手根骨とは
手根骨は、手関節と手のひらの付け根を構成する8個の小さな骨です。8個を一つずつ丸暗記するのではなく、近位手根骨列4個と遠位手根骨列4個に分け、さらに橈側から尺側への順番で整理すると覚えやすくなります。
この記事では、新人PT・OTが手関節の解剖を臨床評価につなげられるように、手根骨8個の名前と位置関係、覚え方、特に意識したい骨、評価・記録での使い方を図と表で整理します。
この記事でわかること
- 手根骨8個の名前
- 近位手根骨列と遠位手根骨列の違い
- 橈側から尺側への並び
- 混乱しにくい覚え方
- 臨床で意識したい手根骨
- 評価・記録での使い方
手根骨8個の一覧
手根骨は、前腕に近い近位手根骨列と、中手骨に近い遠位手根骨列に4個ずつ分けると整理しやすくなります。

| 分類 | 骨の名前 | 位置関係 |
|---|---|---|
| 近位手根骨列 | 舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨 | 前腕に近い列。橈側から尺側へ並ぶ |
| 遠位手根骨列 | 大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨 | 中手骨に近い列。橈側から尺側へ並ぶ |
最初から8個を一続きで覚えようとせず、「近位列4個」と「遠位列4個」に分けることが最初のポイントです。
近位手根骨列の名前と並び
近位手根骨列は前腕に近い側の列で、橈側から舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨の順に並びます。
- 舟状骨
- 月状骨
- 三角骨
- 豆状骨
近位列は橈骨や関節円板に近く、手関節の運動や荷重伝達を考えるうえで重要です。
特に舟状骨と月状骨は、手関節痛、転倒後の外傷、可動域制限、手根骨のアライメントを評価するときに意識しやすい骨です。
近位列の整理ポイント
- 前腕に近い列
- 橈側から舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨
- 手関節の運動や荷重伝達に関係する
遠位手根骨列の名前と並び
遠位手根骨列は中手骨に近い側の列で、橈側から大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨の順に並びます。
- 大菱形骨
- 小菱形骨
- 有頭骨
- 有鈎骨
遠位列は中手骨との位置関係をあわせて確認すると理解しやすくなります。有頭骨は中央に位置し、有鈎骨は尺側に位置します。
特に有鈎骨は、手掌尺側の痛み、握り動作、ラケットやバットを扱うスポーツ動作などで意識されることがあります。
遠位列の整理ポイント
- 中手骨に近い列
- 橈側から大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨
- 手指や握り動作との位置関係を確認する
橈側から尺側への並びで覚える
手根骨は、親指側である橈側から、小指側である尺側へ向かって並べると混乱しにくくなります。

| 列 | 橈側 | 中央 | 尺側 |
|---|---|---|---|
| 近位列 | 舟状骨 | 月状骨・三角骨 | 豆状骨 |
| 遠位列 | 大菱形骨 | 小菱形骨・有頭骨 | 有鈎骨 |
覚えるときは、次の2列を橈側から順番に声に出して確認すると整理しやすくなります。
- 近位列:舟状骨 → 月状骨 → 三角骨 → 豆状骨
- 遠位列:大菱形骨 → 小菱形骨 → 有頭骨 → 有鈎骨
「近位か遠位か」と「橈側か尺側か」を同時に確認できると、骨名だけの暗記ではなく、手関節内での位置関係として理解できます。
臨床で意識したい手根骨
臨床で特に意識する機会が多いのは、舟状骨・月状骨・有鈎骨です。
| 骨 | 位置 | 確認する場面 |
|---|---|---|
| 舟状骨 | 近位列の橈側 | 転倒後の橈側手関節痛、圧痛、腫脹を確認するとき |
| 月状骨 | 近位列の中央 | 手関節中央部の痛みや手根骨アライメントを考えるとき |
| 有鈎骨 | 遠位列の尺側 | 手掌尺側痛、握り動作、スポーツ外傷を確認するとき |
最初から8個すべての臨床的意義を細かく暗記する必要はありません。まず位置関係を正確に整理し、そのうえで症状の部位や受傷機転と関連する骨を確認します。
臨床では、骨名だけで判断せず、疼痛部位、圧痛、腫脹、可動域、しびれ、受傷機転などを組み合わせて評価することが大切です。
手根骨で迷いやすい3つのポイント
手根骨で迷いやすいのは、8個を一気に覚えること、近位列と遠位列が混ざること、橈側と尺側を反対にすることです。
| 詰まりやすい点 | 対策 |
|---|---|
| 8個を一気に覚える | 近位列4個と遠位列4個に分ける |
| 2列が混ざる | 前腕側が近位列、中手骨側が遠位列と確認する |
| 左右方向を間違える | 親指側を橈側、小指側を尺側と固定する |
解剖の暗記が苦手な場合は、骨名だけを反復するのではなく、図を見ながら「列」「方向」「位置」の3点をセットで確認すると定着しやすくなります。
