この記事でわかること(結論)
ロコモ度テストの 項目の趣旨・判定基準(閾値)・観察ポイント を強化して、現場で迷いなく運用できる形にまとめました。評価は 立ち上がりテスト/2 ステップテスト/ロコモ 25 の 3 本柱。判定は「どれか 1 つでも該当した最も重い段階」を採用します。
要点(クイックメモ):2 歩幅(cm)÷ 身長(cm)= 2 ステップ値。目安 1.30/1.10/0.90(1.30 以上=該当なし、1.10–1.29=度 1、0.90–1.09=度 2、0.90 未満=度 3)。立ち上がりは 40/30/20/10 cm、反動なしで 3 秒保持が成功条件です。
ロコモ度テストの全体像と運用ルール
安全第一でバイタル・疼痛・転倒歴を事前確認し、中止基準(胸痛/息切れ悪化/著明な疼痛/失神前駆/測定者が危険と判断)を共有します。導線は「受付 → バイタル → 立ち上がり → 2 ステップ → ロコモ 25 → 相談/方針」。評価の全体像は当ブログの整理ハブ → 評価ハブ を参照してください。
| 原則 | 具体 | 実務メモ |
|---|---|---|
| 最重採用 | 3 テストのうち“最も重い段階”を最終判定に採用 | 異なる結果が出たら根拠と次の一手を記録 |
| 再現性確保 | 台高・足部位置・開始姿勢を固定 | 治具/マスキングテープ/写真で固定化 |
| 安全最優先 | 左右に介助者、滑り止め、即時中止の合図を共有 | 転倒歴や疼痛がある場合は先にロコモ 25 |
立ち上がりテスト
項目の趣旨
下肢筋力・バランス・疼痛の実用的総合性能を、最少支援での起立能力として評価します。生活場面(椅子・トイレ・段差)に直結し、転倒リスクの把握に有用です。
判定基準(臨床的閾値)
| 条件 | 到達の目安(反動なし・腕組み・立位 3 秒保持) | ロコモ度の例 |
|---|---|---|
| 両脚 20 cm 以上は可 | 3 秒保持できる | 度 1(片脚 40 cm は不可など) |
| 両脚 30 cm は可、20 cm は不可 | 安全確保の上で確認 | 度 2 |
| 両脚 30 cm も不可 | 疼痛・恐怖は中止 | 度 3 |
観察ポイント
- 準備相(重心前方移動):体幹前傾が不足していないか、足底の接地は安定しているか。
- 離臀相:膝外反・内反、膝痛の表情、上肢の代償(反動)に注意。
- 伸展相〜立位保持:股膝の伸展同期、左右荷重差、ふらつきの有無。
よくある誤り(=失敗判定)
- 反動(反復バウンド/上肢押し反動)を使う。
- 立位到達後に 3 秒保持できない。
- 踵が浮く/足位置が大きくずれる(固定化できていない)。
2 ステップテスト
項目の趣旨
歩幅制御・バランス・支持基底面の管理能力を、身長に規格化して評価します。体格差を補正した可動性の指標として、経時変化の追跡に適します。
判定基準(臨床的閾値)
| 区分 | 2 ステップ値(2 歩幅[cm]÷ 身長[cm]) | 臨床解釈 |
|---|---|---|
| 該当なし | 1.30 以上 | 可動性は概ね保たれる |
| ロコモ度 1 | 1.10–1.29 | 注意が必要(転倒予防の初期介入) |
| ロコモ度 2 | 0.90–1.09 | 要対策(バランス・筋力の集中介入) |
| ロコモ度 3 | < 0.90 | 高リスク(環境調整・連携強化) |
観察ポイント
- 開始姿勢(つま先をスタート線へ、直立・視線正面)。
- 着地安定性(2 歩目つま先位置/ふらつき/踏み越し)。
- 靴(踵が脱げにくい・滑りにくい素材)と床(滑り止め)。
よくある誤り(=無効試行)
- 助走・ジャンプ・手つなぎ。
- 踏み越し・大きなふらつき・支持喪失。
- 測定者が危険と判断した試行。
ロコモ 25
項目の趣旨
痛み・心理・社会参加を含む生活機能の広義の障害を捉える自記式質問票。身体機能テストが難しい場合の入口としても有効です。
判定と閾値の扱い
- 合計点(0–100)が高いほど問題が強い解釈。公式質問票を使用し、設問の全文掲示は行いません。
- 臨床では合計点のほか、どの設問群が高いか(痛み/移動/心理)を所見として残すと介入設計が容易です。
観察ポイント
- 回答の一貫性(逆転項目の確認、理解度)。
- 生活文脈(階段・買い物・外出・家事)との整合。
- 再評価のタイミング(介入 4–8 週後の変化確認)。
失敗・中止基準(現場早見)
| 状況 | テスト | 扱い | 備考 |
|---|---|---|---|
| 反動使用/上肢の押し反動 | 立ち上がり | 失敗(無効) | やり直し、反動なしを再指示 |
| 踏み越し/支持喪失 | 2 ステップ | 無効試行 | 2–3 回の最大値を採用 |
| 胸痛・失神前駆・息切れ増悪 | 両方 | 即時中止 | 座位休息・必要時医師連絡 |
ダウンロード(A4・印刷可・内部ホスト)
測定会運営テンプレ(施設・自治体向け)
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 導線設計 | 受付 → バイタル → 立ち上がり → 2 ステップ → ロコモ 25 → 相談。逆走を防ぐ動線。 |
| 安全配置 | 両側に介助者、床は滑り止め、バイタル基準・中止基準の掲示。 |
| 記録統一 | 本記事の A4 シートを統一使用。「判定」と「次の一手」を同時記載。 |
| フォロー | 再評価日を予約し、運動・栄養・疼痛・連携の 4 項目で方針を明記。 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
2 ステップでバランスを崩したらどう扱いますか?
無効試行として再試行します。2–3 回の最大値を採用し、左右に介助者を配置します。
片脚・両脚はどちらを先に評価しますか?
原則は両脚 → 片脚です。両脚で安全を確認してから片脚で最難条件まで評価します。
各テストで結果が分かれた場合の総合判定は?
最も重い段階を採用します。判定根拠と「次の一手」を記録に残してください。
参考
- 日本整形外科学会(ロコモチャレンジ!公式):ロコモ度テストの概要・配布資料・啓発情報。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


