BMI の使いどころ・限界|臨床の落とし穴

栄養・嚥下
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BMI(Body Mass Index)の使いどころと限界|PT/OT/ST の実務で迷わない読み方

評価 → 介入 → 再評価の型をまとめて確認する(PT キャリアガイド)

BMI は「体格」を一瞬で共有できる便利な指標ですが、筋肉量・浮腫・脱水・身長推定の誤差で簡単にブレます。臨床では、 BMI を結論にせず、体重推移・筋量の目安・機能指標とセットで解釈するのが安全です。

この記事では、 PT/OT/ST が使う場面に絞って、 BMI の計算と読み方、ズレやすいケース、補助指標の組み合わせを整理します。

BMI とは?(計算式と“まずの結論”)

BMI は、体重と身長から算出する体格指数です。研究・疫学だけでなく、病棟や在宅の実務でも「栄養・代謝リスクの入口」として使われます。

結論: BMI は単発値より「入口の層別」に向きます。栄養や体液の変動がある症例では、 BMI だけで判断せず、次節以降の“補正”を必ず入れます。

  • BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m)2
  • 身長が推定値(膝高など)の場合は、推定法を固定し、継時比較は同一法で行います。

BMI が役立つ場面(実務での“使いどころ”)

BMI は、初期評価の短時間スクリーニングや、チーム内の共通言語として有用です。特に「まず誰を拾うか(優先度づけ)」の場面で力を発揮します。

  • 入院・初回訪問の入口:低体重/過体重の層別と、追加評価の優先度を決める
  • 栄養スクリーニングの構成要素: BMI を含むツール(例: MUST など)の運用で情報をそろえる
  • 介入方針の“背景説明”:運動耐容能、負荷設定、転倒リスクの背景として共有しやすい

BMI がズレる理由(限界を先に押さえる)

BMI は“体重”を分母(身長)で割った指標なので、体重の中身(筋肉・脂肪・水分)を区別できません。つまり、同じ BMI でも状態が全く違うことが起こります。

BMI がズレやすい代表場面(臨床での解釈ミスを減らす)
場面 何が起きる? BMI の落とし穴 一緒に見るもの(推奨)
浮腫・心不全・腎不全 体液貯留で体重が増える “栄養が良い”と誤解しやすい 体重推移、下腿周径、尿量/利尿、所見
脱水・摂取低下 体重が急に落ちる 短期低下を“低栄養”と断定しやすい 口渇、皮膚、バイタル、摂取量、BUN/Cr など
サルコペニア肥満 筋量が少なく脂肪が多い BMI が“普通”でも筋力・機能が低い 握力、 CC、歩行速度、椅子立ち上がり
身長の測定誤差 円背・拘縮で身長が取りづらい BMI が過大/過小になりやすい 推定身長の方法固定(膝高など)

PT/OT/ST 実務:BMI を“結論にしない”運用フロー

おすすめは、 BMI を入口にして、体重推移 → 筋量の目安 → 機能の順で確度を上げるやり方です。これで「見落とし」と「過剰介入」を減らせます。

  1. BMI を算出:入口の層別(低い/高い/境界)
  2. 体重推移を確認:直近 1 週間〜 6 か月の“変化量”を優先
  3. 体液の交絡を除外:浮腫・脱水・急性炎症の有無
  4. 筋量/機能を足す: CC、握力、歩行速度、椅子立ち上がり等
  5. 次アクションを決める:栄養連携、運動負荷、再評価間隔をセット

BMI よりも臨床判断に直結しやすいのが体重の変化です。まずここを固めると迷いが減ります:体重変化の読み方(減少率・期間・浮腫をどう扱う?)

現場の詰まりどころ(ありがちなつまずきと対処)

  • 単発の BMI で判断:入院初日や初回訪問だけで結論にしない(体重推移を必ず取る)
  • 浮腫を見落とす:体重増加=栄養改善ではない(所見とセット)
  • 身長が毎回違う:推定身長の式や方法を固定し、記録欄に明記して継時比較
  • “普通 BMI だから安心”:サルコペニア肥満を疑い、握力・ CC・歩行機能を足す

FAQ(よくある質問)

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BMI が普通でも、筋力が弱い人はどう見ますか?

まず「サルコペニア肥満」や廃用を疑います。 BMI は体重の中身を区別できないため、握力、 CC、歩行速度、椅子立ち上がりなどの機能指標を足して、筋量/筋機能の低下を見落とさない運用が安全です。

浮腫があるとき、 BMI は使えますか?

入口としては使えますが、結論にはしません。体液貯留で体重が増えるため、 BMI が高く見えても栄養状態が良いとは限りません。体重推移、所見(下腿浮腫など)、利尿や摂取状況を合わせて解釈します。

身長が測れない(円背・拘縮)ときは?

膝高などで推定身長を用いる場合は、院内(または事業所)で方法を一本化し、推定法を記録に残します。継時比較では「同じ方法で繰り返す」ことが前提です。

高齢者で“減量”を勧めるべきですか?

BMI だけで決めず、転倒・筋力低下・摂取量・併存疾患を合わせて判断します。過度な減量は筋量低下を招きやすいため、栄養・運動・安全管理をセットで考えるのが基本です。

おわりに(入口は BMI、結論は“推移+中身+機能”)

BMI は評価の入口として優秀ですが、臨床の結論は体重の推移筋量/機能で固めるほどブレません。入口(層別)→ 交絡(浮腫/脱水)→ 補助指標(筋・機能)→ 再評価間隔、の順で運用すると、判断が安定します。

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参考文献

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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