がんリハの実施計画・記録の書き方【記載例あり】

制度・実務
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がんリハの実施計画・記録は「対象・指示・根拠」をそろえる

がん患者リハビリテーション料では、対象患者に該当するか、医師の指示やリスク共有があるか、実施内容と記録が算定根拠として説明できるかが重要です。実施計画や日々の記録が薄いと、「なぜこの患者に、なぜこの内容を、なぜこの単位数で実施したのか」が読み取りにくくなります。

本記事では、がんリハの実施計画・記録を作成するときに確認したい項目、記載例、よくあるミス、記載漏れを防ぐチェックポイントを整理します。なお、制度上の最終判断は、最新の診療報酬点数表、施設基準、地方厚生局への届出内容、院内運用に照らして確認してください。

がんリハの記録や計画作成で「これで足りるのか」と感じることはありませんか?

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がんリハの実施計画・記録でまず確認すること

がんリハの実施計画・記録では、最初に「対象患者」「医師指示」「実施体制」「リスク」「目標」「実施内容」を分けて確認します。がん患者であることだけを記録しても、算定根拠や臨床判断としては不十分になりやすいため、治療状況とリハの必要性をつなげて書くことが大切です。

特に、手術前後、化学療法中、放射線治療中、造血幹細胞移植前後、緩和ケア主体の一時入院などでは、リハの目的が変わります。対象患者や算定要件の全体像は、先に がん患者リハビリテーション料の算定要件まとめ で確認しておくと整理しやすくなります。

がんリハの実施計画・記録で最初に確認する項目
確認項目 見るべき内容 記録で残したいこと
対象患者 がん治療・入院状況・リハの必要性に該当するか 治療内容、入院目的、対象確認の根拠
医師指示 リハの目的、禁忌、中止基準、負荷量の制限 指示内容、注意点、報告が必要な変化
実施体制 研修修了者、担当職種、カンファ共有の有無 担当者、職種、共有事項、確認日
リスク 疼痛、倦怠感、血液データ、骨転移、感染リスク 実施前確認、変更理由、中止判断
目標 離床、ADL、在宅復帰、症状緩和、活動維持 短期目標、生活目標、次回確認点
がんリハ記録の書く順番を対象根拠・当日の状態・実施内容・反応と方針の4ステップで整理した図版
がんリハ記録は、対象根拠から患者反応まで順に整理すると伝わりやすくなります。

実施計画は「治療状況→課題→目標→介入」の順で書く

がんリハの実施計画では、治療状況と機能低下を結びつけて書くと、計画の根拠が伝わりやすくなります。たとえば「術後だから離床」ではなく、「術後疼痛と倦怠感により離床量が低下し、在宅復帰に必要な歩行耐久性が不足している」という形で整理します。

そのうえで、短期目標、介入内容、リスク管理、再評価時期を明確にします。計画書や記録は文章量を増やすことが目的ではありません。患者の治療段階に対して、どの課題に介入し、どの変化を見ていくのかが読み取れることが重要です。

がんリハの実施計画で使いやすい記載の流れ
流れ 記載する内容 書き方の例
1. 治療状況 手術、化学療法、放射線治療、緩和ケアなど 化学療法後で倦怠感が強く、活動量が低下している
2. 課題 筋力、歩行、ADL、嚥下、疼痛、疲労など 歩行耐久性低下により病棟内移動に見守りを要する
3. 目標 短期目標と生活上の目標 病棟内 50 m 歩行を休憩 1 回以内で行う
4. 介入 離床、歩行、ADL、呼吸、嚥下、家族指導など Borg 3 以下で歩行練習と立位 ADL 練習を行う
5. 再評価 再評価する指標・時期・共有先 疼痛、疲労、歩行距離、ADL 介助量を 1 週後に再確認する

記録に入れたい項目

がんリハの記録では、対象患者である根拠、医師指示、当日の状態、実施内容、患者の反応、変更理由、次回方針を残すと整理しやすくなります。とくに治療中の患者では、体調や血液データ、疼痛、倦怠感、治療予定により実施内容が変わりやすいため、変更理由の記録が重要です。

「歩行練習実施」「ADL 練習実施」だけでは、がんリハとしての目的や必要性が伝わりにくくなります。記録の中に、治療状況とリハの目的、当日のリスク、実施後の反応が入ると、算定根拠と臨床判断がつながりやすくなります。

がんリハ記録に入れたい項目と記載例
項目 記載する内容 短い記載例
対象根拠 治療状況、入院目的、リハの必要性 術後離床と在宅復帰に向けた歩行耐久性改善を目的とする
医師指示 禁忌、制限、注意点、中止基準 骨転移部位への過負荷を避け、疼痛増悪時は中止
当日の状態 疼痛、倦怠感、バイタル、血液データ、治療予定 倦怠感あり。Borg 3 以内で負荷量を調整
実施内容 練習内容、量、介助量、休憩、変更点 病棟内歩行 30 m × 2 回、休憩 1 回、見守りで実施
反応・方針 実施後の変化、課題、次回方針 疲労増悪なし。次回は歩行距離を 40 m へ調整予定

