踵部褥瘡の除圧方法|PTが見る評価・ポジショニング

臨床手技・プロトコル
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踵部褥瘡の除圧は「完全免荷・下腿支持・再評価」で考える

踵部褥瘡の予防では、踵を少し浮かせるだけでなく、踵骨が寝具から完全に離れていること、下腿へ圧が広く分散されていること、膝窩やアキレス腱周囲に新たな圧が生じていないことを確認します。対象は、長期臥床、浮腫、感覚低下、下肢拘縮などを伴う患者を担当するPTです。本記事では、評価からクッション調整、再評価、多職種共有までを臨床で確認しやすい順に整理します。

ここで扱うのは、踵部の予防的な除圧とポジショニングです。褥瘡の病期分類、局所処置、ドレッシング材の選択については、医師・看護師・皮膚排泄ケア認定看護師などと連携して判断します。

褥瘡予防全体の評価から確認したい方へ

皮膚観察、リスクの切り分け、除圧、記録、再評価の全体像は、褥瘡予防の総論記事で整理しています。

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踵部褥瘡が起きやすい理由

踵部は骨突出が強く接触面積が小さいため、仰臥位が続くと踵骨周囲へ圧が集中しやすい部位です。自力で下肢を動かせない患者では、圧迫にずれ、浮腫、感覚低下、循環不良などが重なり、組織損傷の危険が高まります。

療養病棟では、拘縮によって一般的なクッション配置が合わない患者や、介助後にクッションがずれて再接触している患者も少なくありません。そのため、クッションを置いた事実ではなく、実際の接触状態と皮膚反応で判断します。

表1.踵部褥瘡が起きやすい主な要因
要因 起こりやすい問題 PTが確認する視点
骨突出 狭い範囲へ局所圧が集中する 踵骨周囲の接触位置と圧の偏りを確認する
長期臥床・体動低下 同じ接触状態が長時間続く 自力除圧の可否と介助による除圧機会を確認する
下肢外旋 踵外側へ接触が偏る 股関節、膝関節、足部の向きを一続きで確認する
関節拘縮 一般的なクッション位置が合わず、接触部位が固定される 股関節・膝関節・足関節の可動域と安楽肢位を確認する
浮腫 皮膚や軟部組織が損傷しやすくなる 腫脹、圧痕、左右差、皮膚の緊張を確認する
感覚低下 痛みや違和感を訴えにくい 本人の訴えだけに頼らず、接触と皮膚を観察する
ずれ・摩擦 ベッドアップや移乗時に剪断力が加わる 前滑り、下肢の引きずり、寝具との摩擦を確認する

PTが見るべき踵部の評価ポイント

PTが確認するのは、踵部の皮膚だけでなく、完全免荷の可否、下腿の支持範囲、足部アライメント、自力除圧能力、使用用具の適合性です。除圧前の状態を整理してからクッションを調整すると、介入後の変化を比較しやすくなります。

表2.踵部褥瘡予防でPTが確認すべき評価ポイント
評価項目 確認内容 介入へつなげる視点
皮膚所見 発赤、変色、熱感、冷感、硬さ、腫脹、水疱、疼痛の有無 異常があれば荷重を避け、看護師・医師へ共有する
踵骨の接触 踵骨が寝具から完全に離れているか 見た目だけでなく、手を差し入れて接触を確認する
下腿支持 狭い範囲ではなく下腿へ広く圧が分散されているか クッションの長さ、厚さ、沈み込みを調整する
新たな圧迫部位 アキレス腱周囲、下腿遠位部、腓骨頭、膝窩に強い当たりがないか 踵を浮かせた代わりに別部位へ圧を移していないか確認する
足部アライメント 外旋、内反、足関節底屈、足趾の寝具接触がないか 除圧と足関節位置の両方を調整する
循環・感覚 皮膚色、温度、感覚低下、既往歴、左右差 循環障害が疑われる場合は自己判断で完結せず共有する
浮腫 圧痕、腫脹、日内変動、用具の食い込みがないか 装着後の締め付けや皮膚への当たりを再評価する
体動・離床能力 自力で下肢を動かせるか、寝返りや離床が可能か 活動性に適した除圧方法と確認頻度を検討する

