小臀筋トレーニングは「姿勢」ではなく目的と種目から選ぶ
小臀筋トレーニングでは、「立位・座位・ベッド上」の順番で種目を決めるのではなく、股関節外転の基礎筋力を高めたいのか、片脚支持で骨盤を制御したいのか、より機能的な課題へ進みたいのかで種目を選びます。小臀筋は中臀筋やTFL(大腿筋膜張筋)などと共同して働くため、小臀筋だけを完全に分離して鍛えることを前提にしないことも重要です。
この記事では、fine-wire EMGを含む研究をもとに、小臀筋の活動が高まりやすい種目、クラムシェルの位置づけ、中臀筋・TFLとの関係、フォームが崩れたときの修正、負荷の進め方まで理学療法士向けに整理します。
結論|小臀筋を鍛えるときは目的に合う種目を選ぶ
小臀筋のトレーニング種目は1つに固定できません。研究では、hip hitch/pelvic drop、立位での等尺性股関節外転、側臥位股関節外転、抵抗下での股関節外転+伸展、片脚ブリッジ、片脚スクワットなどで小臀筋活動が確認されています。

| 種目 | 主な位置づけ | 小臀筋の研究上の特徴 | フォームで確認する点 |
|---|---|---|---|
| Hip hitch/pelvic drop | 片脚支持での骨盤制御 | システマティックレビューで小臀筋前部・後部の双方に高い活動を生じる選択肢として整理 | 体幹側屈で骨盤運動を代償していないか |
| 立位等尺性股関節外転 | 荷重位で外転筋群を働かせる | 小臀筋前部・後部の双方で高い活動を生じる選択肢として報告 | 体幹の傾き、支持脚の崩れ、骨盤偏位 |
| 側臥位股関節外転 | 股関節外転を比較的単純な条件で練習 | 後部小臀筋で高い活動が報告され、股関節肢位によって筋活動比が変わる可能性がある | 骨盤回旋、股関節屈曲、反動 |
| 抵抗下股関節外転+伸展 | 外転に伸展要素を加える | fine-wire EMG研究で前部・後部小臀筋とも比較的高い活動を確認 | 腰椎伸展や骨盤回旋へ逃げていないか |
| 片脚ブリッジ | 骨盤保持と股関節周囲筋の協調 | 後部小臀筋で高い活動が報告 | 骨盤の落ち込み、腰椎伸展、支持側のずれ |
| 片脚スクワット | 荷重下での動的な股関節・骨盤制御 | 後部小臀筋で高い活動が報告 | 骨盤偏位、体幹側屈、膝の過度な内側偏位 |
| クラムシェル | 低負荷で股関節周囲筋の活動を導入 | 小臀筋を高活動させる代表種目とは言いにくい | 骨盤後方回旋によって開く動作になっていないか |
臨床でのポイント:EMGで筋活動が高い種目が、すべての患者に最も有効なトレーニングとは限りません。疼痛、筋力、荷重能力、バランス、疾患、術後制限、目標動作を確認し、実施可能な課題から選択します。
小臀筋は中臀筋・TFLと完全に分けて考えない
小臀筋は股関節外転に関与する深層筋で、歩行や片脚支持では股関節・骨盤周囲の安定にも関わります。一方、実際の運動では中臀筋やTFL、大臀筋などの股関節周囲筋と共同して活動します。
そのため、臨床では「小臀筋だけに効いているか」を追いかけるより、目的とする運動を適切なフォームで行いながら、小臀筋を含む股関節周囲筋へ必要な負荷を与えられているかを考える方が実践的です。
また、小臀筋には前部と後部があり、fine-wire EMG研究では種目によって両者の活動が異なることが示されています。たとえば、Mooreらの研究では抵抗下股関節外転+伸展で前部小臀筋に高い活動がみられ、後部では片脚ブリッジ、側臥位股関節外転、抵抗下股関節外転+伸展、片脚スクワットなどで高い活動が報告されています。
ただし、これらは主として健康な若年成人を対象とした筋電図研究です。筋活動の高さを、そのまま患者の筋力改善、疼痛改善、歩行能力改善などの臨床効果と同義にはできません。
目的別|どの種目から選ぶか
種目を選ぶときは「どの姿勢が上位か」ではなく、何を練習したいかを先に決めます。低負荷での外転運動と片脚支持課題では要求される能力が異なるため、対象者の現在地と目標動作を合わせて選択します。
側臥位股関節外転|外転運動を比較的単純に練習したい
