要介護認定の評価依頼|リハ職が返す情報と伝え方

制度・実務
記事内に広告が含まれています。

要介護認定でリハ職が返すのは「できる」だけではありません

要介護認定に関する情報提供をリハ職へ求められたときは、歩行距離やROM・筋力などの評価結果だけでなく、日頃どの条件で生活し、介護者が何を行い、その手間がどのくらいの頻度で生じているかを整理して共有することが重要です。

認定調査票の特記事項を書くのは認定調査員、主治医意見書を書くのは主治医です。リハ職の役割は、それぞれの判断材料になる移動・移乗・ADLなどの観察情報を、生活実態が伝わる形へ変換して渡すことです。この記事では、その整理方法と短い共有文の作り方を解説します。

リハ職は特記事項や主治医意見書そのものを書く立場ではない

まず役割を分けます。要介護認定では、認定調査による情報と主治医の意見などをもとに審査判定が行われます。リハ職が依頼を受けた場合は、公式書類の記入者に代わって判定するのではなく、日頃の動作・介助・環境について確認できた事実を共有すると整理すると分かりやすくなります。

要介護認定に関わる書類とリハ職の役割
情報・書類 主な記入者 リハ職が共有しやすい情報
認定調査票・特記事項 認定調査員 日頃の移動・移乗・ADL、実際の介助、見守りや声かけ、頻度、福祉用具使用状況など
主治医意見書 主治医 生活機能、心身機能、医学的管理につながる観察情報、日常生活で生じている支障など

そのため、返答文は「要介護2相当」「一部介助に該当する」のように認定結果を予測する書き方ではなく、何が起きていて、どのような対応が、どの程度必要なのかを具体的に伝える形が基本です。

まずそろえるのは「選択根拠・介護の手間・頻度」

厚生労働省の認定調査票記入の手引きでは、特記事項について「選択根拠」「手間」「頻度」の3点に留意して記載する考え方が示されています。リハ職から情報提供するときも、この3点が分かるように整理すると、日常生活の状況を共有しやすくなります。

リハ職が共有するときにそろえたい3つの情報
情報 確認すること 共有例
選択根拠につながる状況 どの場面で、どのような状態になっているか 方向転換時にふらつきがみられる
介護の手間 介護者が実際に何をしているか 近接見守り、声かけ、身体支持を行う
頻度 毎回なのか、1日数回なのか、特定の場面だけなのか 屋内移動のたびに見守っている
要介護認定でリハ職が返す情報を、場面、日頃の条件、介護の手間、頻度、共有文の順に整理する図
リハ評価をそのまま返すのではなく、場面→日頃の条件→介護の手間→頻度の順で整理すると、生活実態を共有しやすくなります。

訓練時の最大能力ではなく「日頃の状況」を伝える

要介護認定に関する情報では、訓練室で一度できた動作だけを切り取らないことが重要です。認定調査の介助方法などでは、時間帯や体調によって状況が異なる場合、一定期間の中でより頻回にみられる状況や日頃の状況を踏まえて判断する考え方が示されています。

したがってリハ職から情報提供するときも、「平行棒内なら歩けた」「訓練時は介助なしだった」だけではなく、病棟・施設・自宅などで実際にどう生活しているかを確認します。

最大能力だけでなく日頃の状況を確認する例
評価場面で確認できたこと 追加して確認したい生活情報
20m歩行できた 普段の移動手段、杖・歩行器の使用、見守りの有無、途中休息、方向転換時の状態
立ち上がりが自立していた ベッド、トイレ、椅子など高さの違う環境でも同様か、手すりを使っているか
更衣動作を完遂できた 普段は準備・声かけ・袖通し・下衣操作などに介助が入っていないか
午前中は移乗できた 午後の疲労、疼痛、覚醒状態などで介助方法が変わらないか

福祉用具・補装具は「普段使っている状態」を明確にする

認定調査の手引きでは、福祉用具や補装具、器具類を使用している場合、使用している状況で判断する項目があります。リハ職の共有文でも、「歩行可能」とだけ書かず、T字杖使用、歩行器使用、装具装着、手すり使用などの条件を明記します。

