4AT の使い方と記録例(せん妄)

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4AT は「せん妄の見落とし」を減らすための短時間スクリーニングです

急性期〜回復期では、疼痛・低酸素・薬剤・感染などが重なり、せん妄が起きても「ぼんやりしているだけ」と見逃されがちです。結論として、短時間で繰り返し確認できるスクリーニングを病棟の共通言語にすると、見落としと事故(転倒・チューブ自己抜去など)を減らせます。

本記事では 4AT を「点数の説明」で終わらせず、いつ実施するか/保留する条件/カルテにどう書くかまで、現場で迷わない形に落とし込みます。評価の全体像を先に整理したい方は、評価ハブ(全体像)もあわせて確認してください。

臨床で迷いが多いときは、環境と学び方も整えると一気に楽になります。

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4AT を使うべき場面

4AT は「せん妄の診断」を確定する道具ではなく、疑いを早期に拾い上げ、追加評価と対応につなげるためのスクリーニングです。特に、状態が揺れやすい急性期では「 1 回だけ」よりも、同じタイミングで繰り返す運用が効果的です。

  • 入院直後、術後、転棟直後など「環境変化」が大きいとき
  • 眠気・落ち着きのなさ・注意の散漫など「いつもと違う」が出たとき
  • 訓練中に指示が通りにくい/危険行動が増えたとき
  • 鎮静・睡眠薬・オピオイドなど、影響しやすい薬剤を開始・増量したとき

4AT の全体像(転載せず要点だけ)

4AT は、注意(注意の保てなさ)急性の変化や日内変動を含む所見を、短時間で評価する設計です。実施者の習熟に依存しにくい反面、鎮静・失語・高度難聴など、結果の解釈に注意が必要な状況があります。

スコアは 0〜 12 点で、一般に 4 点以上はせん妄の可能性、 1〜 3 点は認知機能低下の可能性(せん妄とは限らない)として扱われます。

実施タイミングと頻度の決め方

現場で最も重要なのは「誰が、いつ、どのタイミングでやるか」を固定することです。おすすめは 訓練前状態変化時の 2 本立てです。

4AT の実施タイミング早見(成人・急性期〜回復期の運用例)
場面 実施者の例 狙い 記録の最小セット
訓練前(毎日同じ時間帯) PT / OT / ST その日の安全性(転倒・抜去リスク)を先に把握 スコア、注意の所見、急性変化の有無
状態変化時(急にぼんやり、興奮、睡眠逆転など) 誰でも(担当が代表して記録) 「いつから」変化したかを残し、医師へ共有 開始時刻、誘因(疼痛・薬剤など)、バイタル
転棟・退院前の節目 担当療法士 再発予防(環境調整・家族説明)につなげる 推移(直近 3 回)、対応内容

実施 OK / NG(保留条件)を先に決める

4AT は便利ですが、「実施しても意味が薄い状態」「解釈がぶれやすい状態」をそのまま点数化すると、チームに誤解を生みます。保留して理由を記録する運用を入れておくと安全です。

4AT を実施する前の OK / NG(保留)早見
判定 やること 記録の書き方(例)
OK 会話が成立/指示が概ね通る 通常通り実施 「 4AT 実施:○ 点。注意:○○。急性変化:あり/なし」
注意 高度難聴、失語、視力低下、強い疼痛 環境調整(補聴器、筆談、疼痛調整)→再実施 「実施条件:筆談で対応。疼痛 NRS ○/10」
保留 強い鎮静、覚醒不十分、急激な呼吸・循環の不安定 保留し、原因評価と経過観察を優先 「鎮静の影響で評価保留( RASS ○)。再評価予定:○ 時」

スコアの読み方(臨床で使うコツ)

スクリーニングは「点数」より、急性発症/日内変動注意の低下が揃っているかが重要です。 4 点以上は「せん妄の可能性」を示しますが、診断は臨床判断で行います。

  • 4 点以上:せん妄の可能性 → 誘因(疼痛、感染、低酸素、薬剤など)の確認と対応へ
  • 1〜 3 点:認知機能低下の可能性 → 既往やベースライン確認、必要なら他評価へ
  • 0 点:その時点でせん妄を強く示唆しない → ただし「揺れ」はあり得るため、状況で再評価

