- 呼吸理学療法の評価項目|最初は「安全→症状→機能→運動→排痰」で確認する
- 呼吸理学療法の評価項目を5段階で整理する
- 最初に安全性と評価を中止・延期する条件を確認する
- 呼吸困難はBorg・mMRC・D-12を目的で使い分ける
- 観察・身体所見では安静時から動作時への変化を見る
- スパイロメトリーは測定品質を確認してからパターンを解釈する
- 呼吸筋力はMIP・MEP・SNIPを目的に応じて選ぶ
- 運動耐容能は6MWTを基本に目的に応じてISWT・CPETを選ぶ
- 咳嗽・排痰能力は咳の質とPCFを組み合わせて判断する
- 呼吸理学療法の評価項目一覧
- 評価条件と判断根拠を同じ書式で記録する
- 呼吸評価の記録シートPDF
- 呼吸評価で比較できなくなる3つの失敗
- 評価結果を介入と再評価へつなげる
- 呼吸理学療法の評価でよくある質問
- 次に確認する評価
- 参考文献
- 著者情報
呼吸理学療法の評価項目|最初は「安全→症状→機能→運動→排痰」で確認する
呼吸理学療法の評価では、すべての検査を一度に行うのではなく、安全→症状→機能→運動→排痰の順に確認することが重要です。最初に中止・相談が必要な状態を見分け、息切れや生活上の困りごとを把握してから、呼吸機能、運動耐容能、咳嗽・排痰能力へ進みます。
本記事では、呼吸評価の項目を列挙するだけでなく、初回にそろえる項目、目的に応じて追加する検査、前回と比較するために固定する条件を整理します。6分間歩行試験や各尺度の詳細な手順は各論記事に分け、ここでは評価項目の選び方と順番に絞って解説します。
呼吸評価に関する記事をまとめて確認できます
呼吸理学療法の評価項目を5段階で整理する
評価項目は、①安全、②症状、③機能、④運動、⑤排痰の5段階で整理します。この順番を固定すると、検査を増やす前に「今の患者に何が必要か」を判断しやすくなります。

| 順番 | 確認する項目 | 判断すること |
|---|---|---|
| 1.安全 | 意識、胸痛、失神前兆、呼吸状態、SpO₂、循環動態、歩行の破綻 | 評価を進められるか、中止・報告が必要か |
| 2.症状 | 息切れ、疲労、痰、不安、生活上の困りごと | 患者が最も困っている場面と評価目標 |
| 3.機能 | 呼吸様式、胸郭運動、肺機能、呼吸筋力、ADL | 症状や活動制限に関係する要因 |
| 4.運動 | 6MWT、必要に応じてISWT・CPET | 運動耐容能、負荷設定、再評価指標 |
| 5.排痰 | 咳嗽の質、痰の性状、PCF、介助前後の変化 | 自力排痰の可否と補助方法 |
初回にまずそろえる項目は、問診・既往・治療状況、観察と身体所見、安静時および動作時のSpO₂、呼吸困難、ADL、簡単な動作または歩行時の反応です。スパイロメトリー、呼吸筋力、PCF、フィールド歩行試験などは、患者の状態と評価目的に応じて追加します。
画像、採血、心電図、酸素療法の設定、薬物治療など、理学療法士だけでは完結しない情報は、診療録や多職種から確認します。評価項目を増やすことより、得られた所見が介入方針のどこに影響するかを明確にすることが重要です。
最初に安全性と評価を中止・延期する条件を確認する
呼吸機能や歩行距離を測る前に、評価を進められる状態かを確認します。意識状態、安静時の呼吸困難、胸痛、失神前兆、循環動態、SpO₂の変化、酸素療法の条件、直近の病状変化を確認してください。
SpO₂は数値だけで判断せず、測定不良の可能性、患者の平常値、酸素投与条件、症状、呼吸数、顔色、会話の可否などと合わせて評価します。安静時に問題がなくても、会話、起立、移乗、短距離歩行で急に変化する場合があります。
- 新たに出現した胸痛や失神前兆がある
- 安静を保てないほど呼吸困難が強い
- 意識状態や循環動態が普段と異なる
- 動作に伴って症状やSpO₂が急激に悪化する
- 歩行や立位の安全を保てない
これらを認めた場合は、施設の基準と医学的指示を優先し、評価の中止、負荷の軽減、医師・看護師への報告を判断します。すべての患者へ共通する単一のSpO₂中止値を設定するのではなく、疾患、酸素療法、平常値、医師の指示を確認してください。
呼吸困難はBorg・mMRC・D-12を目的で使い分ける
呼吸困難の評価では、運動中の強さ、生活上の制限、症状負担の広がりのどれを知りたいかで尺度を選びます。
| 尺度 | 把握しやすいこと | 主な使用場面 |
|---|---|---|
| Borg CR10 | その時点の呼吸困難の強さ | 運動前後、運動中の負荷調整 |
| mMRC | 息切れによる生活・歩行の制限 | 初回評価、外来・在宅での経過確認 |
| D-12 | 呼吸困難の身体的・情動的側面 | 症状負担を多面的に確認したい場合 |
