電子カルテ導入で増える見えない業務|リハ科の見つけ方と減らし方

制度・実務
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電子カルテ導入後の見えない業務は、まず発生場所を見つける

電子カルテを導入しても、リハ科の業務がすべて効率化するとは限りません。紙カルテの移動や転記が減る一方で、ログイン、端末探し、充電確認、清拭、通信不調、記録待ちなど、診療報酬には直接表れにくい「見えない業務」が増えるためです。本記事では、電子カルテ導入後に負担が増えたと感じるリハ職や管理者に向けて、見えない業務を5領域に分け、発生回数・所要時間・影響人数から改善順位を決める方法を整理します。

リハ記録と電子カルテ運用の全体像

記録速度、入力環境、電子カルテ運用、記録渋滞をまとめて見直したい場合は、ハブ記事から確認できます。

リハ記録・電子カルテ効率化ハブを見る

電子カルテ化では減る業務と増える業務がある

電子カルテ導入の効果を判断するときは、減った業務だけでなく、新たに増えた周辺業務も確認する必要があります。

紙カルテを探す、運ぶ、保管場所へ戻す、同じ情報を複数の書類へ転記するといった作業は減りやすくなります。他職種の記録を確認しやすくなり、情報共有の速度が上がることも電子カルテの利点です。

一方で、電子カルテを動かすためには、PC、ネットワーク、アカウント、電源、周辺機器、端末管理が必要です。紙カルテ時代には目立たなかった次のような作業が、日常業務へ加わります。

電子カルテ化で減りやすい業務と増えやすい業務
区分 具体例 確認するポイント
減りやすい業務 紙カルテの移動、保管、検索、転記 実際に削減できた時間
増えやすい業務 ログイン、端末探し、充電、清拭、通信確認 発生回数と対応時間
残りやすい業務 紙と電子の二重記録、口頭申し送り、一覧表への転記 電子化後も続ける必要があるか

「電子カルテを入れたのに忙しくなった」と感じる場合は、システムそのものだけでなく、導入後に追加された周辺作業を分けて確認することが重要です。

見えない業務とは電子カルテを使うための周辺作業

見えない業務とは、患者へのリハビリテーション提供や記録そのものではないものの、電子カルテを使うために必要となる細かな作業です。

1回あたりの所要時間は数十秒から数分でも、複数のスタッフが毎日繰り返すと、部署全体では無視できない時間になります。特にリハ科では、訓練室、病棟、ADL室、カンファレンス室などを移動しながら業務を行うため、端末の所在や通信環境の影響を受けやすくなります。

電子カルテ導入後にリハ科で増える見えない業務を端末管理、記録渋滞、充電・通信の3領域で整理した図版
電子カルテ導入後は、端末管理、記録渋滞、充電・通信の領域で見えない業務が増えやすくなります。

療養病棟のリハ業務では、患者の居室、病棟廊下、リハ室を往復することがあります。そのたびに共用端末を探したり、接続し直したりしていると、個々の作業は短くても、実施後の記録開始が遅れやすくなります。

リハ科で増えやすい見えない業務は5領域に分ける

リハ科の見えない業務は、ログイン、端末管理、充電・清拭、通信対応、記録待ちの5領域に分けると整理しやすくなります。

リハ科で増えやすい5つの見えない業務
領域 具体的な作業 起きやすい場面 見逃しやすい影響
ログイン ID入力、パスワード再入力、端末切り替え 病棟移動後、共用端末使用時 記録開始の遅れ
端末管理 PC探し、所在確認、返却、充電器確認 始業時、病棟持ち出し後、終業前 スタッフ間の確認や呼びかけ
充電・清拭 残量確認、電源接続、共用端末の清拭 使用前後、返却時 次に使う人への作業の持ち越し
通信対応 再接続、保存待ち、接続場所への移動 病棟端、ADL室、階段付近 入力の中断や二重入力
記録待ち PC待ち、席待ち、外部モニター待ち 昼休み前、カンファレンス後、終業前 記録の後回しと残業

