体幹評価は「条件固定」だけで精度が上がります
体幹評価がブレる原因の多くは、患者さんの変化ではなく条件(座面高・足底接地・支持量)の変化です。先に条件を固定してから尺度を選ぶだけで、再評価の意味が明確になり、チームでの共有もしやすくなります。
本記事では、FACT・TCT・TIS などの細かな採点説明ではなく、準備 → 観察 → 尺度選択 → 記録 → 再評価の「標準フロー」を、現場でそのまま回せる形に整理します。
標準フロー:準備 → 観察 → 尺度選択 → 記録 → 再評価
体幹評価を「やりっぱなし」にしないためには、同じ条件で繰り返せる運用が必要です。まずは 5 分で回せる最低限の流れを固定し、必要に応じて各尺度(各論)に深掘りしていくのが安全です。
下の表は、病棟や回復期で「毎回同じ質」で回すためのチェック付きフローです。
| 手順 | やること(最小) | 記録に残す 1 行 | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 1. 準備 | 座面高・足底接地・支持量を固定 | 「座面 45 cm/足底接地あり/支持:骨盤帯に軽介助」 | 条件が変わる日は “変えた理由” も書く |
| 2. 観察 | 骨盤帯 → 胸郭 → 頭部の順に崩れ方を見る | 「麻痺側荷重回避→体幹側屈で代償」 | 崩れの主因(支持・可動・感覚)を仮説化 |
| 3. 尺度選択 | 目的を 1 つに絞って尺度を選ぶ | 「目的:成立確認/課題整理/質の追跡」 | 迷ったら比較記事で最短ルートへ |
| 4. 記録 | 点数+所見 1 行+次の狙いをセット化 | 「点数:○○/所見:○○/狙い:麻痺側荷重の獲得」 | チーム共有(申し送り・カンファ)で再現性を確保 |
| 5. 再評価 | 同条件で再測定し、変化を “質” で確認 | 「条件同一:○/崩れの主因:○→○」 | 改善した要素に合わせて介入を微調整 |
条件固定:座面・足底・支持を「先に」揃えます
体幹評価の点数が揺れるときは、採点より先に条件固定を疑うのが近道です。特に、座面高と支持量は結果に直結します。
固定できない事情がある日は「固定できない」こと自体が重要な所見になるので、変えた内容を明記します。
| 項目 | NG(ブレる) | OK(揃える) | メモ例( 1 行 ) |
|---|---|---|---|
| 座面高 | 毎回なんとなく違う | 高さを固定(変えたら明記) | 「座面 45 cm(前回同一)」 |
| 足底接地 | 踵が浮く/左右差が大きい | 足底接地を確保(必要なら台) | 「足底接地:両側あり(台使用)」 |
| 支持量 | その場で介助量が変わる | 支持部位と量を固定して書く | 「支持:骨盤帯に軽介助」 |
観察の順序:骨盤帯 → 胸郭 → 頭部で「崩れの主因」を見つけます
体幹評価が上肢中心の観察になると、点数は付いても介入が迷子になりがちです。おすすめは、骨盤帯(荷重・骨盤傾斜)→ 胸郭(回旋・側屈)→ 頭部(正中保持)の順に「どこで崩れるか」を追うことです。
崩れ方が分かると、次の狙い(支持を減らす/荷重を作る/回旋を出す)が 1 行で決まります。
尺度選択:目的を 1 つに絞ると迷いが減ります
尺度の使い分けは、検査名ではなく「この 1 回で何を決めたいか」です。目的を 1 つに絞るだけで、評価と介入の整合性が上がります。
FACT・TCT・TIS を目的別に最短で選ぶ早見は、比較記事(FACT・TCT・TIS)にまとめました。
記録の型:点数+所見 1 行+次の狙いを 1 セットにします
点数だけだと「何が変わったか」が伝わりにくく、チーム内で再現できません。おすすめは、条件 → 所見 1 行 → 次の狙いのセット化です。
特に “条件” の一言があるだけで、再評価の比較可能性が上がります。
| 要素 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 条件 | 座面・足底・支持 | 「座面 45 cm/足底接地あり/支持:骨盤帯に軽介助」 |
| 所見 1 行 | 崩れ方を 1 文で | 「麻痺側荷重回避→体幹側屈で代償」 |
| 次の狙い | 次回の焦点を 1 つ | 「麻痺側荷重の獲得(支持を段階的に減らす)」 |
現場の詰まりどころ:ブレる原因は “条件” と “観察” に集約します
ここは “読ませるゾーン” なので、ボタンは置かず、迷いを減らすリンクだけに絞ります。評価がブレるときは、採点の議論に入る前に「条件固定」と「観察の順序」を揃える方が早いです。
よくある失敗:点数が揺れる “原因” はだいたい同じです
