リハ栄養とは?まず何をする?
リハ栄養は、栄養状態の最適化と運動療法を同期させて機能回復と QOL を最大化する実践フレームです。迷ったらスクリーニング → 詳細評価 → 必要量の設計 → 訓練と補食の同期 → 再評価の 5 ステップで進めます。先に結論:入口の評価は短時間で可、判断は「次の一手」に直結させることが最重要です。
本ページは総論ハブです。各段の末尾から詳細記事へ進み、現場では配布物・ワークシートを使って即運用に落とし込みます。キャリア設計の流れはこちらの流れも参考にしてください。
関連記事:栄養・嚥下ハブ
初診〜 1 週間の標準フロー
初期対応は「見落とさない幅広さ」と「判断の速さ」を両立させます。まずスクリーニングで危険域を拾い、詳細評価で原因を特定、必要量を概算し、訓練タイミングと補食を同期化します。週次で再評価し、体重・機能・摂取状況の変化でプランを更新します。
標準手順:① スクリーニング → ② 詳細評価 → ③ 必要量の設計(エネルギー・たんぱく) → ④ リハ前後の補食・水分管理 → ⑤ 再評価(体重・機能・創傷)。施設のフローに合わせてログは 1 枚に集約しましょう。
関連記事:運動前チェックと低血糖・低血圧対策
スクリーニングの選び方(使い分け)
病期・場面で選択肢が変わります。入院急性〜回復期での汎用は NRS-2002、外来・地域では NSI が運用しやすいことが多く、高齢者包括では MNA-SF が有効です。嚥下の不安が強いときは併行して EAT-10 を用いて、食形態や補食設計へ直結させます。
「施設で複数が並行運用」は混乱のもと。まず 1 種を標準にし、対象外のケースに限って補助指標を使い分けると混乱が減ります。
- 入院で汎用:NRS-2002 の実務
- 地域・外来:NSI の実務
- 嚥下の併走:EAT-10 からの導線
関連記事:LSNS-6(社会的孤立)も併せて把握
詳細評価のポイント(意思決定に直結)
体組成は握力・ふくらはぎ周囲・体重推移を軸に、浮腫や炎症所見、摂取実績、薬剤を統合して原因を整理します。嚥下は EAT-10、必要時に KT バランスで多面的に評価し、姿勢・食形態・水分の再設計へつなげます。褥瘡の有無は早期に確認します。
判断は「何を増やす/減らす/置き換える」に落とし込み、同じ指標で週次フォロー。数値はログで一枚管理すると回ります。
関連記事:身体計測の実務とコツ
必要量の設計(エネルギー・たんぱく質・水分)
エネルギーは体重 × 25–35 kcal/kg/日を基点に、活動性・創傷・炎症でレンジ調整します。たんぱく質は一般に 1.0–1.2 g/kg/日、サルコペニアや創傷時は 1.2–1.5 g/kg/日を検討。腎機能・嚥下状況に応じて分割投与・形態調整を行います。
水分・電解質は脱水とうっ血の双方に注意。とろみ併用時は総摂取量が落ちやすいため、補食と同時に水分目標も決めておきます。
関連記事:創傷治癒と栄養素の要点
リハと栄養の同期化(P×E を最大化)
筋力・移動能力の改善には、訓練の直前〜直後 30–60 分の補食が効果的です。前は低血糖・低エネルギーの防止、後は合成同化の後押しを狙います。嚥下訓練日や長時間リハ日は小分け摂取と水分管理を徹底します。
補食の形態は嚥下所見と疲労度で調整し、ログに「タイミング・量・形態・反応」を残すと再現性が上がります。
関連記事:トレーニング原理の実装(P×E)
ケース別の最短導線
脳卒中 × 嚥下
嚥下評価 → 食形態 → 補食・水分 → 姿勢・ポジショニングの順で整えます。EAT-10 / KT の結果を意思決定に直結させ、食事時間帯と訓練時間帯を同期化します。
参考:EAT-10 の実務
褥瘡を伴う栄養管理
ステージ・滲出量・感染で必要量と微量栄養素を調整。体位管理・皮膚ケアとセットで実施し、摂取実績と創傷変化を同じ紙で追跡します。
サルコペニア・フレイル
たんぱく質 1.2–1.5 g/kg/日と P×E を日課化。週次で体重・握力・歩行(SPPB など)を再評価し、負荷と摂取量を微調整します。
参考:SPPB(機能再評価)
糖尿病を併存
運動前チェックと低血糖対策を整えてから実施。補食タイミングと薬剤は多職種で共有し、ログで可視化します。
関連記事:栄養・嚥下ハブに戻る
多職種連携と運用(NST × リハ)
評価 → 設計 → 介入 → 再評価の各段階で、栄養・嚥下・リハ・看護が同じ指標を見て同じログに記録すると、短時間カンファでも意思決定が速くなります。週 1 の小さな PDCA を習慣化しましょう。
ログは「目標・必要量・実績・次の一手」を 1 枚に集約。チェックリストとテンプレを共通化すると属人差が減ります。
関連記事:栄養・嚥下ハブ
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
たんぱく質は結局どれくらい?
一般に 1.0–1.2 g/kg/日、サルコペニアや創傷・高負荷時は 1.2–1.5 g/kg/日を検討。腎機能・嚥下状況に合わせて分割投与や形態調整を行います。
回復期はエネルギー何 kcal/kg/日?
25–35 kcal/kg/日を基点に活動性・創傷・炎症でレンジ調整。摂取実績と体重推移で毎週見直します。
リハの前と後、どちらで補食すべき?
前は低血糖・低エネルギー防止、後は合成同化の後押し。直前〜直後 30–60 分のウィンドウで少量ずつ。
嚥下が不安で摂れない場合のコツは?
食形態・増粘・姿勢・分割補食の 4 点を見直し、EAT-10 の結果から介入へ直結させます。
NRS-2002 と NSI、どちらを使えばいい?
入院急性〜回復期は NRS-2002、地域・外来は NSI が運用しやすい場面が多いです。施設で 1 種に統一すると混乱が減ります。
参考文献
- Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2019;38(1):1–9. https://doi.org/10.1016/j.clnu.2018.08.002
- Kondrup J, et al. Nutritional Risk Screening (NRS 2002). Clin Nutr. 2003;22(3):321–336. https://doi.org/10.1016/S0261-5614(02)00262-5
- Rubenstein LZ, et al. MNA-SF. J Nutr Health Aging. 2001;5(2):108–113. https://doi.org/10.1007/s12603-001-0024-5
- Bauer J, et al. PROT-AGE recommendations for older adults. J Am Med Dir Assoc. 2013;14(8):542–559. https://doi.org/10.1016/j.jamda.2013.05.021
- Belafsky PC, et al. EAT-10. Int J Otolaryngol Head Neck Surg. 2008;72(5):748–752. https://doi.org/10.1016/j.ijporl.2008.02.026