離床時の循環動態は血圧・心拍・症状・回復から判断します
離床時の循環動態評価では、血圧や心拍数の数値だけで離床を進めるかどうかを決めません。姿勢を変えたときに何が起こり、どの程度続き、休息や姿勢の調整で回復するかを確認することが重要です。同じ血圧低下でも、症状がない場合と、めまい・冷汗・意識変化を伴う場合では対応が異なります。
本記事では、成人入院患者を中心に、臥位からギャッジアップ、端座位、立位、歩行へ進む際の評価手順と、6つの循環動態所見別の介入選択を解説します。起立性低血圧の診断基準と離床中止の判断を区別し、架空症例3例、診療記録例、再評価の方法まで整理します。

この記事の結論
離床は「数値が正常だから進める」「血圧が下がったから必ず中止する」という二択ではありません。医学的安全性を確認したうえで、姿勢変化→循環反応と症状の観察→回復の確認→次の離床段階の判断を繰り返します。ただし、意識変化、胸痛、失神などの危険徴候があれば、段階調整より中止・緊急対応を優先します。
評価所見別に6つの対応を使い分けます
| 評価所見 | 追加で確認すること | 優先する対応 | 再評価 |
|---|---|---|---|
| 姿勢変化で血圧が低下する | 低下量、絶対値、症状、心拍反応、回復 | 安全を確保し、離床段階・負荷を調整。必要時は医師相談 | 同じ姿勢・測定時点での血圧と症状 |
| 起立時に心拍が大きく増加する | 血圧、リズム、脱水・貧血・薬剤などの情報 | 負荷を見直し、原因評価を依頼する | 姿勢別心拍、症状、回復 |
| 血圧は保たれるがめまいがある | 測定時点、脈拍、神経・前庭症状、薬剤 | 転倒を防ぎ、他の原因も評価する | 症状の出現条件と経過 |
| 離床後に血圧が上昇する | 上昇量、測定精度、症状、基礎疾患 | 負荷と安全性を確認し、必要時は相談する | 臥位・立位の血圧推移 |
| 軽い活動で頻脈・息切れが出る | 呼吸・循環状態、酸素化、疲労、回復 | 活動負荷を調整し、医学的安定性を再確認する | 同一活動での反応と回復 |
| 血圧変化に意識変化・胸痛などを伴う | 意識、呼吸、循環、急性疾患の可能性 | 離床を中止し、緊急対応・医学的評価を優先 | 状態安定後に再開可否を検討 |
この6分類は臨床での判断を支援する独自の整理であり、公式の診断アルゴリズムではありません。複数の異常が重なる場合は、最も安全性に影響する所見を優先します。
離床前に医学的安定性と中止・相談の条件を確認します
離床を開始する前に、病態が安定しているか、離床許可と活動制限、監視体制が確認できているかを判断します。安静時に危険徴候がある場合は、姿勢を変えて反応を見る前に医学的評価を優先します。
| 領域 | 確認内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 医学的安定性 | 急性心疾患、感染、出血、脱水、循環不全などの状況 | 治療方針・活動制限・離床許可を確認する |
| 自覚症状 | 胸痛、息切れ、めまい、冷汗、悪心、強い疲労 | 急性変化や重い症状があれば離床を見送る |
| 血圧・心拍 | 安静時の値、直近の推移、不整脈、薬剤の影響 | 患者の基準値と施設基準を照合する |
| 呼吸・意識 | 呼吸数、SpO₂、努力呼吸、意識レベル | 不安定な場合は医学的評価を優先する |
| 離床環境 | 転倒リスク、介助人数、ベッド高さ、ライン類 | 必要な介助・監視体制を整える |
| 個別指示 | 活動範囲、血圧・心拍管理、酸素療法、禁忌 | 指示を優先し、不明点は実施前に確認する |
実施・調整・中止・相談の境界
実施を検討する場面:医学的状態が安定し、離床許可、必要な介助・監視体制が確認できている場合です。安静時の値だけでなく、直近の循環動態や症状の推移も確認します。
調整を検討する場面:姿勢変化で軽度の症状や循環変化が生じる場合は、まず安全を確保し、姿勢、負荷、休息、介助方法を見直します。症状や変化が持続する場合は、次の段階へ進めず医学的評価を相談します。
中止・緊急対応を優先する場面:意識変化、失神、胸痛、急激な呼吸困難、重篤な不整脈が疑われる状態、循環不全を示す所見などがあれば、離床を中止し、施設の緊急対応手順に従います。
