身体活動量とSB(座位行動)の違いとは?
「運動はしているのに、座っている時間が長い」
近年、このような“座りすぎ”が健康へ与える影響が注目されています。リハビリテーションの現場でも、リハビリ時間中は活動している一方で、それ以外の時間はベッド上や椅子で過ごしている患者さんは少なくありません。
このとき重要になるのが、身体活動量とSB(Sedentary Behavior:座位行動)を分けて考える視点です。どちらも「活動」に関係する言葉ですが、見ているものは異なります。
この記事では、身体活動量と SB の違い、なぜ両方を評価する必要があるのか、リハビリでどのように考えればよいのかを整理します。
生活を“活動量”で見る視点は臨床で役立ちます
身体活動量や SB の評価は、歩行能力だけでなく「1 日をどう過ごしているか」を見る視点です。評価・生活指導の幅を広げたい方は、キャリアや学習環境も整理してみてください。
身体活動量とSBの違い
身体活動量と SB は、似ているようで意味が異なります。簡単にいうと、身体活動量は「どれくらい身体を動かしたか」を見ます。一方、 SB は「どれくらい座っていたか・横になっていたか」を見ます。
つまり、身体活動量は“活動”を捉える指標であり、 SB は“座位・臥位中心の低活動”を捉える指標です。この違いを理解しておくと、「歩数はあるけれど座位時間が長い」「リハビリはしているけれど日中はほぼ座位」といった状態を整理しやすくなります。
| 項目 | 見るもの | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 身体活動量 | 身体を動かした量 | 歩数、活動時間、運動量、生活活動量 |
| SB | 座位・臥位で過ごす時間 | 座りすぎ、臥床時間、不活動の把握 |
SB(座位行動)とは?
SB は Sedentary Behavior の略で、日本語では座位行動と訳されます。一般的には、覚醒中に座位・臥位・もたれた姿勢で過ごし、エネルギー消費量が 1.5 METs 以下の状態を指します。
代表的な例として、長時間の座位、テレビ視聴、ベッド上生活、デスクワーク、車椅子座位中心の生活などがあります。SB は単に「運動していない時間」ではなく、座っている・横になっている時間そのものに注目する考え方です。
詳しくは、座位行動(SB)とは?リハビリで重要な理由でも整理しています。
身体活動量とは?
身体活動量は、日常生活全体でどれくらい身体を動かしたかを示す概念です。歩数、活動時間、消費エネルギー、 METs 、中〜高強度活動時間( MVPA )などで評価されることがあります。
近年は活動量計を用いて、 SB(座位行動)、 LPA(軽強度活動)、 MVPA(中〜高強度活動)に分けて評価する考え方も広がっています。これにより、単なる歩数だけでなく、生活の中で軽く動いている時間や、座っている時間も把握しやすくなります。
身体活動量全体の見方は、SB・LPA・MVPAによる身体活動量評価も参考になります。
なぜ“運動していてもSB”になるのか
重要なのは、「運動している=SBが少ない」とは限らないことです。
たとえば、 1 日 20 分リハビリを行っていても、それ以外の時間を長時間座位・臥位で過ごしていれば、 SB 時間は長い状態になります。つまり、運動の有無だけでは、生活全体の活動性を十分に評価できない場合があります。
病棟では、リハビリ中はしっかり歩けるのに、病室ではベッド上中心というケースがあります。在宅でも、散歩はしているけれど、それ以外はテレビ視聴中心というケースがあります。このような場合、身体活動量と SB を分けて見ることで、生活の課題が明確になります。
| 場面 | 活動している時間 | SB が長い時間 |
|---|---|---|
| 病棟 | リハビリ時間 | 病室での臥床・座位 |
| 外来 | 通院・運動時間 | 自宅でのテレビ視聴 |
| 在宅 | 短時間の散歩 | 日中の座位中心生活 |
| 通所 | サービス利用中 | 利用日以外の不活動 |
リハビリでSBをみる重要性
リハビリでは、筋力や歩行能力、 ADL 能力の改善に注目しやすいですが、患者さんが実際に 1 日をどう過ごしているかを把握することも重要です。
SB が長い状態は、フレイル、サルコペニア、廃用症候群、心血管疾患、糖代謝異常などとの関連が指摘されています。特に高齢者では、「運動不足」だけでなく「長時間座位」が問題になることがあります。
そのため、リハビリでは「どれくらい運動したか」だけでなく、「どれくらい座っていたか」を確認する視点が重要です。これにより、離床時間、生活活動、外出頻度、日中の過ごし方を具体的に評価できます。
病棟・外来・在宅での考え方
身体活動量と SB の違いは、病棟・外来・在宅のどの場面でも役立ちます。ただし、確認するポイントは場面によって少し異なります。
| 場面 | 身体活動量で見ること | SBで見ること |
|---|---|---|
| 病棟 | リハビリ、病棟内歩行、食事動作 | ベッド滞在時間、日中離床、座位中断 |
| 外来 | 通院、散歩、運動習慣 | 自宅での座位時間、テレビ視聴時間 |
| 在宅 | 家事、外出、買い物、歩行機会 | 日中の座位中心生活、昼寝、閉じこもり |
身体活動・SB記録シート
身体活動量と SB の違いを臨床で使うには、概念として理解するだけでなく、実際の生活場面に落とし込んで確認することが大切です。
そこで、病棟・外来・在宅で使いやすい A4 1 枚の「身体活動・SB記録シート」を作成しました。活動量計がある場合は数値の整理に、活動量計がない場合は観察・聴取による記録に使えます。
