6分間歩行テスト(6MWT)のやり方|30mコース・中止基準・記録の型
呼吸評価全体の順番から確認したい方へ
6分間歩行テスト(6MWT)は、平坦な直線コースを6分間で可能な限り遠くまで歩き、歩行耐久性を評価するテストです。比較可能な結果を得るには、コース長、説明、励まし、補助具、酸素条件、休憩、中止基準を毎回そろえる必要があります。
この記事では、30mコースを基本とした準備、標準手順、SpO2を含む安全管理、2回実施の考え方、距離の算出方法、再評価に必要な記録項目を整理します。記事末には、固定条件と測定結果を1枚で残せる6MWT記録シートPDFも掲載しています。
6MWTでは最初に測定条件を固定する
再評価に使うには、距離だけでなく測定条件をそろえることが重要です。コース、説明、励まし、補助具、酸素投与、モニタリング方法が変わると、身体機能に変化がなくても6分間歩行距離が変わる可能性があります。

| 条件 | 固定・記録する内容 |
|---|---|
| コース | 長さ、形状、床面、折り返し位置 |
| 説明と励まし | 開始前の説明、1分ごとの定型文、声の調子 |
| 歩行条件 | 杖、歩行器、装具、見守り方法 |
| 酸素療法 | デバイス、流量、携行方法、チューブの長さ |
| 測定条件 | 実施時刻、薬剤との時間関係、休憩、モニタリング機器 |
前回と条件が異なる場合は、距離の増減だけで改善・悪化を判断せず、変更した条件を併記します。
実施前に禁忌と当日の状態を確認する
6MWTは歩行可能だから実施できるとは限りません。開始前に循環・呼吸状態、症状、バイタルサイン、転倒リスクを確認し、運動負荷をかけてよい状態かを判断します。
ATSのガイドラインでは、直近1か月の不安定狭心症と心筋梗塞が絶対的禁忌として示されています。安静時の著しい頻脈や高血圧などは相対的禁忌であり、検査目的や医学的管理体制を踏まえて医師へ確認します。
- 安静時から胸部症状や強い呼吸困難がある
- 循環・呼吸状態が不安定である
- 発熱、急性感染、急性増悪など当日の状態変化がある
- 安全な歩行が困難で、通常の見守りでは転倒を防げない
- 医師から運動負荷の制限や個別の中止条件が指示されている
安静時の数値だけで機械的に実施可否を決めず、症状、疾患、治療状況、施設の緊急対応体制を含めて判断します。
30mコースと必要物品を準備する
コースは屋内の平坦な直線で、30m以上を基本とします。硬く歩きやすい床面を選び、人や物品の往来が少ない時間帯に実施します。両端の折り返し地点は、患者から見やすいコーンなどで明示します。
距離計算をしやすくするため、コース上には一定間隔の距離マーカーを設けます。終了時に1往復の途中で止まった場合は、最後に通過したマーカーから停止位置までを測定します。
30mを確保できず20mなどの短いコースを使用する場合は、そのコースを施設内で固定します。短いコースでは折り返し回数が増えるため、30mコースで得られた基準値や過去の結果と単純比較しないことが重要です。
準備物
- タイマーまたはストップウォッチ
- ラップカウンターまたは記録用紙
- 距離マーカー、コーン、メジャー
- Borgスケール
- 血圧計
- パルスオキシメータ
- 椅子
- 必要時の酸素機器、延長チューブ
- 緊急時の連絡手段
開始前は座位で安静を保ち、血圧、心拍数、SpO2、呼吸困難、下肢疲労を確認します。日常的に使用している補助具や酸素は、原則として通常条件で使用し、その内容を記録します。
6MWTの標準手順
患者には「6分間で可能な限り遠くまで歩く」と説明し、走行やジョギングは行わないよう伝えます。疲れた場合は減速・停止・休憩できますが、タイマーは止めません。
- 実施前の症状、血圧、心拍数、SpO2、Borgスケールを確認する
- 補助具、酸素流量、携行方法などの固定条件を記録する
- 患者をスタートラインに立たせ、検査目的と休憩方法を説明する
- 患者が歩き始めた時点でタイマーを開始する
- 1分ごとに標準化した励ましを行う
- 通過したコース数を記録する
- 必要に応じてSpO2と心拍数を連続測定する
- 6分経過時に、その場で停止するよう指示する
- 完全に歩いた距離と未完了区間を合計する
