体圧分散マットレスの選び方|リスク評価・種類・厚さ10cmの見方

臨床手技・プロトコル
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  1. 体圧分散マットレスはリスク評価をしてから選ぶ
  2. 最初にリスクアセスメントスケールで褥瘡リスクを評価する
  3. リスク判定後に必要な支持面性能を決める
  4. 体圧分散マットレスは局所への圧を再分配する支持面
  5. Reactive・Active・付加機能の違い
  6. 静止型とエアマットレスを単純に順位づけしない
  7. 厚さ10cmは一つの視点だが絶対基準ではない
  8. 底づき・ずれ・微気候を確認する
  9. シーツや失禁用品の重ねすぎに注意する
  10. 体格・ベッド・電源・安全性を確認する
  11. 体圧分散マットレスを選ぶ臨床フロー
  12. PTは皮膚だけでなく寝返り・起き上がり・移乗を確認する
  13. 体圧分散マットレス選定の症例例
    1. 症例1:中等度リスクで自力体位変換を保てている
    2. 症例2:自力体位変換ができず、夜間の体動も少ない
    3. 症例3:背上げ時間が長く、仙骨部に発赤がある
    4. 症例4:皮膚は安定したが離床が難しくなった
  14. ステップアップとステップダウンの判断
  15. 導入後は皮膚・動作・睡眠を同じ条件で再評価する
  16. 体圧分散マットレス選定の記録方法
  17. 体圧分散マットレス選定・見直し記録シートPDF
    1. 体圧分散マットレス選定・見直し記録シート v7
  18. 体圧分散マットレス選定で起こりやすい失敗
  19. 体圧分散マットレスのよくある質問
  20. 褥瘡予防と支持面選定を体系的に学ぶ参考書
  21. まとめ|リスク評価から必要性能を決めて選択する
  22. 参考文献・確認資料
  23. 著者情報
    1. 保有資格

体圧分散マットレスはリスク評価をしてから選ぶ

体圧分散マットレスを選ぶときは、最初にリスクアセスメントスケールで褥瘡発生リスクを評価し、その後に危険因子の内訳、皮膚所見、自力体位変換能力、介助体制、離床目標を確認します。リスク判定を行わず、商品名、エアかフォームか、厚さだけで選ぶことは避けます。

褥瘡リスクがある対象者には、圧再分配性能を備えた支持面が必要です。ただし、エアマットレスがすべての静止型マットレスより優れているとは限りません。静止型にも、厚みのある多層フォーム、静止型エア、身体を包み込む性能に優れた製品などがあります。

この記事では、①リスク評価、②危険因子の確認、③必要な支持面性能の決定、④静止型・交互圧型の選択、⑤厚さ・構造・適応体重の確認、⑥導入後の再評価という順に、体圧分散マットレスの選び方を整理します。

褥瘡予防の全体像から確認する

褥瘡予防の基本フローを見る

体圧分散マットレス選定の基本順序

  1. リスクアセスメントスケールで褥瘡リスクを評価する
  2. 合計点だけでなく、危険因子の内訳を確認する
  3. 対象者に必要な圧再分配性能を決める
  4. 静止型・交互圧型・付加機能の必要性を検討する
  5. 厚さ、構造、適応体重、ベッドとの適合を確認する
  6. 導入後に皮膚、動作、睡眠、介助負担を再評価する

最初にリスクアセスメントスケールで褥瘡リスクを評価する

体圧分散マットレスの選定前には、施設で採用しているリスクアセスメントスケールを使用し、対象者の褥瘡リスクを共通の基準で整理します。

使用する尺度は施設や対象者によって異なります。代表的なものには、次のような評価があります。

  • ブレーデンスケール
  • OHスケール
  • K式スケール
  • 厚生労働省の褥瘡危険因子評価票

尺度の合計点やリスク区分は、支持面を検討する入口になります。ただし、合計点だけを見て「この点数なら静止型」「この点数ならエアマットレス」と機械的に決定するものではありません。

