バランス評価のやり方まとめ|静的・動的・尺度の使い分け
バランス評価は「何を見たいか(静止で保てる/動いて保てる/生活で困る)」を先に決めると、検査の選び方と記録がブレません。本ページは 静的バランス・動的バランス・包括スケールの 3 本柱で、現場で迷わない最短ルート(選び方 → 実施の要点 → 記録の固定)をまとめます。
評価は「順番」と「記録項目」を固定すると、再評価と申し送りが一気に楽になります。 評価 → 介入 → 再評価の型を確認する(PT キャリアガイド)
目的別ショートカット
まずは目的で選ぶのが最短です。「静止でふらつく」「歩行や方向転換が不安」「生活機能まで見たい」のどれかを決めて、該当ブロックへ進みます。
- 静止でふらつく/感覚入力の影響を見たい:静的バランス評価(直立・片脚・ロンベルグ・マン)
- 手を伸ばす/立位で動くと不安:FRT(Functional Reach Test)
- 立ち上がり・方向転換・歩行の総合:TUG(Timed Up and Go)
- 転倒リスクをスコアで追いたい: BBS(Berg Balance Scale) / Mini-BESTest / 使い分け(比較)
バランス評価の全体像|静的・動的・包括の 3 区分
同じ「ふらつき」でも、原因と対策は変わります。静的は支持基底面内で保てるか、動的は重心移動や課題で破綻しないか、包括は転倒や生活への影響を点数で追うのが得意です。
| 区分 | 主に見えること | 向く場面 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 静的 | 立位保持、感覚入力(視覚など)への依存、左右差 | 離床前の安全確認、感覚系の手がかり、ベッドサイド | 直立、片脚立位、ロンベルグ、マン |
| 動的 | 重心移動、上肢課題、方向転換、速度変化 | 歩行訓練の難易度設定、転倒場面の再現 | FRT、TUG、FSST など |
| 包括スケール | 転倒リスクやバランス能力をスコアで追跡 | チーム連携、経時比較、退院前後の目標管理 | BBS、Mini-BESTest、BESTest |
静的バランス|まず「立位保持」と条件差を押さえる
静的バランスは、離床・立位練習の最初の安全確認に向きます。ポイントは足幅・視線・上肢位置・靴の有無を固定して、再評価で同条件にすることです。施設でルールがある場合はそちらを優先します。
静的の代表は、直立・片脚立位・ロンベルグ・マン試験です。まとめて確認したい場合は、以下の静的まとめへ進むと早いです。
各検査の手順だけ確認したい方はこちら:
動的バランス|「課題で破綻する瞬間」を拾う
動的バランスは「歩行はできるが転びそう」「方向転換で不安定」など、動作での破綻を拾うのが得意です。練習の難易度を決めるために、課題(Reach/立ち上がり/旋回)をはっきりさせます。
- FRT(Functional Reach Test)|手順と判定のコツ
- TUG(Timed Up and Go)|測り方と注意点
- FSST(Four Square Step Test)|安全管理・記録・運用のコツ
包括スケール|点数で追う(チーム連携に強い)
包括スケールは、バランスを「点数」で共有できるので、カンファレンスや退院前後で強いです。特に経時比較を重視する場合は、スケールを 1 つ決めて運用するとブレません(評価者間で手順を合わせるのが前提です)。
現場の詰まりどころ|「測定がブレる原因」を先に潰す
バランス評価は、ちょっとした条件差で結果が変わります。再評価で意味のある比較をするために、固定すべき項目を最初から決めておきます。
| 失敗(よくあるブレ) | 起きること | 対策(固定ポイント) | 記録に残す |
|---|---|---|---|
| 足幅・足先角度が毎回違う | 保持時間や揺れが変わる | 足幅(例:骨盤幅)と足先角度をルール化 | 足幅/足先角度 |
| 視線・上肢位置が曖昧 | 代償で安定して見える | 視線(正面固定)と上肢位置(体側など)を統一 | 視線/上肢位置 |
| 介助・見守り距離が一定でない | 恐怖心や注意配分が変わる | 見守り位置(患側後方など)を決める | 見守り位置/介助量 |
| 靴・装具・杖の条件が混ざる | 結果の比較ができない | 条件を固定して、変えたら別条件として扱う | 靴/装具/杖 |
記録テンプレ|最低限そろえる 6 項目
「点数」や「秒数」だけだと、次の評価者が再現できません。最低限は次の 6 項目を固定して残すと、経時比較が安定します。
- 実施日・評価者
- 検査名(静的/動的/スケール)
- 条件(足幅・上肢位置・視線・靴/装具)
- 環境(床・スペース・手すりの有無)
- 結果(秒数/点数/到達距離など)
- 所見(破綻の瞬間、代償、恐怖心、介助量)
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
静的と動的、最初にどちらをやるべきですか?
安全確認が必要な場面(離床直後、立位練習の開始、起立でふらつくなど)では、静的から入るのが基本です。そのうえで「動作で破綻する」訴えが強い場合に、動的(FRT / TUG など)へ進むと、評価の流れが自然になります。
評価結果が日によって変わります。どう扱えばいいですか?
バランスは体調や注意、疼痛、睡眠、薬の影響を受けやすいので、まずは条件(足幅・視線・上肢・靴/装具)と環境を固定します。条件が固定できていれば、変動自体が「その日の状態」の情報として価値を持ちます。
点数化(BBS / Mini-BESTest)はいつ使うのが良いですか?
チームで共有したい、退院前後で追いたい、介入の効果を説明したい、といった場面で強いです。運用が続く施設ほど、スケールを 1 つ決めて手順を統一すると成果が出やすくなります。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
バランス評価は、安全の確保 → 条件固定 → 段階課題 → 記録 → 再評価の順に回すほど、臨床の“リズム”が整います。面談準備チェックと職場評価シートを使って、働き方も含めた次の一手を整理したい方は こちらも参考にしてください。