リハビリテーション医療には安全管理の目安が示されていますが、数値は患者背景や治療環境を踏まえて適用する必要があります[3]。本記事では、すべての患者に共通する新たな中止閾値を設定しません。
臥位から歩行まで5段階で循環反応を評価します
離床時の循環動態は、どの姿勢で、姿勢変更から何分後に測定したかによって解釈が変わります。臥位から立位までの測定条件を記録し、患者の状態に応じて段階を選びます。
| 段階 | 評価すること | 次の段階への判断 |
|---|---|---|
| ① 臥位 | 安静時血圧・心拍・呼吸・意識・症状、基準値 | 医学的安定性と離床許可を確認する |
| ② ギャッジアップ | 角度、変更直後・経過後の血圧・心拍・症状 | 反応が許容されるかを確認し、次の角度や端座位を検討する |
| ③ 端座位 | 座位直後と経時的な循環反応、めまい、支持性 | 座位保持の安全性と回復を確認する |
| ④ 立位 | 立位直後・経時的な血圧・心拍・症状、立位保持 | 循環反応と転倒リスクを確認して歩行を検討する |
| ⑤ 歩行 | 活動中の血圧・心拍・症状・酸素化、休息後の回復 | 負荷の継続・調整・終了を判断する |
① 臥位:比較の基準となる状態を確認します
臥位では、安静時の血圧・心拍数・症状を確認します。測定前の活動、食事、服薬、体位、安静時間などは循環反応に影響するため、必要に応じて記録します。
安静時の値が患者の普段の状態から大きく変化している場合や、胸痛・呼吸困難・意識変化などを伴う場合は、離床開始前に相談します。
② ギャッジアップ:角度と経過時間を記録します
ギャッジアップは、立位が難しい患者の姿勢変化への反応を観察する一つの方法です。角度を段階的に変え、血圧・心拍・症状を確認します。
例えば30°、40°、50°、60°などの角度を記録して比較することはできますが、これらの角度が全患者に必要な標準手順というわけではありません。角度と保持時間は、医学的指示、症状、ベッドの仕様、介助体制に応じて調整します。
ギャッジアップ中に血圧が低下した場合は、測定値だけでなく、顔色、反応、めまい、冷汗、意識状態を確認します。症状が強い場合は、次の角度へ進めず、安全な姿勢へ戻して対応します。
③ 端座位:直後だけでなく経時変化を確認します
端座位では、姿勢変更直後と数分後の血圧・心拍・症状を確認します。座位直後に問題がなくても、保持中に症状が出る場合があります。
体幹支持性、頭部保持、転倒リスク、疲労も評価します。座位を保持できることと、循環動態が安定していることは同義ではありません。
④ 立位:起立性低血圧の評価条件を意識します
立位では、立ち上がり直後からの症状と、経時的な血圧・心拍の変化を確認します。起立性低血圧の標準的な定義は、立位または所定のヘッドアップティルトによる姿勢変化後3分以内に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上、持続的に低下することです[1、2]。
ただし、ベッドのギャッジアップや端座位での血圧低下を、そのまま標準的な起立性低血圧の診断と同一視しません。測定姿勢・条件を区別して記録します。
立位保持が難しい患者では、診断のために無理に立位を継続しないことが重要です。測定より安全確保を優先します。
⑤ 歩行:活動中の反応と終了後の回復を確認します
立位が可能でも、歩行によって心拍増加、息切れ、血圧変化、疲労が生じる場合があります。歩行距離や速度、補助具、介助量、症状、休息の必要性を記録します。
歩行後は、安静時の状態へどの程度回復するかを確認します。回復が不十分な場合は、次回の負荷設定や医学的評価の必要性を見直します。
起立性低血圧の診断基準と離床中止の判断は別です
起立性低血圧は、姿勢変化に伴う血圧低下を示す所見です。一方、離床中止は、症状、循環動態、意識、転倒リスク、基礎疾患、医師指示などから判断する安全管理上の対応です。
| 項目 | 起立性低血圧の評価 | 離床中止・相談の判断 |
|---|---|---|
| 目的 | 姿勢変化による血圧低下を把握する | 離床継続の安全性を判断する |
| 主な情報 | 臥位・立位の血圧差、測定時点 | 血圧・心拍・症状・意識・回復・病態 |
