ACA・MCA・PCAの支配領域|症状と見分け方

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脳血管ランドマークとは

ACA・MCA・PCAの支配領域は、まずACAは大脳半球の内側面、MCAは外側面、PCAは後方と整理します。ただし、実際の支配範囲には個人差や重なりがあるため、症状だけで責任血管を断定してはいけません。この記事では、脳卒中リハに関わるPT・OT・STや新人医療職向けに、3血管の見分け方、代表症状、CT・MRIと評価所見を照合する順番を整理します。

このページの位置づけ

このページは、脳ランドマークシリーズの血管支配領域編です。脳・神経を含む解剖ランドマーク全体から確認したい場合は、親ハブから読むと整理しやすくなります。

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ACA・MCA・PCAは内側・外側・後方で覚える

ACA・MCA・PCAは、細かな分枝を覚える前に内側・外側・後方の3つへ分けると理解しやすくなります。

  • ACA(前大脳動脈):前頭葉・頭頂葉の内側面を中心に支配する
  • MCA(中大脳動脈):前頭葉・頭頂葉・側頭葉の外側面を広く支配する
  • PCA(後大脳動脈):後頭葉、側頭葉後内側、視床の一部などを支配する

臨床では、ACAを下肢、MCAを顔面・上肢・言語・空間認知、PCAを視野・視覚認知と結びつけると、画像所見と評価所見を照合しやすくなります。

ACA・MCA・PCAの支配領域と代表症状
血管 大まかな支配領域 代表的な症状 リハで確認する項目
ACA
前大脳動脈
前頭葉・頭頂葉の内側面、傍中心小葉など 対側下肢優位の運動・感覚障害、発動性低下など 下肢支持性、立位、歩行、開始動作、排泄動作
MCA
中大脳動脈
前頭葉・頭頂葉・側頭葉の外側面など 対側顔面・上肢優位の運動・感覚障害、失語、半側空間無視など 上肢機能、言語、注意、空間認知、食事、移乗、ADL
PCA
後大脳動脈
後頭葉、側頭葉後内側、視床の一部など 同名半盲、視覚認知障害、記憶障害、感覚障害など 視野、探索、読み書き、移動時の接触、記憶、感覚

重要:この3分類は皮質領域を大まかに理解するための目安です。血管の走行や支配境界には個人差があり、穿通枝、境界領域、側副血行、病変の広がりによって症状は変わります。

ACAは内側面と下肢優位の症状を確認する

ACA領域では、大脳半球の内側面と対側下肢優位の症状を重点的に確認します。

ACAは前頭葉・頭頂葉の内側面や傍中心小葉などを支配します。一次運動野・一次体性感覚野の下肢領域は大脳半球の内側面に位置するため、ACA領域の病変では、顔面や上肢より下肢の運動・感覚障害が目立つことがあります。

前頭葉内側面や帯状回周辺が影響を受けると、発動性低下、動作開始の遅れ、注意・遂行機能の問題などを伴うこともあります。単に下肢筋力だけを見るのではなく、動作を開始できるか、指示に対して反応が続くかも確認します。

ACA領域で確認する所見
確認項目 見るポイント 評価場面の例
運動・感覚 対側下肢の運動麻痺、感覚低下、上肢との差 股・膝・足関節運動、荷重、立ち上がり
立位・歩行 下肢支持性、振り出し、歩行開始 立位保持、方向転換、階段、トイレ移動
発動性 自発的な開始、反応の遅れ、活動量 起き上がり、更衣、会話、訓練開始
排泄関連 尿意、失禁、移動・衣服操作を含む排泄動作 トイレ誘導、排泄記録、病棟動作

MCAは外側面と顔面・上肢・高次脳機能を確認する

MCA領域では、大脳半球の外側面、対側顔面・上肢の症状、言語・空間認知を重点的に確認します。

MCAは前頭葉・頭頂葉・側頭葉の外側面を広く支配します。一次運動野・一次体性感覚野の顔面・上肢領域が含まれるため、下肢より顔面や上肢の運動・感覚障害が目立つことがあります。

多くの人では、優位半球のMCA領域病変で失語、非優位半球の病変で半側空間無視や病態認識の問題が生じやすくなります。ただし、言語優位半球には個人差があるため、左右だけで機能を決めつけず、実際の評価所見と照合します。

MCA領域で確認する所見
確認項目 見るポイント 評価場面の例
運動・感覚 対側顔面・上肢優位の運動麻痺、感覚低下 上肢リーチ、把持、整容、食事、更衣
言語 理解、表出、復唱、呼称、指示理解 会話、動作指示、意思確認、ナースコール
空間認知 半側空間無視、身体への注意、探索範囲 食事、移乗、車椅子操作、歩行時の接触
視野・眼球運動 視野欠損、共同偏視、探索行動 対面評価、物品探索、病棟移動

