健康関連 QOL( HRQOL )と PROMs の選び方(結論)
結論:PROMs は「何をどれだけ良くしたいか」を患者本人の回答で可視化し、介入の優先順位と再評価をそろえるための道具です。なかでも HRQOL(健康関連 QOL )は、身体・心理・社会面を横断して “ 全体像の地図 ” を作れるため、最初の 1 本に向きます。
迷いを減らすコツは 3 ステップです。①目的(説明/目標/比較)②対象(疾患特異性の必要度)③負担(所要時間・回収)を順に決めると、現場で回る尺度に落ちます。
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関連(領域ハブ):整形外科 PROMs ハブ
まず深掘り:EQ-5D の読み方 / SF-36 の読み方
PROMs とは?(何が取れて、何に効くか)
PROMs( Patient-Reported Outcome Measures )は、症状・機能・生活への影響などを患者本人の回答で数値化する評価です。痛み、息切れ、疲労、気分、自己効力感など “ 本人にしか分からないアウトカム ” を、同じ尺度で追えるのが強みです。
臨床で効きやすいのは、①症状は落ち着いたのに生活の困りごとが残る、②セルフエクササイズが続かない、③多職種で方針が割れる(目標や優先度が曖昧)といった場面です。PROMs は問診の質を上げつつ、説明と合意を “ 数字 ” にそろえられます。
HRQOL の位置づけ(まず “ 地図 ” を作る)
HRQOL(健康関連 QOL )は、健康状態が日常生活や役割、心理状態にどう影響しているかを、身体・心理・社会の複数側面で捉える概念です。症状の強さだけでは見えない “ 影響 ” を扱います。
部位や疾患に偏らず全体像を掴むときは、まず HRQOL のジェネリック尺度で地図を作り、必要なら疾患特異的尺度で深掘りする設計が回しやすいです。
実施タイミング(いつ取ると役立つか)
タイミングは「介入で変化が出る区切り」に合わせるのが基本です。入院なら 初回評価 → 退院前、外来なら 初回 → 4〜 8 週など、まずは少ない回数で継続できる設計を優先します。
頻回に取りすぎると回収率が下がり、少なすぎると変化が見えません。最初は “ 2 回で完結 ”を目標にすると定着しやすいです。
| 場面 | 初回 | 中間(必要時) | 区切り | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|
| 入院 | 開始 48 時間以内 | 週 1(必要時) | 退院前 1 週間 | 目標の合意と退院準備 |
| 外来 | 初診 | 2〜 4 週 | 6〜 12 週 | 反応確認と方針転換 |
| 訪問 | 初回 | 月 1 | 3 か月 | 生活課題の優先度整理 |
尺度の選び方(目的→対象→負担で決める)
尺度選びは「有名だから」ではなく、目的(何を意思決定したいか)から逆算します。次に対象(疾患・年齢・言語・認知)と負担(項目数・回答時間)で絞ります。
迷ったら、まずジェネリック HRQOL で全体像を作り、主要課題が見えたら疾患特異的で精度を上げる流れが堅実です。
| ステップ | 決めること | 判断のコツ | よくあるズレ |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的 | 「説明」「優先度」「比較」のどれを主にするか決める | 目的が 3 つ同時で尺度が増える |
| 2 | 対象 | ジェネリックで地図→必要なら疾患特異的で深掘り | 疾患特異的だけで全体像が欠ける |
| 3 | 負担 | 所要時間と回収動線(紙/タブレット/面接)を先に設計 | 良い尺度でも回収できない |
5 ステップ(実務で迷わない)
- 意思決定ポイントを 1 つ決める(例:退院後の活動制限を減らす)
- 測りたい構成概念を決める(症状/活動/参加/心理など)
- ジェネリック or 疾患特異的を選ぶ
- 負担(時間・回収方法)を調整する
- 解釈ルール(どの変化を “ 意味あり ” とするか)を決める
ジェネリックと疾患特異的の使い分け
ジェネリックは比較と俯瞰に強く、疾患特異的は変化の感度に強い傾向があります。どちらか一択ではなく、役割で使い分けると運用が安定します。
「説明」「多職種共有」「経時変化」の目的が強いほど、ジェネリック HRQOL を入り口にする利点が増えます。
| 観点 | ジェネリック(例:SF 系) | 疾患特異的(例:部位別 PROMs ) | 向く目的 |
|---|---|---|---|
| 守備範囲 | 横断的(身体・心理・社会) | 特定領域に集中 | 全体像の把握 |
| 変化の捉えやすさ | 中等度 | 高いことが多い | 介入の反応確認 |
| 説明のしやすさ | チーム共有がしやすい | 課題が明確で納得しやすい | 目標設定・合意 |
| 運用のコツ | 入口と経過観察の軸にする | 主要課題の深掘りで併用 | 二段構えで回す |
臨床で回す 5 分フロー(配布→回収→記録→共有→再評価)
運用の肝は「配布して終わり」にならないことです。回収率・記録の置き場所・説明の一言まで決めると、チームで同じ型で回せます。
まずは 5 分で回る最小フローを作り、慣れたら対象や頻度を調整します。
| 段階 | やること | 所要 | 記録ポイント | 次の一手 |
|---|---|---|---|---|
| 配布 | 目的を 1 行で説明して渡す | 30 秒 | 尺度名・日付 | 回収タイミングを決める |
| 回収 | 未回答項目の有無だけ確認 | 30 秒 | 欠損の理由 | 次回の負担調整 |
| 採点 | 合計/下位尺度を算出 | 2 分 | 点数と基準(初回) | 変化の見方を決める |
| 共有 | 「良い/困る」を 1 分で言語化 | 1 分 | 患者の言葉を 1 文 | 目標と優先度を調整 |
| 再評価 | 同じ尺度を同じ条件で取る | 1 分 | 変化量(差) | 継続/変更/追加 |
結果の読み方(点数を意思決定に変える)
PROM の点数は「高い / 低い」だけでは臨床に落ちません。何が良くて、何が残っているかを、生活の文脈に結びつけて整理するのがポイントです。
初回はボトルネック(下位尺度)を見つけ、次回は変化量に注目します。変化が小さいときは、尺度が合っていないか、介入の焦点がズレている可能性も検討します。