| 数値基準 | 標準的な診断基準がある[1、2] | 患者・施設・病態に応じて判断する |
| 症状 | 症状がなくても認められる | 症状の重症度や急性変化を重視する |
| 対応 | 原因や再現性を評価する | 継続・調整・中止・医学的相談を選ぶ |
起立性低血圧は無症状でも認められ、症状がある場合でも測定時点によって血圧低下を捉えられないことがあります[1、2]。そのため、診断基準に達していないことだけを理由に安全と判断しません。
高血圧を合併する患者では、起立時の血圧低下だけでなく臥位高血圧なども考慮する必要があります。2024年AHA科学的声明は、起立性低血圧の出現パターン、誘因、薬剤、基礎疾患を踏まえた個別対応の重要性を示しています[2]。
起立試験の測定手順、判定条件、記録方法を詳しく確認したい場合は、起立性低血圧の評価方法|起立試験とリハ中の対応をご覧ください。
6つの循環動態所見から介入を選択します
離床時の異常反応では、原因を一つに決めつけず、症状が出た姿勢・測定値・心拍反応・回復を組み合わせて考えます。安全を確認できない場合は、離床段階を進めるより医学的評価を優先します。
① 姿勢変化で血圧が低下する場合
ギャッジアップ、端座位、立位などで血圧が低下する場合は、低下量だけでなく、血圧の絶対値、症状、心拍反応、経過時間を確認します。
評価:姿勢変更前後の血圧・心拍、めまい、冷汗、悪心、顔色、意識、回復を確認します。脱水、出血、薬剤、長期臥床、自律神経障害などの情報も照合します。
介入判断:症状が強い場合は、安全な姿勢へ戻し、必要な対応を行います。医学的に安定し、個別の離床計画がある場合には、姿勢変更の段階、保持時間、介助方法を調整します。
相談:症状を伴う血圧低下が反復する、回復が遅い、原因が不明な場合は、医師・看護職へ報告し、薬剤や体液量を含む医学的評価を相談します。
再評価:同一の姿勢、測定時点、活動条件で血圧・心拍・症状・回復を比較します。
② 起立時に心拍が大きく増加する場合
起立時の心拍増加は循環調節の反応として生じますが、過度の増加や強い症状を伴う場合は、循環血液量、薬剤、貧血、感染、身体機能低下、不整脈などの可能性を確認します。
評価:臥位・立位の心拍数と血圧、心拍リズム、動悸、めまい、息切れ、回復を確認します。
介入判断:強い症状や不安定な反応がある場合は離床負荷を減らし、安全な姿勢で状態を確認します。原因が不明なまま反復起立によって慣らそうとしないことが重要です。
相談:新たな頻脈、不整脈が疑われる反応、動悸や胸部症状を伴う場合は医学的評価を優先します。
再評価:姿勢ごとの心拍・血圧、症状、回復を比較します。
なお、起立時の心拍増加のみで体位性頻脈症候群などを診断することはできません。診断には定められた条件と他の原因の除外が必要です。
③ 血圧が保たれていてもめまいが強い場合
血圧が大きく低下していなくても、めまい、ふらつき、悪心が生じる場合があります。測定時点によって一過性の循環変化を捉えられていない可能性があるほか、前庭障害、薬剤、神経疾患なども考えられます。
評価:症状の発症時点、持続時間、回転感の有無、頭位との関係、心拍・血圧の変化、神経症状を確認します。
介入判断:転倒を防ぎ、症状の程度に応じて離床を中断します。血圧が正常範囲であることだけを理由に立位・歩行を続けません。
相談:新たな神経症状、激しい頭痛、意識変化、持続する強いめまいなどがあれば、緊急性を含めて医学的評価を優先します。
再評価:症状の誘発条件、血圧・心拍、神経・前庭症状を整理します。
④ 離床後に血圧が上昇する場合
姿勢変化に伴い血圧が上昇する場合もあります。血圧上昇の程度、持続性、症状、測定条件を確認します。
評価:臥位と立位の血圧、測定姿勢、安静時間、痛み、不安、活動負荷、服薬状況を確認します。
介入判断:著しい血圧上昇や症状を伴う場合は負荷を進めず、医学的評価を相談します。
相談:高血圧の既往や循環器疾患を踏まえ、反復する姿勢変化時の血圧上昇を共有します。
再評価:測定条件をそろえ、姿勢変更前後の血圧推移を比較します。
起立性高血圧については、国際コンセンサスで起立時の収縮期血圧上昇を用いた定義が提案されています[4]。ただし、その診断基準を離床中止の数値基準としてそのまま用いないでください。
