股関節の整形外科テスト一覧|選び方・記録・再評価【PDF】

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股関節の整形外科テスト一覧|選び方・記録・再評価

股関節の整形外科テストは、FADIR・FABER・Trendelenburg・Modified Thomasなどを順番にすべて行うのではなく、①安全上の問題がないか、②痛みの場所・再現動作・ROMから何を確かめたいか、③その目的に合うテストはどれかの順で選ぶと整理しやすくなります。

大切なのは、テスト単独で原因を確定しないことです。本記事では、股関節で使う代表的な整形外科テストの選び方、結果と一緒に残したい記録項目、同条件での再評価までを整理します。評価の流れをまとめた5分フロー図と、現場で使えるA4記録シートPDF・Excel原本も掲載しています。

股関節テストの5分フロー|まず判断目的を決める

股関節痛では、テスト名から選ぶよりも、「何を確かめたいのか」から選ぶほうが所見を整理しやすくなります。安全上の問題を先に確認し、主訴・疼痛部位・再現動作・AROM / PROMをそろえたうえで、股関節内の関与、片脚支持の安定性、可動性・筋長など、確認したい目的に応じてテストを選びます。

この5分フローの位置づけ:rehabilikunblogで評価の順番を整理するための運用例です。疾患の診断基準や、すべての患者に同じ順番で実施する公式アルゴリズムではありません。

股関節の整形外科テストを目的から選ぶ5分フロー
図:股関節の整形外科テストを目的から選び、記録・再評価へつなげる5分フロー
股関節の整形外科テストを選ぶときの基本整理
判断段階 先に確認すること テスト候補 結果と一緒に残すこと
安全確認 受傷機転、荷重状況、変形、全身状態など スペシャルテストを優先しない 継続・負荷調整・中止相談の判断根拠
股関節内の関与 鼠径部痛、再現動作、内旋などのROM FADIR / FABER 再現した症状、疼痛部位、ROM、骨盤代償
片脚支持 立位・歩行での骨盤と体幹の制御 Trendelenburg 骨盤運動、体幹側屈、支持脚の状態
可動性・筋長 伸展制限などが動作に関与しているか Modified Thomas / Ely / Ober 骨盤位置、可動域、代償

FADIRやFABERを含む股関節の身体所見は、対象となる病態や研究条件によって診断精度が異なります。そのため、陽性テストの数だけで判断せず、主訴・再現動作・疼痛部位・ROMなどとの一致をみて仮説を更新します。1-4

安全確認|重篤な病態を疑うならテストを重ねない

急性外傷後の強い股関節痛や荷重困難、明らかな変形、全身状態の悪化などから骨折・脱臼・感染などを疑う場合は、FADIRやFABERなどを繰り返して鑑別する段階ではありません。

とくに急性外傷性股関節痛では、身体所見だけで骨折を確実に診断・除外できない場合があります。疑わしい場合はスペシャルテストを優先せず、施設の手順に従って医師への報告や画像評価につなげます。8

一方で、「夜間痛がある」「安静時痛がある」といった単独所見だけで機械的に中止を決めるのではなく、受傷機転、症状経過、荷重状態、全身所見などを合わせて判断します。

記録用紙ダウンロード|PDFとExcelで評価・再評価を残す

再評価で比較するには、テスト名だけでなく、症状、出現条件・ROM、骨盤や体幹の代償を同じ形式で残すことが重要です。配布している記録シートv2では、安全確認、基本所見、FADIR・FABER・Trendelenburg・Modified Thomas・Ely・Ober、評価仮説、次回の再評価項目までA4用紙1枚で整理できます。

使用時の注意:この記録シートは評価条件と所見をそろえるための補助用紙です。テスト単独で疾患を確定したり、安全確認欄の1項目だけで一律に実施可否を決めたりせず、主訴・病歴・ROM・動作所見・全身状態などと合わせて判断してください。

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陽性・陰性だけで終わらせない|記録する3つの情報

FADIR・FABER・Trendelenburg・Modified Thomasでは、すべてを同じ「陽性の定義」に当てはめるのではなく、各テスト本来の判定と、比較に必要な付加情報を分けて記録します。

実務では、判定と一緒に①症状・主要所見、②出現条件・ROM、③代償・補足所見を残すと、再評価時に「何が変わったのか」を確認しやすくなります。今回の記録シートv2も、この3つを中心に構成しています。