端末の台数だけを確認しても、見えない業務の全体像は分かりません。PCが空いていても入力席がない、充電器が見つからない、通信が安定する場所まで移動しなければならない場合は、実質的な待ち時間が発生しています。

5分の現場点検で見えない業務を洗い出す

見えない業務を把握するには、スタッフへ漠然と感想を聞くのではなく、実際に起きた作業を短期間だけ記録する方法が有効です。

最初から詳細な調査票を作る必要はありません。終業前に5分程度で、次の順番に確認します。

  1. 今日困った場面を1つ挙げる:端末探し、記録待ち、充電切れなどを挙げます。
  2. 発生した場所を確認する:リハ室、病棟、ADL室などを記録します。
  3. 何回起きたかを数える:正確な秒数より、まず頻度を確認します。
  4. 誰に影響したかを確認する:本人だけか、複数スタッフかを分けます。
  5. 翌日変えられることを1つ決める:保管位置や返却方法など、小さく試します。

現場での記録例

「16時台にPC待ちが3回発生。4人が影響し、合計約15分待った。明日は短時間入力席を1か所分けて試す」のように、発生場面・回数・影響・次の対応を一文で残します。

1週間程度続けると、単発の不具合と、毎日繰り返される構造的な問題を分けやすくなります。

改善順位は回数・時間・影響人数で決める

改善対象は、スタッフの不満が大きい順ではなく、発生回数、所要時間、影響人数の3点から決めます。

電子カルテの見えない業務について、発生回数、所要時間、影響人数から改善優先度を決める方法を示した図版
発生回数、所要時間、影響人数を組み合わせ、スコアが高い見えない業務から優先して改善します。
見えない業務の改善順位を決める基準
評価項目 優先度が低い例 優先度が高い例
発生回数 月に1回程度 毎日複数回起きる
所要時間 数秒で解決する 毎回数分以上かかる
影響人数 特定の1人だけ 部署全体へ影響する
患者業務への影響 予定どおり対応できる 開始遅延や記録の後回しが起きる
再発性 原因が解消済み 同じ場所・時間帯で繰り返す

たとえば、月に1回起きるパスワード忘れよりも、毎日16時に複数人が経験する記録待ちの方が、部署全体への影響は大きくなります。

最初に取り組むのは、「毎日発生する」「複数人が影響する」「同じ時間や場所で繰り返す」の3条件が重なる業務です。

見えない業務は人の注意ではなく仕組みで減らす

見えない業務は、「気をつける」「必ず戻す」といった注意喚起だけでは減りにくいため、迷わず実行できる環境へ変える必要があります。

端末を元に戻す、充電する、清拭する、入力席を譲り合うといった行動は、業務が集中するほど崩れやすくなります。個人の注意力へ依存すると、守れなかった人を注意する運用になり、根本的な原因が残ります。

人の注意に頼る対策と仕組みで減らす対策
課題 注意に頼る対策 仕組みで減らす対策
端末が見つからない 使用後は必ず戻すよう周知する 端末番号と返却位置を一致させる
充電切れ 残量をこまめに確認する 返却と充電開始を同じ動線にする
清拭忘れ 清拭を呼びかける 返却場所に清拭用品を固定する
記録待ち 空いている時間に入力する 短時間入力と長文作成の席を分ける
通信不調 接続できる場所を各自で探す 不調が起きる場所と代替手段を共有する

PC保管、充電、記録スペース、Wi-Fi、返却ルールまで含めた具体的な環境設計は、リハ室の電子カルテ導入環境の整え方で詳しく解説しています。

電子カルテ導入後によくある失敗

よくある失敗は、導入直後の混乱をすべて「スタッフが慣れていないため」と判断することです。

慣れれば解決すると考える

操作に慣れることで短縮できる作業もありますが、PCの定位置がない、入力席が不足している、Wi-Fiが不安定といった問題は、慣れても解決しません。同じ場所や時間帯で繰り返す場合は、環境や運用の問題を疑います。