同じ中等度リスクでも、自力体位変換ができない人、病的骨突出が強い人、浮腫がある人、皮膚湿潤が強い人では、支持面へ求める性能が異なります。

リスク評価後に確認する危険因子
確認項目 確認する内容 支持面選定への影響
自力体位変換 寝返り、姿勢修正、殿部挙上を自力で行えるか 持続圧を人や機器で補う必要性を判断する
皮膚・既存褥瘡 消退しにくい発赤、硬結、水疱、疼痛、褥瘡部位 守る部位と圧再分配を強める必要性を確認する
骨突出・体格 仙骨、踵、大転子などの突出、やせ、肥満、体重分布 沈み込み、包み込み、底づき、適応体重を確認する
湿潤・浮腫 失禁、発汗、滲出液、皮膚の蒸れ、全身・局所浮腫 微気候管理、カバー、寝具の重ね方を確認する
摩擦・ずれ 背上げ後の前滑り、移乗、引き上げ、拘縮、不穏 姿勢保持と沈み込みのバランスを確認する
介助体制 夜間配置、体位変換の実施状況、家族の介護力 人による除圧を補完する機能が必要か判断する

各尺度の特徴や使い分けは、褥瘡リスクアセスメントスケールの比較で確認できます。

リスク判定後に必要な支持面性能を決める

リスク評価後は、商品名を選ぶ前に、対象者へ必要な支持面性能を明確にします。

国際ガイドラインでは、褥瘡リスクがある人に対して、圧再分配性能を備えたフォーム型のreactive support surfaceを使用することが推奨されています。一方、日本褥瘡学会の一般向け資料では、特に自力体位変換ができない人には圧切替型エアマットレスが勧められています。

これらは矛盾するものではありません。まず圧再分配性能のある支持面を使用し、そのうえで自力体位変換、皮膚所見、現在の支持面での反応、介助体制などから、交互圧型を含む別の支持面が必要かを判断します。

褥瘡リスクと支持面検討の基本方向
対象者の状況 最初に確認すること 支持面の検討方向
褥瘡リスクがあり、自力体動を保てている 皮膚所見、骨突出、寝返り、離床目標 圧再分配フォームなどのreactive support surfaceを基本に検討する
自力体位変換が難しい 同一部位への持続圧、夜間の体動、介助状況 交互圧型エアマットレスなどactive support surfaceを含めて検討する
現在の支持面でも発赤や褥瘡が生じる 設定、底づき、姿勢、ずれ、体位変換、湿潤 ケア全体を見直し、より適した支持面や設定へ変更する
夜間の体位変換が継続できない 夜間配置、本人の睡眠、疼痛、実際の除圧状況 交互圧や自動体位変換などの付加機能を補完手段として検討する
離床・動作能力を維持したい 寝返り、起き上がり、端座位、移乗 圧再分配に加えて身体の安定性と動作性を重視する

支持面の種類ではなく、必要な性能から考える

「高機能な製品を選ぶ」のではなく、対象者に必要な圧再分配、沈み込み、包み込み、安定性、微気候管理、動作性を満たす製品を選びます。

体圧分散マットレスは局所への圧を再分配する支持面

体圧分散マットレスは、身体と支持面の接触面積を広げたり、荷重を受ける部位を変化させたりして、骨突出部に集中する圧を再分配する用具です。

フォーム、エア、ゲルなどの素材があり、身体の沈み込み方、包み込み方、安定性、通気性、電源の有無が異なります。

支持面を使用しても、体位変換、皮膚観察、失禁・発汗への対応、栄養管理が不要になるわけではありません。圧だけでなく、背上げや移乗で生じるずれ・せん断と、皮膚と支持面の間の温度・湿度である微気候も管理します。

Reactive・Active・付加機能の違い

国際的な分類では、全身用支持面をreactive support surfaceとactive support surfaceに分けて考えます。自動体位変換や微気候管理は、支持面やベッドが備える付加機能として整理すると理解しやすくなります。

