リフィーディング症候群とリハビリ|離床前に何を確認するか
リフィーディング症候群(再栄養症候群)のリスクがある患者では、「RPE 3まで」「10分まで」のような一律のリハ負荷上限は定められていません。PT・OTが離床前に確認したいのは、栄養再開・増量からの時期、P(リン)・K(カリウム)・Mg(マグネシウム)の推移、呼吸・循環・神経症状、電解質補正や治療状況です。
本記事ではICU・急性期を想定し、リフィーディング症候群が疑われる患者で、何を確認してから離床し、どの変化では負荷を上げず、いつ中断・相談へつなげるかを整理します。栄養療法そのものではなく、リハビリテーション側の判断に必要な情報へ絞って解説します。
離床前は「栄養再開→P/K/Mg→症状→治療」の順で確認する
結論として、再栄養リスク患者では電解質の1回の数値だけを見るのではなく、栄養再開後の時間軸と全身状態をセットで確認します。PT・OTが診断や電解質補正を決めるのではなく、「今日の活動量を上げてよい状態か」をチームと共有するための情報をそろえることが重要です。

| 確認する順序 | 見る内容 | リハ判断につなげるポイント |
|---|---|---|
| 1.栄養再開・増量 | いつ栄養を開始・再開・増量したか、現在の投与状況 | 電解質や全身状態の変化と時間的に関連していないか確認する |
| 2.P・K・Mg | 現在値、栄養開始前・前回値からの変化、低下傾向 | 単独値だけでなく、低下の進行や補正の必要性まで確認する |
| 3.呼吸 | 呼吸困難、呼吸数、努力呼吸、酸素化、呼吸状態の変化 | 新規・増悪する呼吸異常があれば活動量の増加より状態確認を優先する |
| 4.循環 | 心拍、血圧、不整脈、循環動態、浮腫などの変化 | 新たな循環異常があれば離床を進める前に原因と治療方針を確認する |
| 5.神経・全身状態 | 意識変化、せん妄、著しい筋力低下、強い倦怠感など | 電解質異常やチアミン欠乏などを含む病態変化の可能性を共有する |
| 6.補正・治療状況 | 電解質補正、栄養量の調整、採血予定、医師・管理栄養士の方針 | リハ単独で負荷増量を決めず、当日の治療方針と整合させる |
ICUにおける栄養療法全体の考え方は、JCCNG2024に基づくICU栄養療法の整理で確認できます。
負荷を上げない場面と、中断・相談する場面を分けて考える
再栄養リスクがあることだけで一律に離床を中止するのではなく、「今日は負荷を上げない状態」と「現在の運動・離床を中断して評価を優先する状態」を分けます。一方で、P・K・Mgの進行する低下に呼吸・循環・神経症状が加わる場合は、活動量の調整だけで対応せず、速やかな共有が必要です。
| 状態 | リハ側の考え方 | 次に確認・共有すること |
|---|---|---|
| 再栄養リスクはあるが、電解質・全身状態が安定 | リスクだけを理由に一律中止とはせず、施設の離床基準と患者反応に基づき個別に判断する | 栄養開始時期、次回採血、前回介入への反応 |
| P・K・Mgが新たに低下、または低下が進行 | 活動量の増量を急がず、補正・再検査の方針を確認する | 開始前値・前回値との差、補正状況、症状の有無 |
| 電解質補正を継続・反復している | 負荷を上げる前に病態と治療経過を確認する | 何を補正しているか、直近の推移、次回採血予定 |
| 新規・増悪する呼吸困難、努力呼吸、呼吸状態悪化 | 運動・離床を中断し、呼吸状態の評価を優先する | 発症時点、実施していた活動、呼吸数・酸素化などの推移 |
| 新しい不整脈、血圧低下など循環動態の悪化 | 運動・離床を中断し、循環状態の評価と医療者への共有を優先する | 心拍・血圧の推移、症状、姿勢・運動との時間関係 |
| 意識変化、けいれん、著明な筋力低下など | リハ継続ではなく原因確認を優先する | P・K・Mg、チアミン投与を含む治療状況、症状の発症時期 |
ここで示しているのは「再栄養症候群専用のリハ中止基準」ではありません。患者に生じた変化から、リハ負荷を増やす段階ではないのか、現在の活動を止めて医療評価を優先すべきなのかを整理するための実務上の考え方です。
リフィーディング症候群はPだけではなくK・Mgと発症時期を見る
ASPENのコンセンサスでは、再栄養症候群を評価する際にP・K・Mgのいずれかの低下と、カロリー再開・増量からの時期を組み合わせます。リンだけに注目しないことがポイントです。
| 重症度 | P・K・Mgの変化 | 条件 |
|---|---|---|
| 軽度 | いずれかが10〜20%低下 | カロリー再開または大幅な増量後5日以内に生じる変化として評価する |
| 中等度 | いずれかが20〜30%低下 | |
| 重度 | 30%を超える低下、または電解質低下・チアミン欠乏に関連する臓器障害 |
この分類は再栄養症候群の診断・重症度を整理する枠組みであり、リハビリテーションの開始・中止基準ではありません。PT・OTはこの数値から独自に診断するのではなく、栄養再開後の変化を把握し、医師・看護師・管理栄養士などと共有する材料として確認します。
また、栄養開始前の血清P・K・Mgが正常でも、栄養再開後に低下することがあります。そのため、再栄養リスクが高い患者では「今日の値が基準範囲内だったか」だけでなく、栄養開始前や前回採血からどう変化したかを見る必要があります。
P・K・Mgの低下は呼吸・循環・神経症状につながり得る
電解質異常をリハ前に確認する理由は、採血値そのものではなく、呼吸筋、心機能・不整脈、筋力、神経症状など活動に直接影響する変化を伴う可能性があるためです。
| 項目 | 関連してみられ得る変化 | リハ中に注目すること |
|---|---|---|
| P(リン) | 筋力低下、呼吸筋機能低下、呼吸不全、心機能低下など | 以前より呼吸仕事量や疲労が増えていないか |
| K(カリウム) | 筋力低下、不整脈、重症では呼吸筋への影響など | 脈拍・心電図変化、急な筋力低下など |