点数の揺れは「患者さんが悪化した」ではなく、「条件が変わった」「観察の視点が変わった」で起きることが多いです。まずは失敗パターンを共通言語にしておくと、チームでの統一が進みます。
下の表は、現場で起きがちな NG を、そのまま運用ルールに落とせる形で整理しました。
| 観点 | NG | OK | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| 条件 | 座面高・足底接地が毎回違う | 条件固定(変更時は明記) | 「座面 45 cm/足底接地あり」 |
| 支持 | 支持が増減して比較できない | 支持の部位と量を固定して書く | 「支持:骨盤帯に軽介助(前回同一)」 |
| 観察 | 上肢の到達だけで判断 | 骨盤帯 → 胸郭 → 頭部で崩れを追う | 「骨盤後傾→胸郭前方偏位」 |
| 解釈 | 点数だけで結論を出す | 所見 1 行+次の狙いまで残す | 「所見:麻痺側荷重回避/狙い:荷重獲得」 |
回避の手順:再評価前の 60 秒チェック
再評価の直前に、下の 3 点を確認するだけで「上がった/下がった」の意味がクリアになります。評価をやり直すよりも、まず条件を揃える方が早いです。
- 座面高は前回と同じか(違うなら理由を明記)
- 足底接地は確保できているか(必要なら台)
- 支持の部位と量は前回と同じか(違うなら明記)
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 体幹評価で、まず最初に揃えるべきことは何ですか?
A. まずは座面高・足底接地・支持量の 3 点です。ここが揃わないと、点数の変化が「患者さんの変化」なのか「条件の変化」なのか分からなくなります。
Q2. 点数は取れているのに、介入が決まりません
A. 点数の前に「崩れ方」を 1 行で残すのがおすすめです(例:麻痺側荷重回避→体幹側屈代償)。崩れ方が分かると、次の狙い(荷重を作る/支持を減らす/回旋を出す)が 1 つに絞れます。
Q3. 尺度は複数使うべきですか?
A. 必須ではありません。まず 1 つで目的を満たし、必要になったら次を足す方が運用が破綻しにくいです。目的別の選び方は比較記事にまとめています。
次の一手
- 運用を整える:歩行・バランス評価ハブ(全体像)
- 共有の型を作る:FACT・TCT・TIS の違い(比較・使い分け)(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Verheyden G, Nieuwboer A, Mertin J, Preger R, Kiekens C, De Weerdt W. The Trunk Impairment Scale: a new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke. Clin Rehabil. 2004;18(3):326-334. DOI: 10.1191/0269215504cr733oa / PubMed: PMID: 15137564
- Franchignoni FP, Tesio L, Ricupero C, Martino MT. Trunk Control Test as an Early Predictor of Stroke Rehabilitation Outcome. Stroke. 1997;28(7):1382-1385. DOI: 10.1161/01.STR.28.7.1382 / PubMed: PMID: 9227687
- Okuda Y, Owari G, et al. Validity of functional assessment for control of trunk in patients with subacute stroke: a multicenter, cross-sectional study. J Phys Ther Sci. 2023;35(7):520-527. DOI: 10.1589/jpts.35.520 / PubMed: PMID: 37405187
- Sato K, Ogawa T, et al. Functional Assessment for Control of the Trunk Predicts Independent Walking in Patients with Stroke. JMA J. 2025. DOI: 10.31662/jmaj.2024-0212 / PMC: PMCID: PMC11799423
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


