深部感覚の評価方法|位置覚・振動覚をどう測り、どう記録するか
深部感覚の評価では、位置覚・運動覚と振動覚を同じ条件で繰り返せる形にして記録することが重要です。位置覚は、指や足趾を側面から把持し、閉眼下で小さく上下へ動かして方向を確認します。振動覚では、一般に 128 Hz の音叉を用いて遠位部から知覚を確認します。
本記事では PT・OT などを対象に、位置覚・振動覚の具体的な評価手順、迷いやすいポイント、再評価しやすい記録方法まで整理します。なお、左右各 5 試行は一律の診断基準ではなく、本記事と配布 PDF で再評価条件をそろえるための運用例として扱います。
感覚検査全体の進め方から確認する
結論:深部感覚は「検査条件」と「結果」を分けて記録する
深部感覚を再評価しやすくするには、単に「低下あり」と残すのではなく、どこを・どの条件で・どの方法で確認したかを結果とセットで記録します。
本記事では、ベッドサイドで整理しやすい運用例として位置覚・運動覚の確認 → 振動覚 → 動作との照合の順で説明します。ただし、この順番自体が唯一の標準手順という意味ではありません。
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| 項目 | 基本的な考え方 | 本記事・PDFでの運用例 |
|---|---|---|
| 視覚条件 | 説明・練習後は閉眼で確認する | 閉眼条件を記録する |
| 位置覚・運動覚 | 遠位から小さな上下運動を確認する | 正答 / 試行で残す |
| 試行回数 | 一律の回数だけで正常・異常を決めない | 再評価用に左右各 5 試行でそろえる |
| 振動覚 | 128 Hz 音叉を用い、遠位から確認する | 部位・左右差・消失の違いを残す |
| 動作所見 | 感覚検査とは分けて観察する | 立位・歩行・上肢操作との関連を追記する |

位置覚・運動覚の評価手順|指・母趾を小さく上下へ動かす
位置覚のベッドサイド評価では、遠位の指・足趾から開始し、側面を把持して、閉眼下で小さな上下運動を識別できるかを確認します。把持方法や動かし方をそろえ、触圧覚など別の手がかりをできるだけ与えないことがポイントです。
位置覚と運動覚は厳密には分けて考える
位置覚は四肢や関節がどの位置にあるかを認識する感覚、運動覚は身体や関節の動きを認識する感覚です。
一方、一般的な神経診察では、手指や足趾をわずかに上下へ動かし、その方向を答えてもらう方法が関節位置覚を確認するベッドサイド検査として用いられます。本記事では臨床で分かりやすいよう「位置覚の評価」を中心に説明しますが、実際に何を提示し、何を回答してもらったかまで記録しておくと解釈しやすくなります。
位置覚・運動覚の実施手順
- 検査する指または足趾を隣の指から離し、触覚による手がかりを減らします。
- 検査する指・足趾を上下面から強く挟まず、側面から軽く把持します。
- まず開眼で「上」「下」の方向を示し、課題を理解できていることを確認します。
- 閉眼してもらい、小さな角度で上下へランダムに動かして方向を答えてもらいます。
- 小さな動きを識別できない場合は運動幅を大きくし、それでも困難であれば、より近位の関節で確認します。
| 項目 | そろえる条件 | 避けたい方法 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 把持 | 指・足趾の側面を把持 | 上下面を強くつまむ | 母趾末節を側面把持 |
| 運動 | 小さな上下運動から開始 | 最初から大きく動かす | 小角度の上下運動 |
| 視覚 | 課題確認後は閉眼 | 試行中に開眼・閉眼を混在 | 閉眼条件 |
| 提示順 | 上下を予測しにくい順で提示 | 一定の順番で提示 | 上下ランダム提示 |
| 試行数 | 比較する場合は同じ回数に固定 | 異なる回数の結果をそのまま比較 | 右 4 / 5、左 2 / 5 |
5 試行の位置づけ:左右各 5 試行は、本記事と配布 PDF で再評価条件をそろえるための運用例です。5 回中の正答数だけで正常・異常を一律に判定する基準ではありません。
振動覚の評価手順|128 Hz音叉を遠位から確認する
振動覚は、一般に128 Hz の音叉を用いて、遠位の関節や骨性部位から知覚を確認します。振動を感じるかだけでなく、どこで知覚できるか、左右差があるか、患者が振動の消失をどの時点で認識するかを確認すると所見を整理しやすくなります。
