結論|腎機能は「 eGFR の数値だけ」で決めず、循環動態と症状を合わせて運動負荷を調整すると安全に進められます
BUN・Cr・ eGFR は、新人が「どこで止めるか」を迷いやすい検査項目です。PT・OT・ST の実務では、腎機能の値そのものより、血圧・脈拍・呼吸状態・浮腫・尿量などの臨床所見を合わせて、当日の介入可否を判断することが重要です。
まずは「症状確認 → バイタル再測定 → BUN/Cr/ eGFR のトレンド確認 → 通常/軽負荷/延期の判断 → 記録と相談」の 5 手順を固定してください。判断が揃うと、報告が短くなり、安全側の切り替えも速くなります。
新人向け 5 分フロー|腎機能低下時の運動負荷調整
腎機能関連で最初に見るべきは、検査値より全身状態です。起立時の血圧変動、息切れ、浮腫、だるさ、尿量変化を確認したうえで、BUN・Cr・ eGFR の推移を見ます。単発値だけで中止/継続を決めると判断がぶれやすくなるため、経時変化と症状の一致を重視してください。
以下の手順を毎回固定し、迷う症例は軽負荷または延期で相談する方針を徹底します。
- 症状を確認する(倦怠感、息切れ、めまい、食欲低下、浮腫、尿量変化)
- バイタルを再測定する(血圧、心拍数、SpO2、呼吸数)
- BUN/Cr/ eGFR の推移を確認する(前回比・急変の有無)
- 当日介入を「通常 / 軽負荷 / 延期」で判断する
- 所見・判断・相談対応を記録して申し送る
BUN・Cr・ eGFR の実務早見表|PT がまず確認する点
新人教育では、腎機能の病態を深掘りしすぎる前に「何を見て何を返すか」をそろえると、介入判断が安定します。施設基準・主治医の運動制限指示がある場合は、その運用を優先してください。
ここでは、検査値の意味づけを最小限にしつつ、運動負荷へどう反映するかを 1 枚で整理します。
| 項目 | 主に示す情報 | 実務でまず確認する点 | 当日介入への反映 |
|---|---|---|---|
| BUN | 代謝・脱水などの影響を受ける | 脱水徴候、食事/全身状態との整合 | 脱水疑いは軽負荷+補液/指示確認 |
| Cr | 腎機能の変化を反映 | 急上昇の有無、前回値との差 | 急変時は延期を含め安全側判断 |
| eGFR | 腎機能の推定指標 | 長期トレンド、急性増悪の兆候 | 低下+症状ありで負荷調整/相談 |
当日判断テンプレ|通常・軽負荷・延期の 3 区分
腎機能の場面で再現性を高めるには、判断区分を固定して記録を標準化することが有効です。「 eGFR が低いから中止」ではなく、症状・循環動態・検査トレンドを合わせて判断してください。判断に迷う場合は安全側で相談する運用が基本です。
| 区分 | 判断の目安 | 実施の要点 | 記録例(要約) |
|---|---|---|---|
| 通常 | 症状なし、循環安定、急変トレンドなし | 通常プログラム実施、定時観察 | 全身状態安定のため通常実施 |
| 軽負荷 | 倦怠感・浮腫など注意所見あり、軽度不安定 | 強度/時間を下げ、途中再評価を増やす | 腎機能変動のため軽負荷で実施 |
| 延期 | 循環不安定、症状増悪、急性悪化疑い | 介入見合わせ、安静確保、速やかに相談 | 安全性優先で本日延期し報告 |
中止・相談トリガー|見落としを減らす基準
実務で事故を防ぐ鍵は、どこで止めるかを先に決めることです。中止・相談トリガーをチームで共有すると、新人の判断が安定し、申し送りの質も上がります。以下を部署内の共通ルールとして整備してください。
| トリガー | 観察ポイント(例) | 次アクション |
|---|---|---|
| 循環が不安定 | 収縮期血圧の著しい低下、頻脈の持続、起立での悪化 | 中止 → 安静 → 速やかに相談 |
| 呼吸状態が悪化 | 呼吸苦の増悪、SpO2 の低下、会話困難 | 中止 → 呼吸介助/姿勢調整 → 相談 |
| 体液所見が急変 | 浮腫の急増、尿量変化、体重増加の訴え | 延期を含め安全側 → 相談 |
| 腎機能の急性悪化疑い | Cr の急上昇、前回比での急変トレンド | 延期 → 指示確認 → 相談 |
| 判断に迷う | 所見が揃わない/説明できない | 軽負荷または延期 → 相談を優先 |
現場の詰まりどころ|迷いを「アンカー 2 本+相談の型」で潰す
腎機能の場面は、数値の暗記より「確認順」と「止めどころ」が曖昧だと詰まります。迷ったときに戻る場所を固定すると、判断と申し送りが安定します。
- よくある失敗( eGFR だけで判断)へ戻る
- 回避手順( 5 分フロー)へ戻る
- 相談内容を短文化するなら:離床中止時の SBAR 記録テンプレ
よくある失敗| eGFR だけで運動負荷を決める
新人が陥りやすい失敗は、 eGFR の値のみで「実施可否」を機械的に決めることです。腎機能は慢性変化と急性変化で意味が異なるため、症状・循環・検査推移を統合して判断する必要があります。以下の NG を避けると、現場での再現性が高まります。
| NG パターン | 起きる理由 | 改善策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| eGFR のみで判断 | 全身所見の確認不足 | 症状 → バイタル → 検査値の順で確認 | 症状と循環所見を明記 |
| 単発値で評価 | トレンド評価不足 | 前回値との比較を必須化 | 前回比を記載 |
| 相談が遅れる | トリガー不統一 | 中止・相談条件を明文化 | 相談時刻・内容を記録 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. eGFR が低い患者は必ず運動制限が必要ですか?
A. 必ずしも一律の制限にはなりません。症状、循環動態、急性増悪の有無、主治医指示を合わせて判断し、必要に応じて軽負荷へ調整します。
Q2. Cr が前回より上がっていたら中止すべきですか?
A. 単独で即中止ではなく、症状・バイタル・全身状態を確認して判断します。急性悪化が疑われる場合や不安定所見があれば延期し、速やかに相談してください。
Q3. 腎機能低下時に軽負荷で行うポイントは何ですか?
A. 時間と強度を下げ、途中の血圧・脈拍・自覚症状確認を増やすことです。変化があれば即時に中止・相談へ切り替えます。
Q4. 記録は何を残すと申し送りしやすいですか?
A. 「症状・バイタル・BUN/Cr/ eGFR の推移・当日判断・相談対応」を 1 セットで残すと、次担当の判断負担を減らせます。
次の一手|今日からの実装
まずは 1 週間、腎機能低下がある症例で「 5 分フロー」と「 3 区分判断」を固定して運用してください。確認順を統一するだけで、新人の報告品質と安全性は大きく改善します。
続けて読む:生化学検査値ガイド(総論) / 電解質異常の介入判断
参考文献
- KDIGO CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117-S314. doi: 10.1016/j.kint.2023.10.018
- Yamagata K, Hoshino J, Sugiyama H, et al. Clinical practice guideline for renal rehabilitation: systematic reviews and recommendations of exercise therapies in patients with kidney diseases. Ren Replace Ther. 2019;5:28. doi: 10.1186/s41100-019-0209-8
- Battaglia Y, Baciga F, Bulighin F, et al. Physical activity and exercise in chronic kidney disease: consensus statements from the Physical Exercise Working Group of the Italian Society of Nephrology. J Nephrol. 2024;37(7):1735-1765. doi: 10.1007/s40620-024-02049-9
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