新人が間違えやすいポイント
新人が特に間違えやすいのは、豆状骨の位置と、大菱形骨・小菱形骨、有頭骨・有鈎骨の取り違えです。
- 近位列と遠位列を逆に覚える
- 橈側と尺側を反対に考える
- 豆状骨を遠位列に入れてしまう
- 大菱形骨と小菱形骨の位置が混ざる
- 有頭骨と有鈎骨を混同する
- 骨の名前だけ覚え、位置関係が曖昧になる
迷ったときは、近位列・遠位列の図に戻り、親指側から小指側へ順番に指で追って確認します。
評価・記録での使い方
手根骨周囲の所見を記録するときは、骨名だけでなく、疼痛部位、圧痛、症状が出る動作をセットで記載します。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 橈側手関節痛 | 手関節橈側に圧痛あり。舟状骨周囲に疼痛を認める。 |
| 手関節中央部痛 | 手関節背側中央部に疼痛あり。月状骨周囲の圧痛を確認した。 |
| 尺側手掌痛 | 手掌尺側に疼痛あり。有鈎骨周囲の圧痛を確認した。 |
| 可動域評価 | 手関節背屈時に手根骨周囲の疼痛が増強する。橈屈・尺屈時の症状変化も確認した。 |
実際の現場では、「舟状骨が痛い」と骨名だけを書くよりも、「手関節橈側」「転倒後」「圧痛あり」「背屈時に増悪」のように、部位・経過・所見を組み合わせたほうが多職種へ共有しやすくなります。
強い疼痛や腫脹、外傷歴、感覚障害がある場合は、無理に反復評価せず、必要に応じて医師や看護師へ情報共有します。
関連して確認したい解剖
手根骨は、橈骨・尺骨・中手骨や手関節運動と組み合わせて確認すると、臨床評価につなげやすくなります。
- 橈骨遠位端:手関節橈側の位置関係を理解する基準
- 尺骨茎状突起:手関節尺側のランドマーク
- 中手骨:遠位手根骨列と連続して位置を確認する
- 手関節ROM:掌屈・背屈・橈屈・尺屈との関係を確認する
- 手根管:手掌側の骨性構造と神経走行を理解する
手根骨8個の位置関係を理解すると、手関節痛の部位確認や可動域評価、圧痛所見の記録が行いやすくなります。
FAQ
各項目名をタップまたはクリックすると回答が開きます。
手根骨は何個ありますか?
手根骨は8個あります。前腕に近い近位手根骨列4個と、中手骨に近い遠位手根骨列4個に分けて整理します。
近位手根骨列はどの骨ですか?
近位手根骨列は、橈側から舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨の順に並びます。
遠位手根骨列はどの骨ですか?
遠位手根骨列は、橈側から大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鈎骨の順に並びます。
手根骨はどの順番で覚えるとよいですか?
最初に近位列と遠位列に分け、次に親指側の橈側から小指側の尺側へ順番に覚えると整理しやすくなります。
豆状骨は近位列と遠位列のどちらですか?
豆状骨は近位手根骨列です。近位列の尺側に位置し、三角骨の掌側に重なるように存在します。
臨床で特に意識したい手根骨はありますか?
舟状骨、月状骨、有鈎骨は臨床で意識する機会が多い骨です。ただし、骨名だけで判断せず、疼痛部位、圧痛、腫脹、受傷機転、可動域などを組み合わせて確認します。
次の一手
手根骨8個を確認したら、次は手関節の運動方向や、橈骨・尺骨・中手骨との位置関係をあわせて整理すると、臨床評価につなげやすくなります。
参考文献
- Moore KL, Dalley AF, Agur AMR. Clinically Oriented Anatomy. 9th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer; 2023.
- Standring S, editor. Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed. London: Elsevier; 2020.
- Drake RL, Vogl AW, Mitchell AWM. Gray’s Anatomy for Students. 5th ed. Philadelphia: Elsevier; 2023.
- Wolfe SW, Hotchkiss RN, Pederson WC, Kozin SH, Cohen MS, editors. Green’s Operative Hand Surgery. 8th ed. Philadelphia: Elsevier; 2021.
- StatPearls Publishing. Anatomy, Shoulder and Upper Limb, Hand Carpal Bones. Treasure Island: StatPearls Publishing. NCBI Bookshelf
著者情報
この記事は、理学療法士として臨床での評価・記録・新人教育に携わってきた経験をもとに、手根骨の位置関係を実務で確認しやすい形に整理しています。
手関節痛や外傷が疑われる場合は、疼痛や腫脹、圧痛、しびれ、受傷機転を確認し、必要に応じて医師・看護師など多職種と情報共有してください。

