結論・早見表(ポイントだけ先に)
ICU リハで迷わない学び方を確認する(PT キャリアガイド)
Perme ICU Mobility Score( Perme Score )は、ICU 患者の「動けるか」を、意識やライン・機器などのバリアも含めて整理し、合計 0–32 点で共有するスケールです。単に「立てた/歩けた」だけでなく、なぜ動けないのか(バリア)まで点数に落とし込み、離床計画とリスク管理を同じ言葉にできます。
まずは「総点+バリア領域+歩行/耐久性」の 3 つをセットで見て、次セッションで改善させるレバー(鎮静・ライン整理・補助量・休息設計)を決めるのがコツです。親ハブ:基本動作ハブ
| 見るポイント | 結論 | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| スコア範囲 | 合計 0–32 点(高いほど良い) | 重症度というより「今の動ける条件」を数値化します。 |
| 特徴 | 意識+バリア+基本動作+歩行/耐久 | “動けない理由”が見えるので、次介入が決めやすいです。 |
| 推奨タイミング | ICU 退室前後(例:退室前 48 時間) | 転棟後の離床計画・フォロー介入の要否を判断しやすいです。 |
| 迷いやすい所 | 「意識」と「バリア」 | 観察条件(鎮静・せん妄・ライン)を固定して採点します。 |
Perme( Perme ICU Mobility Score )とは?(目的・強み)
Perme Score は、ICU 患者の活動度を 15 項目で評価し、合計 0–32 点としてまとめるアウトカムです。特徴は、基本動作や移乗だけでなく、意識状態と潜在的な移動バリア(ライン・機器など)を明示的に含める点にあります。これにより「動けない=筋力が弱い」ではなく、「動けない=バリアが多い/休息設計が合っていない」など、介入ターゲットを整理できます。
ICU では、同じ “端座位可” でも、鎮静が深い、チューブが多い、酸素化が不安定などで安全域が変わります。Perme Score は、そうしたICU 特有の制約を前提に、チームで同じ言葉を持つためのツールです。
評価の全体像(7 領域)
Perme Score は「合計点」だけでなく、どこで詰まっているかを領域で把握するのが実務的です。特に バリア と 歩行/耐久性は、次セッションの設計(ライン整理・補助量・休息)に直結します。
| 領域 | 主に見たいこと | 臨床のコツ |
|---|---|---|
| 意識( mental status ) | 指示理解・覚醒の安定性 | 採点前に、鎮静・せん妄・睡眠の影響をメモに残します。 |
| 移動バリア( potential mobility barriers ) | ライン・ドレーン・人工呼吸・モニタ等の制約 | 「多いほど点が下がる」領域なので、介入前後で変化が出やすいです。 |
| 機能的筋力( functional strength ) | ベッド上での抗重力・保持の実用度 | MMT より「動作に必要な出力」が出るかを観察します。 |
| ベッド内動作( bed mobility ) | 寝返り・起き上がりの補助量 | 介助量は “手の位置・支持条件” を揃えて記録します。 |
| 移乗( transfers ) | 立ち上がり・ベッド⇄椅子の実用性 | 立位保持時間と、足部支持条件(滑り・装具)も一緒に押さえます。 |
| 歩行( gait ) | 歩行可否・補助具・介助量 | 「歩けたか」だけでなく、どの補助で安全だったかを残します。 |
| 耐久性( endurance ) | 短時間の歩行/活動を維持できるか | SpO2・呼吸困難感・休息で戻るかを “セット” で評価します。 |
付け方(手順):まず「条件固定」→ 次に「最小安全課題」
採点の再現性を上げるコツは、①条件を揃える→②段階的に課題を上げるの順にすることです。ICU では “その日の体調” 以上に “条件(鎮静・ライン・酸素条件)” がスコアを動かします。
- Step 1:鎮静・せん妄・疼痛・循環/呼吸条件を確認し、当日の実施上限(今日は端座位まで、など)を決めます。
- Step 2:ライン・機器・ドレーン等を整理し、必要人員( 2 名介助・看護同席など)を確保します。
- Step 3:意識 → バリア → 機能的筋力を押さえ、ベッド内動作 → 移乗 → 歩行 → 耐久の順で “安全にできた最上位” を採点します。
- Step 4:総点だけでなく、どの領域がボトルネックかを 1 行で要約します(例:バリア優位、耐久が未獲得、など)。
記録の型(テンプレ):総点+「詰まり領域」+次アクション
Perme Score は、数値の共有よりも「次に何を変えるか」をセットで残すと、チームの動きが揃います。おすすめは ①総点、②低い領域、③次回の具体策の 3 点セットです。
| 項目 | 記載例 | ポイント |
|---|---|---|
| 実施日/場面 | ICU 退室前(午前) | 退室前後の比較がしやすくなります。 |
