結論:SOAPのSには本人・家族から得た主観的情報を書く
SOAPのS(Subjective)には、患者本人や家族・介護者などから得た訴え、症状の感じ方、不安、希望、目標といった主観的情報を書きます。測定・検査・観察で確認した事実はO、そこからの解釈はA、次の対応はPへ分けるのが基本です。
日々のリハビリ記録では、Sを長い会話記録にする必要はありません。この記事では、SとO・A・Pの境界を整理したうえで、「情報源+主観内容+文脈」を軸に短くまとめる実務上の考え方、直接引用と要約の使い分け、OK・NG例まで解説します。
SOAPのSに書くこと・書かないこと
SとO・A・Pを分けるときは、「誰から得た情報か」だけでなく、「その情報が何を表しているか」で判断します。本人や家族が伝えた体験・症状・希望などはS、医療者が観察・測定・検査で確認した内容はO、そこからの解釈はA、次の対応はPです。
| 情報 | 主な記載先 | 考え方 |
|---|---|---|
| 本人の訴え・症状の感じ方 | S | 本人が経験している主観的情報 |
| 本人の希望・不安・目標 | S | 本人の考えや価値観に関する情報 |
| 家族・介護者から得た情報 | S | 情報源を明記して主観的情報として記録する |
| 痛みのNRS・VASなどの自己申告 | Sとして整理できる | 本人が報告する症状の強さ。施設の記録様式・運用がある場合はそれに従う |
| バイタル・測定値・検査結果 | O | 観察・測定・検査などで確認した情報 |
| 「筋力低下が歩行制限の一因」などの解釈 | A | SとOを踏まえた医療者の評価・解釈 |
| 次回の介入・再評価・対応 | P | Aを受けて決める次の行動や計画 |
たとえば「立つとふらつく」は本人が感じている症状なのでSです。一方、立位で身体動揺を認めたことや血圧測定値はO、その情報から原因や優先課題を考える部分はAになります。

Sを短く書く基本形は「情報源+主観内容+文脈」
SOAPそのものに「Sは必ず1〜2文」「この3要素で書く」という公式ルールがあるわけではありません。ただし、日々のリハビリ記録では、情報源+主観内容+文脈の3点を意識すると、必要な情報を短く整理しやすくなります。
| 要素 | 確認すること | 記載例 |
|---|---|---|
| 情報源 | 誰から得た情報か | 本人より/家族(妻)より |
| 主観内容 | 何を感じ、訴え、希望しているか | 「立つとふらつく」と訴え |
| 文脈 | いつ・どの動作・どの場面か | 起き上がり後に出現 |
たとえば、「本人より『立つとふらつく』と訴え。起き上がり後に症状が出る」と書けば、誰の情報で、何を感じ、どの場面で起きるのかを短く共有できます。
複数の訴えがある場合もあります。そのため「主訴は必ず1つ」と固定する必要はありません。ただし、日々の経過記録では、その日の評価・介入判断に関係する訴えを優先して記載すると、Sが長くなりすぎず、OやAとのつながりも見えやすくなります。
患者の言葉はそのまま引用する?要約してもよい?
Sでは患者の言葉を必ず一字一句そのまま引用する必要はありません。発言そのものに意味がある場合は直接引用し、長い説明は意味を変えない範囲で簡潔に要約すると整理しやすくなります。
直接引用が分かりやすい場面
症状の表現、不安、希望、目標など、本人の言い回し自体が臨床判断や多職種共有に役立つ場合は、「」を使って残すと伝わりやすくなります。
例:本人より「立つと膝が抜けそうで怖い」と訴え。トイレからの立ち上がり時に不安が強い。
要約した方が読みやすい場面
説明が長い場合は、意味を変えずに要約できます。ただし、医療者の推測や原因解釈を付け足すとSではなくAへ入り始めるため注意します。
例:本人より、歩行時のふらつきに対する不安があり、病棟内を単独で移動することを心配しているとの訴えあり。
家族・介護者・他職種から得た情報は情報源を明記する
本人以外から得た情報も、患者の症状や生活上の困りごとを理解するうえで重要です。家族や介護者から聴取した場合は、「家族(妻)より」「介護者より」など、誰から得た情報かを明記します。
たとえば、「家族(妻)より、夜間トイレ時にふらつきが増えているとの情報あり」とすれば、本人の発言と家族情報を区別できます。
他職種から情報を得た場合も、情報の性質でSとOを分けます。たとえば「看護師より、本人が『夜は歩くのが怖い』と話していたとの情報あり」は患者の主観内容を伝聞した情報です。一方、看護師が実際に観察した歩行時のふらつきや測定した数値は、観察・測定情報としてOに整理できます。
本人から十分に聴取できない場合も、推測して本人の訴えを作らず、利用できた情報源とその内容を明確に残すことが大切です。
SOAPのSの例文|頻出6パターン
Sは疾患名ごとに型を暗記するより、誰の情報か、何を感じているか、どの場面で起きるかをそろえる方が応用しやすくなります。以下はPT・OT・STの記録で使い方を考えやすい例です。
| 場面 | Sの記載例 |
|---|---|
| 疼痛 | 本人より「動くと腰がズキッと痛い」と訴え。起床後の前屈時に痛みが強い。 |
| 歩行・転倒不安 | 本人より「トイレまで1人で歩くのが怖い」と訴え。方向転換時の転倒を心配している。 |
| 息切れ | 本人より「階段を上ると息が上がる」と訴え。退院後の自宅階段に不安あり。 |