体圧分散マットレスの分類と特徴
分類 主な例 仕組み 利点 注意点
Reactive 圧再分配フォーム、静止型エア、ゲルなど 身体から加わる荷重や熱に反応し、沈み込み・包み込みによって圧を再分配する 静音で安定しやすく、自力体動を生かしやすい製品がある 同一体位が続けば持続圧は残る。製品ごとの性能差が大きい
Active 交互圧型エアマットレスなど エアセルを機械的に膨張・収縮させ、支持する部位を時間的に変化させる 同じ部位が支持され続ける時間を減らしやすい 揺れ、沈み込み、作動音、設定不適合が動作や睡眠に影響する場合がある
付加機能 自動体位変換、turn assist、側方回転、微気候管理 荷重方向の変更や熱・湿気への対応などを補助する 夜間介助や特定のケア課題を補完できる場合がある 皮膚観察や人による体位調整を完全に代替するものではない
皮膚、体動、介助体制、離床目標の4つの判断軸から静止型・交互圧・自動体位変換付きの体圧分散マットレスを選ぶ図
リスク評価後は、皮膚、体動、介助体制、離床目標を組み合わせて必要な支持面性能を検討します。

静止型とエアマットレスを単純に順位づけしない

交互圧型エアマットレスは、自力体位変換が難しい人や、同一部位への持続圧を減らしたい人に有力な選択肢です。一方で、静止型マットレスにも十分な圧再分配性能を持つ製品があります。

静止型には、単層の一般的なフォームだけでなく、次のような製品があります。

  • 複数の硬さを組み合わせた多層フォーム
  • 身体部位に応じて構造を変えたゾーニング製品
  • 厚みを確保した圧再分配フォーム
  • 静止型エアセルを用いた製品
  • 沈み込みと包み込みを高めた製品
  • 微気候管理を考慮したカバーや構造を持つ製品

そのため、製品カテゴリーだけで「エアが上、フォームが下」とは判断できません。対象者のリスク、危険因子、製品の性能特性、離床への影響を組み合わせて選択します。

他社製品を商品名だけで比較しない

異なるメーカーの製品は、素材、構造、設定、対象体重、試験方法が異なります。製品名の横並びだけで優劣を決めず、仕様書と対象者の条件を照合してください。

厚さ10cmは一つの視点だが絶対基準ではない

マットレスの厚さは、底づきや背上げ時の姿勢保持を考えるうえで重要な確認項目です。特に体格が大きい人、骨突出が強い人、頭側挙上を行う人では、支持面に十分な厚さがあるかを確認します。

国内で紹介されている体圧分散寝具の選定基準には、頭側挙上を45度以上にする場合、底づき防止と姿勢保持機能を備えた厚さ10cm以上の体圧分散寝具を選択するという考え方があります。

ただし、これは次のような意味ではありません。

  • すべての対象者に10cm以上が必須である
  • 10cm以上なら必ず圧再分配性能が高い
  • 10cm未満なら使用できない
  • 同じ厚さなら製品性能も同じである

同じ10cmでも、素材の密度、硬さ、層構造、エアセル構造によって、沈み込み方や底づきのしやすさは異なります。

厚さと一緒に確認する製品仕様
確認項目 見る理由 実際に確認すること
厚さ 底づきと背上げ時の姿勢保持に関係する 全体厚、各層の厚さ、使用時の沈み込み
適応体重 想定範囲外では性能が発揮されない可能性がある 最小・最大体重、体格・体重分布
素材・層構造 沈み込み、包み込み、身体の安定性を左右する フォーム密度、硬さ、層数、ゾーニング、セル構造
圧再分配性能 骨突出部への持続圧を減らせるか確認する メーカーの試験情報、推奨対象、設定条件
微気候性能 熱・湿気が皮膚環境へ影響する カバー、通気性、発汗・失禁時の蒸れ
動作への影響 沈み込みが寝返りや離床を妨げる場合がある 寝返り、起き上がり、端座位、移乗の介助量