主要テストで判定と一緒に記録したい項目
テスト 中心となる所見 一緒に残す条件 代償・補足所見
FADIR 普段の症状と一致する疼痛が再現されるか 疼痛部位、肢位、ROM・角度帯 骨盤回旋、防御反応
FABER 症状再現の有無と疼痛部位 左右差、可動性 骨盤挙上・回旋
Trendelenburg 片脚支持中の前額面での骨盤運動 支持条件、保持、左右差 体幹側屈、支持脚の代償
Modified Thomas 骨盤を制御した条件での股関節位置 骨盤位置、股関節角度 骨盤前傾、腰椎伸展
Ely 膝屈曲時の抵抗・症状 膝屈曲条件 骨盤前傾、腰椎伸展
Ober 下肢位置・症状 骨盤位置、下肢の下垂 骨盤傾斜・回旋

主要テストの使い分け|何を確かめたいかで選ぶ

代表的なテストは、すべて実施するのではなく、現在の仮説を確かめるために必要なものを選択します。親記事である本ページでは使い分けを中心に整理し、細かな肢位や固定方法は個別テストの記事で確認する役割分担とします。

FADIR|鼠径部痛などから股関節内の関与を疑うとき

FADIRは、股関節を屈曲・内転・内旋方向へ誘導して症状を再現する疼痛誘発テストです。鼠径部などに普段の症状と一致する痛みが再現された場合は、股関節内の関与を考える材料になります。

ただし、FADIR単独でFAI syndromeや関節唇病変を確定することはできません。診断精度は研究間でばらつきがあり、FAI syndromeについても、症状・臨床所見・画像所見を組み合わせて判断することが国際コンセンサスで示されています。1-4

FABER|疼痛部位と可動性から次の評価を決める

FABERは股関節を屈曲・外転・外旋位へ誘導し、疼痛や可動性を確認します。重要なのは単純な陽性・陰性より、どこに普段の症状と一致する痛みが出たかと、左右差や骨盤代償を合わせて残すことです。

鼠径部痛は股関節内の関与を考える材料になりますが、殿部痛など特定の疼痛部位だけから原因組織を確定することはできません。主訴、ROM、荷重時症状、腰椎・骨盤などの近接部位を含めて追加評価します。1,2

Trendelenburg|中殿筋力だけでなく片脚支持の戦略を観察する

Trendelenburgでは、片脚支持中の骨盤運動を確認します。従来は股関節外転筋力との関連で説明されることが多いテストですが、骨盤下制だけから「中殿筋が弱い」と決めるのは避けます。

研究では、Trendelenburg test中の前額面骨盤運動と股関節外転筋トルクとの間に明確な関連が認められなかったため、骨盤・体幹・支持脚を含めた運動戦略として観察し、必要に応じて筋力評価を別に行います。5

Modified Thomas・Ely・Ober|可動性や筋長の仮説があるときに追加する

Modified Thomas・Ely・Oberなどは、全例にルーチンで追加するのではなく、股関節周囲の可動性や筋長が立位・歩行・動作制限に関係していると考えたときに選びます。

とくにModified Thomas testは骨盤傾斜の影響を受けます。骨盤を制御しない条件では股関節伸展角度の解釈が不安定になるため、角度だけでなく骨盤位置と測定条件をセットで記録します。6,7

所見を次の評価へつなぐ|テスト結果だけで介入を決めない

整形外科テストで得られるのは、治療方法そのものではなく、次に確認すべき仮説です。「FADIR陽性だからこの運動」「Trendelenburg陽性だから中殿筋訓練」と直接結びつけず、所見と主訴・動作が一致しているかを確認してから介入目標を決めます。

股関節テストの所見から次の評価へ進む例
所見 次に確認すること 再評価でそろえる条件
FADIRで普段の鼠径部痛を再現 主訴との一致、内旋などのROM、荷重時症状 肢位、誘導方向、疼痛部位
FABERで疼痛を再現 疼痛部位、左右差、腰椎・骨盤を含む近接部位 開始肢位、骨盤固定、疼痛部位
片脚支持で骨盤下制・体幹側屈 歩行、股関節外転筋力、支持脚全体の運動戦略 支持条件、保持時間、補助の有無
Modified Thomasで伸展制限を確認 骨盤を制御したROMと実際の立位・歩行での動き 骨盤位置、測定肢位

再評価は1〜3項目に絞る

再評価では、初回に行ったテストをすべて繰り返す必要はありません。今回の評価仮説と介入前に追いたい指標を決め、変化を確認したい1〜3項目に絞ります。

記録シートv2では、再評価日だけでなく、肢位・固定・荷重・声かけなどの条件が初回と一致しているかも確認できる構成にしています。数値や所見の変化だけでなく、「同じ条件で比較できているか」を残すことがポイントです。

