脳卒中・循環器病 第三次5ヵ年計画をリハ部門でどう読むか
脳卒中・循環器病克服の第三次5ヵ年計画は、PT・OT・STにとって「政策を読む資料」ではなく、急性期・回復期・生活期・在宅をどうつなぐかを見直す実務資料です。本記事では、計画本文をリハ部門の視点で読み替え、現場で最初にそろえたい評価・連携・再発予防・情報共有の型を整理します。
この記事で扱うのは、個別の治療手技や評価尺度の詳細ではありません。脳卒中リハの全体像は 脳卒中ハブ、推奨や変更点の読み方は 脳卒中治療ガイドライン2025改訂ポイント で確認し、本記事では「自施設で何をそろえるか」に絞ります。
第三次5ヵ年計画とは
第三次5ヵ年計画は、脳卒中、心不全を含む循環器病、血管病を対象に、2026年度から2030年度を見据えて整理された中期計画です。急性期治療だけでなく、慢性期、在宅、介護、再発・再入院予防まで含めた体制づくりが重視されています。
計画では、人材育成、医療体制の充実、登録事業の促進、予防・国民啓発、臨床・基礎研究の強化が大きな柱として示されています。リハ部門として読む場合は、「どの評価を使うか」だけでなく、「誰が、どの時点で、何を共有するか」まで含めて考える必要があります。

PT・OT・STが押さえる4つの要点
リハ部門で最初に押さえる要点は、切れ目ないリハ、地域連携、再発・再入院予防、情報共有の4つです。政策文書の言葉をそのまま覚えるより、自施設の行動に変換することが重要です。
| 要点 | リハ部門での意味 | 最初の打ち手 |
|---|---|---|
| 急性期から生活期までつなぐ | 病期が変わっても、評価と申し送りの言葉をそろえる必要があります。 | 入院初期、回復期中盤、退院前で見る項目を固定します。 |
| 地域連携を具体化する | 医療機関内で完結せず、訪問、通所、ケアマネ、家族へ情報を渡す視点が必要です。 | 退院時サマリーに入れる情報を5項目前後に絞ります。 |
| 再発・再入院予防を組み込む | 歩行やADL改善だけでなく、退院後の危険行動を減らす支援が必要です。 | 服薬、受診、活動量、食事、症状変化の確認を退院前に入れます。 |
| ICT・PHRを含む情報共有 | 大規模システムの話だけでなく、日々の記録を外へ渡せる形にする視点です。 | カンファレンス記録と退院時共有項目の型をそろえます。 |
現場で変わる4つの場面
第三次5ヵ年計画を現場に落とすと、変化が出やすいのは入院初期、回復期、退院前、生活期フォローの4場面です。特に脳卒中と心不全では、状態が落ち着いた後に「次の場面へ情報がつながらない」ことが問題になりやすいです。
入院初期:安全確認と共通言語をそろえる
入院初期は、重症度、離床可否、嚥下リスク、循環動態、疲労、注意点を多職種で共有する段階です。PT・OT・STがそれぞれ別の言葉で記録すると、病棟や医師への伝達がぼやけやすくなります。まずは「何を見たら安全と判断するか」をそろえることが大切です。
回復期:能力改善だけで終わらせない
回復期では、歩行やADLの改善に加えて、再発予防教育と自己管理支援を組み込む必要があります。臨床では「歩けるようになったが、退院後の注意点が本人や家族に残っていない」というケースがあります。運動量、血圧管理、服薬、受診行動、転倒予防まで確認しておくと、退院後の支援につながりやすくなります。
退院前:地域へ渡す情報を絞る
退院前は、情報量を増やすよりも、連携先が使える情報に絞ることが重要です。機能評価の点数だけでなく、移動時の注意点、再発・再入院リスク、家族の介助力、生活上の禁止・注意事項を短く整理すると、訪問リハや通所リハ、ケアマネにも伝わりやすくなります。
生活期:自己管理の継続を支える
生活期では、機能訓練だけでなく、症状変化に気づく力、受診につなげる判断、活動量の維持、家族との共有が大切になります。リハ職が直接関われる時間は限られるため、本人・家族・地域職種が同じ注意点を見られる形にしておくことが実務的です。
現場で詰まりやすいところ
第三次5ヵ年計画は方向性を示す資料なので、現場では「結局、何を変えればよいのか」で止まりやすいです。最初から大きな仕組みを作るより、共有語、最小評価セット、退院前確認、地域に渡す情報の4つを先に整える方が現実的です。
| 詰まりどころ | 起こりやすい理由 | 最小の対策 |
|---|---|---|
| 計画を読んでも行動に落ちない | 政策の言葉が抽象的で、職種ごとの行動に分解されていないためです。 | 入院初期、退院前、生活期の3場面に分けて確認項目を決めます。 |
| 脳卒中と循環器で共有語がそろわない | 診療科ごとに評価項目や記録文化が分かれているためです。 | 共通項目を3〜5個に絞り、疾患別の追加項目は別枠にします。 |
