離床中止時の SBAR 記録テンプレ|PT・OT・STで報告をそろえる実務フォーマット
離床を中止した場面で記録・報告がばらつくと、次の担当者が「どこまで安全か」を読み取れず、再開判断が遅れます。特に急性期では、同じ症状でも報告フォーマットの差が連携ロスの原因になりやすいです。
本記事は、離床中止時にそのまま使える SBAR 記録テンプレを、記入例と NG 例つきで整理します。まず全体の中止基準を確認したい方は、離床の中止基準と再開基準を先に読むと実装しやすくなります。
結論|「症状」と「変化量」を 1 行で残すと報告が通る
離床中止時の SBAR は、長文よりも症状・時刻・体位変化でのバイタル変化量を短く示すほうが実務で機能します。S(状況)で中止理由、B(背景)で当日の実施文脈、A(評価)で所見の意味づけ、R(提案)で次アクションを固定すると、誰が見ても同じ判断に寄せやすくなります。
ポイントは「何が起きたか」だけでなく、「次をどうするか」まで書くことです。再開条件まで 1 セットで記録すると、活動量を落としすぎず安全性を担保できます。
SBAR コアテンプレ(コピペ用)
以下は病棟でそのまま使える最小構成です。院内ルールに合わせて語尾や項目名を微調整してください。
| 項目 | テンプレ文(そのまま使用可) | 記録のコツ |
|---|---|---|
| S(状況) | 「離床開始 ◯ 分で 症状 が出現し中止しました。」 | 時刻と中止トリガーを先頭に置く |
| B(背景) | 「本日は 安静→座位→立位 の順で実施。中止前は ◯◯ まで可能でした。」 | 当日の到達段階を書く |
| A(評価) | 「立位で BP/HR/SpO2 が変化し、症状と一致 しました。」 | 単点でなく変化量を示す |
| R(提案) | 「本日は 1 段階低い負荷 に戻し、◯ 時に再評価 を提案します。」 | 再開条件・再評価時刻を入れる |
症状別 記入例(3 パターン)
よくある中止理由ごとに、短く通る記載例を示します。まずはこの型をベースに統一してください。
| 場面 | 記入例(要約) | 次アクション |
|---|---|---|
| 起立時のめまい・冷汗 | S:立位 2 分でめまい・冷汗が出現し中止。B:午前は端座位まで可能。A:立位で BP 低下、臥位で改善。R:本日は座位負荷へ戻し午後再評価。 | 体位変化時 BP を再測定し再開可否判断 |
| 呼吸苦・SpO2 低下 | S:歩行練習中に呼吸苦増悪し中止。B:酸素投与下で離床開始。A:負荷増加で SpO2 低下、会話困難。R:休息後に低負荷で再試行、必要時は主治医へ相談。 | SpO2 回復時間と Borg を併記 |
| 胸部不快感・動悸 | S:立位練習中に胸部不快感を訴え中止。B:本日初回離床。A:HR 上昇と不快感が一致。R:本日はベッド上〜座位で終了し、医師へ報告して再開基準を確認。 | 症状の持続時間と再発有無を追記 |
SOAP とのつなぎ方(差し戻し回避)
SBAR は「報告」、SOAP は「記録」です。両者を分けすぎると情報が途切れるため、A(評価)と P(計画)に SBAR の A/R を反映させる運用が有効です。記録全体の型は、評価スケール運用のQ&Aも参考になります。
| SBAR | SOAP 反映先 | 書く内容 |
|---|---|---|
| S(状況) | S / O | 患者訴え、発生時刻、中止に至る経過 |
| B(背景) | O | 当日負荷、到達段階、介助量 |
| A(評価) | A | 症状とバイタル変化の解釈、誘因仮説 |
| R(提案) | P | 再開条件、次回負荷、再評価時刻、共有先 |
よくあるミス(OK/NG 早見)
| NG | 問題点 | OK |
|---|---|---|
| 「気分不良あり」で終了 | 症状の重みと再現性が読めない | 症状 + 時刻 + 体位 + 変化量を併記 |
| R(提案)がない | 次担当者が再開判断できない | 「いつ・どの負荷で・誰と」まで書く |
| バイタル単点のみ | 中止理由の妥当性が弱い | 安静→座位→立位の推移で記録 |
| 職種ごとに文体が違う | カンファで解釈が割れる | 病棟共通テンプレを 1 枚化 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. SBAR は毎回すべて書く必要がありますか?
A. はい。短くて構いませんが、S/B/A/R の 4 要素を欠かさないほうが再開判断が速くなります。
Q2. R(提案)は誰が決めますか?
A. リハ職が提案し、主治医・看護師と合意して確定する運用が実務的です。提案内容は負荷量と再評価時刻を明記してください。
Q3. 中止後に同日再開してもいいですか?
A. 症状消失とバイタル安定が確認できれば、1 段階低負荷で再試行できる場合があります。院内基準と主治医指示を優先してください。
次の一手
まずは病棟でこの SBAR テンプレを 1 週間だけ試験運用し、報告時間と再開判断時間が短縮するかを確認してください。運用の土台として、親記事の中止・再開基準も合わせて整えると効果が出やすくなります。
環境要因(教育体制・記録文化・人員配置)を点検する場合は、無料チェックシートで現状を可視化しておくと、運用定着が進みやすくなります。
参考情報
- SCCM. ICU Liberation (A-F Bundle): Early mobility concepts.
- SCCM. PADIS Clinical Practice Guidelines.
- AHA/ASA. 2026 Guideline for Early Management of Acute Ischemic Stroke.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験があります。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