踵部除圧を見直す5分評価フロー

踵部除圧は、「皮膚を見る→接触を確かめる→支持を調整する→周囲を確認する→再確認する」の順に進めると見落としを減らせます。

踵部除圧の5分確認フローを示した図版
踵部除圧は、皮膚確認、踵部接触、下腿支持、周囲の圧迫、時間経過後の再評価までを一連の流れで確認します。
  1. 皮膚を確認する:発赤、変色、熱感、冷感、硬さ、腫脹、水疱、疼痛を確認します。
  2. 現在の接触を確認する:踵の中央だけでなく、内側・外側・後面の接触を確認します。
  3. 下腿支持を調整する:踵直下を避け、下腿へ広く圧を分散させます。
  4. 周囲の圧迫を確認する:膝窩、アキレス腱周囲、腓骨頭、下腿遠位部に強い当たりがないか確認します。
  5. 30〜60秒後に再確認する:踵の再接触、クッションの沈み込み、新たな圧迫、足部のずれを確認します。

除圧直後だけでなく、ベッドアップ後、体位変換後、移乗後、オムツ交換後、リハビリ終了後にも状態が変わります。誰が介助しても再現できるよう、クッションの位置だけでなく確認方法まで共有します。

踵部除圧の基本は完全免荷と広い下腿支持

踵部除圧の目的は、踵骨を寝具から完全に離しながら、下腿へ圧を広く分散することです。踵がわずかに接触している状態や、クッションへ沈み込んで時間経過とともに再接触する状態は、十分な除圧とはいえません。

枕やクッションを使う場合は、踵直下ではなく下腿を支えます。専用の踵部除圧用具を使う場合も、患者の体動や離床状況、足関節の位置、装着部の圧迫、用具のずれを確認します。

踵部褥瘡を予防する下腿支持と踵部除圧の正しい方法およびよくある失敗
踵部除圧では、踵骨を寝具から離し、下腿へ圧を分散させながら、膝窩圧迫や下肢外旋を避けます。

下腿を広い範囲で支持する

クッションの端が下腿遠位部へ強く当たると、踵を浮かせても別の場所に圧が集中します。下腿近位から遠位まで支持範囲を確保し、クッションの縁、しわ、硬さ、沈み込みを確認します。

踵骨の完全免荷を手で確認する

足部を横から見ただけでは、踵がわずかに接触していることがあります。踵と寝具の間へ手を差し入れ、踵骨部が接触していないことを確認します。ただし、確認時に下肢を急に持ち上げたり、皮膚をこすったりしないよう注意します。

膝窩へ局所圧を集中させない

クッションを膝裏へ寄せすぎると、膝窩部へ局所的な当たりが生じます。膝窩を支点にするのではなく、下腿へ広く荷重を分散できているかを確認します。

外旋・内反・尖足を同時に確認する

下肢外旋や足関節底屈が強いと、踵外側、外果、足趾などへ接触が移ることがあります。踵だけに注目せず、股関節から足趾までの向きと接触部位を確認します。

クッションと踵部除圧用具の使い分け

除圧方法は、患者の活動性、下肢の動き、拘縮、浮腫、皮膚状態、離床予定に合わせて選びます。特定の用具を全患者へ一律に使用するのではなく、装着後に目的を達成できているかを確認することが重要です。

表3.踵部除圧方法を選ぶ際の判断軸
方法 適しやすい場面 確認すべき問題
枕・クッション 下肢の動きが少なく、位置を保ちやすい場面 ずれ、沈み込み、踵の再接触、クッション端の圧迫
専用の踵部除圧用具 一定の位置を保ちにくい場合や、継続的な免荷が必要な場面 サイズ、装着位置、締め付け、熱や湿気、足部アライメント
体位変換との併用 同一姿勢が長く続く場合や、他部位にも褥瘡リスクがある場合 体位変換後の踵接触と、仙骨・大転子・外果などへの圧移動
離床との組み合わせ 全身状態が安定し、安全に活動量を確保できる場合 離床時間、座位姿勢、移乗時の摩擦、ベッドへ戻った後の再設定

