NRADLの評価方法|採点・解釈と自動計算ツール

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NRADL の評価方法|採点・解釈・使い方

NRADL( Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire )は、呼吸器疾患で起きやすい「介助は不要でも、息切れや酸素条件の影響で ADL の実用性が落ちる」を可視化する尺度です。BI や FIM だけでは拾いにくい “負担つきの自立” を、速度・息切れ・酸素流量・連続歩行距離で整理できるため、呼吸リハ前後や在宅復帰前後の説明に向いています。

このページで答えるのは、NRADL を いつ使うか / どう採点するか / どう解釈するか です。一方で、呼吸理学療法全体の評価項目や 6 MWT の詳細プロトコルまでは深掘りせず、別ページに役割を分けます。本文後半には、入力しながら合計点を確認できる自動計算ツールと、紙で残せるA4 記録シート PDFも用意しました。

NRADL が役立つ場面

NRADL が強いのは、「自立しているのに疲れる」「動作はできるが途中で止まる」「酸素条件が変わると ADL が崩れる」といった、呼吸器疾患の “生活の詰まり” を可視化できる点です。入院呼吸リハ、外来フォロー、在宅復帰前後など、前後差(反応性) を見たいタイミングで使いやすい尺度です。

BI や FIM は “できた / できない” の把握に強い一方、息切れや速度低下、酸素条件の変化は点数に反映されにくく、呼吸器では過大評価になり得ます。NRADL は、速度・息切れ・酸素 を同時に点数化できるため、運動処方、動作指導、酸素条件の整理へつなげやすくなります。

NRADL の構造( 100 点の意味 )

NRADL は、基本 ADL 10 項目 を「動作速度」「息切れ」「酸素流量」の 3 観点で各 0〜3 点( 4 段階 )評価し、さらに 連続歩行距離( 0 / 2 / 4 / 8 / 10 点 ) を加えて、総得点 100 点で表す尺度です。点数が高いほど “実用的に ADL が回っている” 状態を示し、呼吸リハの効果判定にも向きます。

運用のコツは、「総点だけ」で終わらないことです。どの観点が落ちているか( 速度 / 息切れ / 酸素 ) を分けて読むと、同じ点数でも “何を変えるべきか” が見えてきます。

NRADL と BI / FIM の違い( 比較・使い分け )

NRADL は “呼吸器らしさ” を拾う尺度、BI / FIM は “介助量” を拾う尺度、と捉えると整理しやすいです。急性期〜回復期の ADL 全体は BI / FIM、呼吸器の生活の質や実用性まで詰めるなら NRADL を併用する、という使い分けが現実的です。

NRADL と BI / FIM の違い( 呼吸器リハ運用の観点 )
項目 NRADL BI / FIM 臨床での使い分け
拾える変化 速度・息切れ・酸素条件の変化 介助量( できる / できない ) 呼吸器では NRADL で “実用性” を追う
向いている場面 呼吸リハ前後、外来 / 在宅の経時 病棟 ADL の全体像、介助量共有 退院支援は両方あると説明しやすい
落とし穴 質問の仕方が曖昧だとブレる 呼吸器では過大評価になり得る NRADL は “条件( 酸素 / 休憩 )” を必ず書く

評価の手順( 5 ステップ )

NRADL は “聴取 + 観察” の設計です。毎回同じ順番で回すと、記録が揃い、前後差が読みやすくなります。

  1. 説明・同意:目的( ADL の困りごとを点数化すること )と所要時間を共有する
  2. 前提条件の固定:安静時 SpO₂、酸素デバイス / 流量、増悪徴候の有無を確認する
  3. 10 項目の聴取 / 観察:“できるか” ではなく “どの程度の負担でできるか” を聞く
  4. 連続歩行距離:実測が理想。難しい場合は条件をそろえた聴取で近似する
  5. 合計と分解:総点に加え、速度 / 息切れ / 酸素 のどこが落ちているかをまとめる

採点のコツ:点数をブレさせない 3 つの質問

NRADL は “質問の仕方” で点数が揺れます。次の 3 つをセットで聞くと、速度・息切れ・酸素を分けて解釈しやすくなります。

  • 速度:「普段通りの速さでできますか?ゆっくりならできますか?」
  • 息切れ:「途中で立ち止まりますか?休むと再開できますか?」
  • 酸素:「その動作は同じ流量でできますか?増量や切替は必要ですか?」