| Mg(マグネシウム) | 筋力低下、振戦、筋収縮、意識変化、不整脈など | 神経筋症状や循環状態の新しい変化 |
| チアミン欠乏 | 意識変化、脳症、神経症状、乳酸上昇など | 電解質だけでは説明しにくい神経・全身状態の変化 |
ただし、ICU患者には原疾患、感染、薬剤、人工呼吸管理、腎機能障害など複数の要因があります。呼吸苦や意識変化がみられても、それだけで再栄養症候群による症状と判断せず、他の病態を含めて医療チームで評価します。
RPE・時間・離床段階を再栄養症候群の「固定上限」にしない
JCCNG2024やASPENの再栄養症候群に関する推奨から、「RPE 3〜4」「10〜15分」「端座位まで」といったPT・OT向けの一律な運動上限を設定することはできません。
したがって、「低リン血症だから10分まで」「再栄養リスクが高いから立位は禁止」と機械的に決めるのではなく、電解質の推移、症状、呼吸・循環状態、治療状況、施設の離床基準、前回の運動反応を組み合わせて活動量を調整します。
全身状態が安定し、医療チームとして離床可能と判断されている場合には、短時間化や休息を増やすなど個別に調整する方法もあります。ただし、これらは再栄養症候群に特有の公式プロトコルではありません。患者反応を確認するための一般的な負荷調整として扱います。
チーム共有は「いつ再開したか」と「何が変わったか」をセットにする
再栄養リスク患者では、P・K・Mgの値だけを伝えるより、栄養療法との時間関係と臨床症状をセットにすると判断材料になります。
リハ側から共有したい5点
- 栄養をいつ開始・再開・増量したか
- P・K・Mgが開始前・前回からどう変化したか
- 現在補正中か、再採血予定があるか
- 呼吸・循環・意識・筋力などに新しい変化があるか
- どの活動で、どのような反応が出たか
たとえば「Pが低いです」だけではなく、「栄養増量後、Pが前回より低下して補正中。安静時は安定しているが、端座位で呼吸数増加を認めた」のように、栄養経過・検査値・患者反応をつなげて共有します。
記録は「変化→患者反応→対応→次回条件」で残す
記録では、再栄養リスクの有無だけでなく、なぜ当日の活動量を維持・変更したのかが次の担当者へ伝わることを優先します。
記録例
栄養再開後。Pは前回より低下し補正中、K・Mgおよび安静時の呼吸・循環状態を確認。本日は活動量の増量を行わず前回と同程度で反応を確認。著明な症状増悪なし。次回採血・補正状況を確認後に負荷増量を再検討する。
この記録例は公式様式ではありません。実務では、施設の記録ルールに合わせて「何が変わったか」「そのため何を変えたか」「何を確認できれば次に進めるか」を残します。
リフィーディング症候群のリハで避けたい3つの判断
1.Pが正常だから再栄養症候群ではないと判断する:再栄養症候群ではPだけでなくK・Mgも確認し、栄養再開後の経時的な変化を見る必要があります。
2.再栄養リスクがあるだけで一律に離床を中止する:リスクがあることと、現在リハを中断すべき状態であることは同じではありません。電解質の推移、症状、全身状態、治療状況を合わせて判断します。
3.RPEや時間だけで安全性を判断する:固定したRPE・運動時間では、短期間で変化する電解質や全身状態を反映できません。栄養経過と患者反応を含めて再評価します。
よくある質問
Q1.低リン血症があればリハビリは必ず中止ですか?
低リン血症という検査値だけから、一律にリハ中止とは判断できません。ただし、新たな低下や低下の進行、補正を要する状態、呼吸・循環・神経症状を伴う場合は、活動量の増加を急がず、治療方針を確認します。リハ中に全身状態が悪化した場合は中断して医療評価を優先します。
Q2.リフィーディング症候群ではリンだけ見ればよいですか?
いいえ。ASPENの診断枠組みではP・K・Mgを確認します。また、重症例では電解質異常やチアミン欠乏に関連した臓器障害が問題になります。リハ職は呼吸、循環、神経症状を合わせて確認します。
Q3.リフィーディング症候群のリハにRPEや時間の上限はありますか?
主要な再栄養症候群のガイドラインには、PT・OT向けの一律なRPEや離床時間の上限は示されていません。患者の電解質推移、全身状態、治療内容、施設の離床基準、運動への反応から個別に調整します。
Q4.採血が安定していればすぐ負荷を上げてもよいですか?
採血値だけで負荷増量を決めるのではなく、栄養再開からの経過、呼吸・循環・意識、補正状況、前回介入への反応を確認します。特に再栄養開始後の早期は、単独値より経時変化を確認することが重要です。
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参考文献
- Nakamura K, Yamamoto R, Higashibeppu N, et al. The Japanese Critical Care Nutrition Guideline 2024. J Intensive Care. 2025;13:18. doi: 10.1186/s40560-025-00785-z
- da Silva JSV, Seres DS, Sabino K, et al. ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome. Nutr Clin Pract. 2020;35(2):178-195. doi: 10.1002/ncp.10474
- National Institute for Health and Care Excellence. Nutrition support for adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition. Clinical guideline CG32. NICE Recommendations
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

