胸骨角とは|第2肋骨を探す基準点
胸骨角は、胸骨柄と胸骨体の境目にある前胸部中央の段差です。胸骨角の左右には第2肋軟骨が接するため、第2肋骨や第2肋間を探す基準点として使われます。新人PT・OT・STが触診するときは、首元から直接第2肋骨を探すのではなく、胸骨上切痕から胸骨中央を下方へたどると位置をそろえやすくなります。この記事では、胸骨角の位置、4ステップの触診方法、第2肋骨との関係、触れにくい場合の修正方法、呼吸評価や聴診位置での使い方を整理します。
骨性ランドマークを全体から確認したい方へ
胸骨角は、第2肋骨を探すときの起点となる前胸部ランドマークです。ほかの部位との位置関係は、ランドマーク一覧から確認できます。
この記事でわかること
- 胸骨角の位置と触れ方
- 胸骨角から第2肋骨を見つける方法
- 第2肋骨と第2肋間の区別
- 胸骨上切痕・剣状突起との違い
- 触れにくい場合の修正方法
- 呼吸評価・聴診位置での使い方
- カルテ記録例
胸骨角の位置と解剖
胸骨角は、胸骨柄と胸骨体が接する胸骨柄体結合部にあります。
前胸部中央を上から下へ触れると、胸骨上切痕の下方に、わずかな隆起または段差として確認できます。
| 順序 | ランドマーク | 位置・特徴 |
|---|---|---|
| 1 | 胸骨上切痕 | 胸骨柄上縁にある首の付け根のくぼみ |
| 2 | 胸骨柄 | 胸骨上部を構成する部分 |
| 3 | 胸骨角 | 胸骨柄と胸骨体の境目にある段差 |
| 4 | 胸骨体 | 胸骨角から下方へ続く胸骨の長い部分 |
| 5 | 剣状突起 | 胸骨体の下端に続く小さな突起 |
胸骨角の左右には、第2肋骨の前方部分である第2肋軟骨が接します。
そのため、胸骨角は第2肋骨を確認し、そこから第2肋間、第3肋間へと数えるための起点になります。
位置関係の覚え方
胸骨上切痕は「上のくぼみ」、胸骨角は「中央の段差」、剣状突起は「下端の突起」と整理すると見分けやすくなります。
胸骨角の触診方法
胸骨角は、胸骨上切痕から胸骨中央を下方へたどる4ステップで確認します。

STEP1:胸骨上切痕を確認する
左右の鎖骨内側端の間にある、首の付け根中央の浅いくぼみを確認します。
このくぼみが胸骨上切痕です。胸骨角を探すときの開始点になります。
STEP2:胸骨柄を下方へたどる
胸骨上切痕から、胸骨中央を指腹でゆっくり下方へなぞります。
一点を強く押すのではなく、胸骨表面の形を線として追うことがポイントです。
STEP3:胸骨の段差を確認する
胸骨柄から胸骨体へ移る位置で、わずかな隆起または段差に触れます。
この部分が胸骨角です。体格や姿勢によっては、明瞭な出っ張りではなく、浅い角度の変化として感じる場合もあります。
STEP4:左右の第2肋骨へ移動する
胸骨角から指を左右へ少し移動し、第2肋軟骨を確認します。
第2肋軟骨から外側へたどった骨性部分が第2肋骨で、そのすぐ下にあるスペースが第2肋間です。
触診の基本ルート
- 胸骨上切痕を確認する
- 胸骨中央を下方へたどる
- 胸骨柄と胸骨体の段差を確認する
- 胸骨角から左右の第2肋軟骨へ移動する
胸骨角から第2肋骨を見つける方法
第2肋骨は、胸骨角の左右に接する第2肋軟骨を起点に確認します。

- 胸骨上切痕を確認する
- 胸骨中央を下方へたどって胸骨角を触れる
- 胸骨角から左右へ指を移動する
- 第2肋軟骨から外側へ第2肋骨をたどる
- 第2肋骨のすぐ下を第2肋間として確認する
第2肋骨と第2肋間は同じ位置ではありません。第2肋骨は骨性部分で、第2肋間は第2肋骨と第3肋骨の間にあるスペースです。
| 確認部位 | 触診の目安 | 次に確認する部位 |
|---|---|---|
| 胸骨上切痕 | 左右の鎖骨内側端の間にあるくぼみ | 胸骨柄を下方へたどる |
| 胸骨角 | 胸骨柄と胸骨体の境目にある段差 | 左右の第2肋軟骨へ移動する |
| 第2肋骨 | 第2肋軟骨から外側へ続く骨性部分 | 骨の下縁を確認する |
| 第2肋間 | 第2肋骨のすぐ下にあるスペース | 必要な肋間まで下方へ数える |
聴診や胸郭評価で肋間位置をそろえたい場合は、目測で決めず、胸骨角から肋骨を順に数えると位置のずれを減らしやすくなります。
胸骨角が触れにくい場合の修正方法