| めまい・ふらつき | 本人より「起きるとふらふらする」と訴え。ベッドから起き上がった直後に出現する。 |
| 本人の目標 | 本人より「自分でトイレまで行けるようになりたい」と希望あり。 |
| 家族情報 | 家族(妻)より、夜間トイレ時にふらつきが増えており、見守りが必要と感じているとの情報あり。 |
例文をそのまま当てはめるのではなく、実際に得られた情報だけを記録します。特に原因やリスクを医療者側で推測した内容は、患者・家族が実際に述べていない限りSへ付け足さないようにします。
SOAPのSでよくあるNGと修正例
Sで迷いやすいのは、主観的情報と医療者の観察・解釈が混ざる場面です。「これは誰の情報で、何を表しているのか」を確認すると修正しやすくなります。
| NG | 問題点 | OK |
|---|---|---|
| 不安そう。 | 医療者の観察・解釈だけで、本人の訴えか分からない | 本人より「転びそうで不安」と発言。トイレ移動時に不安が強い。 |
| 筋力低下のため歩行困難。 | 原因についての医療者の解釈が入っている | 本人より「右脚に力が入りにくく、歩きにくい」と訴え。 |
| 夜間にふらつくとのこと。 | 誰から得た情報か分からない | 家族(娘)より、夜間トイレ時にふらつきが増えているとの情報あり。 |
一方で、患者の言葉であれば何でもSへ残せばよいわけでもありません。長い会話をそのまま転記するより、現在の問題や評価・介入判断に関係する主観的情報を選び、意味を損なわない範囲で簡潔に整理します。
Sを書く前の30秒チェック
迷ったときは、文章を増やす前に次の4点を確認します。このチェックはSOAPの公式基準ではなく、rehabilikunblogで推奨する実務上の確認方法です。
| 確認 | 見るポイント |
|---|---|
| 誰の情報か? | 本人・家族・介護者など、必要に応じて情報源を明記する |
| 主観的な内容か? | 症状、感じ方、不安、希望、目標などか確認する |
| 文脈が分かるか? | 必要なら、いつ・どの動作・どの場面かを添える |
| 解釈を混ぜていないか? | 観察・測定はO、原因や意味づけはAへ分ける |
この4点がそろっていれば、無理に「1〜2文」に収める必要はありません。ただし、日々の経過記録では必要な情報を優先し、読み手が短時間で患者の訴えを把握できる長さに整理することが重要です。
SOAPのSの書き方でよくある質問
Q1. 患者の言葉は必ず「」で直接引用しますか?
必須ではありません。本人の表現自体に意味がある場合は直接引用すると分かりやすくなります。説明が長い場合は、意味を変えない範囲で簡潔に要約できます。医療者の解釈を患者の発言のように書かないことが重要です。
Q2. NRSやVASの数値はSとOのどちらですか?
NRSやVASは本人が報告する疼痛の強さであり、情報の性質としては主観的情報として整理できます。ただし、電子カルテや施設の記録様式によって評価結果の記載場所が定められている場合は、その運用に従ってください。数値だけでなく、安静時・動作時などの条件も分かると解釈しやすくなります。
Q3. 家族から聞いた内容もSに書けますか?
書けます。「家族(妻)より」のように情報源を明記し、家族が伝えた内容と医療者自身が確認した事実を区別します。本人の認識と家族情報が異なる場合も、どちらかを推測で統合せず、それぞれの情報源が分かる形で記録します。
Q4. 訴えが複数ある場合は1つに絞るべきですか?
必ず1つにする必要はありません。複数の訴えが臨床判断に必要なら記録します。ただし、日々のリハビリ記録では、その日の評価・介入に関係する内容を優先すると、Sが長くなりすぎず、O・A・Pとのつながりを確認しやすくなります。
次の一手
Sを書いた後は、患者・家族から得た情報に対して、何を観察・測定して確かめるかをOへつなげます。SOAP全体の位置づけを確認したい場合と、次のOへ進みたい場合で読み分けてください。
- SOAP全体を確認する:SOAPによるカルテの書き方
- 次にOを書く:SOAPのOの書き方
参考文献
- Podder V, Lew V, Ghassemzadeh S. SOAP Notes. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026. PMID: 29489268. PubMed
- Weed LL. Medical records that guide and teach. N Engl J Med. 1968;278(11):593-600. doi:10.1056/NEJM196803142781105. PubMed
- Wright A, Sittig DF, McGowan J, Ash JS, Weed LL. Bringing science to medicine: an interview with Larry Weed, inventor of the problem-oriented medical record. J Am Med Inform Assoc. 2014;21(6):964-968. doi:10.1136/amiajnl-2014-002776. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

