ICU 鎮静・せん妄評価は RASS → CAM-ICU / ICDSC の順で決める
ICU では、鎮静が深いのか、せん妄なのか、単に疲労や低活動で反応が乏しいのかが混ざりやすくなります。この記事では、まず RASS で覚醒度を確認し、評価が成立する状態であれば CAM-ICU / ICDSC へ進むという順番を、PT / OT / ST が離床・運動負荷・コミュニケーション介入に使いやすい形で整理します。
このページで決めるのは、鎮静・せん妄評価の「順番」「評価不能時の扱い」「記録・再評価の型」です。CAM-ICU や ICDSC の細かな全手順を深掘りする記事ではなく、ICU チーム内でブレずに評価を回し、次の離床判断へつなげるための運用記事です。
5 分フローで評価の順番を固定する
ICU の鎮静・せん妄評価は、最初から CAM-ICU / ICDSC に入るのではなく、RASS で評価できる覚醒水準かを確認してから進めるとブレが減ります。深鎮静で評価が成立しない場合は、せん妄陰性とはせず「評価不能」として再評価につなげます。
次に、施設で使うツールを決めます。評価時点の判定を短時間でそろえたいなら CAM-ICU、シフト中の観察を積み上げたいなら ICDSC が使いやすくなります。どちらも単発の点数で終わらせず、離床負荷・環境調整・再評価時刻までセットで記録することが重要です。
| 順番 | 見ること | 判断 | 次にすること |
|---|---|---|---|
| 1 | 安全確認 | 呼吸・循環・疼痛・ライン類に大きな問題がないか | 評価前に痛み・低酸素・不安の要因を整える |
| 2 | RASS | 覚醒度と鎮静の深さを確認 | 深鎮静なら「せん妄評価不能」として再評価へ |
| 3 | CAM-ICU / ICDSC | 評価時点またはシフト中のせん妄所見を確認 | 施設の記録様式に合わせて 1 つを反復する |
| 4 | 離床判断 | 指示理解・注意持続・不穏・低活動を確認 | 負荷量、声かけ、見守り量、環境調整を決める |
| 5 | 再評価 | 鎮静調整後、ケア後、時間帯変更後の変動を見る | 次シフトへ「再評価時刻」と「見る所見」を渡す |
ICU 鎮静・せん妄評価 5 分フロー記録シート
RASS → CAM-ICU / ICDSC → 離床判断 → 再評価までを 1 枚で記録できる A4 シートです。評価不能時の理由、再評価予定、リハビリ場面での調整内容を残せるようにしています。
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RASS はせん妄評価に進めるかを決める入口です
RASS は、興奮から深鎮静までの覚醒度をそろえる共通言語です。ここを飛ばしてせん妄評価に進むと、「反応が乏しい」の理由が深鎮静なのか、低活動型せん妄なのか、疲労なのかが曖昧になります。
臨床では、RASS の数値そのものだけでなく、どの声かけ・どの刺激で反応したかを残すと再現性が上がります。特に PT / OT / ST が関わる場面では、離床の可否だけでなく、指示理解・注意持続・安全な課題設定に直結します。
| 確認点 | 臨床での意味 | 記録の一言例 |
|---|---|---|
| 覚醒しているか | せん妄スクリーニングが成立するかを判断する | 「呼名で開眼、簡単指示に反応あり」 |
| 鎮静が深すぎないか | 評価不能を陰性と誤解しないために確認する | 「深鎮静のため CAM-ICU 評価保留」 |
| 興奮・不穏が強くないか | ライン自己抜去、転倒、介入中断のリスクを見る | 「刺激で体動増加、離床は端座位まで」 |
CAM-ICU / ICDSC は目的で使い分ける
CAM-ICU と ICDSC は、どちらも ICU せん妄を見逃さないための評価ですが、得意な場面が異なります。その時点の判定を短時間でそろえるなら CAM-ICU、シフト全体の変動を拾うなら ICDSC が使いやすくなります。
重要なのは、ツールを増やすことではなく、チームで同じ評価手順を反復することです。施設内で記録様式が決まっている場合はそれに合わせ、PT / OT / ST は結果を「離床負荷」「環境調整」「再評価予定」に翻訳して使います。
| ツール | 主目的 | 向いている場面 | 注意点 | PT / OT / ST の使い方 |
|---|---|---|---|---|
| RASS | 覚醒度・鎮静の深さ | せん妄評価の前提確認、離床前の安全確認 | 声かけ・刺激の強さが揃わないとブレる | 負荷量、声かけ量、見守り量を決める |
| CAM-ICU | 評価時点のせん妄スクリーニング | 短時間で判定をそろえたい場面 | 評価できる覚醒水準が前提になる | 注意障害・思考のまとまりを課題設定に反映する |