厚さ、内部構造、セル構造、カバーなどの詳しい見方は、体圧分散マットレスの厚さ・構造・機能の見方で整理しています。

底づき・ずれ・微気候を確認する

製品仕様と実際の使用状態は、底づき、ずれ、微気候の3つから確認します。

  • 底づき:身体が沈み込み、骨突出部がベッド基底面の硬さを感じるなど、十分な圧再分配を得られていない状態
  • ずれ:背上げや身体の滑りにより、皮膚と深部組織へ異なる方向の力が加わる状態
  • 微気候:皮膚と支持面の間に生じる温度・湿度の環境

厚いマットレスでも、対象者の体重や姿勢に合わなければ底づきが起こる可能性があります。反対に、身体が深く沈み込みすぎると、寝返りや起き上がりが難しくなる場合があります。

背上げ時には、仙骨部への圧だけでなく、骨盤の前滑りや踵が固定された状態で生じるずれを確認します。

シーツや失禁用品の重ねすぎに注意する

適切な支持面を選んでも、身体とマットレスの間に厚い寝具やパッドを重ねると、圧再分配性能を妨げる可能性があります。

導入時は、次の点を確認します。

  • シーツを必要以上に重ねていないか
  • 厚いベッドパッドを追加していないか
  • 失禁用品を複数枚重ねていないか
  • シーツや防水カバーにしわがないか
  • メーカーが推奨するカバーを使用しているか
  • エアセルや通気機能を寝具で妨げていないか

発赤が改善しない場合は、マットレスの種類だけでなく、マットレス上に置いている寝具や失禁用品も確認してください。

体格・ベッド・電源・安全性を確認する

支持面の選定では、圧再分配性能だけでなく、ベッドとの適合と安全性を確認します。

体圧分散マットレス導入時の安全確認
確認項目 確認内容 主なリスク
身長・体重・体格 製品の適応範囲と、体重の分布を確認する 底づき、過度な沈み込み、性能不足
幅・長さ ベッドフレームとの寸法と、寝返りに必要な幅を確認する 隙間、転落、体位変換の制限
マットレス上面の高さ 交換前後の床面高とベッド柵の有効高さを確認する 転落、立ち上がり困難、移乗困難
ベッド柵・隙間 フレーム、柵、マットレス間の隙間を確認する 挟み込み、身体の落ち込み
電源・停電 コンセント、ポンプ設置、停電・故障時の対応を確認する 機能停止、内圧低下、底づき
保守・清掃 点検、消毒、交換部品、在宅での保守方法を確認する 故障、衛生管理不良、継続使用困難

体圧分散マットレスを選ぶ臨床フロー

支持面の種類を先に決めず、リスクと現在の問題を特定してから必要な性能を選びます。

  1. リスク評価を行う:施設採用の尺度でリスクと危険因子を整理する
  2. 皮膚を確認する:発赤、硬結、水疱、疼痛、既存褥瘡を確認する
  3. 体動を確認する:寝返り、姿勢修正、起き上がり、移乗を確認する
  4. 介助体制を確認する:夜間を含め、体位変換が継続できるか確認する
  5. 主な問題を特定する:持続圧、底づき、ずれ、湿気、動作低下などに分ける
  6. 必要性能を決める:圧再分配、active機能、微気候、安定性の必要性を判断する
  7. 製品仕様を確認する:厚さ、構造、適応体重、ベッド適合、安全性を確認する
  8. 導入後に再評価する:皮膚と動作の両方が改善しているか確認する

