
- 東邦大学医療センター大森病院心療内科. 当科作成の東邦大式抑うつ尺度(SRQ-DⅡ). Accessed July 25, 2026.
- 日本うつ病学会. うつ病診療ガイドライン2025. Accessed July 25, 2026.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリテーションの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

