認知症 OT 紙面ドリル|実施フローと「指示調整」を 1 ページで固定する
認知症に対する作業療法の紙面ドリルは、課題そのものよりも「実施手順」と「説明(指示)と負荷調整の順番」を固定すると、担当者間のばらつきが減り、経時比較がしやすくなります。この記事では、現場で使う頻度が高いドリル群を、実施フロー図・使い分けフロー図・指示調整フロー図で統一し、実施→記録→次回設定までを一連で回せる形に整理します。
最初は低負荷から開始し、正答率だけでなく、手がかり量・再指示回数・中断有無・疲労徴候を記録してください。評価全体の整理は評価ハブで先にそろえると、チーム共有がスムーズです。
関連:ドリル一括ダウンロード / OT ドリルハブ
図版 1|5 分で回す実施フロー
導入文、実施順、記録項目、次回設定を固定すると、短時間でも比較可能なデータが残せます。初回は L1 を基本にし、変更は 1 要素(課題量・時間・ルール)だけに絞る運用が安全です。
図版 2|ドリル選択の使い分けフロー
主訴・観察所見に応じて、見当識/注意/遂行速度/二重課題/実行機能/視空間を選択します。迷う場合は「安全に成功体験を作れる課題」から入り、反応を見て段階的に切り替えます。
図版 3|指示調整の順番(説明→手がかり→負荷)
紙面ドリルで崩れやすいのは、難易度そのものより「説明が毎回変わる」ことです。運用は、①指示文を固定→②手がかりを追加→③負荷を 1 要素だけ変更、の順番で回すと安定します。
とくに拒否や疲労が出やすい方は、課題を変える前に説明の短文化( 1 文)と見本提示で成功率を上げるほうが、次回設定が楽になります。
| 目的 | OK(推奨) | NG(避ける) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 説明の標準化 | 指示文は 1 文+見本 1 回で固定 | 毎回言い回しが変わる/説明が長い | 再指示回数・理解の遅れ |
| 成功率を上げる | 手がかりを 1 つ追加(指差し・囲み・選択肢) | いきなり課題量を増やす/ルールを増やす | 手がかり量・自己修正の有無 |
| 負荷を上げる | 変更は 1 要素のみ(量・時間・ルールのどれか 1 つ) | 量+時間+ルールを同時に変更 | 疲労徴候・中断有無 |
| 中止/分割 | 拒否・強い疲労・混乱が出たら同日に追加しない | 不快反応があっても押し切る | 拒否のきっかけ(言葉/環境) |
開始レベルの早見表
同じ難易度でも、必要な支援量や疲労反応で負荷は変わります。進級判定は、正答率だけでなく「どの程度の支援で達成したか」を必ず加味してください。
| 場面 | 推奨開始 | 進級目安 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 初回導入・拒否が出やすい | L1 | 手がかり最小で 7〜8 割以上 | 再指示回数・不安の有無 |
| 通常セッションの追跡 | L2 | 見落とし/誤反応が安定して減少 | 見落とし位置の偏り |
| 切替・耐性の確認 | L3 | 途中離脱なし・速度が安定 | 疲労徴候・中断有無 |
現場の詰まりどころと、よくある失敗
詰まりやすいのは「毎回説明が変わる」「難易度を一気に上げる」「点数のみ記録で終える」の 3 点です。これらは比較可能性を下げ、次回設定の精度を落とします。
ショートカット:回避手順(指示調整) / 開始レベル表
回避するには、指示文を定型化し、変更は 1 要素のみ、記録は結果+過程(支援量・再指示・疲労)で残す運用に統一してください。続けて読む:見当識ドリル記録テンプレ。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
指示文はどこまで固定すればよいですか?
基本は「 1 文+見本 1 回」で固定します。言い回しが毎回変わると、反応の差が課題の効果なのか説明差なのか分からなくなります。固定したうえで、反応に応じて手がかりを追加してください。
手がかりを増やすと「甘やかし」になりませんか?
臨床運用では、まず成功体験を作って中断や拒否を減らすほうが優先です。手がかりは「追加した種類と量」を記録し、次回は同条件で再評価すれば比較可能性は保てます。
見当識・注意・遂行速度は同日に全部実施しますか?
同日実施は可能ですが、初回は 1〜2 系統に絞る方が安全です。疲労や拒否が出る場合は、見当識または注意を優先し、次回に分割してください。
進級の判断を簡単に決める方法はありますか?
「手がかり最小で 7〜8 割以上」が連続して確認できるかを基準にします。悪化時は 1 段階戻し、同条件で再評価するのが実務的です。
短時間しか取れない日は何を残せばよいですか?
正答数だけでなく、再指示回数・手がかり量・中断有無の 3 点を最低限残してください。次回比較とチーム共有の質が保てます。
次の一手
まずは 2 週間、同一条件(指示文・手がかり・課題量)で運用して変化を確認しましょう。全体像は認知症 OT 紙面ドリル運用プロトコル、すぐ実装するならドリル一括ダウンロードから始めるとスムーズです。
参考文献
- Smallfield S, Metzger L, Green M, Henley L, Rhodus EK. Occupational Therapy Practice Guidelines for Adults Living With Alzheimer’s Disease and Related Neurocognitive Disorders. Am J Occup Ther. 2024;78(1):7801397010. https://doi.org/10.5014/ajot.2024.078101
- Desai R, Leung WG, Fearn C, John A, Stott J, Spector A. Effectiveness of Cognitive Stimulation Therapy (CST) for mild to moderate dementia: A systematic literature review and meta-analysis of randomised control trials using the original CST protocol. Ageing Res Rev. 2024;97:102312. https://doi.org/10.1016/j.arr.2024.102312
- Jang JS, Lee JS, Yoo DH. Effects of spaced retrieval training with errorless learning in the rehabilitation of patients with dementia. J Phys Ther Sci. 2015;27(9):2735-2738. https://doi.org/10.1589/jpts.27.2735
- 日本作業療法士協会. 作業療法ガイドライン―認知症 増補版(2025.02). https://www.jaot.or.jp/files/page/gakujutsu/guideline/guideline_Dementia-Expanded%20edition.pdf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