リスク評価は選定の入口

リスク区分で候補を絞り、危険因子、皮膚、体動、介助体制、離床目標、製品仕様を組み合わせて最終決定します。

PTは皮膚だけでなく寝返り・起き上がり・移乗を確認する

PTが確認したいのは、マットレス上の体圧だけではありません。支持面の変更によって、寝返り、起き上がり、端座位、移乗がどのように変わったかを評価します。

PTが確認する支持面変更後の動作
確認場面 見るポイント 記録例
寝返り 身体が沈み込み、体幹回旋や下肢の踏ん張りが妨げられていないか 可否、介助量、所要時間、使用したベッド柵
起き上がり 骨盤や肩甲帯が沈み、支持面から身体を離しにくくなっていないか 所要時間、介助量、動作手順の変化
端座位 床面高、骨盤後傾、滑り座り、体幹の揺れが変化していないか 保持時間、上肢支持、ふらつき、恐怖感
移乗 足底接地、殿部離床、立ち上がりが難しくなっていないか 介助量、移乗方法、使用用具、床面高
睡眠・呼吸 作動音、揺れ、沈み込みで覚醒や呼吸努力が増えていないか 夜間覚醒、疼痛、不快感、呼吸状態

「皮膚所見は改善したが、起き上がりが全介助になった」「睡眠が不安定になった」など、導入前後の変化を具体的に共有すると、設定や支持面の見直しにつながります。

体圧分散マットレス選定の症例例

症例1:中等度リスクで自力体位変換を保てている

状態:褥瘡リスクは中等度。自力寝返りは可能で、端座位・移乗練習を行っている。発赤はないが仙骨部の骨突出が目立つ。

  • 圧再分配性能を備えたreactive support surfaceを候補にする
  • 厚さ、適応体重、骨突出部の沈み込みを確認する
  • 寝返り、起き上がり、端座位を妨げない安定性を確認する
  • 皮膚所見が悪化した場合は支持面とケアを再検討する

症例2:自力体位変換ができず、夜間の体動も少ない

状態:自力で有効な寝返りができず、夜間も同一姿勢が続く。体位変換には2人介助を要する。

  • 交互圧型エアマットレスを含めて検討する
  • 体格と適応体重に合った設定か確認する
  • 揺れ、作動音、疼痛、睡眠への影響を確認する
  • エアマットレス導入後も体位変換と皮膚観察を継続する

症例3:背上げ時間が長く、仙骨部に発赤がある

状態:呼吸管理や経管栄養のため頭側挙上を行う時間が長く、背上げ後に前滑りと仙骨部発赤がみられる。

  • 厚さと底づき防止性能、背上げ時の姿勢保持を確認する
  • 10cm以上かどうかを一つの確認項目とする
  • 背上げ手順、膝上げ、骨盤位置、踵の固定を見直す
  • マットレス変更だけでなく、ずれ対策を同時に行う

症例4:皮膚は安定したが離床が難しくなった

状態:交互圧型導入後に発赤は改善したが、沈み込みと揺れにより起き上がり・移乗の介助量が増えた。

  • エア圧、モード、体格への適合を再確認する
  • 皮膚リスクが許容できる場合は、設定変更を検討する
  • 安定性の高いreactive support surfaceへの変更も候補にする
  • 皮膚と離床の両方を同じ条件で再評価する

ステップアップとステップダウンの判断

支持面は、一度導入したら固定するものではありません。皮膚や全身状態が悪化した場合は必要性能を強め、皮膚が安定して体動・離床を進める段階では、必要十分な支持面へ調整します。

支持面の見直しを検討する状況
状況 考えられる問題 検討する対応
発赤や褥瘡が生じた 圧再分配不足、底づき、ずれ、ケア不足 原因を再評価し、設定変更または支持面のステップアップを検討する
自力体動が低下した 同一部位への持続圧が増えている active support surfaceを含めて再検討する
皮膚は安定したが動作が低下した 沈み込みや揺れが動作を妨げている 設定変更または安定性の高い支持面を検討する
夜間覚醒や不穏が増えた 作動音、振動、傾斜、疼痛、不安 設定や使用機能を見直し、必要性能を再検討する