Borgは、SpO₂や心拍数とは別の時点で聞かず、同じ動作・同じ時点で記録します。たとえば歩行終了時の最低SpO₂と、数分間休息した後のBorgを並べると、同じ負荷への反応として比較できません。
尺度を変更すると前回との比較が難しくなるため、同じ患者を追跡するときは、説明方法、評価場面、記録書式をそろえます。
観察・身体所見では安静時から動作時への変化を見る
観察では、呼吸数だけでなく、呼吸リズム、吸気と呼気の関係、呼吸補助筋、奇異性呼吸、口すぼめ呼吸、起座位への依存、胸郭運動の左右差、咳嗽、痰を確認します。
重要なのは、安静時の所見だけで終わらせないことです。会話、寝返り、起き上がり、端座位、立位、歩行のどこで呼吸努力や症状が増えるかを段階的に確認します。
ベッドサイドでの観察項目と記録の組み立ては、呼吸評価の基本|ベッドサイドで迷わない観察と記録で詳しく整理しています。
- 呼吸:呼吸数、リズム、深さ、努力性、胸腹部の動き
- 酸素化:安静時と動作時のSpO₂、酸素投与条件
- 症状:息切れ、疲労、胸部症状、不安
- 聴診・触診:呼吸音、胸郭運動、左右差
- 咳・痰:咳嗽の強さ、痰の量・色・粘稠度、喀出の可否
- 活動:会話、起居、移乗、歩行での変化
スパイロメトリーは測定品質を確認してからパターンを解釈する
スパイロメトリーでは、FEV1、FVC、FEV1/FVCなどを確認します。ただし、数値を見る前に、十分な吸気、開始の良否、咳、早期終了、マウスピース周囲の漏れ、再現性を確認する必要があります。
FEV1/FVCの低下は気流閉塞を考える材料になります。一方、FVCやVCの低下だけで拘束性換気障害を確定することはできません。測定品質、基準値、症状、画像、肺気量などの追加情報と統合して判断します。
理学療法では、スパイロの値だけで運動負荷を決めず、呼吸困難、動作時SpO₂、運動耐容能、ADLと組み合わせて介入方針へつなげます。
- 測定前に方法を説明し、必要に応じて練習する
- 体位、機器、測定条件を記録する
- 咳、漏れ、努力不足など測定品質に関わる所見を残す
- 単回値ではなく、採用された測定と再現性を確認する
- 前回比較では測定条件の違いを確認する
呼吸筋力はMIP・MEP・SNIPを目的に応じて選ぶ
呼吸筋力は、肺容量だけでは説明できない呼吸困難、換気不全、咳嗽力低下、神経筋疾患などで評価を検討します。代表的な指標にはMIP、MEP、SNIPがあります。
| 指標 | 主にみる機能 | 注意点 |
|---|---|---|
| MIP | 吸気筋力 | 努力、密閉、開始肺気量の影響を受ける |
| MEP | 呼気筋力 | 漏れ、頬の使用、努力の影響を受ける |
| SNIP | 鼻腔からの吸気圧 | 鼻閉、手技理解、反復方法の影響を受ける |
MIPやMEPが低値でも、直ちに筋力低下と決めず、理解、努力、疲労、漏れ、測定姿勢を確認します。SNIPも単独で結論を出す検査ではなく、他の呼吸筋力評価や臨床所見を補完する指標として扱います。
再評価では、同じ体位、同じ機器、同じ説明、十分な休息をそろえ、採用値と測定時の問題を記録します。
運動耐容能は6MWTを基本に目的に応じてISWT・CPETを選ぶ
歩行可能な患者の運動耐容能を実用的に確認する代表的な方法が6分間歩行試験です。評価では6分間歩行距離だけでなく、SpO₂、心拍数、Borg、休止、症状、歩容、酸素投与条件を記録します。
6MWTは、コース、声かけ、休止方法、酸素条件が変わると結果の比較が難しくなります。前回との差を介入効果として判断するには、毎回同じ条件で実施することが重要です。
詳細な準備、実施方法、記録項目は、6分間歩行テストの実施手順で確認できます。
| 評価 | 主な目的 | 選択する場面 |
|---|---|---|
| 6MWT | 日常生活に近い歩行耐容能の把握 | 初回評価、介入前後、経過確認 |
| ISWT | 外部ペースによる漸増負荷への反応 | より標準化された漸増負荷を用いたい場合 |
| CPET | 運動制限因子の詳細な分析 | 換気、循環、代謝などの限界因子を詳しく調べる場合 |
記録例:6MWD 〇〇m/酸素条件 〇〇/最低SpO₂ 〇〇%/Borg呼吸困難 事前〇→終了時〇/休止〇回/中止・休止理由/歩容・症状
咳嗽・排痰能力は咳の質とPCFを組み合わせて判断する
排痰評価では、PCFの数値だけでなく、十分な準備吸気ができるか、声門を閉鎖できるか、呼気筋力を発揮できるか、痰を口腔外まで出せるかを確認します。
PCFは自力排痰の可否や、介助咳嗽・機器併用を検討する材料になります。ただし、疾患、測定機器、気管切開の有無、体位などで解釈が変わるため、単一の数値だけで介助方法を決定しません。
