褥瘡の写真記録と創部計測は「前回と比較できる形」で残すのが重要です
褥瘡の写真記録で大切なのは、きれいに撮ることよりも、前回と今回を同じ条件で比較できる形にすることです。体位、撮影タイミング、尺度の置き方、計測方法が毎回ばらつくと、改善・悪化の判断が曖昧になります。この記事では、褥瘡写真と創部計測を臨床で共有しやすく残すために、固定すべき条件、計測の基本、記録例を整理します。
褥瘡予防の全体像から確認したい場合は、先に 褥瘡予防の基本|評価→除圧→再評価 を確認すると位置づけがつかみやすくなります。
写真は評価の代わりではなく、経過判断を補強する材料です
褥瘡写真は、創部の変化を視覚的に共有するための補助資料です。写真だけで深さ、ポケット、滲出液、周囲皮膚の変化を正確に判断するのは難しいため、長径・短径・深さ・所見とセットで残す必要があります。
臨床では「写真はあるのに、前回と条件が違って比較できない」ということがよくあります。光の当たり方、角度、体位が変わるだけでも、発赤や創縁の見え方は変わります。写真を残す目的は、撮影そのものではなく、次回評価で変化を説明できるようにすることです。
まず固定するのは体位・タイミング・光源・尺度・角度の5点です
褥瘡写真を比較しやすくするには、撮影条件を毎回そろえることが最優先です。特に、体位、撮影タイミング、光源、尺度、角度の5点は、施設内で先に決めておくと記録のブレを減らせます。

※スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | そろえる内容 | ずれると起こること | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 体位 | 仰臥位、30°側臥位など | 皮膚の張りや見える範囲が変わる | 左30°側臥位 |
| タイミング | 洗浄後・処置前など | 滲出液や付着物の見え方が変わる | 洗浄後・処置前 |
| 光源 | 同じ部屋、同じ照明条件 | 発赤や壊死の色味が変わる | 病室内照明 |
| 尺度 | 同じ定規を創と同じ平面に置く | 大きさを比較しにくい | 近接写真は尺度あり |
| 角度 | 創面に対してできるだけ直角 | 遠近差で大きさが歪む | 全景1枚、近接1枚 |
創部計測は長径・短径・深さを同じ方法で残します
創部計測では、最低限、長径・短径・深さを同じ方法で記録します。写真だけでは創が縮小したのか、深くなったのか、ポケットが広がったのかを判断しにくいため、数値と所見を合わせて残すことが重要です。
長径・短径は「最大長」と「直交方向」でそろえます
長径は創の最も長い方向、短径は長径に直交する最大幅で測ります。毎回なんとなく横幅を測ると、担当者によって数値がずれやすくなります。迷う場合は、先に長径を決め、その直角方向で短径を測ると共有しやすくなります。
深さは最深部を記録し、写真と所見を合わせて判断します
深さは創底の最も深い部分を確認して残します。ただし、深さだけで改善・悪化を判断するのは避けます。壊死組織、滲出液、周囲皮膚、除圧状況も合わせて見ないと、創部全体の変化を見誤ることがあります。
ポケットやトンネルは方向と長さを残します
ポケットやトンネルは写真だけでは伝わりにくいため、方向と長さを文字で残します。時計法を使う場合は、頭側を12時に固定するなど、施設内で表現をそろえると多職種で共有しやすくなります。DESIGN-RのP測定を確認したい場合は、DESIGN-RのP測定|時計法と記録の型 も参考になります。
写真はあるのに比較できない原因は、撮影条件のズレです
褥瘡写真が比較しにくくなる原因は、撮影技術よりも運用のズレにあります。体位が違う、処置前後が混ざる、尺度がない、撮影距離が違うと、前回との変化を説明しにくくなります。
※スマホでは表を横スクロールできます。
| よくある失敗 | 起きること | 対策 | 記録に残す項目 |
|---|---|---|---|
| 体位が毎回違う | 創の見え方が変わる | 部位ごとの基本体位を決める | 体位、クッション配置 |
| 処置前後が混ざる | 創面の状態を比較しにくい | 洗浄後・処置前で統一する | 撮影タイミング |
| 尺度がない | 大きさの共有が曖昧になる | 近接写真には尺度を入れる | 尺度あり/なし |
| 写真だけで判断する | 深さやポケットを見落とす | 計測値と所見を一緒に残す | 長径、短径、深さ、所見 |
記録は写真+計測+一言所見の最小セットで十分です
褥瘡記録は長文にするより、比較に必要な項目を抜けなく残すことが重要です。現場で使いやすい最小セットは、部位、体位、撮影タイミング、写真条件、長径・短径・深さ、周囲皮膚、一言所見、次回もそろえる条件です。
※スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | 記録例 | ポイント |
|---|---|---|
| 部位 | 仙骨部 | 左右や骨突出部を具体的に書く |
| 体位 | 左30°側臥位 | 次回も再現できる表現にする |
| タイミング | 洗浄後・処置前 | 前後関係をそろえる |
| 写真条件 | 全景1枚、近接1枚、尺度あり | 尺度の有無を残す |
| 長径×短径 | 3.2cm×2.4cm | 長径→短径の順で統一する |
| 深さ | 0.4cm | 最深部を記録する |
| 周囲皮膚 | 軽度発赤あり、浸軟なし | 創だけでなく周囲も見る |
| 一言所見 | 前回比で開口部やや縮小、滲出液減少 | 変化を短く言語化する |
| 次回条件 | 同体位、洗浄後・処置前で再評価 | 比較条件を明文化する |
記録例
仙骨部。左30°側臥位、洗浄後・処置前に撮影。全景1枚、近接1枚、尺度あり。長径3.2cm、短径2.4cm、深さ0.4cm。周囲皮膚に軽度発赤あり、浸軟なし。前回比で開口部はやや縮小、滲出液は減少。次回も同体位・同タイミングで再評価する。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
褥瘡は写真だけで評価してよいですか?
写真だけで評価するのは避けた方が安全です。光源や角度で見え方が変わり、深さやポケットは写真だけでは伝わりにくいことがあります。写真、長径・短径・深さ、周囲皮膚の所見をセットで残すことが基本です。
毎回、尺度は入れた方がよいですか?
比較目的の近接写真では、できるだけ尺度を入れます。全景写真では部位の位置関係を残し、近接写真では尺度を入れる2枚構成にすると運用しやすくなります。
撮影タイミングはいつがよいですか?
施設内で統一できるタイミングを決めることが重要です。迷う場合は、洗浄後・処置前でそろえると、創面の比較がしやすくなります。
担当者が変わっても比較できる記録にできますか?
できます。担当者を固定するより、体位、撮影タイミング、尺度、角度、測定方法を固定することが重要です。部位ごとに基本ルールを作ると、担当者が変わってもブレを減らせます。
次の一手
写真と計測条件をそろえたら、次は褥瘡予防全体の評価と、ポケットの記録方法を確認すると実践につなげやすくなります。
参考文献
- 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会(褥瘡グループ). 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―2. 褥瘡診療ガイドライン(第3版). 日皮会誌. 2023;133(12):2735-2797. PDF
- Department of Health, State Government of Victoria. Pressure injuries – Standardised care process. 2022. PDF
- Tees, Esk and Wear Valleys NHS Foundation Trust. Digital Wound Photography Procedure. 2024. PDF
- Institute of Medical Illustrators. IMI National Guidelines: Wound Management Photography. 2019. revised 2022. PDF
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