⑤ 軽い活動で頻脈・息切れが出る場合
端座位保持や短距離歩行などの軽い活動で頻脈・息切れが生じる場合は、身体機能低下だけでなく、心不全、呼吸器疾患、貧血、感染などの影響を確認します。
評価:活動前・中・後の心拍、血圧、SpO₂、呼吸数、息切れ、下肢疲労、回復を確認します。
介入判断:医学的に安定している場合は活動量・速度・休息を調整します。一方、安静時から症状がある場合や急に悪化した場合は、運動負荷を増やさず医学的評価を優先します。
相談:胸部症状、急激な息切れ、回復遅延、新たな不整脈などがある場合は、運動を中止して相談します。
再評価:同一活動での心拍・呼吸循環反応、症状、休息、回復を比較します。
⑥ 血圧変化に意識変化・胸痛などを伴う場合
姿勢変化に伴う意識変化、失神、胸痛、急激な呼吸困難などは、離床方法の調整よりも医学的評価を優先すべき所見です。
優先対応:直ちに離床を中止し、転倒・転落を防ぎながら安全な姿勢を確保します。患者の状態に応じて施設の緊急対応手順を実施します。
報告:発症時刻、姿勢、症状、血圧・心拍・呼吸状態、実施した対応とその後の変化を共有します。
再開判断:医学的評価と治療方針を確認し、状態が安定した後に離床の再開条件を検討します。
この場面では、血圧の再測定だけを繰り返して離床を継続することは避けます。
循環反応に応じて離床段階・負荷・休息を調整します
離床負荷の調整では、角度や活動時間を増やすこと自体を目標にしません。患者の状態と生活目標に合わせて、実施可能な姿勢・活動を安全に広げることを目指します。
| 反応 | 対応 |
|---|---|
| 症状がなく循環反応が安定している | 個別計画に沿って次の離床段階を検討する |
| 軽度の症状や変化がある | 安全を確保し、負荷を進めず症状・回復を確認する |
| 症状が持続する、回復が遅い | 離床を中断し、必要に応じて医学的評価を相談する |
| 心拍増加が大きい、動悸がある | リズム・血圧・症状を確認し、原因評価を相談する |
| 意識変化・胸痛・失神などがある | 直ちに中止し、緊急対応手順に従う |
反復する血圧低下では原因の確認を優先します
長期臥床患者では、姿勢変化への耐性が低下している場合があります。しかし、血圧低下をすべて廃用の影響と判断してはいけません。脱水、出血、薬剤、自律神経障害、心疾患などを確認します。
水分・塩分摂取、薬剤調整、弾性ストッキングや腹部圧迫などの対策は、病態によって適応と注意点が異なります。心不全、腎機能障害、高血圧などの併存疾患もあるため、医師の治療方針と多職種で調整します。
血圧低下が反復する患者の非薬物療法や段階的離床については、起立性低血圧のリハビリ対応|弾性包帯・腹帯・離床手順で詳しく解説しています。
離床段階の後退は必ずしも失敗ではありません
立位で症状が出たため端座位や臥位へ戻した場合でも、症状の出現条件と回復が把握できれば、次回の安全な離床計画に役立ちます。
「どこまで離床できたか」だけでなく、「どの姿勢で症状が出たか」「回復にどの程度の時間が必要だったか」を評価します。
症例で考える|離床時の循環動態評価3例
以下は判断の考え方を説明するための架空症例です。数値や経過は実在する患者の情報ではなく、特定の介入効果を保証するものでもありません。
症例A:長期臥床後、端座位で血圧低下とめまいが出現
状態:長期臥床後の患者。臥位では会話可能で循環動態は比較的安定しているが、端座位へ移るとめまいが出現する。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 評価 | 臥位・端座位の血圧、心拍、症状の出現時点、顔色、意識を確認 |
| 対応 | 立位へ進めず、安全な姿勢へ戻して症状と循環反応を確認 |
| 連携 | 反復する症状について、薬剤、体液量、病態を含めた評価を相談 |
| 再評価 | 同一条件で姿勢別の血圧・心拍・症状・回復を比較 |
この症例では、座位を長く保持させることよりも、血圧低下の原因と安全性を確認することを優先します。
症例B:立位で心拍が増加するが、血圧低下は明らかでない