補助具なしでの最大能力を別に確認した場合は、日頃の生活条件と混ぜず、「普段はT字杖使用」「訓練場面では短距離のみ杖なしで可能」のように分けて伝えると誤解を減らせます。

「できる」と「介助されている」は同じ評価軸ではありません

認定調査では、すべての項目を単純な自立度の一本線で評価するわけではありません。項目によって、能力を確認するもの、実際の介助方法を確認するもの、行動や現象の有無を確認するものがあります。

そのため、リハ職が「能力的にはできる」と判断していても、日常生活では安全確保のために見守りや声かけが行われていることがあります。逆に、身体機能が低下していても、ある動作について介助が生じていない場合もあります。

共有時のポイント:
「できる/できない」と「実際に何を介助されているか」を分けて確認します。リハ職の能力評価だけから、認定調査上の選択肢を推測して決めないことが重要です。

見守り・一部介助・全介助を全体の介護量として扱わない

「見守り等」「一部介助」「全介助」は、各調査項目で定義された行為について、実際にどのような介助が行われているかを確認するための選択肢です。患者全体の介護負担を単純に「見守り<一部介助<全介助」と順位づけするための尺度ではありません。

リハ職から共有するときは「一部介助です」で止めず、一連の動作のどこを介助しているのかまで書くと情報量が増します。

歩行・移乗・ADLを「介護の手間」に変換する

リハ職が普段使う「歩行可能」「移乗見守り」「更衣一部介助」といった表現は、専門職間では通じても、どのような介護が行われているかまでは伝わらないことがあります。以下は公式の記載例ではなく、リハ職から共有するための実務上の例です。

※スマホでは表を横スクロールしてご覧ください。

リハ評価を生活上の介護情報へ変換する例
弱い共有例 不足している情報 共有例
歩行可能 条件・安全性・見守り・頻度 屋内はT字杖で20m程度歩行。方向転換でふらつきがあり、移動のたびに近接見守りを要する。
移乗見守り どの場面で何を見るのか トイレ移乗は手すりを使用。立ち上がり直後に膝折れがみられるため、排泄のたびに近接して見守っている。
排泄一部介助 介助している動作 トイレまでの移動は見守り。立位保持が不安定なため、下衣操作時に介助者が身体支持を行っている。
更衣一部介助 一連のどこを介助しているか 上衣は自ら袖へ腕を通せるが、衣服を構えて袖口を提示する介助を要する。
午後は介助量増加 何がどう変化するのか 午前は手すり使用で移乗を見守れるが、午後は疲労時に立ち上がりで身体支持を要することがある。

共有文は「場面→条件→手間→頻度」で短くまとめる

リハ職から主治医や認定調査員などへ短く返す場合は、場面→日頃の条件→介護者がしていること→頻度の順で整理すると、生活実態が伝わりやすくなります。

基本形
「〇〇の場面では、△△の条件で、□□の対応を、◇◇の頻度で要する」

要介護認定に関する情報共有の短文例
場面 短文例
屋内移動 屋内歩行はT字杖使用で20m程度。方向転換でふらつきがあり、移動のたびに近接見守りを要する。
トイレ移乗 トイレ移乗は手すり使用。立ち上がり直後に膝折れがみられ、排泄のたびに近接見守りを要する。
排泄動作 便座前での立位は不安定で、下衣操作中は毎回、介助者による身体支持を要する。
入浴 浴槽またぎでは疼痛と恐怖があり、入浴時は介助者が下肢の誘導と身体支持を行っている。
日内変動 午後は疲労により立ち上がりが不安定となり、午前より身体支持を要する場面が増える。

評価依頼を受けたら「何のための情報か」を先に確認する

要介護認定に関連した依頼でも、主治医へ渡す情報なのか、認定調査時の情報提供なのかによって必要な内容は変わります。測定項目を増やす前に、少なくとも次の3点を確認します。

  • 情報の用途:誰へ、何のために返す情報なのか
  • 対象とする生活状況:自宅、病棟、施設など、どの生活場面を伝えるのか
  • 日頃の条件:補助具・装具、手すり、介助者、時間帯などをどう扱うか