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SBを減らす具体策
SB を減らす際は、必ずしも強い運動から始める必要はありません。特に高齢者や低活動の患者さんでは、まず座位時間を分断することが現実的です。
たとえば、 1 時間ごとに立つ、食事前後に歩く、トイレ移動を増やす、日中離床を増やす、座位時間を記録するなどが挙げられます。軽い活動でも、長時間の座位を中断できれば SB 対策になります。
| 方法 | 具体例 | 狙い |
|---|---|---|
| 座位を中断する | 1時間ごとに立つ | 長時間座位を防ぐ |
| 生活動作を増やす | 洗面、更衣、配膳、片付け | LPAを増やす |
| 離床機会を作る | 食事離床、病棟内歩行 | 日中活動を増やす |
| 外出を設定する | 散歩、買い物、通所 | 活動範囲を保つ |
SB評価で使いやすい確認項目
臨床で SB を確認するときは、細かい数値だけでなく、生活の中で座位・臥位時間が長くなっている場面を探すことが重要です。
特に、リハビリ時間以外をどう過ごしているかは重要なポイントです。歩ける能力があっても、日中の多くを座位・臥位で過ごしていれば、生活全体としての活動性は低い可能性があります。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 日中の離床時間 | 食事以外もベッドから離れているか |
| 長時間座位 | 1時間以上座りっぱなしになっていないか |
| 外出頻度 | 買い物、散歩、通所などがあるか |
| ベッド上時間 | 日中も臥床が多くないか |
| 生活範囲 | 自室・自宅内に限られていないか |
よくある誤解
身体活動量と SB を考えるときに多い誤解は、「運動していれば座りすぎは問題ない」と考えてしまうことです。もちろん運動は重要ですが、運動している時間以外の座位時間が長ければ、 SB は長い状態になります。
また、「歩数が多いから活動的」と判断してしまうこともあります。歩数は有用な指標ですが、座位時間や臥床時間を直接示すわけではありません。身体活動量と SB はセットで確認すると、生活全体をより立体的に評価できます。
| 誤解 | 修正ポイント |
|---|---|
| 運動していればSBは短い | 運動以外の座位時間も確認する |
| 歩数が多ければ活動的 | 座位時間・離床時間も合わせて見る |
| SB対策は運動だけ | 座位中断や生活動作でも対策になる |
| 活動量計がないと評価できない | 観察・聴取でも傾向は把握できる |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
身体活動量とSBは同じ意味ですか?
同じではありません。身体活動量は「どれだけ身体を動かしたか」を示し、 SB は「どれだけ座位・臥位で過ごしたか」を示します。
運動していればSBは気にしなくてよいですか?
運動していても、運動以外の時間を長く座って過ごしていれば SB は長くなります。運動時間と座位時間は分けて考える必要があります。
SBは何METs以下ですか?
一般的には、覚醒中の座位・臥位・もたれた姿勢で、 1.5 METs 以下の活動が SB とされています。
活動量計がない場合はどう評価しますか?
病棟観察、生活聴取、家族情報、日中の離床状況、外出頻度などから、おおまかな SB の傾向を把握できます。
次の一手
身体活動量と SB は、どちらか一方だけでなく、セットで見ることで生活全体を評価しやすくなります。まずは「どれだけ動いたか」と「どれだけ座っていたか」を分けて確認することから始めると、介入方針が整理しやすくなります。
活動量評価や生活支援を深めたい一方で、教育体制や症例経験に不安がある場合は、環境面を整理することも重要です。リハ職向けの職場環境チェックシートも活用してみてください。
参考文献
- Tremblay MS, Aubert S, Barnes JD, Saunders TJ, Carson V, Latimer-Cheung AE, et al. Sedentary Behavior Research Network (SBRN) – Terminology Consensus Project process and outcome. Int J Behav Nutr Phys Act. 2017;14(1):75. DOI: 10.1186/s12966-017-0525-8
- Bull FC, Al-Ansari SS, Biddle S, Borodulin K, Buman MP, Cardon G, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020;54(24):1451-1462. DOI: 10.1136/bjsports-2020-102955
- Herrmann SD, Willis EA, Ainsworth BE, Barreira TV, Hastert M, Kracht CL, Schuna JM Jr, Cai Z, Quan M, Tudor-Locke C, Whitt-Glover MC, Jacobs DR Jr. 2024 Adult Compendium of Physical Activities: A third update of the energy costs of human activities. J Sport Health Sci. 2024;13(1):6-12. DOI: 10.1016/j.jshs.2023.10.010
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