状態:入院後に活動量が低下した患者。立位で心拍数が増加し、動悸を訴える。血圧の明らかな低下は確認されていない。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 評価 | 姿勢別の心拍・血圧、心拍リズム、動悸、息切れ、回復を確認 |
| 対応 | 立位・歩行負荷を進めず、安全な姿勢で状態を確認 |
| 連携 | 薬剤、脱水、貧血、不整脈などの可能性について相談 |
| 再評価 | 同じ姿勢・時間での心拍反応、症状、回復を比較 |
この症例では、頻脈を廃用だけで説明せず、医学的な原因評価と運動負荷調整を組み合わせます。
症例C:離床中に胸痛と冷汗が出現
状態:循環器疾患の既往がある患者。端座位から立位へ移る際に胸痛と冷汗が出現した。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 評価 | 胸痛、意識、呼吸・循環状態、発症時刻を確認 |
| 対応 | 離床を直ちに中止し、安全を確保して緊急対応手順に従う |
| 連携 | 発症時の姿勢・症状・測定値・対応を速やかに報告 |
| 再開判断 | 医学的評価と治療方針を確認した後に離床計画を再検討 |
この症例では、血圧が大きく変化していなくても、胸痛と冷汗という症状から離床を中止します。
再評価は同じ姿勢・測定時点・活動条件で比較します
離床時の循環動態は、姿勢、測定タイミング、食事、服薬、活動量などの影響を受けます。介入前後を比較する場合は、できる範囲で測定条件をそろえます。
| 再評価所見 | 次の判断 |
|---|---|
| 同じ姿勢で症状が軽減した | 血圧・心拍・回復も確認し、次の段階を検討する |
| 血圧低下は同程度だが症状がない | 無症状だけで安全と判断せず、病態と転倒リスクを確認する |
| 座位は可能だが立位で症状が出る | 立位での反応と原因を再評価し、無理に進めない |
| 心拍増加や回復遅延が続く | 負荷と医学的安定性を見直し、必要時は相談する |
| 離床後の活動量が増えた | 循環反応、疲労、ADL遂行も合わせて評価する |
| 症状が急に悪化した | 離床を見送り、医学的評価を優先する |
測定条件は最低限そろえて記録します
経時比較では、姿勢、ギャッジアップ角度、姿勢変更からの経過時間、血圧・心拍、症状、酸素療法、介助条件を記録します。数値のみの記録では、変化の意味を判断しにくくなります。
診療記録例:端座位で循環変化を認めた場合
以下は架空の記録例です。測定値は例示であり、中止基準や安全基準を示すものではありません。
臥位安静後、血圧124/72mmHg、心拍数76回/分。端座位へ移行後、めまいの訴えあり。座位直後の血圧98/64mmHg、心拍数90回/分。立位への移行は見送り、安全を確保して臥位へ戻した。症状の軽減と循環動態の回復を確認。姿勢変更時の血圧低下と症状について看護職へ報告し、次回の離床条件を再検討する。
この例は端座位での血圧変化を示したものであり、標準的な立位測定による起立性低血圧の診断例ではありません。
実際の記録では、確認した測定値と時点、症状、介入、回復、報告先を記載します。確認していない項目を定型文として追加しないでください。
多職種で離床条件・症状・相談基準を共有します
離床時の循環動態は、リハビリ実施時だけでなく、病棟での食事、排泄、車椅子移乗などでも変化します。訓練室での反応を生活場面に反映するため、実施できた姿勢と活動、症状、回復、相談条件を共有します。
| 項目 | 共有する内容 |
|---|---|
| 実施した離床段階 | ギャッジアップ角度、端座位、立位、歩行など |
| 循環反応 | 姿勢別の血圧・心拍、測定時点、変化量 |
| 症状 | めまい、冷汗、動悸、胸痛、息切れ、意識変化 |
| 回復 | 休息・姿勢変更後の症状と循環動態 |
| 介助・環境 | 介助人数、支持方法、転倒予防、ライン管理 |
| 相談・再開条件 | 医師指示、病棟での対応、再評価の必要性 |
申し送りでは「血圧が低いので離床禁止」などの曖昧な表現だけでなく、どの姿勢で何が起こったか、どの対応を行ったかを共有することが重要です。
根拠と適用範囲|診断基準と安全管理基準を区別します