- 測定時の体位
- 自力咳嗽か介助咳嗽か
- 補助具・機器の有無
- 測定回数と採用値
- 痰の量、色、粘稠度
- 測定後の疲労、息切れ、SpO₂変化
低値または排痰困難を認める場合は、体位調整、十分な吸気、呼吸介助、徒手的な咳嗽介助などの前後で再評価し、どの補助方法が有効だったかを記録します。
呼吸理学療法の評価項目一覧
次の表は、評価項目を「いつ確認するか」で整理したものです。再評価は一律の週数で決めず、状態変化、介入内容、退院・在宅移行などの判断時期に合わせます。
| 項目 | 主な目的 | 条件固定のポイント | 再評価する場面 |
|---|---|---|---|
| 問診・観察・身体所見 | 安全性、症状、病状変化の把握 | 酸素条件、体位、動作段階を記録 | 毎回の介入前、症状変化時 |
| Borg | その時点の呼吸困難と負荷調整 | 同じ説明、同じ動作、同じ時点 | 運動前後、負荷変更時 |
| mMRC・D-12 | 生活上の制限、症状負担の把握 | 同じ尺度と説明を使用 | 初回、生活状況や治療方針の変化時 |
| 6MWT・ISWT | 運動耐容能、介入効果、負荷設定 | コース、声かけ、酸素条件、補助具 | プログラム開始前後、状態・方針変更時 |
| スパイロメトリー | 換気機能のパターンと経過の把握 | 測定品質、体位、機器、採用値 | 医学的評価時、治療・病状変化時 |
| MIP・MEP・SNIP | 呼吸筋力低下の把握 | 体位、開始条件、密閉、休息 | 呼吸筋介入の前後、筋力変化が疑われる時 |
| PCF | 咳嗽・排痰能力と補助方法の検討 | 体位、介助、機器、測定方法 | 排痰状態の変化時、補助方法の導入前後 |
| CPET | 運動制限因子の詳細な分析 | 専門的な検査条件と医療体制 | 原因分析や治療方針の決定が必要な時 |
評価条件と判断根拠を同じ書式で記録する
比較できる記録には、測定値だけでなく、何を、どの条件で実施し、どの反応から何を判断したかを残します。
- 条件:体位、酸素流量・デバイス、補助具、実施時刻
- 負荷:安静、会話、起立、歩行、運動内容
- 結果:SpO₂、心拍数、Borg、距離、休止、PCFなど
- 症状:息切れ、疲労、胸部症状、めまい、痰
- 判断:負荷を継続・変更・中止した根拠
- 次回:再測する項目と固定する条件
記録例:酸素〇L/分・鼻カニューレ、歩行器使用。病棟廊下を〇m歩行し、SpO₂は〇%から最低〇%、Borg呼吸困難は〇から〇へ上昇。胸痛・めまいなし。〇mで休止を要したため、次回も同一酸素条件・歩行器・経路で再評価する。
呼吸評価の記録シートPDF
観察、呼吸困難、運動耐容能、咳嗽・排痰能力を同じ書式で記録できるA4シートです。前回比較に必要な体位、酸素条件、測定値、症状もまとめて記載できます。
記事内でPDFをプレビューする
呼吸評価で比較できなくなる3つの失敗
呼吸評価では、測定できないことより、条件が毎回変わって前回と比較できないことが問題になります。
SpO₂とBorgの測定時点が異なる
歩行中の最低SpO₂と、数分間休息した後のBorgを並べても、同じ時点の反応にはなりません。運動終了時、休止時など、記録するタイミングをあらかじめ決めます。
体位・酸素・補助具が記録されていない
PCF、呼吸筋力、歩行試験は、体位、酸素条件、補助具、介助方法によって結果が変わります。数値だけでなく条件を必ず残します。
1つの測定値だけで介入を決める
スパイロ、SpO₂、Borg、6MWD、PCFのいずれも、単独で介入方針を決めるものではありません。症状、身体所見、ADL、患者の目標と統合して判断します。
評価結果を介入と再評価へつなげる
評価後は、所見を並べるだけでなく、次の介入と再評価項目を決めます。
| 主な所見 | 検討する対応 | 再評価する項目 |
|---|---|---|
| 動作時に息切れが強い | 負荷、休息、ペーシング、動作方法を調整 | 同一動作時のBorg、SpO₂、所要時間 |
| 運動時の酸素化が低下する | 負荷量、酸素条件、安全管理を多職種で確認 | 同一負荷時のSpO₂、症状、歩行距離 |
| 運動耐容能が低い | 持久力、筋力、呼吸困難、循環反応を分けて検討 | 6MWD、Borg、休止、ADL |
| 咳嗽・排痰が不十分 | 体位、吸気量、呼吸介助、咳嗽介助を検討 | PCF、痰の喀出、介助前後の変化 |
| 呼吸筋力低下が疑われる | 測定品質を再確認し、適応に応じて介入を検討 | MIP・MEP・SNIP、症状、換気状態 |
再評価の時期は一律に決めず、介入効果を確認できる時点、病状や治療内容が変わった時、退院・在宅移行など次の意思決定が必要な時に設定します。