ステップダウンは褥瘡予防を弱めることではありません。皮膚リスクを再評価したうえで、対象者の体動と離床を生かせる必要十分な支持面へ調整する考え方です。

導入後は皮膚・動作・睡眠を同じ条件で再評価する

支持面の選定は、導入して終わりではありません。導入前と同じ条件で、皮膚、体動、離床、睡眠、快適性、介助負担を比較します。

  • 皮膚:発赤、硬結、水疱、疼痛、褥瘡部位の変化
  • 体動:自力体位変換、寝返り、姿勢修正
  • 離床:起き上がり、端座位、移乗の介助量
  • 睡眠:夜間覚醒、作動音への反応、不穏
  • 快適性:疼痛、暑さ、湿気、圧迫感、揺れ
  • 介助:体位変換の実施状況、介助人数、介助負担
  • 安全性:転落、挟み込み、床面高、電源、故障

導入当日の条件固定と、0〜24時間、24〜48時間、48〜72時間の具体的な確認方法は、体圧分散マットレス導入後72時間の調整プロトコルで整理しています。

体圧分散マットレス選定の記録方法

記録では、使用したリスクアセスメントスケール、リスク区分、危険因子、必要性能、製品仕様、選定理由、導入前後の変化を残します。

選定記録例

OHスケール6点、中等度リスク。自力体位変換3点、浮腫3点。夜間を含め有効な寝返りは認めない。

仙骨・踵部に消退しにくい発赤なし。現在の静止型マットレスでは同一姿勢が長く、夜間の体位変換は2人介助を要する。

交互圧型エアマットレスを選択。適応体重、ベッド寸法、電源、床面高を確認し、導入前の寝返り・起き上がり・睡眠状態を記録した。

導入後は皮膚、揺れ、睡眠、離床、介助負担を比較し、継続・設定変更・支持面変更を判断する。

体圧分散マットレス選定・見直し記録シートPDF

リスク評価から、必要性能、厚さ・適応体重、選定理由、導入前後の皮膚・動作・睡眠の比較までをA4縦1ページに記録できます。

A4縦・1ページ

体圧分散マットレス選定・見直し記録シート v7

独自の合計スコアやカットオフは設けず、施設で使用するリスク評価尺度と、対象者・製品・ケアの情報を記録する補助シートです。

選定・見直し記録シートPDFを開く

PDFプレビューを開く

PDFを表示できない場合は、体圧分散マットレス選定・見直し記録シートPDFを開くから確認してください。

体圧分散マットレス選定で起こりやすい失敗

選定・運用で起こりやすい失敗と対策
失敗 問題 修正方法
リスク評価をせず機種を選ぶ 対象者の危険因子と必要性能が明確にならない 施設採用の尺度でリスクと内訳を確認する
合計点だけで支持面を決める 自力体動、骨突出、湿潤などの違いが反映されない 低得点項目と皮膚・介助体制を確認する
エアマットレスなら安心と考える 設定不適合、故障、ずれ、体動低下を見落とす 適応体重、設定、皮膚、動作、睡眠を再評価する
厚さだけで性能を判断する 素材、層構造、適応体重、沈み込みを反映できない 厚さを一項目とし、製品仕様全体を確認する
シーツやパッドを重ねすぎる 圧再分配や微気候管理を妨げる可能性がある メーカー推奨の寝具構成へ整える
皮膚だけを評価する 起き上がり、移乗、睡眠の悪化を見落とす 導入前後で皮膚と動作を同時に比較する
自動機能へ体位変換を任せきる 実際の除圧、ずれ、皮膚変化を確認できない 自動機能を体位変換計画の一部として使用する

体圧分散マットレスのよくある質問

各質問をタップすると回答が開きます。

マットレスを選ぶ前にリスクアセスメントスケールは必要ですか?

施設で採用するリスクアセスメントスケールを使用し、褥瘡リスクと危険因子を共通の方法で整理することが基本です。ただし、合計点だけで製品を決めず、皮膚、体動、介助体制、離床目標も確認します。

静止型よりエアマットレスの方が優れていますか?

単純には比較できません。交互圧型は自力体位変換困難例などで有力ですが、静止型にも高い圧再分配性能を備えた製品があります。リスク、危険因子、製品仕様、動作への影響を組み合わせて選びます。

体圧分散マットレスは10cm以上が必要ですか?