側臥位股関節外転は、立位での支持性やバランス能力に左右されにくく、股関節外転運動そのものを確認しやすい種目です。2019年のfine-wire EMG研究では、後部小臀筋で高い活動が報告されています。
一方で、脚を高く上げること自体が目的ではありません。骨盤が後方へ回旋する、体幹を動かして脚を持ち上げる、股関節屈曲方向へ逃げる場合は、可動域や抵抗、開始肢位を調整します。
Hip hitch/pelvic drop|片脚支持で骨盤制御を練習したい
片脚支持で骨盤を制御する能力を課題にしたい場合は、hip hitch/pelvic drop系を検討できます。2020年のシステマティックレビューでは、これらのバリエーションは小臀筋前部・後部の双方に高い筋活動を生じる選択肢として整理されています。
ただし、文献で扱われているhip hitchやpelvic dropには方法の違いがあります。「この角度、この回数が標準」と固定せず、支持側股関節で骨盤を制御できているかを確認します。
立位等尺性股関節外転|荷重位で外転筋群を使いたい
立位等尺性股関節外転も、小臀筋前部・後部の双方で高い活動が報告されている選択肢です。動的な片脚課題が難しい場合でも、支持環境や抵抗条件を調整することで荷重位の股関節外転課題を設定できます。
体幹を大きく横へ倒して抵抗へ対抗している場合は、目的としている股関節周囲の負荷条件が変化します。抵抗を弱める、支持物を使う、足部位置を調整するなどしてフォームを再確認します。
片脚ブリッジ・片脚スクワット|より複合的な課題へ進む
片脚ブリッジや片脚スクワットでは、小臀筋だけでなく体幹、股関節、膝関節周囲筋などの協調が必要になります。後部小臀筋の活動も確認されていますが、「小臀筋の単独トレーニング」ではなく、より複合的な支持課題として位置づけると整理しやすくなります。
片脚スクワットで体幹や骨盤、膝の制御が大きく崩れる場合は、無理に継続する必要はありません。支持物の使用、運動範囲の調整、両脚課題への変更などによって、目的に合う難易度へ変更します。
クラムシェルは小臀筋トレーニングの第一選択なのか
クラムシェルは股関節周囲筋のトレーニングとしてよく使われますが、小臀筋を高活動させることだけを目的にするなら、第一選択として固定する必要はありません。
2020年のシステマティックレビューでは、小臀筋に対してhip hitch/pelvic dropや立位等尺性股関節外転などが高活動を生じる選択肢として整理され、後部小臀筋では側臥位股関節外転、片脚ブリッジ、片脚スクワットなども候補に挙げられています。
一方、クラムシェルには低負荷で導入しやすい、股関節周囲筋の運動を開始しやすいといった使い道があります。つまり、「クラムシェルが良い・悪い」ではなく、小臀筋へ何を求めているかで選択することが重要です。
注意:TFL活動を抑えながら殿筋群を働かせる研究としてクラムシェルが紹介されることがありますが、代表的なSelkowitzらの研究で直接測定されたのは中臀筋・大臀筋上部・TFLです。小臀筋の活動を直接示した研究として読み替えないようにします。
TFL優位は見た目だけでは断定できない
TFLは股関節外転にも関与するため、小臀筋や中臀筋と共同して働きます。しかし、運動中の見た目や「前外側が張る」という感覚だけから、TFLが小臀筋より優位に活動していると断定することはできません。
臨床で確認できるのは、骨盤や体幹の動き、股関節肢位、疼痛、運動範囲、反復によるフォーム変化などです。これらはフォーム調整には有用ですが、筋活動比そのものを直接測定しているわけではありません。
股関節内旋位にすれば小臀筋を狙えるのか
2026年に報告されたfine-wire EMG研究では、健康男性を対象に側臥位股関節外転を複数の股関節肢位で比較した結果、股関節内旋を含む条件で後部小臀筋や中臀筋とTFLとの活動比が高くなる場面が示されました。また、股関節伸展+内旋位では挙上後半に後部小臀筋と中臀筋の活動が高くなっています。
ただし、この研究は健康男性12名を対象とした筋電図研究であり、患者の筋力改善や疼痛改善を比較した介入研究ではありません。したがって、「つま先を内側へ向ければ小臀筋を選択的に鍛えられる」と一律に処方する根拠にはなりません。
