腱板テストまとめ|筋別の最小セットと記録シート
腱板( rotator cuff )評価で詰まりやすいのは、痛み抑制が混ざって「全部弱い」に見えることです。テスト数を増やすほど、見かけの筋力低下が増え、解釈がぶれます。本記事は、棘上筋・外旋群・肩甲下筋の 3 ブロックで、最小セット 2〜4 個へ整理します。
重要なのは、陽性数ではなく「どの角度で」「痛みか」「保持不能か」を分けて記録することです。筋別に整理しておくと、再評価とチーム共有が安定します。
筋別に決める|腱板 3 ブロックと代表テスト
腱板は「棘上筋」「外旋群」「肩甲下筋」の 3 ブロックに分けると整理しやすくなります。最初からテストを増やすより、筋別の最小セットで仮説を作る方が、偽陽性を減らしやすくなります。
特に Can 系は“痛みで力が出ない”のか、“保持できない”のかを分けて記録すると、次回比較が安定します。
| ブロック | 主に見る | 代表テスト | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 棘上筋 | 挙上・外転の出力 | Empty Can / Full Can | 痛み抑制か保持不能かを分ける |
| 外旋群 | 外旋保持・出力 | ER 抵抗 / ER lag sign | 保持できず落ちるかを確認 |
| 肩甲下筋 | 内旋保持 | Lift-off | 形が作れない場合は無理しない |
最小セット|まず 2〜4 個で整理する
腱板評価は、最初に全部やるほど疼痛が増えて解釈が崩れやすくなります。まずは最小セットで当たりを付け、必要時だけ追加します。
基本は Can 系、ER 抵抗、Lift-off の 3 ブロックです。保持不能が疑わしい場合だけ ER lag sign や Drop Arm を追加し、無理に網羅しないことが実務上のポイントです。
| 場面 | まずやる | 追加するなら | 目的 |
|---|---|---|---|
| 筋別に当てたい | Can + ER 抵抗 + Lift-off | ER lag | 3 ブロックで仮説を作る |
| 保持不能が疑わしい | 抗重力挙上 + ER 抵抗 | ER lag / Drop Arm | 落下・保持不能を確認する |
| 痛みが強い | 痛み角度 + Can 1 個 | 外旋 or 内旋を 1 個 | 痛み抑制の影響を減らす |
記録の型|痛み抑制と保持不能を分ける
腱板評価の記録は、「テスト名:陽性」だけでは不十分です。痛みの主座、角度、筋別反応、再評価条件まで 1 行で残すと、次回の比較とチーム共有に使えます。
特に Can 系では、痛みで力が出ないのか、保持不能で落ちるのかを分けて書きます。これだけで、疼痛調整を優先するのか、追加確認や医師連携を考えるのかが整理しやすくなります。
| 要素 | 書き方 | 記録例 |
|---|---|---|
| 痛みの主座・角度 | 部位+角度帯 | 右肩外側痛、挙上 90–120° で増悪 |
| 筋別反応 | テスト名+痛み / 抑制 / 保持不能 | Full Can:痛み抑制、ER 抵抗:保持弱い、Lift-off:実施可 |
| 代償 | 肩甲帯・体幹・防御反応 | 挙上時に肩甲帯挙上と体幹側屈あり |
| 次回条件 | 追う角度+代表テスト | 次回は挙上 100° 痛と ER 抵抗を同条件で再評価 |
PDF 記録シート|再評価をブレさせない
腱板評価は、再評価条件を固定するだけで比較しやすくなります。とくに「痛み角度」「保持不能」「代償」を同じ形式で残すと、チーム共有が安定します。
スマホでは PDF プレビューが大きく表示されやすいため、本文内ではボタンのみを配置しています。印刷や保存が必要な場合は、下のボタンから PDF を開いてください。
現場の詰まりどころ|“全部弱い”を作らない
腱板評価は、疼痛抑制が強いと“全部陽性”に見えやすくなります。まずは実施数を減らし、条件固定を優先する方が実務的です。
ここまで整理しても毎回同じところで迷う場合は、個人の経験だけでなく、教育体制・共有フォーマット・相談環境の影響を受けている可能性もあります。
評価・記録の「型」を整理したい方へ
よくある失敗|偽陽性を増やすパターン
腱板評価では、テスト数を増やしすぎるほど疼痛抑制が強くなり、どの筋を見ているのかが曖昧になります。まずは失敗パターンを避け、少ないテストを同条件で再評価できる形に整えます。
| NG | 回避 | 記録ポイント |
|---|---|---|
| テストを増やしすぎる | 最小セットに絞る | 実施数を残す |
| 痛み抑制を断裂と決める | 保持不能と分ける | 角度・肢位を書く |
| 代償を見落とす | AROM を先に観察 | 肩甲帯挙上などを書く |
再評価で固定する条件
再評価で差が見えない原因の多くは、体位・開始角度・抵抗条件のズレです。代表テストを 1〜2 個に絞り、同じ条件で追うと変化を比較しやすくなります。
| 固定項目 | 理由 | 記録例 |
|---|---|---|
| 体位 | 代償が変わる | 座位で統一 |
| 開始角度 | 疼痛条件が変わる | 挙上 90° で確認 |
| 追うテスト数 | 情報ノイズを減らす | ER 抵抗のみ再評価 |
よくある質問(FAQ)
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Empty Can と Full Can はどちらを優先しますか?
まずは比較しやすい条件で固定できる方を優先します。痛みが強い日は Full Can 中心で進め、必要時に Empty Can を補助として使うと解釈が安定します。
ER lag sign はいつ追加しますか?
外旋保持が疑わしい場面で追加します。最初からテスト数を増やしすぎず、ER 抵抗で外旋出力を確認したうえで、保持不能が疑われる場合に使うと整理しやすくなります。
Lift-off ができない場合はどうしますか?
可動域制限や疼痛で形が作れない日は、無理に押し切らず「実施不可」を残します。内旋可動域、前面痛、ADL での困難動作など、代わりに比較できる情報を記録します。
痛みで力が入らない場合は陽性ですか?
痛みで力が入らない反応は、必ずしも保持不能とは限りません。記録では「痛み抑制」と「保持不能」を分け、次回も同じ角度・同じ体位で再評価できるようにします。
次の一手|肩評価を“共通の型”で揃える
腱板テストは、肩評価全体の中で位置づけると使いやすくなります。痛みの主座、インピンジメント所見、上肢機能の共有指標も合わせて整理しましょう。
- 肩の全体像を整理:肩関節の整形外科テスト一覧
- 上肢機能を共有:QuickDASH の評価まとめ
参考文献
- Hegedus EJ, Goode A, Campbell S, et al. Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Br J Sports Med. 2012;46(14):964-978. doi:10.1136/bjsports-2012-091066
- Lafrance S, Charron M, Roy J-S, et al. Diagnosing, Managing, and Supporting Return to Work of Adults with Rotator Cuff Disorders: A Clinical Practice Guideline. J Orthop Sports Phys Ther. 2022;52(10):647-664. doi:10.2519/jospt.2022.11306
- Lewis JS. Rotator cuff related shoulder pain: Assessment, management and uncertainties. Man Ther. 2016;23:57-68. doi:10.1016/j.math.2016.03.009
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


