SAS分類(心不全)の使い方|最低不可METとPDF

評価
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SAS(心不全)の使い方(結論:最低不可 MET を 1 つ決める)

SAS( Specific Activity Scale ) は、心不全などで「どの活動強度から症状が出るか」を METs で半定量化する評価です。この記事で決めるのは、外来や病棟で SAS をどう聞き、最低不可 MET をどう決め、どう記録するかです。定義だけで終わらせず、運動処方や生活指導の入口として使える形まで整理します。

答えることは “SAS 単体の取り方と残し方” です。心不全評価全体の流れや、NYHA との詳しい比較を深掘りしすぎるページではありません。まずは 「できない(症状が出る)最も軽い活動」 を 1 つ決め、条件付きで残せるようになることをゴールにします。

評価の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。今の職場で教育体制がない、相談相手がいない、教材に触れにくい、見本となる評価が少ないと感じるなら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。

評価は「実施 → 記録 → 解釈 → 次の一手」までが 1 セット。ブレない型を先に作ると回ります。 PT キャリアガイドを見る

評価方法(外来 3 分で回す “SAS の取り方”)

SAS のコツは、「できる活動」を並べることではなく、“できない(症状が出る)最も軽い活動” を決めることです。患者さんの「歩ける」「家事はできる」は、そのままだと強度が曖昧です。速度、途中休憩、手すり、荷物、坂や階段の有無をそろえて、次回も同じ条件で聞ける形にします。

問診は、普段の生活に近い活動から入って、症状が出る強度帯を挟み撃ちすると決めやすくなります。最後に症状の種類・出現タイミング・条件を 1 行で残すと、担当が変わっても再評価がブレにくくなります。

SAS分類の決め方を5ステップで示した図版
SAS は「できる活動」ではなく、「できない最も軽い活動」を拾うとブレにくくなります。
SAS を 3 分で取る手順(問診 → 判定 → 記録)
ステップ やること 質問の例 記録に残すポイント
1 生活の基準を確認 「普段、外にどのくらい出ますか?階段や坂はありますか?」 生活範囲、階段・坂、補助具の有無
2 代表活動で “できる / できない” を切る 「平地の普通歩行は大丈夫ですか?急ぐとどうですか?」 症状(息切れ / 胸部症状 / 下肢疲労)と出現タイミング
3 境界を詰める 「階段 1 階分では?途中で止まりますか?」 途中休憩、手すり、荷物、歩行速度
4 最低不可 MET を決める 「“これ以上だとつらい” のはどの活動ですか?」 “できない最も軽い活動” の MET 目安
5 再評価条件を固定 「次回も同じ条件で比べます」 速度、休憩、補助具、環境、体調差

SAS クラスの目安(METs を “実務で使う” ための早見)

SAS は便利ですが、NYHA と厳密に 1 対 1 で対応づける尺度ではありません。そのため、下の表は実務上の目安として使い、「表は入口、判定は条件付き」で運用するのが安全です。

ポイントは、患者さんの言葉をそのまま点数化しないことです。「歩くときつい」は、普通歩行なのか、早歩きなのか、坂があるのかで METs が変わります。代表活動を施設内で決めておくと、再現性が上がります。

SAS クラスの目安(心不全の活動度を METs でみる実務用早見)
SAS クラスの目安 METs の目安 活動例 判定時のコツ
I 6 METs 以上 速歩、階段、やや強い運動でも症状が出にくい 「運動でしか症状が出ない」かを確認する
II 3.5 – 5.9 METs 早歩き、坂道、階段で息切れしやすい 速度と途中休憩の有無を固定する
III 2.0 – 3.4 METs 平地歩行、軽い家事で症状が出やすい 歩行距離・時間、家事内容を具体化する
IV 1.9 METs 以下 更衣、洗面など安静に近い活動でも症状が出る “いつも” か “悪い日だけ” かを分けて記録する

採点と解釈(最低不可 MET を “ブレなく” 決めるルール)

SAS でズレやすいのは、「できる活動」を採点に使ってしまうことです。介入前後で変化を追いやすいのは、基本的に “できない(症状が出る)最も軽い活動” を基準にする運用です。

また、SAS は活動の絶対強度をみる指標なので、薬剤、疼痛、不安、体調差の影響を受けます。数値だけで完結させず、症状と成立条件までセットで残すのが実務向きです。

SAS 判定の 4 ルール(最低不可 MET をそろえる)
ルール 内容 記録の型
1 “できない最も軽い活動” を 1 つ決める 例:階段 1 階で途中休憩が必要
2 迷ったら条件を聞き直す 速度、休憩、手すり、荷物、坂 / 階段
3 良い日と悪い日を分ける 主運用は “普段”、必要時に “悪い日” を併記
4 症状の種類とタイミングを残す 息切れ、胸部症状、下肢疲労 / 開始直後・途中・終盤

NYHA・6 MWT・Borg との使い分け(SAS は “生活を強度に翻訳する”)

心不全の機能評価は、1 つで完結しません。SAS の強みは、生活活動の困りごとを METs に翻訳できることです。外来や病棟で「どこからつらいか」の当たりを付けるには強い一方で、客観測定や相対強度の調整までは単独で担えません。

そのため、実務では NYHA で重症度共有 → SAS で活動強度の当たり → 6 MWT で客観確認 → Borg で日々の調整 の順に並べると回しやすくなります。