踵部除圧でよくある失敗

最も多い失敗は、クッションを入れた時点で除圧できたと判断し、その後の再接触を確認しないことです。患者の体動や介助、クッションの沈み込みによって、設置直後と数分後では接触状態が変わります。

表4.踵部除圧でよくある失敗と見直しポイント
よくある失敗 起こりやすい問題 見直しポイント
踵が少し浮けばよいと考える 沈み込みによって踵が再接触する 手を差し入れ、完全免荷を確認する
細い範囲だけで下腿を支える クッション端へ圧が集中する 下腿の広い範囲へ圧を分散する
膝窩を支点にする 膝窩へ局所的な当たりが生じる 膝裏ではなく下腿を広く支持する
下肢外旋を放置する 踵外側や外果へ接触が偏る 股関節から足部までの向きを調整する
足関節底屈を見落とす 踵の再接触や足趾への圧移動が起こる 足関節と足趾の接触も確認する
設置後に再評価しない 体動や介助後のクッションずれを見逃す 30〜60秒後と介助後に再確認する
用具を一律に選ぶ 活動性や拘縮に合わず、ずれや締め付けが生じる 患者の移動能力、活動量、皮膚状態に合わせる

PTが行う踵部褥瘡予防

PTの役割は、クッションを置くことではなく、姿勢・関節可動性・動作能力・使用環境を評価し、再現可能な除圧方法へつなげることです。

ポジショニングを個別化する

下腿支持、完全免荷、足部アライメントを同時に満たす位置を探します。拘縮、疼痛、浮腫、下肢長、クッションの沈み込みによって適切な配置は異なるため、一般的な形へ無理に合わせないことが重要です。

離床と体位変換の機会を調整する

安全に離床できる場合は、活動量を確保することで同一部位への持続的な圧迫を減らせます。ただし、車椅子座位が長時間続けば仙骨部や坐骨部の負担が増えるため、ベッド上の除圧と座位管理を別々に考えないようにします。

関節可動域と下肢位置を整える

股関節外旋、膝関節屈曲、足関節底屈などの拘縮は、踵や外果への接触を固定する要因になります。ROM練習だけでなく、安静時の下肢位置や用具との適合まで確認します。

介入後の皮膚と接触を再評価する

除圧前後で、踵部の接触、皮膚色、温度、疼痛、下腿の当たり、用具のずれを比較します。除圧方法を変更した後は、皮膚反応と患者の不快感を確認し、問題があれば配置や用具を見直します。

すぐに多職種へ共有したい所見

皮膚や循環の異常が疑われる場合は、ポジショニング調整だけで経過をみず、看護師や医師へ共有します。PTは診断や局所治療を単独で決定せず、観察した所見と発生状況を具体的に伝えます。

  • 除圧しても改善しない発赤や変色がある
  • 暗赤色・紫色などの変色、血疱、水疱、硬結を認める
  • 踵部の熱感または著しい冷感がある
  • 急な腫脹、疼痛、左右差がある
  • 皮膚損傷、滲出液、悪臭などを認める
  • 除圧用具による新たな圧痕、擦れ、締め付けがある
  • 循環障害や感染が疑われる変化がある

多職種共有で重要なポイント

多職種共有では、「踵を浮かせる」という指示だけでなく、支持位置、確認方法、再評価のタイミングまで具体化します。介助者によって配置が変わらないよう、誰が見ても再現できる表現を用います。

記録・申し送り例

仰臥位では右踵外側が寝具へ接触。下腿中央から遠位をクッションで広く支持し、踵骨部を完全免荷した。膝窩、アキレス腱周囲、腓骨頭に強い当たりなし。30秒後も踵の再接触なし。体位変換・オムツ交換後にクッション位置と踵接触を再確認する。

記録では、使用した物品名だけでなく、「どこが接触していたか」「どこを支持したか」「調整後に何を確認したか」を残すと、多職種間で介入を継続しやすくなります。

踵部除圧チェックシートをダウンロード

踵部褥瘡予防で確認しやすいように、A4 1枚の「踵部除圧チェックシート」を作成しました。下腿支持、踵部の完全免荷、膝窩圧迫、外旋、クッション位置、多職種共有を一枚で確認できます。