股関節内旋を加える場合も、対象者の可動域、疼痛、術後制限、股関節や膝関節の状態を優先します。
フォームが崩れたら「何を減らすか」を決める
トレーニング中にフォームが崩れた場合は、特定の修正手順を全員に当てはめるのではなく、どの条件が現在の能力を超えているかを確認します。
| 観察される変化 | 確認すること | 調整例 |
|---|---|---|
| 体幹側屈が大きくなる | 抵抗や支持課題が高すぎないか | 抵抗を下げる、支持物を使う、課題を単純化する |
| 骨盤が回旋する | 運動範囲を広げすぎていないか | 可動域を調整し、骨盤位置を確認する |
| 反動が増える | 疲労や負荷量が許容範囲を超えていないか | 抵抗、反復数、運動速度、休息を調整する |
| 片脚課題で骨盤・膝が大きく崩れる | 支持性やバランス能力が課題に合っているか | 支持物を追加する、運動範囲を狭める、より単純な課題へ変更する |
| 疼痛が増える | 種目、抵抗、可動域、病態との適合性 | 負荷を下げるか中止し、症状と適応を再評価する |
重要なのは、体幹側屈や骨盤回旋が少し出ただけで「失敗」と決めることではありません。トレーニングの目的と照らして、その動きが課題遂行をどの程度変えているかを判断します。
負荷・回数は固定せず、目的と反応から調整する
小臀筋トレーニングを「8〜12回×2セット」のような一律の処方へ固定する必要はありません。筋力向上、運動学習、持久性、低負荷での導入など、目的によって適切な負荷条件は異なります。
負荷を調整するときは、次の項目を組み合わせます。
- 外部抵抗の大きさ
- 反復回数・セット数
- 運動範囲
- 片脚・両脚など支持条件
- 支持物の有無
- 運動速度
- 等尺性か動的運動か
- 休息時間
2026年のACSM Position Standでも、レジスタンストレーニングは目的に応じて負荷・量などを調整する考え方が示されています。ただし対象は健康成人であり、疾患や術後患者への個別処方を直接示したものではありません。
リハビリテーションでは、設定した運動を反復できるかだけでなく、症状、フォーム、疲労、翌日までの反応、目標動作との関連を確認して進行します。
臨床では「筋活動が最も高い種目」だけを選ばない
EMG研究は、小臀筋がどの運動で活動しやすいかを考える手がかりになります。しかし、筋活動が高いことと、その種目が患者に最適であることは同じではありません。
たとえば、hip hitchで高い小臀筋活動が期待できても、片脚支持自体が難しい患者では目的と負荷が合いません。一方、側臥位股関節外転は荷重課題ではありませんが、立位能力に左右されにくい条件で股関節外転運動を確認できます。
種目選択では、少なくとも以下を確認します。
- 目的:筋力、骨盤制御、片脚支持、動作練習のどれか
- 現在の能力:臥位、立位、片脚支持のどこまで安全に行えるか
- 症状:疼痛や違和感が運動でどう変化するか
- フォーム:目的とする運動を大きく変える代償が生じていないか
- 個別条件:術後制限、荷重制限、関節可動域、疾患特性がないか
筋別トレーニング全体から種目を探したい場合は、筋トレメニュー ハブで目的の筋・動作から確認できます。股関節外転筋群のなかでも中臀筋の種目選択を詳しく確認したい場合は、中臀筋トレーニングを参照してください。
疼痛・術後・疾患がある場合はトレーニング方法より個別条件を優先する
小臀筋トレーニングの研究には健康成人を対象とした筋電図研究が多く含まれます。そのため、股関節疾患、術後、強い疼痛、荷重制限などがある対象者へ、そのまま同じ種目や負荷を適用することはできません。
運動中に疼痛が明らかに増悪する、支持が困難になる、通常と異なる症状が出現するなどの場合は、回数を達成することを優先せず中止または条件変更を検討します。術後の場合は、術式、組織修復過程、荷重・可動域制限、主治医からの指示を優先します。
よくある質問
Q1. 小臀筋を鍛えるなら側臥位股関節外転とクラムシェルのどちらがよいですか?