書類評価依頼全般の受け方やROM・MMTなどの測定条件は、書類作成のためのROM・MMT・ADL評価依頼で整理しています。

ROM・MMT・歩行距離は「生活上の意味」とセットで返す

ROM、MMT、歩行距離などのリハ評価が不要という意味ではありません。主治医が患者の状態を把握するうえで有用な情報になることがあります。ただし、要介護認定に関する情報提供では、数値だけで終わらせずその所見が日常生活のどの動作に影響しているかまで示すと、使いやすい情報になります。

リハ評価と生活情報をつなぐ例
評価所見 生活場面で確認すること
下肢筋力低下 立ち上がり、移乗、方向転換などで実際に支持や見守りが必要か
股・膝関節ROM制限 下衣操作、浴槽またぎ、床からの立ち上がりなどに支障があるか
歩行距離低下 生活範囲のどこで休息、車椅子併用、付き添いが生じているか
バランス低下 見守り、声かけ、身体支持が必要になる具体的な場面と頻度

要介護認定の情報提供で避けたい4つの返し方

情報量を増やすより、生活実態が消えてしまう書き方を避ける方が重要です。特に次の4つは見直します。

要介護認定に関する情報提供で避けたい例
避けたい返し方 問題 修正方法
「歩行可能」だけ 日頃の条件や介護の手間が分からない 補助具、生活場面、見守り理由、頻度を加える
訓練室での最大能力だけ 日常生活で実際に行われている介助とずれる可能性がある 病棟・施設・自宅での日頃の状況を併記する
「一部介助」だけ 一連の動作のどこを介助しているか分からない 身体支持、衣服操作、声かけなど具体的な対応を書く
認定区分をリハ職が推測して返す 観察情報と認定審査の役割が混在する 判定ではなく、確認できた状況・手間・頻度を返す

よくある質問

Q1. 「歩けるけれど危ない」場合はどう返せばよいですか?

「歩行可能」だけではなく、危険が生じる場面と実際の対応を書きます。たとえば「屋内はT字杖で歩行するが、方向転換でふらつくため移動のたびに近接見守りを要する」のように、条件・手間・頻度をそろえます。

Q2. 杖や装具を使っている場合は、なしでの能力も返した方がよいですか?

まず普段の生活で使用している条件を明確にします。杖・装具なしでの評価も必要な場合は、日頃の条件と混同しないよう別に記載します。認定調査では、福祉用具や補装具などを使用している項目について、使用している状況で判断する考え方があります。

Q3. 午前と午後で介助量が違う場合はどうまとめますか?

変動そのものを情報として伝えます。「午前は見守り、午後は疲労時に身体支持を要する」など、変化する条件と実際の介助を記載します。認定調査では、時間帯や体調で異なる場合に日頃の状況やより頻回な状況を踏まえる項目があります。

Q4. リハ職が認定調査の特記事項を書いてもよいですか?

認定調査票・特記事項を記入するのは認定調査員です。リハ職は、移動・移乗・ADLなどについて把握している日頃の状況、介護の手間、頻度を具体的に共有し、調査員が判断するための材料を提供する立場と整理すると分かりやすくなります。

まとめ|「能力」から「日頃の介護情報」へ変換して返す

要介護認定に関する評価依頼では、ROM、MMT、歩行距離などの結果だけでは日頃の介護状況を十分に伝えられません。

場面を確認し、日頃の条件をそろえ、具体的な介護の手間と頻度まで伝えることがポイントです。「歩ける」「見守り」「一部介助」といった短い判定だけで終わらず、介助者が実際に何をしているのかまで整理しましょう。

また、リハ職が要介護度や認定調査の選択肢を決めるのではなく、主治医・認定調査員が判断できる具体的な観察情報を返すことが役割です。


参考文献

  1. 厚生労働省. 要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について. 厚生労働省.
  2. 厚生労働省. 介護保険最新情報 Vol.1003「認定調査員テキスト2009改訂版(令和3年4月改訂)」. PDF.
  3. 厚生労働省. 介護認定審査会テキスト2009改訂版(令和3年4月改訂). PDF.
  4. 厚生労働省. 「主治医意見書記入の手引き」改正資料(令和8年度の介護情報基盤活用に伴う改正). PDF.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)のアイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

運営者プロフィール編集・引用ポリシーお問い合わせ