振動覚の実施手順
- 検査方法を説明し、振動している感覚を理解してもらいます。
- 128 Hz の音叉を振動させ、遠位の関節または骨性部位へ当てます。
- 患者に振動を感じるか確認します。
- 振動が消えたと感じた時点を答えてもらいます。
- 必要に応じて反対側や、検者が同じ関節を介して感じる消失時点と比較します。
- 遠位で知覚できない場合は、より近位の関節・骨性部位へ移ります。
| 項目 | 確認すること | 注意点 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 音叉 | 128 Hz | 再評価時に異なる条件を混在させない | 128 Hz 音叉使用 |
| 評価部位 | 遠位の関節・骨性部位から確認 | 毎回異なる部位だけで比較しない | 母趾 IP 関節、内果 |
| 知覚 | 知覚の有無と消失時点 | 「感じた」のみで終了しない | 右は左より早く消失 |
| 比較 | 左右差、必要時は検者との比較 | 左右差だけを正常判定の根拠にしない | 右で消失が早い |
| 遠位で知覚困難 | より近位へ移動 | 1 部位だけで分布を決めない | 母趾で知覚困難、内果では知覚あり |
深部感覚の記録方法|「部位・条件・結果」を残す
深部感覚の記録では、結果だけでなく検査条件を残すことが重要です。「深部感覚低下」とだけ書くよりも、位置覚と振動覚を分け、部位と条件まで残したほうが再評価や多職種共有につなげやすくなります。
位置覚で正答数を使う場合も、その数字だけではなく、閉眼、評価部位、提示方法などをセットで残します。振動覚では、使用した音叉、評価部位、左右差や消失時点の違いを記録します。
| 評価 | 記録する要素 | 記録例 |
|---|---|---|
| 位置覚・運動覚 | 部位 + 条件 + 反応 | 母趾、閉眼・小角度上下運動:右 3 / 5、左 5 / 5 |
| 振動覚 | 部位 + 音叉 + 左右差・消失 | 128 Hz、内果:右は左より早く消失 |
| 動作所見 | 場面 + 観察した変化 | 閉眼立位で動揺増大。歩行では足元を視覚確認する場面あり |
| まとめ | 検査所見 + 次に確認すること | 右下肢で深部感覚低下を疑う。分布、反射、筋力を追加確認 |
「3 / 5」などの正答数を残す場合は、次回も同じ試行数・視覚条件・評価部位・提示方法で比較します。条件が異なる結果を、そのまま改善・悪化として比較しないことが重要です。
深部感覚の記録用紙 PDF
位置覚・振動覚・動作所見を A4 1 枚で残せる記録用紙です。本記事では再評価時の条件をそろえやすくするため、位置覚の記録欄を左右各 5 試行の形式にしています。5 試行は診断上の一律のカットオフではなく、記録条件を固定するための運用例として使用してください。
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深部感覚の所見を動作へ照合する
位置覚や振動覚の低下を確認したら、検査結果だけで終わらせず、立位・歩行・上肢操作などで視覚への依存や動作の変化がないかを別に観察します。ただし、動作所見だけから深部感覚障害と断定しないことが重要です。
たとえば、閉眼によって立位の動揺が大きくなる場合は下肢の位置覚低下が示唆されますが、重度の両側性前庭機能障害などでも同様の変化が起こり得ます。位置覚・振動覚そのものの検査結果と、その他の神経学的所見を組み合わせて解釈します。
深部感覚低下が疑われた場合は、次に感覚障害の分布、筋力、腱反射、その他の神経学的所見を確認し、どの部位の障害を考えるべきか絞っていきます。
深部感覚評価で迷いやすいポイント|NGと修正方法
深部感覚評価がぶれる主な原因は、刺激条件や記録条件が評価ごとに変わることです。特に、位置覚で触覚の手がかりを与えること、最初から大きく動かすこと、振動覚を 1 部位だけで判断することに注意します。
| NG | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 指や足趾を上下面から強くつまむ | 圧刺激が方向判断の手がかりになる | 側面を軽く把持する |
| 最初から大きく上下へ動かす | 小さな運動を識別できるか確認できない | 小さな運動から開始する |