よくある失敗|テスト数より条件と解釈をそろえる

  • 陽性テストが多いほど診断に近づくと考える:単独テストの診断精度には限界があるため、主訴・病歴・ROM・動作との一致を確認します。
  • FADIR陽性=FAIと決める:FAI syndromeの診断には症状・臨床所見・画像所見を組み合わせます。
  • Trendelenburg=中殿筋力低下と決める:骨盤だけでなく体幹や支持脚を含む運動戦略として観察します。
  • Modified Thomasで骨盤前傾を許したまま角度を比較する:骨盤位置と測定条件をそろえて再評価します。
  • 毎回すべてのテストを繰り返す:仮説と変化を確認したい1〜3項目へ再評価を絞ります。

迷ったときの確認順

  1. スペシャルテストより先に、安全上の問題がないか確認する。
  2. 主訴の場所と症状を再現する動作を確認する。
  3. AROM / PROMと左右差を確認する。
  4. 「何を確かめたいか」を1つ決めてテストを選ぶ。
  5. 判定だけでなく、症状・出現条件・ROM・代償を記録する。
  6. 再評価では肢位・固定・荷重・声かけなどの条件をできるだけそろえる。

よくある質問

FADIRが陽性ならFAIと判断できますか?

できません。FADIRは股関節内の関与を疑う材料の1つですが、単独でFAI syndromeを確定するテストではありません。主訴、ROM、他の臨床所見に加え、診断では画像所見も含めて判断します。

FADIRとFABERはどちらを先に実施しますか?

すべての患者に共通する固定された順番があるわけではありません。鼠径部痛などから股関節内の関与を確認したい場合はFADIR、疼痛部位や外転・外旋方向の可動性も確認したい場合はFABERというように、まず「何を確かめたいか」から選びます。

Trendelenburg陽性なら中殿筋が弱いと考えてよいですか?

骨盤下制だけから中殿筋力低下と断定するのは避けます。体幹側屈や支持脚の運動戦略も合わせて観察し、筋力を確かめたい場合は股関節外転筋力を別に評価します。

記録シートは初回評価だけに使いますか?

初回評価だけでなく再評価にも使えます。重要なのはテスト欄をすべて埋めることではなく、次回比較したい1〜3項目を決め、肢位・固定・荷重などの条件をできるだけそろえて記録することです。

次の一手|全体像か個別テストへ進む

股関節の整形外科テストは、数を増やすより、判断目的を決める → 必要なテストを選ぶ → 条件を記録する → 同じ条件で再評価する流れをそろえることが重要です。


参考文献

  1. Dhillon J, Hernandez EJ, Keeter C, Kraeutler MJ. Sensitivity and specificity for physical examination tests in diagnosing prearthritic intra-articular hip pathology are highly variable: a systematic review. Arthrosc Sports Med Rehabil. 2025;7(3):101117. DOI: 10.1016/j.asmr.2025.101117
  2. Reiman MP, Goode AP, Hegedus EJ, Cook CE, Wright AA. Diagnostic accuracy of clinical tests of the hip: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2013;47(14):893-902. DOI: 10.1136/bjsports-2012-091035
  3. Griffin DR, Dickenson EJ, O’Donnell J, et al. The Warwick Agreement on femoroacetabular impingement syndrome (FAI syndrome): an international consensus statement. Br J Sports Med. 2016;50(19):1169-1176. DOI: 10.1136/bjsports-2016-096743
  4. Caliesch R, Sattelmayer M, Reichenbach S, Zwahlen M, Hilfiker R. Diagnostic accuracy of clinical tests for cam or pincer morphology in individuals with suspected FAI syndrome: a systematic review. BMJ Open Sport Exerc Med. 2020;6(1):e000772. DOI: 10.1136/bmjsem-2020-000772
  5. McCarney L, Andrews A, Henry P, Fazalbhoy A, Selva Raj I, Lythgo N, et al. Determining Trendelenburg test validity and reliability using 3-dimensional motion analysis and muscle dynamometry. Chiropr Man Therap. 2020;28:53. DOI: 10.1186/s12998-020-00344-3
  6. Vigotsky AD, Lehman GJ, Beardsley C, Contreras B, Chung B, Feser EH. The modified Thomas test is not a valid measure of hip extension unless pelvic tilt is controlled. PeerJ. 2016;4:e2325. DOI: 10.7717/peerj.2325
  7. Peeler J, Anderson JE. Reliability of the Thomas test for assessing range of motion about the hip. Phys Ther Sport. 2007;8(1):14-21. DOI: 10.1016/j.ptsp.2006.09.023
  8. Bartolotta RJ, et al. ACR Appropriateness Criteria® Acute Hip Pain: 2024 Update. J Am Coll Radiol. 2025;22(5):S3-S13. DOI: 10.1016/j.jacr.2025.02.039

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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