ポイントは、患者さんの言葉を “速度 / 息切れ / 酸素” に翻訳して記録 することです。「しんどい」は息切れだけでなく、筋疲労、不安、咳、胸部不快感が混ざることがあります。メモ欄に “しんどさの中身” を一言足すと、介入の当たりがつきます。

連続歩行距離( 0 / 2 / 4 / 8 / 10 点 )の運用

連続歩行距離は、“生活内の移動” を代表するパートです。実測できるなら最良ですが、難しい場合は「屋内 → 屋外」「買い物」「通院」の具体場面で、止まらずに歩ける距離 を条件つきで聴取します。補助具、酸素、坂、階段の影響は別記すると解釈が安定します。

連続歩行距離の記録テンプレ( 条件をそろえる )
点数 距離の目安 記録のコツ 例( 書き方 )
0 〜 50 m 屋内移動の限界を明確にする 病棟内 30 m で停止( 酸素 2 L / 分 )
2 50〜200 m 屋外が “途中休憩前提” か確認する 駐車場まで 150 m、 1 回休憩
4 200〜500 m 買い物動線の可否が焦点になる スーパー 300 m は可能、帰りで息切れ増
8 500 m〜 1 km ペースと休憩で “生活実装” をみる 700 m をゆっくり、休憩なし
10 1 km 以上 活動量の維持指導へ移る 1.2 km を一定ペース( 酸素同条件 )

現場の詰まりどころ( よくある失敗と対策 )

NRADL は “採点の正しさ” 以上に、“条件のそろえ方” で臨床価値が決まります。先に失敗パターンを見ておくと、評価が一気に安定します。

NRADL で起きやすいミス( 原因・対策・記録ポイント )
よくあるミス なぜ起きる? 対策 記録ポイント
「できる」で終わる BI / FIM の聞き方が残る 速度・息切れ・酸素の 3 質問を固定する “ゆっくり / 途中休憩 / 流量変更” を必ず書く
酸素条件が毎回違う デバイスや流量の記録が抜ける 評価の冒頭で条件欄を埋めてから始める デバイス名、流量、 SpO₂、増量基準
息切れと筋疲労が混ざる 「しんどい」に複数要素が含まれる Borg / mMRC を併記し、症状語を分解する 呼吸困難、下肢疲労、不安、咳の有無
前後差が読めない 同じ場面で評価していない “いつ / どこ / 条件” をテンプレ化する 入院何日目、外来何回目、生活場面の一致

安全管理( 中止の目安と観察 )

NRADL は基本的に聴取中心ですが、歩行や模擬動作を絡めるときは安全管理が必須です。施設ルールを優先しつつ、呼吸器では「低酸素」「強い呼吸困難」「胸部症状」を見逃さない運用が重要です。

呼吸リハで中止・中断を考えるサイン( 例 )
観察 対応 記録
SpO₂ 低下 88% 以下が持続、急低下 中断し、酸素条件を再確認する。必要時は連絡する 最低値、回復時間、流量 / デバイス
呼吸困難の増悪 会話困難、著明な努力呼吸 休憩、姿勢調整、呼吸介助を行い、再開可否を判断する Borg、呼吸数、補助筋、チアノーゼ
胸部症状 胸痛、強い動悸、冷汗 即中止し、状態評価と連絡を優先する 発症状況、バイタル、既往
めまい・ふらつき 起立困難、失神前駆 即中止し、転倒予防と状態評価を行う 血圧、起立性の有無、内服

結果の読み方:総点より「どこが落ちているか」

NRADL は、総点だけで結論を出すよりも、速度 / 息切れ / 酸素 の内訳で “介入のレバー” を決めるのが実践的です。速度が落ちるなら動作効率や筋持久力、息切れが強いならペーシングや呼吸困難対処、酸素が増えるならデバイス教育や活動時条件の整理が優先になります。

また、退院時や外来フォローでは、同日に 6 MWT、mMRC、Borg などを併記すると、「 ADL の改善がどの要素の改善に乗っているか」を説明しやすくなります。総点の上下だけでなく、理由の一言メモ を残すことが大切です。