| 上下を一定の順番で提示する | 予測による正答が入りやすい | 提示順を予測しにくくする |
| 5 試行を正常・異常の公式基準として扱う | 検査法による違いを無視してしまう | 5 試行は再評価条件をそろえる運用例として扱う |
| 振動覚を左右差だけで判断する | 両側性の低下を捉えにくい | 部位・遠位近位差・必要時は検者との比較も確認する |
| 閉眼立位の悪化だけで深部感覚障害と断定する | 他の要因を区別できない | 位置覚・振動覚と他の神経所見を合わせて判断する |
よくある質問(FAQ)
深部感覚評価で特に迷いやすい、位置覚の用語、試行回数、振動覚との違い、動作所見の解釈を整理します。
Q1. 「上・下」を答えてもらう検査は位置覚ですか、運動覚ですか?
厳密には、身体や関節の位置を認識する位置覚と、動きを認識する運動覚は区別されます。一方、一般的な神経診察では、指や足趾を小さく上下へ動かし、その方向を答えてもらう方法が関節位置覚のベッドサイド検査として用いられています。記録では用語だけでなく、実際に行った方法を残しておくと解釈しやすくなります。
Q2. 位置覚は左右各 5 回行えばよいですか?
5 回がすべての患者や検査法に共通する診断基準というわけではありません。本記事と配布 PDF では、再評価時の条件をそろえるための運用例として左右各 5 試行を採用しています。経時比較では、回数だけでなく評価部位、閉眼条件、運動幅、提示方法もそろえてください。
Q3. 振動覚が低下していても位置覚が保たれることはありますか?
位置覚と振動覚は別々に確認し、一方の結果だけで深部感覚全体を正常・異常とまとめないことが重要です。どの感覚が、どの部位で、どのように変化しているかを分けて記録し、他の神経学的所見と合わせて解釈します。
Q4. 閉眼すると立位が悪化すれば、深部感覚障害と考えてよいですか?
それだけでは断定できません。閉眼による立位悪化は下肢の位置覚低下を示唆する所見のひとつですが、前庭系など他の要因でも生じます。位置覚・振動覚、筋力、反射、歩行など他の所見と合わせて判断します。
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参考文献
- Han J, Waddington G, Adams R, et al. Assessing proprioception: A critical review of methods. J Sport Health Sci. 2016;5(1):80-90. DOI: 10.1016/j.jshs.2014.10.004(PMID: 30356896)
- Chong PS, Cros DP. Technology literature review: quantitative sensory testing. Muscle Nerve. 2004;29(5):734-747. DOI: 10.1002/mus.20053(PMID: 15116380)
- Reimer M, Forstenpointner J, et al. Sensory bedside testing: a simple stratification approach for sensory phenotyping. PAIN Rep. 2020;5(3):e820. DOI: 10.1097/PR9.0000000000000820(PMID: 32903958)
- Bigley GK. Sensation. In: Walker HK, Hall WD, Hurst JW, editors. Clinical Methods: The History, Physical, and Laboratory Examinations. 3rd ed. Boston: Butterworths; 1990. Chapter 67. Available from: NCBI Bookshelf.
- Newman G, Levin MC. 感覚の評価. MSDマニュアル プロフェッショナル版. Updated December 2023. Accessed August 11, 2026. Available from: MSDマニュアル.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級