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踵部除圧チェックリスト

踵部除圧では、設置直後だけでなく、時間経過後や介助後にも確認します。次の項目を順番に確認すると、再接触や別部位への圧移動を見つけやすくなります。

表5.踵部除圧チェックリスト
確認項目 チェック内容 共有ポイント
皮膚 発赤、変色、熱感、冷感、硬さ、水疱、疼痛がないか 異常所見と確認時刻を共有する
踵部 踵骨が寝具から完全に離れているか 手を差し入れて確認する方法を共有する
下腿支持 下腿の広い範囲で支えられているか クッションの位置と向きを共有する
新たな圧迫 膝窩、腓骨頭、アキレス腱周囲、下腿遠位に強い当たりがないか 踵以外の確認部位を共有する
足部位置 外旋、内反、足関節底屈、足趾接触が強くないか 下肢全体の向きを共有する
クッション・用具 ずれ、沈み込み、しわ、締め付け、熱や湿気がないか 使用物品と再設定方法を共有する
再評価 30〜60秒後や介助後も踵が再接触していないか 再確認するタイミングを共有する
体位変換・離床 長時間同じ姿勢が続いていないか 体位変換方法と離床状況を共有する

踵部褥瘡の除圧に関するよくある質問

各項目名をタップまたはクリックすると回答が開きます。

踵部除圧は踵を浮かせれば十分ですか?

踵が寝具から完全に離れているだけでなく、下腿へ圧が広く分散され、膝窩、アキレス腱周囲、腓骨頭などに新たな圧が生じていないことまで確認します。設置直後に浮いていても、クッションの沈み込みや体動で再接触するため、時間経過後の再評価も必要です。

踵が完全に浮いているか、どのように確認しますか?

踵骨と寝具の間へ手を差し入れ、接触していないことを確認します。目視だけではわずかな接触を見落とすことがあるため、皮膚をこすらないよう注意しながら実際の隙間を確認します。

枕やクッションはどこへ置けばよいですか?

踵直下ではなく、下腿を広い範囲で支えられる位置へ置きます。クッション端が下腿遠位部や膝窩へ強く当たらず、踵骨が完全に離れる高さへ調整します。

膝窩への圧迫はなぜ確認するのですか?

踵を浮かせることだけを優先すると、クッションが膝裏へ寄り、局所的な当たりや不快感が生じることがあります。膝窩を支点にせず、下腿へ広く圧を分散させます。

専用の踵部除圧用具を使えば再評価は不要ですか?

必要です。専用用具でも、サイズ不適合、ずれ、締め付け、蒸れ、足部アライメントの崩れ、新たな圧痕が生じることがあります。患者の活動性や下肢状態に適合しているかを継続して確認します。

PTはどのような所見を多職種へ共有すべきですか?

皮膚所見、踵部の接触位置、完全免荷の可否、下腿支持方法、新たな圧迫部位、足部アライメント、使用物品、再評価のタイミングを具体的に共有します。変色、水疱、硬結、著しい温度差などがあれば速やかに看護師や医師へ伝えます。

次の一手

踵部褥瘡の除圧では、踵骨の完全免荷、下腿への圧分散、足部アライメント、介助後の再評価を一つの流れとして実施します。クッションを置いたことではなく、皮膚と接触状態が改善していることを介入の結果として確認してください。

まず褥瘡予防全体の判断手順を確認する場合は、褥瘡予防の基本|評価・除圧・再評価の実務フローをご覧ください。

体位変換、ずれ対策、30°側臥位などを含めて見直す場合は、褥瘡予防のポジショニング|ずれ・踵骨免荷の実践へ進んでください。


参考文献

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  7. Rivolo M, Dionisi S, Olivari D, et al. Heel pressure injuries: consensus-based recommendations for assessment and management. Adv Wound Care. 2020;9(6):332-347. doi:10.1089/wound.2019.1042.
  8. Clegg R, Palfreyman S. Elevation devices for the prevention of heel pressure ulcers: a review. Br J Nurs. 2014;23(Sup20):S4-S11. doi:10.12968/bjon.2014.23.Sup20.S4.

著者情報

褥瘡・創傷ケア認定理学療法士のrehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

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