胸骨角が触れにくい場合は、強く押すのではなく、開始位置・指の方向・患者の姿勢を修正します。
| 詰まりどころ | 起きていること | 修正方法 |
|---|---|---|
| 段差が分からない | 一点だけを押している | 胸骨上切痕から胸骨中央を線として下方へたどる |
| 開始位置が曖昧 | 胸骨体の途中から探している | 左右の鎖骨内側端の間にある胸骨上切痕から開始する |
| 軟部組織に指が沈む | 指先で垂直に押し込んでいる | 指腹を寝かせ、表面をなぞるように触れる |
| 第2肋骨へ移れない | 胸骨角を確認した位置から離れている | 胸骨角に一方の指を残し、もう一方の指を左右へ移動する |
| 肋骨の番号がずれる | 肋間から数え始めている | 第2肋骨を確認してから、その下を第2肋間として数える |
| 左右で位置が違って見える | 胸郭回旋や円背の影響がある | 患者の体幹を整え、正面と側方から胸郭の向きを確認する |
臨床では、段差を一度で決め打ちせず、胸骨上切痕から再びたどって同じ位置に到達するかを確認すると、触診の再現性を高めやすくなります。
胸骨上切痕・剣状突起との違い
胸骨角と周囲のランドマークは、胸骨上の高さと形で見分けます。
| ランドマーク | 位置 | 触れ方 | 主な使い方 |
|---|---|---|---|
| 胸骨上切痕 | 胸骨柄の上縁中央 | 左右の鎖骨内側端の間のくぼみ | 前胸部触診の開始点、気管位置の確認 |
| 胸骨角 | 胸骨柄と胸骨体の境目 | 胸骨中央にあるわずかな段差 | 第2肋骨・第2肋間を探す基準 |
| 剣状突起 | 胸骨体の下端 | 胸骨下部にある小さな突起 | 胸骨下端や肋骨弓周囲の位置確認 |
胸骨上切痕の詳しい位置と触れ方は、胸骨上切痕の触診ポイントで確認できます。
胸骨角を臨床で使う場面
胸骨角は、胸郭評価や聴診で確認位置をそろえるための基準点として使います。
呼吸評価で使う
呼吸評価では、胸骨角を基準に上部胸郭の高さをそろえ、吸気時の胸郭拡張や左右差を観察します。
胸骨角そのものの動きだけで判断するのではなく、鎖骨周囲、上位肋骨、胸骨の向き、呼吸補助筋の活動をあわせて確認します。
聴診位置の確認で使う
胸骨角から第2肋骨を確認すると、第2肋間を起点として必要な聴診位置まで肋間を数えられます。
聴診器を当てる前に左右で同じ肋間を確認すると、経時的な比較や左右差の評価を行いやすくなります。
胸郭アライメントの確認で使う
円背や胸郭回旋がある場合は、胸骨角を前胸部中央の目安として、胸骨の向きや左右の肋骨位置を観察します。
ただし、胸骨角周囲の見かけ上の左右差だけで異常を決めず、体幹回旋、肩甲帯位置、座位・臥位姿勢の影響を確認します。
胸骨角を用いたカルテ記録例
記録では、胸骨角を確認した事実だけでなく、何の基準として使ったかを記載します。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| ランドマーク確認 | 胸骨上切痕から胸骨中央を下方へたどり、胸骨角および両側第2肋骨位置を確認した。 |
| 呼吸評価 | 胸骨角を基準に上部胸郭の左右差を観察。吸気時に右上部胸郭の拡張低下を認めた。 |
| 聴診位置 | 胸骨角より第2肋骨を同定し、第2肋間から下方へ肋間を確認して前胸部の聴診位置を設定した。 |
| 姿勢評価 | 座位で胸椎後弯および胸郭右回旋を認め、胸骨角を基準とした左右肋骨位置に差を認めた。 |
左右差を記載するときは、「胸郭拡張が低下」だけで終わらせず、観察した高さ、呼吸相、左右のどちらで低下したかを記録すると伝わりやすくなります。
新人が間違えやすいポイント
胸骨角の触診では、開始位置と肋骨・肋間の区別を誤りやすいため、順序を固定することが重要です。
- 胸骨上切痕を胸骨角と間違える
- 胸骨体の途中から段差を探し始める
- 胸骨中央を指先で強く押し込む
- 第1肋骨を直接探そうとする
- 胸骨角から左右へ移動せず、胸骨上だけで第2肋骨を判断する
- 第2肋骨と第2肋間を同じ位置として扱う
- 肋間から数え始めて番号がずれる
- 胸郭回旋や円背による見かけ上の左右差を考慮しない
基本は「胸骨上切痕→胸骨角→第2肋骨→第2肋間」の順です。この順序を毎回そろえると、触診位置の再現性を高めやすくなります。