心不全の機能評価:SAS と他指標の役割分担
指標 強い場面 弱い場面 臨床での使い方
SAS 生活活動を METs に翻訳する / 外来 3 分 条件が揃わないとブレる 強度の当たりを付け、条件付きで再評価する
NYHA 重症度共有、紹介状、カンファ クラス II の幅が広い SAS と併記して “生活の強度” を補う
6 MWT 客観的な耐容能、介入効果 実施条件が必要 SAS の仮説を距離と症状で確かめる
Borg( RPE ) 相対強度の調整、薬剤影響への対応 初回は説明が必要 日々の安全側調整に使う

現場の詰まりどころ/よくある失敗(標準化しないと全部ズレる)

SAS が活きない最大の理由は、質問の条件が毎回変わることです。同じ「歩く」でも、普通歩行か早歩きか、途中休憩があるか、手すりや荷物があるかで負荷は変わります。施設でよく聞く活動を 4〜5 個に絞り、聞き方をテンプレ化すると安定します。

SAS がブレる原因と対策(OK / NG 早見)
よくある NG なぜズレる? OK(対策) 記録ポイント
「歩けますか?」だけで終わる 速度、距離、休憩で負荷が変わる 普通歩行、早歩き、階段 1 階などに分解する 速度、休憩の有無
“できる活動” を採点に使う 改善が追いにくい “できない最も軽い活動” を基準にする 症状の種類とタイミング
良い日だけで判定する 生活指導が外れやすい 普段 / 悪い日を分け、主運用は普段に寄せる 浮腫、睡眠、感染、体重変化
手すり・補助具を無視する 同じ活動に見えて負荷が違う 手すり、補助具、荷物を条件として固定する 補助具、手すり、荷物の有無

中止基準(レッドフラッグ)

SAS は問診中心ですが、実際には「活動で症状が出る」前提で話が進みます。そのため、無理に強度の当たりを付けるより先に、安全確保と連携を優先すべき場面を押さえておく必要があります。

施設ごとの報告基準、看護連携、バイタル確認の流れに合わせて、下表をローカライズして使ってください。

評価中に注意するレッドフラッグ(例)
所見 具体例 対応
胸部症状 胸痛、圧迫感、冷汗を伴う息切れ 中止、安静、報告(施設基準に従う)
呼吸困難の急変 安静でも増悪、起座呼吸、会話困難 中止、体位調整、バイタル確認
循環不安定 めまい、失神前、動悸が強い 中止、転倒予防、確認と共有
うっ血悪化の示唆 急な体重増加、浮腫の増悪、夜間呼吸困難 生活指導より先に評価と連携を優先

記録テンプレ(SOAP にコピペして使う)

SAS を “使える評価” にするには、クラス名だけで終わらせず、症状・活動・条件を 1 行で残すことが重要です。次回も同じ条件で再評価できるようにしておくと、申し送りやサマリでも使いやすくなります。

下のテンプレは最小構成です。施設の書式に合わせて微調整して使ってください。

SAS 記録例(そのまま貼れる最小セット)
項目 記載例
S(主観) 「平地は普通に歩けるが、急ぐと息切れする。階段は 1 階で途中休憩が必要。」
O(客観 / 条件) 症状:息切れ(会話可能)。条件:手すり使用、荷物なし、途中休憩 1 回。
A(解釈) 最低不可 MET の目安:3.5 – 5.9 METs。SAS クラス II の目安。
P(次の一手) 運動は METs で当たりを付け、日々の調整は Borg と症状で行う。再評価は同条件で 2 週後。

評価票(A4)

SAS を院内で共有しやすいように、最低不可 MET・活動条件・SOAP を 1 枚で残せる記録用紙を本文内に掲載しています。外来や病棟で「どこから症状が出るか」をそろえて聞きたいときに使いやすい構成です。

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1.SAS は「できる活動」を選ぶの?「できない活動」を選ぶの?

運用が安定しやすいのは、“できない(症状が出る)最も軽い活動”を拾って最低不可 MET を決める方法です。介入前後の変化を追いやすく、担当が変わってもブレにくくなります。

Q2.患者さんの「歩く」が曖昧で METs にできません

速度、休憩、手すり、坂 / 階段、荷物の 5 点を聞いて条件をそろえます。「普通歩行」「早歩き」「階段 1 階」などに分解して、症状が出る境界を挟み撃ちすると決めやすくなります。

Q3.SAS だけで運動処方まで決めてよいですか?

SAS は強度の当たりを付けるのに便利ですが、単独で完結させず、Borg( RPE )や症状、必要に応じて 6 MWT などの客観指標を合わせる方が安全です。METs は絶対強度、Borg は相対強度という役割で使い分けます。

Q4.“SAS” は睡眠時無呼吸のことですか?

睡眠時無呼吸( Sleep Apnea Syndrome )も “SAS” と略されますが、本記事は Specific Activity Scale(心不全など循環器の活動度評価)を扱っています。検索で混ざりやすいため、記事内では「心不全」「活動度」「METs」を明示しています。

次の一手


参考文献

  1. Goldman L, Hashimoto B, Cook EF, Loscalzo A. Comparative reproducibility and validity of systems for assessing cardiovascular functional class: advantages of a new specific activity scale. Circulation. 1981;64(6):1227-1234. doi:10.1161/01.cir.64.6.1227 / PubMed
  2. Makita S, Yasu T, Akashi YJ, et al. JCS/JACR 2021 Guideline on Rehabilitation in Patients With Cardiovascular Disease. Circ J. 2022;87(1):155-235. doi:10.1253/circj.CJ-22-0234 / PubMed
  3. Ainsworth BE, Haskell WL, Herrmann SD, et al. 2011 Compendium of Physical Activities: a second update of codes and MET values. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(8):1575-1581. doi:10.1249/MSS.0b013e31821ece12 / PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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