- 終了直後の症状、SpO2、心拍数、Borgスケールを記録する
開始前の説明例
「このテストでは、6分間でできるだけ遠くまで歩きます。コーンの間を往復してください。走ったり、ジョギングしたりする必要はありません。途中で疲れた場合は、速度を落としたり、止まって休んだりできます。休憩している間も時間は進みます。歩けるようになったら、できるだけ早く再開してください。」
評価者はペースメーカーにならない
評価者が患者の横を一定速度で歩くと、無意識に歩行ペースを誘導する可能性があります。安全確認だけで足りる場合は、コース脇から観察します。
連続SpO2測定や転倒予防のために移動が必要な場合は、患者の速度を誘導しないよう後方から追従します。近接見守りが必要だったこと自体も、次回比較に必要な条件として記録します。
1分ごとの励ましは定型文に統一する
励ましの有無や強さは歩行距離に影響するため、毎回同じ言葉と調子で実施します。定型文以外の追加の励ましや、身ぶりによるペース誘導は避けます。
| タイミング | 定型文 |
|---|---|
| 1分 | 「順調です。あと5分です。」 |
| 2分 | 「その調子です。あと4分です。」 |
| 3分 | 「順調です。半分まで来ました。」 |
| 4分 | 「その調子です。あと2分です。」 |
| 5分 | 「順調です。あと1分です。」 |
| 終了 | 「その場で止まってください。」 |
終了直前の予告を施設で使用する場合も、毎回同じタイミングと文言にそろえます。
途中で休憩してもタイマーは止めない
途中で立ち止まってもテスト失敗ではなく、6分間のタイマーは継続します。患者は立位または座位で休憩でき、可能になった時点で歩行を再開します。
休憩中は、休憩を開始した時刻、再開した時刻、休憩理由、症状、SpO2などを記録します。患者が再開可能な状態であれば、施設で定めた標準フレーズを用いて再開を促します。
患者自身の判断による休憩と、安全上の理由による検査中止は区別します。中止基準に該当した場合は、症状が軽減しても同じテストを自己判断で再開しません。
症状とSpO2を確認して中止を判断する
胸痛、耐え難い呼吸困難、ふらつき、冷汗、顔面蒼白、失神前駆症状などが出現した場合は、直ちに中止します。患者から中止の申し出があった場合も終了します。
- 胸痛または胸部不快感
- 耐え難い呼吸困難
- ふらつき、よろめき、失神前駆症状
- 著明な冷汗
- 顔面蒼白または灰白色の顔色
- 下肢けいれんや歩行継続が困難な疼痛
- 患者本人からの中止希望
- 測定機器や酸素機器の安全を保てない状態
慢性呼吸器疾患を対象とするERS/ATSの実施方法では、連続SpO2測定により最低値を把握し、SpO2が80%未満となった場合に中止するプロトコルが示されています。ただし、実際の中止値は疾患、検査目的、医師の指示、施設基準によって異なります。
開始前に「どの値で中止するか」「回復後にその日の運動を再開できるか」「誰へ報告するか」を決め、患者ごとの指示を優先してください。パルスオキシメータの値は、体動、末梢循環、装着状態の影響も受けるため、波形や脈拍表示、患者症状と合わせて確認します。
標準化を重視する場合は2回実施する
慢性呼吸器疾患で正確なベースラインを得る場合は、学習効果を考慮して2回実施し、長い方の距離を採用する方法が推奨されます。2回目は、症状とバイタルサインが開始前の状態へ十分に回復してから行います。
病棟などで2回実施が難しく1回のみとする場合は、標準法と同等の測定とは扱わず、「1回実施」「練習テストなし」と記録します。経時比較では、次回も同じ回数・条件で実施します。
再評価のたびに必ず2回行うか、初回評価のみ2回行うかは、対象疾患、測定目的、患者の疲労、施設運用を踏まえて統一します。
6分間歩行距離を算出する
6MWDは、完全に歩いたコースの距離と、最後の未完了区間を合計して算出します。
例えば30mコースを8往復し、その後12m進んだ位置で終了した場合は、次のように計算します。
30m × 16区間 + 12m = 492m
周回数と往復数を混同しやすいため、施設の記録用紙では「片道を1区間と数える」「1往復を1周と数える」など、カウント方法を統一します。
距離・症状・生理反応・固定条件を記録する