胸骨角を触診するときの注意点
胸骨角は、指腹で表面の段差を確認できるため、強く押し込む必要はありません。
- 指先ではなく指腹で軽く触れる
- 患者に触れる位置と目的を説明してから行う
- 疼痛がある場合は圧を弱めるか触診を中止する
- 胸骨・肋骨の外傷歴や術後歴を確認する
- 呼吸苦がある場合は長時間の触診を避ける
- 高齢者では骨脆弱性や皮膚状態にも配慮する
- 乳房周囲を触れる必要がある場合は、同意とプライバシーに十分配慮する
触診で強い痛み、腫脹、変形、不安定感などを認めた場合は、ランドマーク確認を続けず、既往歴や画像所見を含めて多職種で確認します。
胸骨角とあわせて確認するランドマーク
胸骨角は、胸骨上切痕から剣状突起までを一連のルートとして確認すると位置関係を覚えやすくなります。
- 胸骨上切痕:胸骨上部の開始点
- 鎖骨内側端:胸鎖関節の位置確認
- 胸骨柄:胸骨上切痕から胸骨角までの部分
- 第2肋骨:胸骨角から左右へたどる肋骨
- 第2肋間:第2肋骨のすぐ下にあるスペース
- 剣状突起:胸骨下端のランドマーク
胸骨下端の位置や触診時の注意点は、剣状突起の触診ポイントで確認できます。
胸骨角に関するFAQ
各質問をタップすると回答が開きます。
胸骨角はどこにありますか?
胸骨角は、胸骨柄と胸骨体の境目にある前胸部中央の段差です。左右の鎖骨内側端の間にある胸骨上切痕から、胸骨中央を下方へたどると確認しやすくなります。
胸骨角は何の目安になりますか?
胸骨角は、第2肋骨と第2肋間を探す目安になります。そこから下方へ肋骨・肋間を数えることで、呼吸評価や聴診位置をそろえやすくなります。
第2肋骨と第2肋間はどう違いますか?
第2肋骨は骨性部分です。第2肋間は第2肋骨と第3肋骨の間にあるスペースで、第2肋骨のすぐ下に位置します。
胸骨上切痕と胸骨角はどう違いますか?
胸骨上切痕は、左右の鎖骨内側端の間にある胸骨上部のくぼみです。胸骨角は、その下方にある胸骨柄と胸骨体の境目の段差です。
胸骨角が分からないときはどうしますか?
一点を強く押すのではなく、胸骨上切痕から胸骨中央を指腹で下方へたどり直します。指を寝かせて広い範囲で角度の変化を確認すると、段差を捉えやすくなります。
胸骨角を強く押してもよいですか?
強く押す必要はありません。指腹で表面を軽くなぞります。疼痛、外傷歴、術後歴がある場合は、圧を弱めるか触診を中止してください。
次の一手
胸骨角の位置を確認できたら、まず胸骨上のランドマーク全体を整理し、その後に隣接する胸骨上切痕の触診を練習すると理解がつながります。
参考文献
- Ball M, Falkson SR, Adigun OO. Anatomy, Angle of Louis. In: StatPearls. Treasure Island: StatPearls Publishing; 2023. PubMed
- Altalib AA, Miao KH, Menezes RG. Anatomy, Thorax, Sternum. In: StatPearls. Treasure Island: StatPearls Publishing; 2023. NCBI Bookshelf
- Ernstmeyer K, Christman E, editors. Nursing Skills. Chapter 10: Respiratory Assessment. Eau Claire: Chippewa Valley Technical College; 2021. NCBI Bookshelf
- Tuteur PG. Chest Examination. In: Walker HK, Hall WD, Hurst JW, editors. Clinical Methods: The History, Physical, and Laboratory Examinations. 3rd ed. Boston: Butterworths; 1990. NCBI Bookshelf
著者情報
この記事は、臨床での評価・記録・新人教育に活用しやすい形を意識して作成しています。触診は患者の疼痛や不快感、外傷歴、術後歴に配慮し、必要に応じて医師・看護師などの多職種と情報共有してください。

