心理・メンタル評価まとめ|抑うつ・不安スクリーニングの使い分け
リハ場面の「気分の落ち込み」「不安」「意欲低下」は、疼痛・睡眠・息切れ・環境変化(転棟/退院調整)で簡単に揺れます。大事なのは診断することではなく、チームで同じ言葉にそろえて共有し、再評価で変化を追える状態にすることです。
このハブでは、現場で使われやすい HADS / SRQ-D / QIDS-J / GDS-15 を「どれを選ぶか」「どう運用するか」に絞って整理します。評価全体の地図に戻りたいときは 評価ハブ を起点にしてください。
評価は「同じ条件で測る」だけで解釈がラクになります。
抑うつ・不安も、選び方と再評価条件を固定して“ブレない運用”にそろえましょう。
最短導線|まず読む 3 本
このハブで扱う尺度|目的別の選び方(早見)
※表は横スクロールで読めます。
| 目的 | 第一候補 | 向く場面 | 運用のコツ |
|---|---|---|---|
| 身体疾患に伴う不安・抑うつを拾う | HADS | 回復期・慢性疾患・がん・心不全など「身体症状が強い」ケース | 合計点だけで終わらせず、背景(疼痛/睡眠/息切れ)+リハへの影響を 1 セットで記録 |
| 抑うつの重症度を“経時的に”追う | QIDS-J | 外来・通所・訪問など「再評価して変化を見たい」運用 | 時間帯・場所・説明・直前状態(疲労/疼痛)を固定して“同条件”で取り直す |
| 短時間で抑うつスクリーニング | SRQ-D | 初回評価で「まず拾う」/面談や多職種共有のきっかけ作り | 点数のみで結論にせず、メモ欄(背景 2 行+影響 1 行)を固定化 |
| 高齢者の抑うつを拾う | GDS-15 | 高齢者・老年期うつのスクリーニング | 認知機能・感覚(視力/聴力)に配慮し、必要なら読み上げ支援で条件をそろえる |
運用フロー|スクリーニング → 共有 → 再評価
- 目的を先に決める:「拾う(スクリーニング)」か「重症度を追う」かで尺度を固定します。
- 実施条件を固定する:時間帯・場所・説明・直前の状態(疼痛/疲労/服薬変更)を毎回そろえます。
- 点数+背景+影響を 1 セットで残す:背景(疼痛・睡眠・息切れ・生活イベント)と、離床/自主練/参加への影響を短く書きます。
- チーム共有の“言い方”を統一:「点数」「背景 2 行」「影響 1 行」を申し送りテンプレに入れます。
- 再評価は“同じ尺度”で:尺度を頻繁に乗り換えず、同じ尺度で経時変化を追います。
現場の詰まりどころ|よくある失敗を先に潰す
※表は横スクロールで読めます。
| よくある失敗 | 起きやすい理由 | 立て直し | 記録の型(そのまま使う) |
|---|---|---|---|
| 合計点だけで判断する | 疼痛・睡眠・息切れなど「点数を揺らす要因」が抜ける | 点数の横に背景 2 行+影響 1 行を必ず残す | 「点数:」「背景:疼痛/睡眠/息切れ」「影響:離床/自主練/参加」 |
| 再評価条件が毎回バラバラ | “改善/悪化”が解釈できない | 時間帯・場所・説明・直前状態を固定し、条件をメモに残す | 「条件:午前/病室/自己記入/疼痛 NRS 〇」 |
| 尺度を頻繁に乗り換える | 経時変化が追えない | 現場標準を 1〜2 個に絞り、同じ尺度で追う | 「標準: HADS(身体疾患)/ QIDS-J(経時)」 |
| 共有が“雰囲気”で終わる | 次のアクションに繋がらない | 「何が困っているか」を ADL/IADL・参加で言語化して共有 | 「困りごと:外出回避/活動量低下/睡眠不良」 |
このハブ内リンク|尺度ごとの記事へ
- PHQ-9 ・ HADS ・ SRQ-D の違い(比較・使い分け)
- HADS の評価法(判定基準・採点・使い方)
- HADS 高値の対応( PT ができる 3 つの関わり方 )
- SRQ-D とは?(点数の付け方と現場での使い方)
- QIDS-J の使い方( 9 領域で採点 )
- GDS-15 の評価方法(実施手順と採点)
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まず 1 つだけ標準化するなら、どれが無難ですか?
身体疾患を併存するリハ場面なら HADS が無難です。身体症状に引っ張られやすいケースでも運用しやすく、「不安」と「抑うつ」を分けて共有できます。経時変化を追う運用が中心なら QIDS-J を標準にしても OK です。
Q2. 点数が高いとき、 PT がまず確認すべきことは?
点数だけで結論を出さず、背景(疼痛・睡眠・息切れ・服薬変更・生活イベント)とリハへの影響(離床/自主練/参加)をセットで整理します。これだけでチーム共有が“次の一手”に繋がりやすくなります。
Q3. 再評価の間隔はどれくらいが目安ですか?
状態が安定しているなら月 1 回でも変化が追えます。転倒・疼痛増悪・睡眠悪化・転棟/退院調整など「変化要因」が入ったときは、条件をそろえて取り直すと解釈がラクです。
Q4. 認知機能低下がある場合のコツは?
静かな環境で短い説明にし、必要なら読み上げ・指差しで支援します。重要なのは「支援の有無」も含めて毎回の条件をそろえることです。点数に加えて、会話量・活動性・表情など観察所見も短く併記します。
次の一手|回遊と運用を“つなぐ”
- 評価の全体像に戻る:評価ハブ(目的別サブハブと主要スケール)
- 疼痛が絡むケースの整理:疼痛ハブ(評価と運用)
- ADL/IADL とセットで読む: ADL ・ IADL 評価まとめ
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検
記録文化・教育体制まで含めて見直すなら、無料チェックシートも使えます。
参考文献
- Zigmond AS, Snaith RP. The hospital anxiety and depression scale. Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361-370. doi: 10.1111/j.1600-0447.1983.tb09716.x / PubMed: 6880820
- Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16:606-613. doi: 10.1046/j.1525-1497.2001.016009606.x / PubMed: 11556941
- Rush AJ, et al. The 16-item Quick Inventory of Depressive Symptomatology ( QIDS ) self-report: psychometric evaluation. Biol Psychiatry. 2003. PubMed: 12946886
- 厚生労働省. うつ病チェック( QIDS-J ). 配布資料( PDF )
- 東邦大学医療センター大森病院 心療内科. SRQ-D Ⅱ(使用許諾窓口の案内). 公式ページ
- 八田宏之, 他. Hospital Anxiety and Depression Scale 日本語版の信頼性と妥当性の検討. 心身医学. 1998;38(5):309-315. doi: 10.15064/jjpm.38.5_309
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