起立性低血圧の定義は国際的なコンセンサスで示されています[1]。一方、実際の離床における安全管理は、病態、活動許可、症状、循環動態、施設の対応体制に基づいて判断します。
| 根拠 | 主な内容 | 適用上の注意 |
|---|---|---|
| 起立性低血圧のコンセンサス[1] | 起立時の血圧低下の定義、症状、測定条件 | 端座位・ギャッジアップでの反応と診断を区別する |
| AHA科学的声明[2] | 高血圧と起立性低血圧の併存、誘因、個別対応 | 薬剤や併存疾患を踏まえて解釈する |
| 早期離床の安全管理に関する報告[3] | 離床実施時の中止基準と安全管理の検討 | 研究対象・施設・患者背景を踏まえて適用する |
| 起立性高血圧のコンセンサス[4] | 起立時の過大な血圧上昇の定義 | 診断基準を運動中止基準として使わない |
本記事の5段階離床フローと6つの所見別介入選択は、これらの資料を踏まえた独自の実務整理です。公式の離床プロトコルや、すべての患者に適用できる治療手順ではありません。
まとめ|離床段階ごとの反応と回復を確認して次の一手を決めます
離床時の循環動態評価では、血圧・心拍の数値だけでなく、症状、姿勢、測定時点、回復を組み合わせて判断します。
臥位からギャッジアップ、端座位、立位、歩行へ進む際は、各段階で安全性を確認し、血圧低下、心拍増加、めまい、血圧上昇、頻脈・息切れ、危険徴候を区別します。
重要なのは、「安全確認→姿勢変更→循環反応の評価→継続・調整・中止の判断→再評価」を繰り返すことです。離床の進行そのものではなく、患者が必要な活動を安全に行えることを目標にします。
次の一手
循環動態評価の全体像を確認したら、次は目的に合わせて以下の記事を活用してください。
- 起立試験の測定条件や判定を確認する:起立性低血圧の評価方法|起立試験とリハ中の対応
- 血圧低下が反復する患者への介入を検討する:起立性低血圧のリハビリ対応|弾性包帯・腹帯・離床手順
参考文献・一次情報
- The Consensus Committee of the American Autonomic Society and the American Academy of Neurology. Consensus statement on the definition of orthostatic hypotension, pure autonomic failure, and multiple system atrophy. Neurology. 1996;46(5):1470. 原著.
- Juraschek SP, Cortez MM, Flack JM, et al. Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension. 2024;81:e16-e30. 原著.
- The Safety and Effect of Early Mobilization in the Intensive Care Unit According to Cancellation Criteria. Progress in Rehabilitation Medicine. 2020. J-STAGE掲載論文.
- Jordan J, et al. Consensus statement on the definition of orthostatic hypertension endorsed by the American Autonomic Society and the Japanese Society of Hypertension. Clinical Autonomic Research. 全文.
情報確認日:2026年10月15日。本記事は医療従事者向けの臨床判断支援を目的としています。実際の離床では、患者の病態、医師指示、施設の安全管理基準を優先してください。本文の判断表・症例は公式の診断・治療プロトコルではありません。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションなどを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