すべての対象者へ一律に必要という基準ではありません。頭側挙上45度以上など、底づきや姿勢保持が問題となる場面では10cm以上かどうかが一つの視点になります。素材、構造、適応体重、動作への影響も合わせて確認します。

自力で寝返りができない場合はエアマットレスですか?

交互圧型エアマットレスは有力な選択肢です。ただし、皮膚所見、骨突出、体格、介助体制、疼痛、睡眠、離床目標を確認し、対象者と製品の適合を判断します。

自動体位変換機能があれば人による体位変換は不要ですか?

不要にはなりません。自動機能は荷重方向を変える補完手段です。皮膚観察、ずれの修正、失禁への対応、疼痛や不快感の調整、実際の除圧確認は継続します。

製品を比較するときは何を見ますか?

厚さ、適応体重、素材・層構造、圧再分配性能、微気候性能、動作への影響、ベッドとの適合、電源・停電対応、保守方法を確認します。商品名だけで順位づけしません。

マットレスを変更しても発赤が改善しない場合はどうしますか?

設定、底づき、体位変換、ポジショニング、背上げ時のずれ、湿潤、栄養、医療機器、シーツやパッドの重ね方を再評価します。支持面だけで褥瘡予防計画全体を代替することはできません。

PDFの記録シートには独自の選定スコアがありますか?

独自の合計点やカットオフは設けていません。施設で使用するリスク評価尺度の結果と、危険因子、必要性能、製品仕様、導入前後の変化を記録する補助シートです。

リスク評価、体圧分散用具、体位変換、スキンケア、栄養まで体系的に確認する場合は、『褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版』が参考になります。

褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版

褥瘡リスク評価から予防・管理まで、臨床で必要な考え方を確認できます。


まとめ|リスク評価から必要性能を決めて選択する

体圧分散マットレスは、最初にリスクアセスメントスケールを使用し、褥瘡リスクと危険因子を整理してから選びます。

リスク評価後は、合計点だけでなく、自力体位変換、皮膚所見、骨突出、湿潤、浮腫、摩擦・ずれ、介助体制を確認し、対象者に必要な圧再分配性能を決めます。

交互圧型エアマットレスは、自力体位変換が困難な人などに有力な選択肢です。一方、静止型にも優れた圧再分配性能を持つ製品があるため、カテゴリーだけで優劣を決めません。

厚さ10cmは、底づきや頭側挙上時の姿勢保持を考える一つの視点です。厚さだけで判断せず、素材、層構造、適応体重、沈み込み、包み込み、動作への影響、ベッドとの適合を確認してください。

導入後は、皮膚だけでなく、寝返り、起き上がり、端座位、移乗、睡眠、快適性、介助負担を同じ条件で再評価し、継続、設定変更、支持面変更を判断します。

参考文献・確認資料

  1. National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Full Body Support Surfaces for Prevention and Treatment of Pressure Injuries. In: Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Fourth Edition. 2025, updated 2026. International Guideline.
  2. National Pressure Injury Advisory Panel, European Pressure Ulcer Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Repositioning for Pressure Injury Prevention. In: Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Fourth Edition. International Guideline.
  3. 日本褥瘡学会. 褥瘡の予防について. 日本褥瘡学会.
  4. 日本褥瘡学会. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版. 照林社; 2022.
  5. Shi C, Dumville JC, Cullum N, Rhodes S, McInnes E. Beds, overlays and mattresses for preventing and treating pressure ulcers: an overview of Cochrane Reviews and network meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev. 2021;8(8):CD013761. doiPubMed.
  6. McInnes E, Jammali-Blasi A, Bell-Syer SEM, Dumville JC, Middleton V, Cullum N. Support surfaces for pressure ulcer prevention. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(9):CD001735. doiPubMed.
  7. 田中マキ子. 体圧分散寝具の選び方. 褥瘡一問一答集. マルホ医療関係者向けサイト.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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