| 退院支援が説明だけで終わる | 本人理解、家族支援、受診行動、地域連携まで確認できていないためです。 | 退院前カンファレンスで再発予防・受診・生活管理を必須確認にします。 |
| ICT・PHRが自施設に関係ないように見える | 大規模システムの導入だけを想像しやすいためです。 | まずは紙でも電子でも、外へ渡す情報の型を固定します。 |
リハ部門が30日でそろえたい準備
最初の30日は、完璧なマニュアル作成よりも「同じ言葉で回す」ことを優先します。新人PT・OT・STでも迷いにくい形にするなら、評価、記録、退院前確認、地域連携の最小セットを決めるのが有効です。
| 確認項目 | 見るポイント | 記録のコツ |
|---|---|---|
| 共有語 | 重症度、離床可否、注意点、退院先の表現がそろっているか | 「ふらつきあり」だけでなく、場面と介助量を添えます。 |
| 最小評価セット | 病棟ごとに最低限そろえる評価が決まっているか | 施設全体で3〜5項目に絞ると運用しやすいです。 |
| 退院前確認 | 再発予防、服薬、受診、活動量、家族指導が入っているか | チェック式にすると抜け漏れを減らせます。 |
| 地域連携 | 訪問、通所、外来、ケアマネへ渡す情報が定まっているか | 長文より、実際に使う注意点を5行前後に絞ります。 |
| 再評価 | どの時点で見直すかが決まっているか | 入院初期、回復期中盤、退院前の3点で固定しやすいです。 |
退院前サマリーに入れたい5項目
地域連携で使われるサマリーにするには、点数の羅列よりも「次の支援者が判断できる情報」を入れることが重要です。以下の5項目を固定すると、脳卒中でも循環器病でも応用しやすくなります。
| 項目 | 書く内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 移動・ADL | 自立度、介助量、危険場面を具体化します。 | 屋内歩行は見守り。方向転換時にふらつきあり。 |
| 再発・再入院リスク | 血圧、疲労、息切れ、転倒、服薬忘れなどを整理します。 | 疲労時に活動量が急増しやすく、休息の声かけが必要。 |
| 本人理解 | 注意点を本人がどこまで説明できるかを確認します。 | 受診目安は説明可能。運動量調整は家族確認が必要。 |
| 家族支援 | 介助方法、見守り範囲、緊急時対応を共有します。 | 入浴時は家族見守り。段差昇降は手すり使用を確認済み。 |
| 地域への依頼 | 訪問・通所・外来で継続して見てほしい点を明記します。 | 活動量、血圧変動、屋外歩行時の疲労を継続確認。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
第三次5ヵ年計画はPT・OT・STに直接関係ありますか?
関係あります。計画は治療手技だけでなく、急性期から在宅までの体制、多職種連携、再発・再入院予防、情報共有を扱っています。リハ部門が「どの時点で何を評価し、誰へ何を渡すか」を見直す材料になります。
脳卒中ガイドライン2025とは何が違いますか?
脳卒中ガイドラインは評価・介入の推奨を確認する資料です。一方、第三次5ヵ年計画は、医療体制、地域連携、予防、情報共有を含めて読む資料です。両者は競合ではなく、役割が違います。
脳卒中だけでなく循環器病まで扱う必要がありますか?
あります。第三次5ヵ年計画は、脳卒中、心不全を含む循環器病、血管病を対象にしています。脳卒中中心の記事であっても、再発予防、再入院予防、地域連携の視点では循環器病とのつながりを残した方が自然です。
ICT・PHRは大きな病院だけの話ですか?
大規模なシステム導入だけがICT・PHRではありません。まずは院内カンファレンスの記録項目や、退院時に外へ渡す情報の型をそろえることが第一歩です。
最初に1つだけ変えるなら何がおすすめですか?
退院前に確認する「再発予防・受診・家族共有・生活管理」の項目を固定することです。患者と家族に残る支援へ直結しやすく、急性期、回復期、生活期をつなぐ起点にもなります。
次の一手
まず脳卒中リハの全体像を整理したい場合は 脳卒中ハブ に戻るのが最短です。推奨や評価・介入の変更点を押さえたい場合は 脳卒中治療ガイドライン2025改訂ポイント、循環器側の退院支援や再入院予防まで広げたい場合は 心不全再入院予防継続管理料 を続けて読むと整理しやすくなります。
参考文献・一次情報
- 日本循環器学会,日本脳卒中学会.脳卒中と循環器病克服 第三次5ヵ年計画(2026–2030年度).2026.公式PDF
- 日本循環器学会.脳卒中と循環器病克服第三次5ヵ年計画の策定について.2026.学会告知
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