記録テンプレ(カルテ文例:そのまま使える形)

チームで共有するために、点数+所見+次アクションを 1 セットで書きます。「様子見」だけは避け、次に何をするか(再評価時刻、医師報告、環境調整)まで残します。

4AT 記録テンプレ(SOAP / 申し送り向け)
状況 文例(コピペ用)
疑い( 4 点以上) 「訓練前 4AT:○ 点(せん妄疑い)。注意低下:○○。急性変化:あり。誘因候補:疼痛/睡眠不良/薬剤変更(○/○)。本日訓練は安全配慮(見守り強化・環境調整)。医師へ報告、○ 時に再評価予定。」
認知低下疑い( 1〜 3 点) 「 4AT:○ 点。急性変化は乏しいが注意の保持にばらつき。既往・ベースライン確認予定(家族/看護)。訓練は課題量を調整し、反応の推移を記録。」
保留(鎮静など) 「覚醒不十分(鎮静/睡眠の影響が強い)ため 4AT は保留。 RASS ○。呼吸・循環の安定化を優先し、○ 時に再評価予定。訓練は中止(安全優先)。」

現場の詰まりどころ(よくある失敗)と回避策

4AT は短時間で便利な反面、「実施できたけど解釈がズレる」ケースが典型です。失敗を先回りして潰しておくと、チームの信頼が落ちません。

  • 眠気・鎮静の影響を拾えず、せん妄扱いにしてしまう:まず覚醒(例: RASS )を確認し、「保留+再評価時刻」を記録
  • 失語や難聴で反応が弱く、注意低下と誤解する:筆談・ジェスチャー・補聴器など「条件調整」を記録
  • 痛みや呼吸苦で集中できず点が上がる:疼痛や呼吸状態を併記し、誘因対応(鎮痛、ポジショニングなど)へ
  • 点数だけ書いて次アクションが無い:「医師へ報告」「再評価時刻」「訓練の安全配慮」をセットで残す
  • 日内変動を追えず、単発で判断してしまう:同じ時間帯で反復し「推移(直近 3 回)」を要約する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 4AT が 4 点以上なら、訓練は中止ですか?

A. 一律に中止ではありません。まず「覚醒レベル」「呼吸・循環の安定」「危険行動の有無」を確認し、見守り強化・環境調整・課題量調整で実施可能な場合もあります。ただし、自己抜去リスクが高い、指示が通らないなど安全が担保できない場合は中止が妥当です。中止時は「理由」と「再評価時刻」を必ず記録します。

Q2. 4AT は誰が実施するのが良いですか?

A. 重要なのは職種より「タイミングの固定」です。おすすめは 療法士が訓練前に実施し、変化があれば看護・医師へ共有する運用です。病棟としては「代表して記録する人」を決め、重複や抜けを減らします。

Q3. 鎮静や睡眠薬があるときは、どう扱いますか?

A. 鎮静の影響が強いと、4AT の結果が解釈しにくくなります。まず覚醒(例: RASS )を確認し、評価が妥当でない場合は保留して「保留理由」と「再評価予定」を残すのが安全です。

Q4. 点数が低いのに、様子がおかしいときは?

A. せん妄は日内変動があるため、単発評価で拾えないことがあります。同じ時間帯で再評価し、睡眠・疼痛・感染・低酸素・薬剤変更など誘因を確認してください。臨床的に疑わしければ、点数に関わらず共有と対応を優先します。

次の一手(現場で回すための行動)

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運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検、の順で進めるとスムーズです。

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参考文献

  • Bellelli G, Morandi A, Davis DHJ, et al. Validation of the 4AT, a new instrument for rapid delirium screening: a study in 234 hospitalised older people. Age and Ageing. 2014. PubMed Central
  • 4AT – Rapid Clinical Test for Delirium Detection(ユーザーガイド/スコア解釈). the4at.com
  • Society of Critical Care Medicine. PADIS Guidelines(ICU におけるせん妄評価・管理の推奨). SCCM
  • 日本サイコオンコロジー学会ほか.がん患者におけるせん妄ガイドライン( 2023 年版 PDF ). JPOS

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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