排尿異常の観察ポイント|PT・OTの報告例とリハ判断

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排尿異常は「量・性状・行動」の変化から気づく

排尿異常を認めたとき、PT・OTが最初に行うのは診断ではなく、尿量・尿の性状・排尿に伴う行動を確認し、全身状態と合わせて共有することです。療養病棟や高齢者リハでは、尿量低下、頻回なトイレ動作、排尿困難、急な落ち着きのなさが、脱水や尿閉、感染症、循環動態の変化などに気づくきっかけになります。本記事では、新人PT・OT向けに、観察項目、報告方法、リハを継続・軽負荷・中止する際の考え方を整理します。

リハ場面のリスク管理をまとめて確認したい方へ

排尿異常だけでなく、バイタル変化や意識変化を含めた初期対応は、リスク管理の全体像から確認すると整理しやすくなります。

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排尿異常を全身状態の変化として捉える

排尿の変化は、泌尿器だけでなく全身状態を見直すきっかけになります。尿量低下や排尿回数の変化には、水分摂取量、発熱、下痢・嘔吐、循環動態、薬剤、尿閉、カテーテルの状態など、複数の要因が関係します。

リハ場面では、排尿変化と同時に、血圧低下、頻脈、活動性低下、傾眠、ふらつき、食事・水分摂取量の低下がみられることがあります。「今日のリハは調子が悪い」で終わらせず、普段との違いを具体化することが重要です。

なお、尿の濁りやにおい、行動変化だけで尿路感染症と判断することはできません。PT・OTは原因を決めつけず、観察した事実と全身状態を分けて共有します。

排尿異常で最初に確認する3領域

最初に確認するのは、「量」「性状」「行動・排尿状況」の3領域です。1項目だけで原因を推測せず、3領域と全身状態を組み合わせて整理します。

排尿異常を観察する際の尿量・尿の色・行動変化の3つのポイント
排尿異常で最初に確認する3領域
領域 確認する内容 共有に必要な情報
測定尿量、排尿回数、最終排尿時刻、普段との差 いつから、どの程度減ったか
性状 濃縮、赤色、混濁、沈渣、におい、血塊の有無 色や性状が普段とどう違うか
行動・排尿状況 頻回な訴え、排尿困難、残尿感、失禁、落ち着きのなさ 排尿前後の訴えと行動変化

尿量低下では時刻・測定量・摂取量を確認する

尿量低下を疑ったときは、「少ない気がする」ではなく、最終排尿時刻、排尿回数、測定できた尿量、飲水・食事量を確認します。おむつ内排尿や失禁がある場合は、実際には排尿していても記録上は少なく見えることがあるため、測定方法の確認も必要です。

発熱、食事・水分摂取量低下、下痢・嘔吐、発汗、利尿薬の使用などがある場合は、体液量低下が関係している可能性があります。一方で、浮腫、体重増加、呼吸状態の変化を伴う場合は、安易に飲水を促さず、看護師や医師へ共有します。

AKIの尿量基準では、体重1kg当たり1時間0.5mL未満が6時間以上続くことが一つの基準です。ただし、PT・OTが単独でAKIを診断するための数値ではありません。正確な尿量測定ができる環境では、体重、測定時間、尿量を看護師と確認するための参考にします。

尿の色・濁り・においは単独で判断しない

尿の性状は普段との差を観察しますが、色やにおいだけで原因を特定することはできません。濃い黄色は尿の濃縮、赤色は血尿や薬剤・食品の影響、白濁は結晶や細胞成分などでもみられます。

高齢者では、症状がなくても尿中に細菌を認める無症候性細菌尿が少なくありません。そのため、尿の混濁や強いにおいだけを根拠に「尿路感染症」と報告するのは避けます。

共有時は、「感染だと思います」ではなく、「昨日より尿が濁っており、排尿回数が増えています。体温は37.8℃で、普段より傾眠傾向があります」のように、観察事実を並べて伝えます。