呼吸理学療法の評価でよくある質問
初回評価では何を最低限そろえればよいですか?
問診と治療状況、観察・身体所見、安静時と動作時のSpO₂、呼吸困難、ADL、簡単な動作または歩行時の反応をまず確認します。スパイロ、呼吸筋力、PCF、歩行試験は、状態と評価目的に応じて追加します。
呼吸評価は毎回すべて実施しますか?
毎回すべてを測定する必要はありません。安全性、症状、当日の変化は毎回確認し、6MWT、スパイロ、呼吸筋力、PCFなどは、介入効果や治療方針を判断する必要がある時に同じ条件で再評価します。
BorgとmMRCはどちらを使えばよいですか?
運動中や運動前後の呼吸困難を確認するならBorg、生活上の息切れによる制限を段階的に把握するならmMRCが適しています。目的が異なるため、必要に応じて併用します。
評価値が悪化したら、すぐに介入効果がないと判断しますか?
まず体位、酸素条件、補助具、測定方法、疲労、病状変化など前回との条件差を確認します。条件が異なる測定値は単純比較せず、同じ条件で再確認してから判断します。
次に確認する評価
参考文献
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会, 日本呼吸理学療法学会, 日本呼吸器学会. 呼吸リハビリテーションに関するステートメント. 2018.
- Holland AE, Spruit MA, Troosters T, et al. An official European Respiratory Society/American Thoracic Society technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44(6):1428-1446. DOI
- Graham BL, Steenbruggen I, Miller MR, et al. Standardization of spirometry 2019 update: an official American Thoracic Society and European Respiratory Society technical statement. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(8):e70-e88. DOI / PubMed
- Laveneziana P, Albuquerque A, Aliverti A, et al. ERS statement on respiratory muscle testing at rest and during exercise. Eur Respir J. 2019;53(6):1801214. DOI / PubMed
- Bestall JC, Paul EA, Garrod R, Garnham R, Jones PW, Wedzicha JA. Usefulness of the Medical Research Council dyspnoea scale as a measure of disability in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Thorax. 1999;54(7):581-586. DOI / PubMed
- Yorke J, Moosavi SH, Shuldham C, Jones PW. Quantification of dyspnoea using descriptors: development and initial testing of the Dyspnoea-12. Thorax. 2010;65(1):21-26. DOI / PubMed
- 岩﨑円, ほか. 本邦における呼吸理学療法評価の実態調査. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2025;34(3):253-259. DOI
- Brennan M, McDonnell MJ, Duignan N, Gargoum F, Rutherford RM. The use of cough peak flow in the assessment of respiratory function in clinical practice: a narrative literature review. Respir Med. 2022;193:106740. DOI / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