| 総点 | Perme 合計: XX / 32 | 経時変化の “一本化” です。 |
| 詰まり領域 | バリア+耐久が主 | 介入の優先順位が決まります。 |
| できた最上位 | 端座位 10 分、立位介助、歩行は未実施 | 「どこまで・何分・どの介助」で残します。 |
| 次アクション | ライン整理+歩行 2–3 m を “休息込み” でトライ | バリア低減と課題設定を 1 セットにします。 |
現場の詰まりどころ(迷いやすい 4 パターン)
Perme Score は “項目を覚える” ほど、逆に迷うことがあります。迷いを減らすには、評価条件を固定し、判断軸を数個に絞るのが近道です。
| 詰まりどころ | よくある原因 | 現場の解決策 |
|---|---|---|
| 意識の評価がブレる | 鎮静深度・せん妄・睡眠不足が日替わり | 採点前に “覚醒を整える手順” を固定し、条件メモを残します。 |
| バリア領域が曖昧 | ラインの “危険度” と “数” が混ざる | まず「数(制約)」としてカウントし、危険度は別メモ(介助者配置)で補います。 |
| 移乗はできたが歩行に進めない | 呼吸困難感・循環反応・疲労が先に来る | 歩行距離を縮め、休息設計(座位休息→再開)を “評価の一部” にします。 |
| スコアが上がらないのに介入は進んでいる | 同じ到達レベルでも介助量や安全域が改善している | Perme とは別に「介助量の減少」「休息で戻る速度」を 1 行で併記します。 |
中止・中断の考え方(スコアより安全を優先)
Perme Score は “動ける条件” を共有するための指標であり、無理に到達レベルを上げるためのものではありません。評価中は、循環・呼吸・意識の変化と、ライン・機器のリスクを最優先にします。
- バイタルが “悪化方向にトレンド” を示す(回復に時間がかかる)ときは、到達レベルを上げずに終了します。
- ライン/ドレーンの牽引リスクが増える場面では、人員追加か課題変更(端座位での活動など)に切り替えます。
- 評価後は「どこで中断したか」「中断理由」「回復に要した時間」を残すと、次回の安全域が揃います。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Perme と IMS はどう使い分けますか?
IMS は到達レベルがシンプルで、病棟全体で共有しやすいのが強みです。一方、Perme は「意識」「バリア」「耐久」を含むため、動けない理由まで整理して次の介入を決めたい場面に向きます。まず IMS で “今どこまで” を共有し、迷いが出る症例で Perme を併用すると運用がスムーズです。
評価はいつ取るのが現実的ですか?
ICU では日内変動が大きいので、退室前の一定タイミング(例:退室前 48 時間以内の午前帯など)に固定すると比較しやすくなります。鎮静変更や処置直後は条件が揺れるため、可能なら避けます。
バリアが多い症例では、点数が低くても気にしなくていい?
気にしないのではなく、「バリアが主因で低い」と解釈して、改善レバーをバリア側に置くのがポイントです。ライン整理、介助者配置、酸素デバイスの取り回しなどで、安全域を広げると “同じ到達レベルでも” 次に進めます。
耐久性( endurance )はどう評価するとブレにくいですか?
距離や時間だけでなく、症状(呼吸困難感)と休息で戻るかをセットで観察するとブレが減ります。評価条件(酸素条件・歩行補助・休息位置)を固定し、次回も同じ条件で比較します。
参考文献
- Perme C, Nawa RK, Winkelman C, Masud F. Methodist DeBakey Cardiovascular Journal. 2014;10(1):41-49. doi: 10.14797/mdcj-10-1-41 / PubMed: 24932363
- Nawa RK, Lettvin C, Winkelman C, Evora PR, Perme C. Journal of Critical Care. 2014;29(3):475.e1-475.e7. PubMed: 24630690
- Katayama S, Ikeda T, Nakanishi N, et al. Progress in Rehabilitation Medicine. 2025;10:20250037. doi: 10.2490/prm.20250037 / PubMed: 41341922
入手先(日本語版・原本)
Perme Score は配布元の手順に従って入手してください。日本語版の公開状況は、臨床運用の更新で変わることがあります。
- 日本集中治療早期リハビリテーション関連(スケール/ツール):配布ページ
おわりに
ICU の離床評価は、安全域の確認→条件固定→段階的に課題を上げる→スコアと詰まり領域を記録→次回に反映のリズムで回すほど、チームの再現性が上がります。
「評価ができる」だけで終わらせず、次の一手(バリア低減・休息設計・介助量調整)まで落とし込めると、臨床の手応えが変わります。