行動変化では排尿困難とせん妄の両方を考える

急な落ち着きのなさや頻回離席を認めた場合は、排尿したいのに出ない、残尿感がある、失禁への不快感があるなど、排尿に関連した困りごとがないか確認します。

特に認知症のある患者では、症状を言葉で説明できず、トイレへ繰り返し向かう、下腹部を触る、拒否が強くなるなどの行動として現れる場合があります。反対に、傾眠や反応低下が目立つこともあります。

ただし、行動変化やせん妄だけで尿路感染症と判断することはできません。低酸素、薬剤、疼痛、便秘、環境変化なども含めて確認し、急な意識・行動変化がある場合は早めに共有します。詳しい初期対応は、せん妄で最初に見るポイントで整理しています。

尿が出ないときは尿閉や排出障害も確認する

「尿量が少ない」ときは、尿が作られていない場合だけでなく、膀胱にたまっていて排出できない尿閉も考慮します。排尿したいのに出ない、少量ずつしか出ない、下腹部の張りや不快感がある、落ち着きがないなどの変化を確認します。

尿道カテーテル留置中では、バッグ内の尿量だけでなく、チューブの屈曲、身体や寝具による圧迫、バッグの位置、接続部の外れなどを目視します。閉塞が疑われても、PT・OTが独自にカテーテルを操作・洗浄せず、看護師へ共有します。

排尿異常に気づいたときの5分フロー

排尿変化に気づいたら、原因を考え込む前に、リハを止めて事実を整理します。以下の順番にすると、確認漏れを減らせます。

排尿異常に気づいたときの安全確保から共有・リハ判断までの5分フロー
排尿異常に気づいたときの5分フロー
順番 確認内容 行動
1 患者の安全 移動や運動をいったん止め、座位または臥位で安全を確保する
2 排尿の事実 最終排尿時刻、量、回数、色、排尿時の訴えを確認する
3 全身状態 意識、血圧、脈拍、体温、SpO2、倦怠感、疼痛を確認する
4 背景 飲水・食事量、発熱、下痢・嘔吐、薬剤、カテーテルの有無を確認する
5 共有と判断 看護師へ事実を報告し、リハの継続・軽負荷・延期・中止を相談する

共有では「いつから・何が・どれだけ」を伝える

排尿異常は、変化の開始時刻と程度を具体化して共有します。「尿が出ていません」だけでは、最終排尿時刻、測定条件、失禁の有無が分かりません。

排尿異常の共有ポイント
観察項目 具体的な共有例 追加で確認する内容
尿量 午前7時以降、記録上の排尿がなく、現在13時です 失禁、測定方法、飲水量、カテーテル
尿の性状 昨日より濃い褐色で、少量の沈渣があります 薬剤、食品、血尿、疼痛
排尿状況 30分間に3回トイレを希望しましたが、毎回少量です 排尿痛、残尿感、下腹部不快感
行動 普段より落ち着きがなく、下腹部を繰り返し触っています 意識、疼痛、便秘、環境変化
全身状態 体温37.8℃、脈拍105回/分で、食事摂取は2割です 血圧、SpO2、呼吸状態、倦怠感

リハ継続・軽負荷・中止は全身状態で判断する

排尿変化だけで一律にリハを中止するのではなく、バイタル、意識、症状、普段との差を確認して判断します。ただし、原因が不明なまま負荷を上げることは避けます。

以下は一般的な整理であり、施設の中止基準、医師の指示、看護師との情報共有を優先してください。

排尿異常時のリハ判断の目安
状態 リハ判断 対応
性状変化のみで全身状態が安定 継続または軽負荷を検討 看護師へ共有し、運動中もバイタルと症状を再確認する
尿量低下に飲水・食事量低下を伴う 軽負荷または延期を検討 開始前にバイタルを確認し、看護師と実施可否を相談する
発熱、頻脈、強い倦怠感がある 延期または中止を検討 全身状態を共有し、評価・対応を依頼する
急な意識変化、反応低下がある 中止 安全を確保し、直ちに看護師・医師へ共有する
血圧低下、冷汗、呼吸苦などを伴う 中止 施設の急変対応手順に従う
排尿不能と下腹部膨満・疼痛がある 中止または延期 尿閉の可能性を含めて速やかに共有する