| ICDSC | 観察情報を積み上げるせん妄スクリーニング | 日内変動、夜間不穏、低活動を拾いたい場面 | 観察・記録が分散するとスコアが安定しにくい | シフト中の変動を踏まえて介入時間を調整する |
PT / OT / ST は評価結果を離床判断に変換する
鎮静・せん妄評価は、点数をつけて終わりではありません。リハビリ場面では、RASS とせん妄スクリーニングの結果をもとに、負荷量、課題の複雑さ、声かけ、見守り量、再評価タイミングを決めます。
たとえば、RASS が低く反応が乏しい場合は、無理に起立や歩行へ進めず、覚醒を促す環境調整やベッド上課題に切り替えます。反対に興奮や注意障害が目立つ場合は、課題を単純化し、ライン類・転倒リスク・刺激量を先に整えます。
| 評価結果 | 見立て | リハビリでの調整 | 記録の焦点 |
|---|---|---|---|
| 反応が乏しい | 深鎮静、疲労、低活動の可能性 | 負荷を下げ、覚醒促通・短時間介入にする | 呼名・触刺激への反応、再評価予定 |
| 注意が続かない | せん妄、睡眠障害、環境刺激の影響 | 課題を 1 つずつ提示し、刺激量を減らす | 指示理解、注意持続、エラー内容 |
| 不穏・体動増加 | 疼痛、不安、ライン不快、過活動型せん妄の可能性 | ライン管理と見守り量を増やし、段階を下げる | 中断理由、危険行動、環境調整後の変化 |
| 時間帯で変動 | せん妄の日内変動、睡眠覚醒リズムの乱れ | 反応が良い時間帯に再評価・離床を組む | 評価時刻、前後のケア、変動パターン |
記録は「評価値+成立条件+次アクション」で残す
記録で重要なのは、点数だけでなく 評価が成立した条件を残すことです。RASS、CAM-ICU / ICDSC、離床判断、再評価予定を同じ型で書くと、次シフトや他職種が状態変化を追いやすくなります。
特に「評価不能」「陰性だが違和感あり」「鎮静調整後に再評価予定」は、曖昧に書くと引き継ぎで抜けやすい部分です。以下のように、観察した刺激・反応・次に見る所見まで短く残すと、チーム内の判断差を減らせます。
| 場面 | 記録の型 | 記載例 |
|---|---|---|
| 評価成立 | RASS、せん妄評価、反応、次アクション | RASS -1、呼名で開眼し簡単指示可。CAM-ICU 陰性。端座位練習を短時間で実施。 |
| 評価不能 | 理由、実施した刺激、再評価予定 | RASS -4、呼名・軽い触刺激で開眼なし。せん妄評価は覚醒不十分のため保留。鎮静調整後に再評価。 |
| 違和感あり | 陰性結果、残る所見、再評価条件 | CAM-ICU 陰性だが注意持続低下あり。ケア後に反応変動あり、午後再評価予定。 |
| 離床調整 | 評価値、リスク、実施範囲、中断理由 | RASS +1、ラインへの手伸ばしあり。立位は見送り、端座位で中止。刺激量を下げて再介入検討。 |
現場の詰まりどころは「評価不能」「陰性の扱い」「記録の薄さ」です
鎮静・せん妄評価でつまずく原因は、ツールの知識不足だけではありません。多くは、評価不能を陰性のように扱う、陰性 1 回で安心する、記録に成立条件が残らない、という運用のズレです。
まずは、RASS で評価できる状態かを確認し、評価不能なら「評価不能」と明記します。次に、CAM-ICU / ICDSC が陰性でも、注意障害・睡眠覚醒リズム・不穏・低活動の違和感が残る場合は、時間帯を変えて再評価します。
| よくある失敗 | なぜ起きる? | 対策 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 評価不能を陰性のように扱う | RASS の前提確認が抜ける | 先に覚醒度を確認し、深鎮静ならせん妄評価は保留する | 「覚醒不十分のため評価不能」と明記する |
| 陰性でも違和感が残る | せん妄は時間帯で変動する | ケア後、鎮静調整後、時間帯変更後に再評価する | 「再評価条件」と「見る所見」を残す |
| 評価者で結果がズレる | 声かけ・刺激・観察時間が統一されていない | 声かけ文言、刺激順、評価タイミングをミニ SOP 化する | 「どの刺激まで行ったか」を一言添える |
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、個人の知識不足だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の型をまとめて整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
よくある質問(FAQ)
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Q1. なぜ RASS を先に確認するのですか?