端末台数だけを増やす

端末を増やしても、保管場所、充電口、入力席、ネットワークが不足していれば、新しい管理業務が増える可能性があります。購入前に、どの待ち時間を減らしたいのかを明確にする必要があります。

すべてを一度に変える

保管、充電、清拭、入力席、通信ルールを同時に変更すると、どの対策が有効だったのか分かりにくくなります。最も頻度の高い問題から1つずつ試します。

困りごとを集めるだけで終わる

意見を集めても、担当者と再確認日が決まっていなければ改善は進みません。「誰が」「何を変えるか」「いつ確認するか」まで決めます。

改善後は同じ指標で再評価する

対策後は、実施したことではなく、見えない業務が実際に減ったかを確認します。

改善前に記録した発生回数、所要時間、影響人数を、1〜2週間後に同じ条件で確認します。

見えない業務の改善前後を確認する方法
確認項目 改善前 改善後に見ること
端末探し 1日5回発生 発生回数が減ったか
記録待ち 16時台に4人が待機 集中する人数が減ったか
充電切れ 週3回発生 使用開始時の不足がなくなったか
通信不調 特定場所で毎日発生 場所の変更や代替手段が機能したか
残業への影響 記録が終業後へ持ち越される 終業前に完了できる日が増えたか

改善しなかった場合は、スタッフの意識不足と判断する前に、原因の見立てが合っていたかを見直します。たとえば記録待ちの原因がPC不足ではなく、長文作成者による席の占有であれば、端末を増やすだけでは解決しません。

環境整備だけでは改善しにくい場合

記録環境を整えても残業や業務集中が続く場合は、端末だけでなく、人員配置、教育体制、業務分担まで確認する必要があります。現在の職場環境を整理したい方は、キャリアガイドも参考にしてください。

理学療法士の職場環境とキャリアを整理する

電子カルテの見えない業務に関するよくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

電子カルテ化で本当に業務は減りますか?

紙カルテの移動、検索、保管、転記は減りやすくなります。一方で、ログイン、端末管理、充電、清拭、通信対応、記録待ちなどが増える可能性があります。減った作業と増えた作業を分けて評価することが重要です。

見えない業務はどのように把握すればよいですか?

端末探し、充電切れ、通信不調、記録待ちなどが、どこで何回起き、何人へ影響したかを1週間程度記録します。詳細な秒数よりも、頻度と発生場所を先に確認すると改善対象を絞りやすくなります。

最初に改善するのはどの業務ですか?

毎日発生し、複数のスタッフへ影響し、患者対応や終業時間にも影響する業務を優先します。リハ科では、端末探し、充電切れ、終業前の記録待ちが候補になりやすいです。

スタッフへの注意喚起だけでは不十分ですか?

注意喚起も必要ですが、忙しい時間帯ほど運用が崩れます。端末の定位置、返却動線、充電方法、清拭用品の配置など、迷わず実行できる仕組みに変える方が定着しやすくなります。

電子カルテ端末を増やせば記録待ちは解消しますか?

端末不足が原因であれば改善しますが、入力席、外部モニター、通信環境、充電場所が不足している場合は、端末だけ増やしても解消しません。待ち時間が発生している場所と理由を先に確認します。

次の一手

電子カルテ導入後の見えない業務は、個人の努力だけで減らすのではなく、発生場所と回数を確認し、仕組みで減らすことが重要です。まずは1週間、端末探し、充電切れ、通信不調、記録待ちが起きた場所と回数を記録してみましょう。

全体像から整理する:リハ記録・電子カルテ・業務効率化ハブ

具体策へ進む:リハ室のノートPC保管・充電問題と対策


参考文献

  1. 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版. 東京: 厚生労働省; 2023.
  2. 厚生労働省. 医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト. 東京: 厚生労働省; 2025.

著者情報

電子カルテ運用とリハ記録環境について解説するrehabilikunの著者アイコン

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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