NRADL の内訳から次の一手を決める早見表
落ちている観点 考えやすい背景 次の一手
速度 ペース配分不良、下肢持久力低下、動作効率低下 ペーシング指導、動作分解、持久力練習の優先度を上げる
息切れ 呼吸困難管理不足、不安、呼吸パターンの乱れ 呼吸法、休憩位置の設計、Borg / mMRC の併記で症状を可視化する
酸素 活動時条件が未整理、携行やデバイス操作が不安定 デバイス教育、流量条件の共有、活動場面ごとの条件整理を行う
歩行距離 運動耐容能低下、屋外移動の自信低下 6 MWT 併記、屋内外の目標距離設定、外出動線の再設計を行う

自動計算ツール

NRADL をその場で入力して合計点と内訳を確認したいときは、下の自動計算ツールが使えます。記事内では初期非表示にしているので、必要なときだけ開いて使ってください。

ダウンロード( 印刷用 )

評価時の説明・記録をそろえたいときは、下の PDF をそのまま使えます。ボタンから開いて印刷し、必要ならプレビューで紙面を確認してください。

NRADL 記録シート( A4 PDF )

NRADL の固定条件、採点欄、再評価メモを 1 枚にまとめた印刷用シートです。病棟や外来で「条件をそろえて比較したい」ときに使いやすい形にしています。

PDF を開く(ダウンロード)

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よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. NRADL は「実測」しないとダメですか?

A. 可能なら実測が望ましいですが、臨床では聴取でも運用できます。重要なのは、毎回「補助具・酸素条件・休憩の有無」をそろえて記録し、前後差が読める形にすることです。連続歩行距離は、生活動線( 屋内 / 屋外 / 買い物 )で具体化するとブレが減ります。

Q2. BI / FIM が高いのに、NRADL が低いのはなぜですか?

A. BI / FIM は介助量を中心に評価するため、「息切れでゆっくり」「途中休憩」「酸素が必要」といった “負担つきの自立” が点数に反映されにくいことがあります。NRADL はその部分を拾う設計なので、矛盾ではなく補完関係と考えると整理しやすいです。

Q3. 前後差は何点くらい見ればよいですか?

A. 一律の閾値よりも、「同じ条件で測れたか」と「内訳がどう変わったか( 速度 / 息切れ / 酸素 )」を優先してください。たとえば、総点の変化が小さくても “酸素条件が安定した”“途中休憩が減った” なら、臨床的には大きい変化です。

Q4. 50 点前後はどう解釈すればよいですか?

A. cut-off として固定的に使うより、同じ条件での前後差と内訳( 速度 / 息切れ / 酸素 )を優先して読みます。実務では、介入強化や退院支援の説明が必要なサインとして扱うと使いやすいです。

次の一手

NRADL は単独で完結させるより、症状評価や運動耐容能評価と並べると強くなります。続けて読むなら、まずは全体像、その次に実測系の代表指標を確認する流れがおすすめです。


参考文献

  • 山口卓巳, 沖侑大郎, 山本暁生, ほか. 呼吸器疾患特異的 ADL 評価. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2022;31(1):105-109. doi:10.15032/jsrcr.20-28
  • 松本友子, 田中貴子, 松木八重, ほか. The Nagasaki University Respiratory ADL questionnaire:NRADL の反応性の検討. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2008;18(3):227-230. doi:10.15032/jsrcr.18.3_227
  • 岡本一紀, 金田瑠美, 北村朋子, ほか. The Nagasaki university Respiratory ADL Questionnaire( NRADL )と BODE index との関係. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2017;27(1):36-40. doi:10.15032/jsrcr.27.1_36
  • Spruit MA, Singh SJ, Garvey C, et al. Key concepts and advances in pulmonary rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med. 2013;188(8):e13-e64. doi:10.1164/rccm.201309-1634ST
  • Holland AE, Cox NS, Houchen-Wolloff L, et al. Defining modern pulmonary rehabilitation: An official American Thoracic Society workshop report. Ann Am Thorac Soc. 2021;18(12):e12-e29. doi:10.1513/AnnalsATS.202102-146ST

著者情報

rehabilikun のプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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