食事場面のリハ記録で見るべきポイント
食事場面のリハビリテーション記録では、「食べた・食べられなかった」だけでは不十分です。実際の臨床では、姿勢、嚥下状態、摂取量、疲労、介助量などを多角的に観察し、多職種で共有することで、誤嚥予防や摂取量向上につながります。
特に高齢者や脳卒中、神経難病、呼吸器疾患などでは、食事場面に多くのリスクが隠れています。観察内容を具体的に記録することで、ST・看護師・栄養士・歯科職種との連携もしやすくなります。
食事場面で見るべき 3 つの視点
食事場面では、「姿勢」「嚥下」「摂取量・疲労」の 3 つを分けて観察すると整理しやすくなります。記録が曖昧になる原因の多くは、複数の問題を一文にまとめてしまうことです。
例えば「食事中にむせあり」だけでは、どの食品で起きたのか、姿勢はどうだったのか、疲労はあったのかが分かりません。観察項目を分けて書くことで、次の介入につながる記録になります。
姿勢・座位保持を観察する
食事場面では、まず姿勢を確認します。頸部伸展、体幹後傾、側屈、骨盤後傾などがあると、誤嚥や食事動作低下につながります。特に車椅子座位では、足底接地やテーブル高さも重要です。
「やや前傾で体幹安定」「頸部軽度伸展あり」「足底接地不十分」など、観察した事実を具体的に書くことで、環境調整やシーティング介入につながります。関連:車椅子シーティングの基本
嚥下・むせの有無を確認する
嚥下状態では、「むせの有無」だけでなく、どの食品で、どのタイミングで起きたかまで確認することが重要です。湿性嗄声、口腔内残留、食後の疲労感なども重要な観察項目です。
例えば「水分摂取時に湿性嗄声あり」「食事後半で咳嗽増加」「ゼリー摂取ではむせなし」など、具体的な条件を書き分けることで、食形態調整や ST 評価につながります。
摂取量・疲労・食事動作を記録する
食事場面では、摂取量だけでなく、「どう食べているか」を観察することが重要です。上肢操作、食具使用、介助量、食事ペース、疲労による後半低下などは、ADL や栄養状態にも影響します。
「主食 8 割、副食 5 割、水分少量」「食事後半でペース低下」「上肢疲労が強く途中休憩が必要」など、実際の様子を具体的に残すことで、多職種で介入方針を共有しやすくなります。
食事場面の記録例
| 観察項目 | 記録例 |
|---|---|
| 姿勢 | 軽度前傾で座位保持可能。頸部軽度伸展あり。 |
| 嚥下 | 水分摂取時に湿性嗄声あり。ゼリーではむせなし。 |
| 摂取量 | 主食 8 割、副食 5 割、水分少量。 |
| 疲労 | 食事後半でペース低下あり。 |
| 共有内容 | ST・看護師へ湿性嗄声と食後疲労を共有。 |
よくある記録の失敗
食事場面の記録で多い失敗は、「食事摂取良好」「むせなし」などの短い記録だけで終わってしまうことです。この書き方では、具体的に何を観察したのかが分かりません。
また、「誰に共有したか」「次に何を確認するか」が抜けると、介入につながりにくくなります。観察→共有→介入変更まで書くことが、実践的なリハ記録のポイントです。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
食事量だけ記録すれば十分ですか?
不十分です。姿勢、嚥下状態、疲労、介助量なども含めて観察することで、誤嚥予防や摂取量向上につながります。
むせがなくても記録は必要ですか?
必要です。むせ以外にも湿性嗄声、残留、疲労などのサインが隠れている場合があります。
誰と共有するべきですか?
ST、看護師、栄養士、歯科職種など、食事支援に関わる多職種と共有することが重要です。
次の一手
食事場面の観察や共有がうまく回らない場合は、教育体制や多職種連携の仕組み自体を見直すことも重要です。
参考文献
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会. 嚥下障害診療ガイドライン 2024 年版. https://www.jibika.or.jp/uploads/files/enge_guideline_2024.pdf
- Yang S, Park JW, Min K, et al. Clinical Practice Guidelines for Oropharyngeal Dysphagia. Ann Rehabil Med. 2023;47(4):255-280. PMC10405672
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 公式サイト. https://www.jsdr.or.jp/
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


