CPOT の使い方|ICU の疼痛評価を 3 タイミングで揃える

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CPOT は「自己申告できない ICU 患者の疼痛」を見落とさない評価です

ICU では、痛みを言葉で訴えられない状況が珍しくありません。 CPOT( Critical-Care Pain Observation Tool )は、表情・身体の動き・筋緊張などの行動反応から疼痛を点数化し、鎮静や不穏に隠れた痛みを拾うための観察尺度です。

本記事は CPOT を「点数の説明」で終わらせず、観察のコツ/測定タイミング(安静→刺激中→介入後 5 分)/カットオフの考え方/リハの継続・中止判断/カルテの書き方まで、現場で迷わない型に落とし込みます。

CPOT 運用 30 秒フロー:観察 4 領域、測定タイミング(安静→刺激中→介入後 5 分)、意思決定( OK/注意/中止 )、記録最小セット
CPOT 運用 30 秒フロー(成人 ICU の実務用)

CPOT とは?(何を見て点数化するか)

CPOT は、自己申告が難しい重症患者の疼痛を、行動反応から評価する観察尺度です。主に表情・身体の動き・筋緊張に加えて、挿管中は人工呼吸器との同調、抜管後は発声(うめき・訴え)のような反応を観察して点数化します。

※スマホは表を横スクロールで見られます。

CPOT の評価領域(“何を見ているか”の早見)
領域 見るポイント(要約) リハで増えやすい場面 記録のコツ
表情 苦痛を示す表情変化(硬さ、しかめ等) 起き上がり、端座位、吸引前後 「表情変化あり」ではなく、変化のタイミングも書く
身体の動き 落ち着きのなさ、抵抗、身をよじる等 体位変換、移乗、 ROM 危険行動(ライン)とセットで記載
筋緊張 緊張の上昇(硬さ、抵抗感) ROM 、ポジショニング 他動運動での抵抗が増えた“瞬間”を残す
同調 / 発声 挿管中:同調不良/抜管後:うめき等 離床負荷が上がったとき 「呼吸苦」や「せん妄」と混同しないよう根拠を書く

いつ測る?(タイミングを固定すると強い)

CPOT は“必要時だけ”だと比較ができません。おすすめは安静 → 刺激(処置・体位変換・離床負荷など)中 → 介入後(例: 5 分後)の 3 点セットです。特に体位変換・吸引・離床は疼痛が顕在化しやすいため、手技前後で評価を固定すると、鎮痛や負荷調整の効果判定まで一貫します。

CPOT の測定タイミング(病棟で揃える最小ルール)
タイミング 目的 見るべき変化 次の判断
安静時(開始前) ベースライン把握 すでに高い/上がりやすい 開始レベルを下げる/事前に鎮痛を相談
刺激中(負荷の山) 負荷に対する反応 急上昇/危険行動 負荷を戻す/原因(痛み・不穏・呼吸循環)を切り分け
介入後(例: 5 分後) 回復の確認 戻る/戻らない 戻らないなら鎮痛・環境・負荷条件を再設計

カットオフの考え方(“点数”より意思決定)

CPOT は「何点なら痛い」と断定するより、本人が耐えられる負荷か/鎮痛が足りているかを判断するために使うのが安全です。現場では 2〜3 点以上を疼痛疑いの目安として扱うことが多い一方、患者背景や刺激の内容で適切域は変わります。

ブレを減らすコツは、①安静時が低いか ②刺激で上がるか ③鎮痛・負荷調整で下がるかの“変化”で読むことです。点数は「意思決定のトリガー」として扱い、次の行動(負荷を戻す/休息/鎮痛相談/中止)までセットで運用します。

リハの意思決定(開始・継続・中止に落とす)

CPOT は評価だけで終わらせず、次の行動に直結させると価値が出ます。おすすめは「中止」より前に、負荷の戻し方(一段階戻す、時間短縮、環境調整、体位変更)を標準化することです。