PT・OT・STで記録の焦点は変わる

がんリハでは、PT・OT・ST が同じ患者に関わることがあります。ただし、記録の焦点は職種によって変わります。PT は離床・歩行・体力、OT は ADL・生活動作・上肢機能、ST は嚥下・コミュニケーション・高次脳機能など、専門性に応じて目的を明確にすることが大切です。

同じ「がんリハ実施」でも、何を評価し、どの生活目標に向けて介入したかが職種ごとに異なります。多職種で関わる場合は、記録の重複を避けつつ、生活目標やリスクを共有できるように記載すると、カンファレンスでも活用しやすくなります。

職種別に見たがんリハ記録の焦点
職種 記録の焦点 記載例の方向性
PT 離床、歩行、筋力、体力、呼吸・循環、転倒予防 歩行距離、介助量、Borg、疼痛、バイタル変化
OT ADL、上肢機能、生活動作、環境調整、退院後生活 トイレ、更衣、入浴、家事動作、生活上の困りごと
ST 嚥下、発声、構音、コミュニケーション、高次脳機能 食形態、むせ、疲労、意思疎通、家族指導
多職種共有 治療方針、リスク、生活目標、退院支援 カンファで共有した課題と方針変更を記録する

がんリハ 記載漏れチェックシートPDF

がんリハの実施計画・記録では、対象患者、医師指示、リスク、実施内容、患者反応、共有事項など、確認すべき項目が多くなります。毎回頭の中だけで整理すると、記載漏れや記録のばらつきが起こりやすくなります。

そこで、A4 1 枚で使える「がんリハ 記載漏れチェックシート」を作成しました。制度文を細かく詰め込むのではなく、現場で実施計画・日々の記録・カンファ共有を見直しやすいように、チェック形式で整理しています。

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記載例:短すぎる記録をどう直すか

がんリハの記録は、長く書けばよいわけではありません。しかし、短すぎる記録では、対象患者としての根拠、実施内容、リスク判断、患者反応が読み取りにくくなります。記録を整えるコツは、「治療状況」「当日の状態」「実施内容」「反応」「次回方針」を短くつなげることです。

特に、疲労や疼痛で実施内容を変更した場合、検査や治療スケジュールで中断した場合、リスクのために見送った場合は、変更理由を残すと説明しやすくなります。以下の例のように、観察語を足すだけでも記録の実用性が上がります。

がんリハの記録改善例
場面 短すぎる記録 改善例
術後離床 離床訓練実施 術後 2 日目。疼痛 NRS 3、起立時ふらつき軽度。端座位 5 分、立位 2 回、病棟内 20 m 歩行を軽介助で実施。
化学療法中 筋力訓練実施 化学療法後で倦怠感あり。Borg 3 以内で下肢筋力練習と歩行 30 m を実施。終了後疲労増悪なし。
緩和期 ADL 練習実施 在宅復帰に向け、トイレ動作を確認。方向転換時に疼痛増強あり、手すり使用と動線短縮を家族へ説明。
中止判断 体調不良で中止 開始前より倦怠感強く、SpO2 低下傾向あり。医師・看護師へ報告し、本日は離床を見送り。明日再評価予定。

よくある記載ミス

がんリハの実施計画・記録でよくあるミスは、「がんリハ実施」とだけ書いてしまうことです。この書き方では、対象患者としての根拠、医師指示、当日のリスク、実施内容、患者反応が見えにくくなります。算定やカンファレンスで説明しにくい記録になりやすいです。

また、治療状況やリスク管理の記載が抜けると、なぜその負荷量にしたのか、なぜ中止・変更したのかが伝わりません。部署内で記録例を共有し、最低限入れる項目をそろえることが、記録のばらつきを減らす第一歩です。

がんリハの実施計画・記録でよくあるミスと対策
よくあるミス 問題になりやすい理由 対策
対象根拠がない なぜがんリハとして実施しているか読み取れない 治療状況、入院目的、リハの必要性を書く
医師指示が見えない 禁忌や中止基準の共有が不明確になる 制限、注意点、報告基準を記録に反映する
リスク記録がない 治療中の全身状態変化に対応したか説明しにくい 疼痛、倦怠感、血液データ、骨転移などを確認する
実施内容だけで終わる 患者反応や次回方針がわからない 実施後の反応、変更理由、次回確認点を入れる
カンファ共有が残らない 多職種で方針を確認した根拠が弱くなる 共有事項と方針変更を簡潔に残す

監査・実地指導で見られやすいポイント

監査や実地指導では、対象患者の該当性、医師指示、研修修了者による実施、実施時間、記録内容、リスク管理、多職種共有が確認されやすくなります。がんリハでは患者の状態が変わりやすいため、当日の判断が記録に残っているかが重要です。