PCAは後頭葉と視野・視覚認知を確認する

PCA領域では、後頭葉を中心とした後方領域と視野・視覚認知の問題を重点的に確認します。

PCAは後頭葉、側頭葉後内側、視床の一部などを支配します。後頭葉の一次視覚野が影響を受けると、病変と反対側の同名半盲などが生じることがあります。

側頭葉内側や視床、脳梁膨大部などへ病変が及ぶと、記憶障害、感覚障害、注意障害、失読などを伴う場合があります。明らかな四肢麻痺が軽くても、視野障害によって歩行中に壁や人へ接触する、食事を見落とす、文章を読み続けられないといったADL上の問題が生じます。

PCA領域で確認する所見
確認項目 見るポイント 評価場面の例
視野 同名半盲などの視野欠損、見落としの方向 対座法、物品探索、廊下歩行
視覚認知 見えている対象を認識・識別できるか 物品認知、絵や写真、道具の選択
読み書き 文章の読み飛ばし、文字の認識、書字との乖離 新聞、予定表、服薬表示、メモ
記憶・感覚 新しい情報の保持、対側感覚障害、異常感覚 会話内容、訓練手順、触覚・位置覚
脳の3大動脈であるACA・MCA・PCAの支配領域と代表症状を比較した図。ACAは内側面と下肢、MCAは外側面と顔面・上肢・言語、PCAは後方と視野・視覚認知を示している。

CT・MRIで血管領域を見る3ステップ

CT・MRIでは、病変の位置、左右、症状との一致を順番に確認すると整理しやすくなります。

  1. 病変が内側・外側・後方のどこにあるかを見る
  2. 病変側と症状側の対応を確認する
  3. 運動・感覚・言語・視野・注意の所見と照合する

ステップ1:内側・外側・後方を確認する

大脳半球の内側面を中心とする病変ではACA、外側面へ広がる病変ではMCA、後頭葉を中心とする病変ではPCA領域を候補にします。最初から細かな分枝名を当てようとせず、大きな位置関係から整理します。

ステップ2:病変側と症状側を確認する

大脳半球の病変では、多くの場合、運動・感覚症状は病変と反対側の身体に現れます。一方、視野障害や高次脳機能障害は、四肢の麻痺だけでは把握できないため、病変側と機能局在を合わせて考えます。

ステップ3:画像と評価所見を照合する

最後に、予測した症状が実際の評価で確認できるかを照合します。画像から症状を決めつけるのではなく、画像所見を評価仮説として使い、ベッドサイド所見やADL場面で確かめます。

画像の位置から確認する評価項目
大まかな位置 考える血管領域 優先して確認する所見
大脳半球の内側面 ACA 対側下肢、立位・歩行、発動性、排泄動作
大脳半球の外側面 MCA 対側顔面・上肢、言語、空間認知、注意、ADL
後頭葉を中心とする後方 PCA 視野、視覚認知、読み書き、記憶、感覚

症状から血管領域を逆算する

症状から血管領域を逆算するときは、最も目立つ1症状ではなく、複数所見の組み合わせを確認します。

症状からACA・MCA・PCAを考える目安
目立つ所見 考えやすい領域 追加で確認する所見
下肢優位の運動・感覚障害 ACA 上肢との差、発動性、立位・歩行、排泄動作
顔面・上肢優位の運動・感覚障害 MCA 言語、視野、共同偏視、注意、空間認知
失語 優位半球MCAを中心に検討 理解、表出、復唱、呼称、読み書き
半側空間無視 非優位半球MCAを中心に検討 視野、身体認識、病態認識、探索行動
同名半盲・視覚認知障害 PCAを中心に検討 眼球運動、視覚探索、読み書き、記憶、感覚

たとえば、下肢優位の麻痺だけでACA領域と断定することはできません。内包などの深部病変、複数血管領域、既往病変、整形外科疾患などでも下肢機能は低下します。画像、神経学的所見、病前機能、経時変化を合わせて判断します。

リハ職は支配領域を評価仮説として使う

リハ職が血管支配領域を確認する目的は、画像診断ではなく、重点的に評価する機能とADL場面を予測することです。

実際の現場では、診断名が「脳梗塞」とだけ申し送られ、詳細な症状を評価前に把握できないことがあります。その場合でも、画像上の病変が内側面、外側面、後方のどこにあるかを確認すると、最初に見るべき項目を絞りやすくなります。

