ハムストリングストレーニング|姿勢別メニューと臨床完結シートで「説明〜記録」を 1 枚化
ハムストリングスは、歩行の推進・減速、骨盤制御、立ち上がり動作の安定に関わる重要筋群です。現場で実装しやすくするには、立位・座位・ベッド上の 3 姿勢で同じ目的を達成できる設計が有効です。
本記事では、姿勢別メニュー、代償の見方、当日記録の型までを 1 本化して整理します。全体像は 筋トレメニュー ハブ で確認できます。
ハムストリングスの役割と臨床での観察ポイント
ハムストリングスは膝関節屈曲と股関節伸展に関与し、歩行・方向転換・階段動作での下肢制御を支えます。とくに膝周囲症状があるケースでは、代償が強いまま回数を重ねると、痛みや不安定感が増えやすくなります。
そのため、実施時は「フォーム優先」「症状前後(NRS)」「代償チェック」の 3 点を固定して観察します。評価設計の共通化は 評価ハブ も参考になります。
姿勢別メニュー(立位・座位・ベッド上)
姿勢別に選択肢を持つと、患者の状態に合わせて負荷を段階化しやすくなります。初回は 1 姿勢 1 種目から開始し、フォームが安定してから回数・セットを進める運用が安全です。
目安は 8〜12 回 × 2 セット、週 3〜5 回。ただし、代償や症状悪化が出る手前で終了し、次回方針(進行・維持・後退)を記録して再現性を確保します。
| 姿勢 | 代表メニュー | 目安 | よくある代償 | 修正キュー |
|---|---|---|---|---|
| 立位 | ヒップヒンジ/立位ニー屈曲(支持あり) | 8〜12 回 × 2 セット | 腰反り、体幹反動 | 股関節から折る、反動を使わない |
| 座位 | 座位レッグカール(セラバンド)/ヒールドラッグ | 8〜12 回 × 2 セット | 体幹後傾、骨盤後傾固定 | 骨盤を立てる、ゆっくり戻す |
| ベッド上 | ブリッジ(踵寄せ)/腹臥位ニー屈曲 | 8〜12 回 × 2 セット | 殿筋優位、骨盤回旋 | 踵で引く意識、骨盤を正面に保つ |
姿勢別図解(患者説明用)
患者説明では、3 姿勢を横並びで見せると理解が速くなります。特に「よくある代償」と「修正キュー」が同時に見える図版は、初回指導での再現性向上に有効です。
以下の図版を本文に掲載し、下段の PDF 記録シートとセットで運用してください。
ダウンロード(A4 臨床完結シート)
現場で 1 枚運用できるよう、上段を患者説明、下段を当日記録に分けた A4 シートを用意しました。説明 → 実施 → 記録 → 次回調整までを一体化できます。
下段は 7 行固定(実施姿勢/メニュー/実施量/症状/代償チェック/中止理由/次回方針)で、運用のばらつきを減らす設計です。
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記録の書き方(短縮版)
まず実施姿勢とメニューをチェックし、実施量(回数・セット・休息・RPE)を記録します。次に症状(NRS 前後)と代償チェックを記入し、中止理由の有無を明確にしてください。
最後に次回方針(進行・維持・後退)を必ず残すと、担当者が変わっても負荷調整の連続性を保てます。
現場の詰まりどころ・よくある失敗
よくある失敗は、回数達成を優先して代償を見逃すことです。ハムストリングス狙いでも、腰反り・体幹反動・骨盤固定で別部位に負荷が逃げると、狙った適応が得られにくくなります。
対策は「フォーム優先」「代償が増える手前で終了」「NRS 前後を毎回記録」の固定です。関連する下肢連動は 大腿四頭筋トレーニング と 大臀筋トレーニング も合わせて確認してください。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
どの姿勢から始めるべきですか?
疼痛・バランス・疲労を踏まえ、最も安全に実施できる姿勢から開始します。立位で不安定なら、座位やベッド上から始めてフォーム安定後に立位へ進めます。
回数の目安(8〜12 回 × 2 セット)は固定ですか?
固定ではありません。代償や症状の変化、RPE を見ながら調整します。目標は「質の高い反復」を積むことで、無理に回数を満たすことではありません。
中止の判断は何を優先しますか?
疼痛増悪、めまい、息切れ増悪、膝折れ不安があれば中止し再評価します。施設プロトコルと医師指示を優先し、経過を記録してください。
代償チェックはどれを見ればよいですか?
腰反り、体幹反動、骨盤前傾固定、息こらえの 4 点を優先的に確認します。代償の出る回数帯を把握すると、負荷設定の精度が上がります。
次の一手
まずは 1 週間、同じシートで実施率・代償・NRS 前後を記録してください。数値がそろうと、次回調整が速くなります。
続けて読む:筋トレメニュー ハブ/大腿四頭筋トレーニング/中臀筋トレーニング
参考文献
- Bourne MN, Timmins RG, Opar DA, Pizzari T, Ruddy JD, Sims C, et al. An Evidence-Based Framework for Strengthening Exercises to Prevent Hamstring Injury. Sports Med. 2018;48(2):251-267. doi:10.1007/s40279-017-0796-x
- Freckleton G, Pizzari T. Risk factors for hamstring muscle strain injury in sport: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2013;47(6):351-358. doi:10.1136/bjsports-2011-090664
- van Dyk N, Bahr R, Burnett AF, Whiteley R, Bakken A, Mosler A, et al. A comprehensive strength testing protocol offers no clinical value in predicting risk of hamstring injury: a prospective cohort study. Br J Sports Med. 2017;51(23):1695-1702. doi:10.1136/bjsports-2017-097754
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


