SOAP の S の書き方|図解・例文・記録シート付き

制度・実務
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結論:SOAP の S は「引用+文脈+困りごと」で 1〜2 文に絞ります

SOAP の S( subjective )で最初に決めるべきことは、長く書くことではありません。引用(意味内容)+文脈(いつ/どの動作)+困りごとを 1〜2 文でそろえることです。ここが整うと、O(客観)で何を見るか、A(評価)で何を言い切るかがぶれにくくなります。

この記事で答えるのは、S に何を書くか、何を書かないか、どう聞いて、どう 1〜2 文にするかです。SOAP 全体の定義や O / A / P の詳しい書き方は広げすぎず、テンプレ、質問 5 つ、例文、OK / NG、30 秒チェックに絞って整理します。

同ジャンルで最短回遊:まずは親記事で全体像を確認し、次に総論、続いて兄弟記事へ進むと迷いが減ります。

SOAP 全体の書き方を見る

関連:診療記録の書き方(最低ライン・ 5 要件・ 5 分点検)
続けて読む:SOAP の O の書き方( 3 点ルール )

まず決める:S に入れること / 入れないこと

S は「本人や家族の意味内容」を残す欄です。ここで大切なのは、事実と解釈を混ぜないことです。訴え、目標、不安、価値観、家族情報は S に入りますが、測定値や検査結果は O、解釈は A、次に何をするかは P に分けます。

最初に境界を固定しておくと、S を短くしても内容が薄くなりません。逆に、この線引きが曖昧だと、S が長いのに読みにくい記録になります。

S( subjective )に入れること / 入れないこと早見表
項目 置き場所 理由
本人の訴え・希望・不安 S 意味内容そのものだから
家族・介護者の情報 S 主観的情報として扱い、情報源を明記する
痛みの NRS / VAS S 数値でも「感じ方」に関する情報だから
バイタル・テスト結果 O 誰が見ても同じ事実だから
「筋力低下が主因」などの解釈 A 判断・考察にあたるから
次回の介入内容・頻度 P 次の一手の設計だから

S を 1〜2 文で書くテンプレ(穴埋めで OK)

S は長文にしなくて大丈夫です。まず情報源を書き、次に引用(意味内容)、最後に文脈と困りごとを 1 行で足せば、読み手が迷わない S になります。

迷った日は、下の穴埋めをそのまま使ってください。新人指導でも、まずこの型に寄せるだけで添削が安定しやすくなります。

S( subjective ) 1〜2 文テンプレ(成人・リハの実務向け)
要素 書き方(穴埋め) ねらい
情報源 本人/家族( )より聴取。 誰の言葉かを明確にする
引用(意味内容) 「( )」 医療者の解釈を混ぜない
文脈 (いつ/どの動作/どの場面)で訴え。 O の選定を固定しやすくする
困りごと (具体的に困ること)を主訴とする。 A の結論を作りやすくする
目標(任意) 目標は「( )」。 P の方向性をそろえる

図で全体像を先に固定したい方は、次の図版も参考にしてください。S に入れる情報と入れない情報、さらに 1〜2 文テンプレを 1 枚で整理しています。

SOAP の S に入れる情報と入れない情報、1〜2 文テンプレ、NG と OK の例を整理した図版

ダウンロード:S の整理に使える記録シート

テンプレをそのまま現場で使いたい方向けに、SOAP の S を短く整理して書くための A4 記録シートを用意しました。空欄中心なので、疾患や場面を固定しすぎず、病棟・外来・訪問などでも使いやすい形です。

まずは PDF を開いて印刷し、情報源、引用、文脈、困りごとを 1 枚でそろえる流れに慣れると、S の書き方が安定しやすくなります。

PDF を開く(ダウンロード)

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プレビューが表示されない場合は、PDF を開くをご利用ください。

