心理・メンタル評価ハブ(抑うつ・不安のスクリーニングと使い分け)

評価
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心理・メンタル評価ハブ(抑うつ・不安のスクリーニングを臨床で回す)

抑うつ・不安は「意欲がない」で片付けるほど単純ではなく、痛み・息切れ・睡眠・薬剤・環境変化・高次脳機能などが絡んでリハの進み方に影響します。ここでは、PT/OT/ST が現場で使いやすい心理スクリーニングを “ まず見逃さない → 共有できる形にする → 次の一手につなぐ ” ための導線をまとめます。

なお、本ハブは診断を目的としません。短時間でリスクを拾い、再評価条件をそろえて経過を追い、多職種・主治医と共有しやすい情報に整えるのが主目的です。評価スケール全体の索引は 評価ハブ にまとめています。

最短導線(まず読む 3 本)

5 分で回す運用フロー(現場用)

  1. 前提確認:痛み・息切れ・睡眠・薬剤変更・せん妄/見当識・重度の失語/注意障害の有無を先に押さえる。
  2. スクリーニング:短時間で実施できる尺度(SRQ-D / HADS / PHQ-9 / GDS-15 など)を選び、同じ条件で実施できる形にする。
  3. 点数化:合計点だけで断定せず、「どの領域が高いか」「身体症状の影響は強いか」をメモする。
  4. 共有:点数+背景(痛み・睡眠・活動性・食欲など)+リハへの影響(離床の遅れ/自主練の不成立など)を 1 セットで渡す。
  5. 次の一手:負荷設定(予測可能性/段階づけ)・環境調整・教育的介入・多職種連携・主治医相談へつなぎ、同条件で再評価する。

目的別の選び方(早見表)

迷ったら「医療場面での不安・抑うつなら HADS」「抑うつ傾向を広く拾うなら SRQ-D」「高齢者で口頭実施なら GDS-15」から入ると運用が安定します。

心理・メンタルスクリーニングの選び方(成人〜高齢者/PT・OT・ST 向け/2025 年 12 月時点)
目的 第一候補 向いている場面 詰まりやすい点 解説記事
抑うつ傾向を手早く拾う SRQ-D 外来/回復期/地域リハの初期評価・経過観察 身体症状・生活背景の影響を拾いやすい。点数だけで即断しない。 SRQ-D
医療場面の不安・抑うつを同時に拾う HADS 身体疾患を伴う外来/入院(痛み・息切れの影響があるケース) 高値は “ 介入不能 ” ではない。安全・予測可能性・負荷設定で前進できる。 HADSHADS 高値の対応
重症度を “ 点数で追う ”(経時変化) QIDS-J 継続フォローがある外来/地域(変化を説明しやすい) 睡眠・食欲/体重・精神運動は “ 最大点 1 つ ” でまとめる(採点ミスが出やすい)。 QIDS-J
高齢者で短時間・口頭実施したい GDS-15 回復期/療養/施設・在宅(質問紙の自己記入が難しいケース) 聴力・注意機能・疲労でブレる。環境調整と説明を固定する。 GDS-15
尺度選択で迷った(比較で決めたい) 比較・使い分け記事 導入時/院内運用の統一(何を “ 標準 ” にするか決める) カットオフの丸暗記ではなく「拾いたい対象」と「身体症状の影響」で選ぶ。 PHQ-9・HADS・SRQ-D 比較

各尺度の解説記事(個別ページ)

抑うつ(スクリーニング/重症度)

不安・抑うつ(医療場面)

比較・使い分け

現場の詰まりどころ(よくある “ つまずき ”)

点数だけで判断してしまうのが最大の落とし穴です。同じ 10 点でも、睡眠障害・疼痛・活動量低下が主で “ 介入の当たり所 ” が見えているケースと、希死念慮や強い不安が背景にあるケースでは、動かし方も共有の仕方も変わります。

もう 1 つは、再評価条件がバラバラになることです。「いつ」「どこで」「誰が」「どんな説明で」「どの直前状態(痛み・疲労・服薬)」で実施したかを固定しないと、点数の増減が解釈できなくなります。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. スコアが高かったら、リハは中止した方がいいですか?

原則は “ 中止ありき ” ではなく、安全を確保した上で「予測可能性」と「負荷設定」を整える方向で考えます。高値の背景が痛み・息切れ・不眠・環境変化などにあると、説明と段階づけだけで実施可能になることがあります。一方で、強い希死念慮や急性増悪が疑われる場合は、無理に進めず主治医・看護・心理職へ早めに共有します。

Q2. 自己記入が難しい(失語・注意障害・疲労が強い)ときは?

まずは環境(静かな場所・時間帯・姿勢)を整え、口頭実施しやすい尺度(例:GDS-15)や、観察情報(睡眠・食欲・活動性・表情・会話量など)で “ 共有できる形 ” を作ります。評価そのものより、再評価の条件をそろえるほうが臨床では効きます。

Q3. どれくらいの頻度で再評価すればいいですか?

変化を見たい目的が「離床・自主練の進み方」なら、まずは 1〜2 週単位で条件をそろえて追うのが現実的です。病状変化・薬剤変更・退院調整など “ 変化要因 ” が入ったタイミングは、同じ尺度で早めに取り直すと情報の価値が上がります。

Q4. 疼痛や息切れが強いと、抑うつスコアは上がりますか?

上がることがあります。だからこそ、スコアだけで “ うつ ” と決めず、痛み・呼吸苦・睡眠・活動量を同じセットで記録して解釈します。HADS のように身体症状の影響を受けにくい設計の尺度を併用するのも 1 つの手です。

おわりに

心理スクリーニングは、見逃し予防 → 短時間で点数化 → 背景とセットで共有 → 段階づけて介入 → 同条件で再評価のリズムにすると、現場で “ 使える情報 ” になります。

評価を形にしたあとは、面談準備チェックと職場評価シートもセットで整えると動き出しが早いので、必要なら マイナビコメディカル(面談準備チェック&職場評価シート) も活用してください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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