距離だけでは、変化の理由を判断できません。少なくとも、次の4群をまとめて記録します。
| 分類 | 記録項目 |
|---|---|
| 結果 | 6MWD、歩行区間数、未完了区間、実施回数 |
| 症状 | 前後の呼吸困難・下肢疲労Borg、疼痛、休憩理由 |
| 生理反応 | 心拍数、血圧、開始時・最低・終了時SpO2 |
| 固定条件 | コース長、補助具、装具、酸素流量・デバイス・携行方法、見守り方法、薬剤との時間関係 |
歩行速度の低下、ふらつき、歩隔の変化、補助具への依存、折り返し時の不安定性など、距離だけでは表せない所見も簡潔に残します。
記録例
6MWTを30m直線コースで2回実施。2回目を採用し6MWD 318m。T字杖、室内気、近接見守りで実施。休憩なし。呼吸困難Borg 1→5、下肢疲労Borg 0→3。SpO2 96%から最低89%、終了時90%。心拍数72回/分から108回/分。胸痛・ふらつきなし。前回と同条件。
距離は同一条件での変化を中心に解釈する
6MWDは年齢、性別、身長、体重、疾患、コース条件などの影響を受けるため、距離だけで正常・異常を決めません。予測式を使用する場合は、対象集団と測定方法が患者および施設条件に合っているか確認します。
再評価では、補助具、酸素条件、コース、励まし、実施回数などをそろえ、距離の変化と症状・生理反応の変化を合わせて解釈します。
| 結果 | 解釈するときの視点 |
|---|---|
| 距離が延長した | 酸素、補助具、コース、励まし、学習効果が同じか確認する |
| 距離は同じでBorgが低下した | 同じ歩行量をより少ない症状で行えた可能性がある |
| 距離は同じでSpO2低下が増えた | 呼吸状態や測定条件を確認し、必要に応じて医師へ共有する |
| 距離が短縮し休憩が増えた | 疾患増悪、疼痛、疲労、薬剤、測定条件の違いを確認する |
MCID・MIDは疾患別の参考値として扱う
6MWDの最小重要差は疾患や研究条件によって異なります。COPDでは25m、安定した収縮期心不全では約36mとする報告がありますが、これらは全患者に共通する判定基準ではありません。
個別患者の再評価では、距離の変化が測定条件の差や学習効果で説明できないかを確認し、Borg、SpO2、休憩、歩行の質、患者本人が感じる生活上の変化と合わせて判断します。
6MWTで起こりやすい失敗
最も多い問題は、前回と測定条件が変わっているのに距離だけを比較することです。
| 失敗 | 問題 | 修正 |
|---|---|---|
| 「できるだけ速く」と説明する | 過度な加速や走行を誘発し、標準条件から外れやすい | 「6分間で可能な限り遠くまで。走らない」と説明する |
| コース長が変わる | 折り返し回数が変わり、距離を比較しにくい | 同じ長さ・形状のコースを使用して記録する |
| 評価者が横で歩く | ペースメーカーになる可能性がある | 側方から観察し、必要時は速度を誘導しない位置から追従する |
| 休憩時にタイマーを止める | 6分間の歩行能力を評価できなくなる | タイマーを継続し、停止・再開時刻を記録する |
| 終了時SpO2だけを記録する | 歩行途中の最低値を見逃す可能性がある | 必要時は連続測定し、最低SpO2を記録する |
| 距離だけを記録する | 変化の理由を判断できない | 症状、生理反応、補助具、酸素、休憩を併記する |
リハビリ計画では生活距離と症状を結びつける
6MWTの結果は、歩行耐久性の経時変化や生活場面の負荷を検討する材料として使用します。ただし、6MWDだけから安全な連続歩行距離や運動処方を機械的に決めることはできません。
通院、院内移動、屋外歩行、買い物などに必要な距離と、6MWT中の症状、休憩、SpO2、歩行の質を照合します。そのうえで、歩行時間、休憩間隔、酸素条件、補助具、見守りの必要性を具体化します。
再評価では、距離が延びたかだけでなく、同じ距離をより少ない呼吸困難で歩けたか、休憩が減ったか、酸素化や歩行安定性が改善したかを確認します。
6MWT記録シートPDF
測定条件と結果を同じ様式で残すと、前回との差を解釈しやすくなります。以下のA4記録シートは、患者情報、固定条件、測定結果、症状、バイタルサイン、再評価メモを1枚で記録するための様式です。