S を引き出す質問は 5 つで足ります

問診が苦手でも、質問の順番を固定すると再現性が上がります。実務で強いのは、①困りごと → ②いつ → ③どのくらい → ④何が不安 → ⑤目標の順です。

この 5 つがそろうと、S が単なる会話メモではなくなります。O を選ぶ前に、まず何を聞くかを固定しておくのが近道です。

S を引き出す 5 つの質問(そのまま使える言い回し)
順番 質問 狙い 返答例( S に書ける形 )
1 いま一番困っているのは、どの動きですか? 主訴を 1 つに絞る 「立つ時が一番怖い」
2 それは、いつ/どこで起きますか? 文脈を固定する 「トイレの立ち上がりで」
3 どのくらいの頻度・強さですか? S の具体性を上げる 「毎回」「痛みは 7 / 10 くらい」
4 一番不安なのは何ですか? 安全の論点を見つける 「転びそうで不安」
5 まず何ができるようになりたいですか? P の方向性をそろえる 「病棟内を 1 人で歩きたい」

頻出 9 パターン:S の書き方(例文)

ここでは、頻出場面の S を “短く強く” 書く例を示します。S は短くても、文脈と困りごとが入っていれば十分です。次に見る O の絞り方は、SOAP の O の 3 点ルールに合わせると流れが崩れにくくなります。

各例文の末尾に「次に確認する O」を 1 行だけ添えています。S 専門ページなので、O 自体の詳しい説明は広げすぎず、選ぶ方向だけ分かる形にとどめています。

頻出パターン別:S( subjective )例文( PT / OT / ST 共通 )
場面 S( 1〜2 文例 ) 次に確認する O
歩行の不安 本人より「病棟の中を 1 人で歩いていいですか?」と発言。トイレ移動の場面で不安が強い。 TUG + 方向転換時のふらつき + 転倒リスク
立ち上がりの恐怖 本人より「立つ時に膝が折れそうで怖い」と訴え。食後の立ち上がりで増悪する。 5xSTS + 体幹前傾の使い方 + 介助量と危険動作
疼痛 本人より「動くと腰がズキッと痛い」と訴え。起床後の前屈で痛みが強い。 NRS に対応する条件確認 + 誘発動作 + 悪化サイン
息切れ 本人より「階段で息が上がって怖い」と訴え。家事後の疲労感が強い。 SpO₂ / RPE + 呼吸パターン + 低酸素の有無
めまい 本人より「立つとふらふらする」と訴え。ベッドから起き上がり直後に出現する。 起立前後 BP + 症状出現タイミング + 失神リスク
家族情報 家族(妻)より「家では夜間に 2 回転びそうになった」と情報あり。夜間トイレ動作での不安を主訴とする。 夜間の転倒回数 + 動線・照明 + 見守り条件
脳卒中(上肢の使いにくさ) 本人より「箸がうまく使えない」「服のボタンが止めにくい」と訴え。食事と更衣の場面で困り感が強い。 上肢機能課題 + 代償動作 + 疼痛や転倒の誘発
嚥下(むせ・食形態の不安) 本人より「水でむせるのが怖い」と訴え。食事中の咳込みが増え、食形態の調整を希望する。 むせの頻度 + 声の変化・咳嗽 + 誤嚥リスク
術後整形(荷重・疼痛恐怖) 本人より「体重をかけるのが怖い」「階段が心配」と訴え。退院後の生活動作に不安が強い。 NRS + 荷重時の姿勢 + 禁忌動作・転倒リスク

よくある失敗:S の OK / NG は 3 つに集約できます

S の NG は、「医療者の解釈を書いてしまう」「会話を長文で貼る」「文脈がない」にほぼ集約されます。修正は難しくなく、引用(意味内容)+文脈に戻すだけで十分です。