A. せん妄評価は、一定の覚醒があることを前提に進めるためです。深鎮静では CAM-ICU / ICDSC の結果をそのまま解釈しにくいため、先に RASS で覚醒度を確認し、評価できる状態かを判断します。
Q2. CAM-ICU と ICDSC はどちらを使えばよいですか?
A. 評価時点の判定を短時間でそろえたい場合は CAM-ICU、シフト中の観察情報を積み上げたい場合は ICDSC が使いやすくなります。施設の記録様式や回診フローに合わせて、まず 1 つを反復することが重要です。
Q3. RASS が低く、せん妄評価ができない場合はどう記録しますか?
A. 「陰性」ではなく「評価不能」と記録します。たとえば「RASS -4、呼名・軽い触刺激で開眼なし。覚醒不十分のため CAM-ICU 評価保留。鎮静調整後に再評価予定」のように、理由と再評価予定を残します。
Q4. せん妄評価が陰性でも、臨床的に違和感がある場合はどうしますか?
A. 1 回の陰性で終了せず、時間帯や前後のケアを変えて再評価します。せん妄は変動しやすいため、注意散漫、会話のまとまり低下、昼夜逆転、低活動、不穏が残る場合は、次シフトへ再評価条件を引き継ぎます。
Q5. PT / OT / ST は結果をどう離床判断に使えばよいですか?
A. RASS とせん妄評価を、負荷量・課題の複雑さ・声かけ量・見守り量を決める材料として使います。覚醒が不十分な場合は負荷を下げ、注意障害や不穏が強い場合は課題を単純化し、環境調整と安全管理を優先します。
次の一手
- 全体像から整える:ICU 評価の全体像を見る
- RASS を先に標準化する:RASS のやり方と判定を確認する
- せん妄評価を実装する:CAM-ICU の判定フローを見る
参考文献
- Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. doi:10.1097/CCM.0000000000003299
- Lewis K, Balas MC, Stollings JL, et al. A Focused Update to the Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Anxiety, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2025;53(3):e711-e727. doi:10.1097/CCM.0000000000006574
- Ely EW, Truman B, Shintani A, et al. Monitoring sedation status over time in ICU patients: reliability and validity of the Richmond Agitation-Sedation Scale. JAMA. 2003;289(22):2983-2991. doi:10.1001/jama.289.22.2983
- Sessler CN, Gosnell MS, Grap MJ, et al. The Richmond Agitation-Sedation Scale: validity and reliability in adult intensive care unit patients. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(10):1338-1344. doi:10.1164/rccm.2107138
- Ely EW, Margolin R, Francis J, et al. Evaluation of delirium in critically ill patients: validation of the Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit. Crit Care Med. 2001;29(7):1370-1379. doi:10.1097/00003246-200107000-00012
- Bergeron N, Dubois MJ, Dumont M, Dial S, Skrobik Y. Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Med. 2001;27(5):859-864. doi:10.1007/s001340100909
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