CPOT を使った意思決定( OK / 注意 / NG の型)
状況 判断 やること 記録で残す一言
安静時が低い 開始 OK 予定どおり開始 「開始前 CPOT:低値」
刺激で上昇するが介入後に回復 継続 OK 負荷を微調整しながら継続 「刺激で上昇→ 5 分で回復」
上昇が強い/回復しない 注意 負荷を一段階戻す、疼痛要因を確認 「負荷調整で反応を確認」
危険行動や同調不良が強い 中止 安全確保して中止、原因を共有 「危険行動あり中止、再開条件を設定」

カルテの書き方(最小セット:コピペ用)

記録は長文不要です。最低限、① CPOT(安静/刺激中/介入後 5 分)②根拠(観察)③介入内容④対応(負荷調整)⑤次回条件が揃うと、担当が変わっても安全に積み上がります。

CPOT 記録テンプレ(最小セット)
項目 書く内容
CPOT 安静 → 刺激中 → 介入後 5 分 「 CPOT:安静 0/刺激中 3/ 5 分 1 」
根拠 変化の根拠(要約) 「端座位で表情硬さ+緊張上昇」
介入 段階と時間 「端座位 2 分→ 1 分に短縮」
対応 負荷調整/体位 「臥位へ戻し、環境調整で落ち着く」
次回 開始レベルと条件 「次回:端座位 1 分から。条件:同調良好」

現場の詰まりどころ(よくある失敗)

CPOT 運用で詰まりやすいポイント(失敗→理由→対策)
よくある失敗 起きる理由 対策(最短)
点数だけを書いて根拠がない 再現できず、次回の条件設定ができない 表情/緊張/同調など「何が・いつ」変わったかを 1 行添える
せん妄・呼吸苦と混同する “不穏”として処理され、疼痛が残る 負荷に反応して上がり、調整や鎮痛で下がるか(変化)で切り分ける
測定タイミングがバラバラ 比較できず、点数が意味を持たない 安静→刺激中→介入後 5 分の 3 点セットを病棟ルールにする
中止が多発する 「中止以外の戻し方」が共有されていない 中止の前に「一段階戻す」ルール(時間短縮・体位変更・休息)を標準化する

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. CPOT は誰が評価しても一致しますか?

A. 観察ポイントを“領域ごと”に揃え、タイミング(安静→刺激中→介入後)を固定すると一致しやすくなります。導入初期は同時評価で擦り合わせると、病棟の共通言語として定着します。

Q2. CPOT が上がったら、すぐ中止ですか?

A. まずは負荷を一段階戻し、介入後(例: 5 分後)に回復するかを確認します。回復しない/危険行動が強い場合は安全優先で中止し、再開条件を設定します。

Q3. せん妄(不穏)と痛みはどう見分けますか?

A. “痛みは負荷に反応して上がり、負荷調整や鎮痛で下がる”という変化で捉えるとブレません。不穏が強い場合も、疼痛が引き金になっていることがあるため、まず痛みの可能性を残します。

Q4. 深い鎮静や筋弛緩中でも CPOT は使えますか?

A. 行動反応が出にくい条件では、点数が低く出ても疼痛を否定できません。処置や体位変換など“痛みが出やすい場面”では、事前の鎮痛相談や負荷設計を優先し、評価は「変化」と他の所見(同調、循環反応など)も合わせて解釈します。

次の一手(関連ページで運用を揃える)

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考文献

  • Gélinas C, et al. Validation of the critical-care pain observation tool in adult patients. Am J Crit Care. 2006;15(4):420-427. DOI: 10.4037/AJCC2006.15.4.420
  • Devlin JW, et al. Clinical practice guidelines for the prevention and management of pain, agitation/sedation, delirium, immobility, and sleep disruption in adult patients in the ICU( PADIS ). Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. DOI: 10.1097/CCM.0000000000003299 / PubMed: 30113379
  • Society of Critical Care Medicine. PADIS Guidelines(公式ページ). SCCM
  • de Queiróz Pinheiro ARP, et al. Behavioral Pain Scale and Critical Care Pain Observation Tool: validity and reliability in intubated ICU patients( review ). Rev Bras Ter Intensiva. 2019. PMCID: PMC7008990

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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