小臀筋の活動を主目的にする場合、側臥位股関節外転は後部小臀筋で高い活動が報告されており、クラムシェルより優先して検討しやすい種目です。ただし、クラムシェルにも低負荷で股関節周囲筋の運動を導入しやすい利点があります。目的と対象者の能力によって使い分けます。
Q2. 小臀筋と中臀筋を別々に鍛えることはできますか?
両筋は多くの股関節運動や支持課題で共同して働くため、完全に分離して鍛えることを前提にしない方が実践的です。研究では各筋・各セグメントの活動量に違いが示されていますが、臨床では目的動作と負荷条件を合わせて種目を選びます。
Q3. 側臥位股関節外転ではつま先を内側へ向けた方がよいですか?
2026年のfine-wire EMG研究では、内旋を含む股関節肢位で後部小臀筋や中臀筋とTFLとの活動比が高くなる条件が報告されています。ただし健康男性を対象とした筋電図研究であり、すべての患者に内旋位を推奨する根拠ではありません。疼痛、可動域、疾患、術後制限を優先します。
Q4. 小臀筋トレーニングは何回行えばよいですか?
小臀筋だけに共通する固定回数はありません。筋力向上、低負荷での運動導入、支持課題など目的によって負荷と反復数を調整します。フォーム、症状、疲労、運動後の反応を確認しながら設定してください。
まとめ|小臀筋は「どの姿勢か」より「何を改善するか」で選ぶ
小臀筋トレーニングでは、立位・座位・ベッド上という姿勢順に種目を進めるのではなく、股関節外転、片脚支持での骨盤制御、荷重下での動的制御など、改善したい機能から種目を選ぶことがポイントです。
hip hitch/pelvic drop、立位等尺性股関節外転、側臥位股関節外転、抵抗下股関節外転+伸展、片脚ブリッジ、片脚スクワットなどは、小臀筋活動を考えるうえで候補になります。一方、クラムシェルを「小臀筋の代表種目」として固定する必要はありません。
また、小臀筋は中臀筋やTFLなどと共同して働きます。筋電図上の活動量だけで種目の優劣を決めず、対象者の能力、症状、フォーム、目標動作を組み合わせて負荷を調整することが重要です。
参考文献
- Moore D, Semciw AI, Pizzari T. A systematic review and meta-analysis of common therapeutic exercises that generate highest muscle activity in the gluteus medius and gluteus minimus segments. Int J Sports Phys Ther. 2020;15(6):856-881. DOI: 10.26603/ijspt20200856
- Moore D, Semciw AI, McClelland J, Wajswelner H, Pizzari T. Rehabilitation exercises for the gluteus minimus muscle segments: an electromyography study. J Sport Rehabil. 2019;28(6):544-551. DOI: 10.1123/jsr.2017-0262
- Moore D, Semciw AI, Wisbey-Roth T, Pizzari T. Adding hip rotation to therapeutic exercises can enhance gluteus medius and gluteus minimus segmental activity levels: an electromyography study. Phys Ther Sport. 2020;43:157-165. DOI: 10.1016/j.ptsp.2020.02.017
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- Selkowitz DM, Beneck GJ, Powers CM. Which exercises target the gluteal muscles while minimizing activation of the tensor fascia latae? Electromyographic assessment using fine-wire electrodes. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(2):54-64. DOI: 10.2519/jospt.2013.4116
- Currier BS, D’Souza AC, Fiatarone Singh MA, et al. American College of Sports Medicine Position Stand. Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews. Med Sci Sports Exerc. 2026;58(4):851-872. DOI: 10.1249/MSS.0000000000003897
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