SBARでは観察事実と評価を分けて報告する

排尿異常の報告では、測定した事実と自分の評価を分けると伝わりやすくなります。特に新人PT・OTは、排尿状況、摂取量、バイタル、意識・行動変化をセットで整理します。

尿量低下と傾眠を認めた場合のSBAR報告例
項目 報告例
S リハ開始前に、朝からの尿量低下と普段より強い眠気を認めました。
B 最終排尿は午前7時で、現在13時です。昼食摂取は2割、飲水は約100mLと伺っています。
A 血圧96/58mmHg、脈拍104回/分、体温37.7℃です。普段より反応が遅く、全身状態の変化が気になります。
R リハは開始せず臥床としています。状態確認と本日の実施可否の判断をお願いします。

排尿異常でよくある失敗

よくある失敗は、尿の所見から原因を決めつけることです。尿が濁っているから感染、濃いから脱水、落ち着かないから尿意と断定せず、観察事実を集めて共有します。

療養病棟では、おむつ内の排尿、失禁、カテーテル管理などにより、PT・OTが正確な尿量を把握できないことがあります。その場合は推測で補わず、看護記録や担当看護師から情報を確認することが重要です。

新人PT・OTが陥りやすい排尿観察の失敗
よくある失敗 改善方法
「尿が少ない」とだけ伝える 最終排尿時刻、回数、測定量、摂取量を伝える
尿の濁りだけで感染と判断する 発熱、排尿症状、バイタル、全身状態を合わせて共有する
排尿量低下をすべて脱水と考える 尿閉、循環動態、薬剤、測定漏れも確認する
行動変化を認知症の症状として流す 普段との差、意識、疼痛、便秘、排尿状況を確認する
異常があっても予定どおり離床する 開始前に全身状態を確認し、負荷変更や延期を相談する
カテーテルを独自に操作する 屈曲や位置を目視し、異常は看護師へ共有する

排尿異常の観察でよくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

尿量はどの程度減ったら報告すべきですか?

普段との差が明らかな場合や、一定時間排尿を確認できない場合は、量が確定していなくても共有します。最終排尿時刻、排尿回数、測定量、失禁の有無、飲水・食事量を確認してください。体重当たり尿量の基準はありますが、PT・OTが単独で診断せず、看護師や医師の評価につなげます。

濁った尿や強いにおいがあれば尿路感染症ですか?

尿の濁りやにおいだけでは尿路感染症と判断できません。高齢者では、症状がなくても尿中に細菌を認めることがあります。排尿痛、頻尿、発熱、全身状態、意識変化などを確認し、観察事実として共有します。

認知症の患者では何を観察しますか?

普段との行動の違いを確認します。頻回なトイレ動作、下腹部を触る、排尿時の表情変化、拒否、落ち着きのなさ、急な傾眠などがないかを観察します。ただし、行動変化だけで排尿異常や感染症と決めつけないことが重要です。

尿が出ていない場合は水分を勧めてもよいですか?

一律に飲水を勧めるのは避けます。心不全、腎機能低下、嚥下障害、水分制限などがある場合もあります。飲水の可否や量は、指示内容と全身状態を確認し、看護師と相談してください。

尿道カテーテルの尿が増えていない場合はどうしますか?

チューブの屈曲、圧迫、バッグの位置、接続部を目視し、尿量と最終確認時刻を看護師へ共有します。PT・OTが独自にカテーテルの抜き差しや洗浄を行わないでください。

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参考文献

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  5. Nicolle LE. Urinary tract infections in older adults. Clin Geriatr Med. 2016;32(3):523-538. DOI: 10.1016/j.cger.2016.03.002

著者情報

排尿異常の観察方法を解説するrehabilikun blog著者

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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