特に、実施計画と日々の記録がつながっていない場合、単位数と実施内容の整合性が弱い場合、リスクによる変更理由が書かれていない場合は、あとから説明しにくくなります。チェックシートを使って、記録の抜けを定期的に見直すとよいでしょう。

監査・実地指導前に見直したいがんリハ記録
確認ポイント 見直したい状態 改善の方向性
対象確認 がん患者であることだけが書かれている 治療状況とリハの必要性を記録する
実施計画 目標と日々の介入がつながっていない 短期目標と実施内容を対応させる
実施時間 単位数と実施内容の整合性が不明確 開始・終了時刻、中断理由、実施量を残す
リスク管理 体調変化や中止判断の根拠がない 疼痛、疲労、バイタル、報告先を記録する
多職種共有 方針変更や共有内容が残っていない カンファ内容、病棟共有、家族指導を残す

部署内で標準化したい運用

がんリハの実施計画・記録は、個人の書き方に任せるとばらつきが出やすい領域です。対象患者の抽出、医師指示の確認、リスク管理、日々の記録、カンファレンス共有まで、部署内で流れを標準化しておくと、教育や記録確認がしやすくなります。

最初から細かいマニュアルを作る必要はありません。まずは、記載漏れチェックシートを使って「対象根拠」「医師指示」「当日の状態」「実施内容」「患者反応」「次回方針」の 6 点だけでもそろえると、記録の質を底上げしやすくなります。

がんリハ記録を部署内で標準化するポイント
運用項目 決めておきたいこと 実務での使い方
対象患者の抽出 誰がどのタイミングで候補患者を確認するか 入院時、術前、治療開始時に確認する
指示確認 医師指示・禁忌・中止基準をどこで確認するか カルテ、カンファ、病棟申し送りで共有する
記録ルール 最低限入れる項目を統一する 対象根拠、状態、内容、反応、方針を入れる
記録確認 誰がどの頻度で記録を見直すか 主任・リーダーが定期的にサンプル確認する
共有方法 症状変化や生活目標をどう共有するか カンファレンス、病棟記録、退院支援記録に反映する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

がんリハでは専用の実施計画書が必要ですか?

施設の書式や院内運用によって異なります。重要なのは、対象患者である根拠、医師指示、リスク、目標、実施内容、記録の流れが確認できることです。専用書式の有無だけでなく、必要な情報が記録から追えるかを確認しましょう。

がんリハの記録では何を必ず書くべきですか?

対象根拠、医師指示、当日の状態、実施内容、患者反応、変更理由、次回方針を残すと整理しやすくなります。特に、治療状況とリハの目的がつながるように書くことが大切です。

疲労や疼痛で内容を変更した場合はどう書けばよいですか?

変更した事実だけでなく、変更理由を残します。たとえば、倦怠感、疼痛、SpO2 低下、血液データ、治療予定などを確認し、負荷量を下げた理由や中止判断を記録すると、あとから説明しやすくなります。

カンファレンス内容はどこまで記録しますか?

すべてを長く書く必要はありません。共有したリスク、生活目標、方針変更、家族支援、退院調整に関わる内容を簡潔に残すとよいです。誰と何を共有し、次に何を確認するかが分かる記録を意識しましょう。

監査前にはどこを見直すとよいですか?

対象患者の該当性、医師指示、研修修了者による実施、単位数と実施内容の整合性、リスク管理、患者反応、次回方針、多職種共有の記録を確認しましょう。記載漏れチェックシートを使うと、抜けを確認しやすくなります。

次の一手

まずは、がんリハ 記載漏れチェックシートを使って、部署内で「対象根拠」「医師指示」「当日の状態」「実施内容」「患者反応」「次回方針」が記録に入っているかを確認してみてください。特に新人や異動直後のスタッフでは、記録の粒度をそろえるだけでも業務が進めやすくなります。

あわせて、がん患者リハビリテーション料そのものの対象患者や算定要件は、がん患者リハビリテーション料の算定要件まとめで整理しています。算定要件と記録の書き方を分けて確認することで、制度理解と実務運用をつなげやすくなります。

記録・算定・教育体制の不安が、職場環境の問題とつながっている場合

がんリハのように確認項目が多い業務では、個人の努力だけでは限界があります。教育体制や確認体制に不安がある場合は、職場環境も整理してみましょう。

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参考文献

  1. 厚生労働省. 令和 6 年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
  2. 厚生労働省. 令和 6 年度診療報酬改定の概要. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf
  3. 厚生労働省. 令和 6 年度診療報酬改定の概要(個別改定事項). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251539.pdf
  4. 日本理学療法士協会. がんのリハビリテーション研修会. https://www.japanpt.or.jp/pt/seminar/browse/05/

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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