PDFプレビューを開く
6MWTでよくある質問
Q. 補助具や酸素は普段どおり使用してよいですか?
A. 原則として、日常的に使用している補助具や酸素を使用します。ただし、補助具の種類、酸素デバイス、流量、携行方法を記録し、再評価時も同じ条件にそろえます。酸素条件を変更した場合は、前回との単純比較を避けてください。
Q. 30mのコースを確保できない場合はどうしますか?
A. 20mなど施設で確保できる直線コースを固定して使用します。短いコースでは折り返し回数が増え、30mコースより距離が短くなる可能性があります。コース長を必ず記録し、異なるコースで得た結果を単純比較しないことが重要です。
Q. 途中で立ち止まったらテストは無効ですか?
A. 無効ではありません。患者は必要に応じて減速・停止・休憩できます。ただし、タイマーは止めず、停止時刻、再開時刻、理由、症状を記録します。安全上の中止基準に該当した場合は、単なる休憩とは区別してテストを終了します。
Q. SpO2が低下した場合は何%で中止しますか?
A. 慢性呼吸器疾患の標準化された実施方法では、SpO2が80%未満となった場合に中止するプロトコルが示されています。ただし、疾患、検査目的、医師の指示、施設基準によって異なります。実施前に患者ごとの中止値と報告手順を確認してください。
Q. 6MWTは必ず2回行いますか?
A. 慢性呼吸器疾患で標準化されたベースラインを得る場合は、学習効果を考慮した2回実施が推奨されます。病棟などで1回のみとする場合は、そのことを記録し、次回も同じ条件で比較します。
次に確認する評価
参考文献
- ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111–117. DOI / PubMed
- Holland AE, Spruit MA, Troosters T, et al. An official ERS/ATS technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44(6):1428–1446. DOI / PubMed
- Beekman E, Mesters I, Hendriks EJM, et al. Course length of 30 metres versus 10 metres has a significant influence on six-minute walk distance in patients with COPD: an experimental crossover study. J Physiother. 2013;59(3):169–176. DOI / PubMed
- Holland AE, Hill CJ, Rasekaba T, et al. Updating the minimal important difference for six-minute walk distance in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91(2):221–225. DOI / PubMed
- Täger T, Hanholz W, Cebola R, et al. Minimal important difference for 6-minute walk test distances among patients with chronic heart failure. Int J Cardiol. 2014;176(1):94–98. DOI / PubMed
- Leung ASY, Chan KKP, Jones AYM, et al. Two 6-minute walk tests are required during hospitalisation for acute exacerbation of COPD. Cardiopulm Phys Ther J. 2015. DOI / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