  • ACA領域:下肢支持性だけでなく、発動性や動作開始も確認する
  • MCA領域:麻痺だけでなく、失語・注意・半側空間無視がADLへ与える影響を確認する
  • PCA領域:筋力が保たれていても、視野障害による移動・食事・読み書きの危険を確認する

療養病棟では、発症から時間が経過している患者さんも多く、現在のADLだけを見ると病変由来の問題と廃用、認知症、既往障害が混在しやすくなります。血管領域は原因を決める道具ではなく、評価項目の見落としを減らす背景情報として使用します。

支配領域だけでは判断できないこと

ACA・MCA・PCAの大まかな地図だけでは、すべての画像所見や症状を説明できません。

  • 血管支配の境界や走行には個人差がある
  • 皮質枝と穿通枝では障害される構造が異なる
  • 内包、基底核、視床、脳幹などの深部病変は単純な表面地図では判断しにくい
  • 境界領域梗塞では複数血管の間に病変が生じる
  • 側副血行や血管のvariationにより梗塞範囲が変わる
  • 出血では血腫の進展や圧迫によって血管領域を越えた症状が生じる

したがって、血管支配領域は「症状を予測する目安」とし、正式な読影結果、医師の診断、神経学的所見と合わせて使用します。

脳血管ランドマークでよくある失敗

最も多い失敗は、血管名・領域・症状を別々に暗記し、実際の評価へつなげられないことです。

  • 血管名だけ覚える:ACA・MCA・PCAを、内側・外側・後方および代表症状とセットで整理します。
  • 1症状で血管を断定する:麻痺、感覚、言語、視野、注意など複数所見を組み合わせます。
  • 左右差を確認しない:病変側、症状側、優位半球との関係を確認します。
  • 視野障害と半側空間無視を同じものとして扱う:視野、注意、探索行動を分けて評価します。
  • PCAを小脳動脈と混同する:PCAは後大脳動脈であり、PICA・AICA・SCAとは区別します。
  • 画像だけで評価を終える:画像から立てた仮説を、実際の動作・ADL場面で確認します。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

ACA・MCA・PCAはどう覚えるとよいですか?

最初は、ACAは内側、MCAは外側、PCAは後方と覚えます。次に、ACAは下肢、MCAは顔面・上肢・言語・空間認知、PCAは視野・視覚認知と結びつけてください。ただし、これは大まかな皮質領域の整理であり、実際の病変は穿通枝や個人差の影響を受けます。

MCA梗塞で失語が起こりやすいのはなぜですか?

多くの人では、優位半球のMCA領域に言語機能と関係する前頭葉・側頭葉・頭頂葉外側面の領域が含まれるためです。病変部位や広がりによって、表出、理解、復唱、呼称、読み書きへの影響は異なります。

ACA梗塞ではなぜ下肢の麻痺が目立つのですか?

下肢の運動・感覚に関係する大脳皮質領域が大脳半球の内側面に位置し、ACAの支配領域に含まれるためです。ただし、すべての下肢優位麻痺がACA病変を意味するわけではありません。

PCA梗塞では麻痺は起こりませんか?

PCA領域では視野障害が代表的ですが、視床、中脳、周囲の深部構造が障害されると、感覚障害、運動障害、意識障害などを伴うことがあります。麻痺の有無だけでPCA領域を除外することはできません。

視野障害と半側空間無視はどう見分けますか?

視野障害は視覚経路の障害による視野の欠損で、半側空間無視は一側空間へ注意を向けにくい状態です。臨床では、対座法による視野確認だけでなく、視線、探索行動、身体への注意、食事・読み書き・移動場面を組み合わせて評価します。

まとめ

ACA・MCA・PCAの支配領域は、ACAは内側、MCAは外側、PCAは後方の大枠から覚えます。

  • ACA:対側下肢、立位・歩行、発動性を確認する
  • MCA:対側顔面・上肢、言語、注意、空間認知を確認する
  • PCA:視野、視覚認知、読み書き、記憶、感覚を確認する

ただし、血管領域と症状は一対一ではありません。画像上の位置から評価仮説を立て、神経学的所見、ADL、正式な読影結果と照合することが重要です。

次の一手

脳・神経のランドマーク全体を復習した後、脳幹の中脳・橋・延髄の見分け方へ進むと、画像と症状をより体系的に整理できます。


参考文献

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  7. Kuybu O, Tadi P, Dossani RH. Posterior Cerebral Artery Stroke. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing. NCBI Bookshelf

著者情報

この記事は、脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級の資格を持ち、療養病棟で脳卒中・高齢者リハに関わる理学療法士が作成しています。画像診断を行うためではなく、脳血管支配領域をリハ評価、症状理解、ADL上のリスク把握へつなげることを目的に整理しています。