客観テストは「できる/できない」を整理するのに強い一方で、痛み・不安・生活の困りごとなど “ 本人の体感 ” は取りこぼしやすいです。PROMs と目標(生活で何をできるようにするか)をセットで見ると、チーム内の解釈がそろい、説明と再評価の基準が固まります。
解釈がブレにくい 3 つの問い
- 何が最も困っているか(症状・活動・参加・心理のどれか)
- 困りごとはどの場面で出るか(時間・環境・役割)
- 次の 2〜 4 週間で変えたい行動は何か(具体)
現場の詰まりどころ(回収率・解釈・説明)
PROMs が続かない原因は、尺度そのものより「運用の詰まり」にあります。とくに回収率、採点の手間、説明の一言がボトルネックになりやすいです。
対策は “ 高機能化 ” ではなく、型を決めて例外を減らすことです。まずは最小運用で回し、詰まる箇所だけを改善します。
よくある失敗( 5 つ)
失敗は “ 尺度選び ” ではなく “ 運用 ” で起きます。以下は特に多い 5 つです。
| 失敗 | 起きること | 対策(最小) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 回収が曖昧 | 空欄が増え、比較できない | 回収チェックを “ 30 秒 ” で固定 | 空欄の有無を残す |
| 条件が毎回違う | 変化が解釈できない | 自己記入/面接を統一 | 条件欄を設ける |
| 目的が増える | 尺度が増えて続かない | 目的を 1 行で固定 | 目的を記録欄に書く |
| 点数だけで終わる | 介入に繋がらない | “ 凹み → 打ち手 ” を 1 行で残す | 次アクション欄を作る |
| 再評価が未設定 | 継続せず、単発で終わる | 次回の時点を先に決める | 再評価予定を残す |
回避の手順(導入チェックリスト)
導入は “ 小さく始めて、回収が安定したら広げる ” が成功します。以下のチェックがそろうと、PROMs は回り始めます。
- 目的(説明/目標/比較)を 1 行で固定できている
- 配布と回収の担当(誰がどこで)を決めている
- 記録欄がテンプレ化され、探さなくてよい
- チーム共有の観点(どこを見るか)が 1 つにそろっている
- 再評価の時点(次回の予定)が決まっている
ジェネリック HRQOL の入口を押さえるなら、EQ-5D と SF-36 の子記事を “ 読み方の見本 ” にすると、運用の芯が通ります。
よくある質問( FAQ )
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Q1. まず 1 本だけ選ぶなら、何が無難ですか?
A. 最初は “ 回収できること ” が最優先です。ジェネリック HRQOL を 1 本に絞り、初回と再評価の 2 回で回る設計にします。運用が安定したら、領域別の PROMs を 1 本追加する順が失敗しにくいです。
Q2. 回収率が落ちるときの最優先の見直しは?
A. 説明が長いことが多いので、「今日は生活の困りごとを短く確認します」の 1 行に固定し、回収タイミングを決めて運用を単純化します。未回収の理由は 1 語で残すと改善が速くなります。
Q3. 点数が変わらないときは失敗ですか?
A. 失敗とは限りません。下位尺度のどこが動いていないか、介入の焦点が合っているかを確認し、次の 2〜 4 週間の行動目標を具体化します。尺度が拾う領域と目標がズレている場合は、尺度の見直しも検討します。
Q4. HRQOL と ADL 指標はどちらを優先しますか?
A. 目的次第です。ADL は「できる/できない」を、HRQOL は「生活への影響」を拾います。両者がズレたときほど、目標設定の再調整に PROMs が役立ちます。
次の一手(迷わない導線)
- 運用を整える:評価ハブで “ 使う順番 ” を固定する
- 共有の型を作る:PROMs の “ 使い分け記事 ” を見本に、説明の型を作る
教育体制・人員・記録文化など “ 環境要因 ” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に「続ける/変える」の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。PT キャリアナビはこちら
参考文献
- Ware JE Jr, Sherbourne CD. The MOS 36-item short-form health survey (SF-36). I. Conceptual framework and item selection. Medical Care. 1992;30(6):473-483. doi: 10.1097/00005650-199206000-00002
- Reeve BB, Wyrwich KW, Wu AW, et al. ISOQOL recommends minimum standards for patient-reported outcome measures used in patient-centered outcomes and comparative effectiveness research. Qual Life Res. 2013;22(8):1889-1905. doi: 10.1007/s11136-012-0344-y
- Prinsen CAC, Mokkink LB, Bouter LM, et al. COSMIN guideline for systematic reviews of patient-reported outcome measures. Qual Life Res. 2018;27:1147-1157. doi: 10.1007/s11136-018-1798-3
- U.S. Food and Drug Administration. Patient-Reported Outcome Measures: Use in Medical Product Development to Support Labeling Claims (Guidance for Industry). 2009. FDA
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