また、家族情報は有用ですが、必ず情報源を明記します。これだけで、読み手が “誰の言葉か” で迷わなくなります。

S( subjective )の OK / NG(短く直す)
NG(避けたい) なぜ弱い? OK(修正例)
「不安そう。」 医療者の解釈で、根拠がない 本人より「転びそうで不安」と発言(トイレ移動の場面)。
会話をそのまま長文で貼る 主訴が埋もれて O が選べない 本人より「立つ時が一番怖い」と訴え(食後の立ち上がりで増悪)。
家族の話だが情報源が不明 責任の所在が曖昧 家族(娘)より「夜間にふらつきが増えた」と情報あり。

現場の詰まりどころ:S を書く前の 30 秒チェック

S が散らかる日は、「今日の主訴が 1 つに決まっていない」ことがほとんどです。まず主訴を 1 つに固定し、引用(意味内容)と文脈を添える。ここまでできれば、O と A がかなり書きやすくなります。

時間がない日は、下のチェックを 30 秒だけ回してください。S の質が安定すると、SOAP 全体の質も安定します。

→ よくある失敗( OK / NG )へ
→ 30 秒チェック(回避の手順)へ
関連:SOAP の P( plan )を 1 行で具体化するテンプレ

S 前 30 秒チェック(主訴を固定して次につなぐ)

S 前 30 秒チェック(主訴→引用→文脈→情報源)
確認 目安 詰まったら
主訴は 1 つ? 一番困る動作に絞る 「今日の 1 番」だけ選ぶ
引用になっている? 本人の言葉(意味内容) 「〜と発言」に直す
文脈がある? いつ/どの動作で 場面を 1 つ足す
情報源は明記? 本人/家族/介護者 括弧で 1 語入れる

よくある失敗(詰まりやすいポイントの正体)

つまずきは、①主訴が 1 つに決まっていない、②引用が “解釈語” になっている、③文脈(いつ/どの動作)が抜けている、の 3 つが中心です。ここだけ直せば、S → O → A の流れはかなり戻ります。

ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」をまとめて整理したい方は、PT 向けの固定ページも参考になります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問( S の書き方 Q&A )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. S は何個まで書いていいですか?

A. 書けますが、実務では “今日の主訴” を 1 つに絞ると O と A が安定します。複数の訴えがある場合は、優先度が高いものを先頭に置き、残りは補足として 1 行までにすると崩れにくいです。

Q2. NRS や VAS は S と O のどちらですか?

A. 数値でも「感じ方」に関する情報なので、基本は S として扱います。記録では「痛み 7 / 10」だけで終わらず、安静時か動作時かなど条件を一言添えると次に見たい O が決まりやすくなります。

Q3. 家族の話は S に書いて良いですか?

A. 書いて良いです。重要なのは、情報源を明記することです。「家族(妻)より聴取」のように書けば、読み手が混乱しません。必要に応じて、本人の認識との差は次回確認します。

Q4. 家族情報が主で、本人の訴えがはっきりしないときはどう書きますか?

A. まずは情報源を固定して書きます。「家族(誰)より聴取」の上で、事実としての意味内容を短く残します。本人の認識との差がありそうな場合は、A に混ぜず、次回確認事項として分けておくと安全です。

Q5. 訴えが多い(痛み+ふらつき+不安)とき、S の並べ方は?

A. “今日の介入に直結する主訴 1 つ” を先頭に置き、次点は補足として 1 行までにします。それ以上は生活情報として別に整理すると、S が長くなりすぎず O も散らばりにくくなります。

次の一手


参考文献

  1. Weed LL. Medical records that guide and teach. N Engl J Med. 1968;278(11):593-600. DOI:10.1056/NEJM196803142781105
  2. Aronson MD. The purpose of the medical record: Why Lawrence Weed still matters. Am J Med. 2019;132(11):1256-1257. DOI:10.1016/j.amjmed.2019.03.051
  3. Wright A, Sittig DF, McGowan J, Ash JS, Weed LL. Bringing science to medicine: an interview with Larry Weed, inventor of the problem-oriented medical record. J Am Med Inform Assoc. 2014;21(6):964-968. DOI:10.1136/amiajnl-2014-002776

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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