Frank-Starling機序とは?
Frank-Starling機序とは、心臓に戻ってくる血液量が増えると心筋が伸ばされ、その伸びに応じて収縮力が高まりやすくなる仕組みです。
簡単にいうと、心臓は戻ってきた血液量に合わせて、ある程度まで自動的に拍出量を調整しています。
リハビリの臨床では、心不全、浮腫、息切れ、起立時の血圧低下、運動負荷量を考える場面があります。
Frank-Starling機序を理解しておくと、「前負荷が増えると何が起こるのか」「心不全ではなぜ息切れや浮腫が起こるのか」を整理しやすくなります。
この記事では、新人PT・リハビリ職向けに、Frank-Starling機序の基本、前負荷・心拍出量との関係、心不全での考え方をわかりやすく解説します。
Frank-Starling機序の基本
Frank-Starling機序は、心室に流入する血液量と心筋の収縮力の関係を説明する考え方です。
心室に多くの血液が戻ると、心筋線維が伸ばされます。
心筋線維が適度に伸ばされると、次の収縮でより強く収縮しやすくなり、一回拍出量が増えやすくなります。
| 流れ | 起こること |
|---|---|
| 前負荷が増える | 心室に戻る血液量が増える |
| 心筋が伸張される | 心筋線維が適度に伸ばされる |
| 収縮力が高まる | 次の収縮で血液を送り出しやすくなる |
| 一回拍出量が増える | 1回の拍動で送り出す血液量が増えやすい |
ただし、これは無制限に起こるわけではありません。
心筋が過度に伸ばされる場合や、心不全などで心筋の収縮力が低下している場合は、前負荷が増えても十分に拍出量が増えないことがあります。
なぜ心筋が伸びると収縮力が上がるのか
心筋は、血液が流入して心室が満たされると引き伸ばされます。
このとき、心筋線維の長さが収縮に適した状態になると、より効率よく収縮しやすくなります。
イメージとしては、心臓が「戻ってきた血液をできるだけ送り返そうとする」仕組みです。
| 状態 | 収縮への影響 |
|---|---|
| 血液流入が少ない | 心筋の伸張が少なく、拍出量も少なくなりやすい |
| 適度に血液が戻る | 心筋が適度に伸び、収縮力が高まりやすい |
| 過剰に血液が戻る | 心筋への負担が増え、拍出が追いつかないことがある |
大切なのは、「血液量が増えれば必ずよい」というわけではない点です。
正常な範囲では拍出量の調整に役立ちますが、病態によってはうっ血や浮腫につながることもあります。
Frank-Starling機序の流れ

Frank-Starling機序は、次の流れで考えると理解しやすくなります。
| 段階 | 内容 | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 前負荷増加 | 心室へ戻る血液量が増える | 静脈還流や循環血液量が関係する |
| 心筋伸張 | 心室が血液で満たされる | 心筋線維が引き伸ばされる |
| 収縮力増加 | 次の拍動で強く収縮しやすくなる | 一回拍出量の増加につながる |
| 心拍出量増加 | 全身へ送る血液量が増えやすい | 血圧や循環維持に関係する |
この仕組みによって、心臓は静脈から戻ってきた血液量に応じて拍出量を調整しています。
リハビリ場面では、体位変換、離床、歩行、運動負荷によって静脈還流や心拍出量が変化します。
前負荷との関係
Frank-Starling機序を理解するうえで、前負荷は重要です。
前負荷とは、心臓に戻ってくる血液量によって生じる負荷のことです。
前負荷が増えると、心室がより多くの血液で満たされ、心筋が伸張されます。
この心筋伸張によって収縮力が高まり、一回拍出量が増えやすくなるのがFrank-Starling機序です。
| 前負荷の変化 | 起こりやすい反応 | 注意点 |
|---|---|---|
| 前負荷が低い | 心室充満が少なく、拍出量が低下しやすい | 脱水、出血、起立時変化に注意 |
| 前負荷が適度 | 心筋が適度に伸び、拍出量が増えやすい | 循環維持に役立つ |
| 前負荷が過剰 | 心臓への負担やうっ血につながることがある | 心不全、浮腫、息切れに注意 |
前負荷の基本については、前負荷・後負荷とは?違いをわかりやすく解説で詳しく整理しています。
心拍出量との関係
Frank-Starling機序は、一回拍出量と心拍出量に関係します。
心拍出量は、次の式で考えます。
心拍出量(CO)= 心拍数(HR) × 一回拍出量(SV)
Frank-Starling機序によって一回拍出量が増えると、結果として心拍出量も増えやすくなります。
| 要素 | 意味 | Frank-Starling機序との関係 |
|---|---|---|
| SV | 一回拍出量 | 心筋伸張により増えやすい |
| HR | 心拍数 | 1分間の拍動回数としてCOに関係する |
| CO | 心拍出量 | SVが増えるとCOも増えやすい |
心拍出量の基本については、心拍出量(CO)とは?意味・基準値・計算式も合わせて確認すると理解しやすくなります。
心不全ではどうなるか
Frank-Starling機序は、正常な心臓では循環調整に役立ちます。
しかし、心不全ではこの仕組みが十分に働きにくくなることがあります。
心不全では、前負荷が増えても心筋の収縮力が十分に高まらず、一回拍出量や心拍出量が増えにくくなる場合があります。
| 状態 | 前負荷が増えたとき | 起こりやすいこと |
|---|---|---|
| 正常心 | 収縮力が高まり、SVやCOが増えやすい | 循環を保ちやすい |
| 心不全 | 収縮力が十分に高まらないことがある | うっ血、浮腫、息切れにつながる |
つまり、心不全では「前負荷が増えれば心拍出量も増える」と単純には考えられません。
むしろ前負荷が過剰になることで、肺うっ血、下腿浮腫、体重増加、息切れなどにつながることがあります。
Frank-Starling曲線の見方
Frank-Starling曲線は、前負荷と心拍出量または一回拍出量の関係を示す曲線です。
正常では、前負荷が増えると拍出量も増えやすくなります。
一方で、心不全では曲線が低くなり、前負荷が増えても拍出量が増えにくくなります。
| 曲線の状態 | 意味 | 臨床で考えること |
|---|---|---|
| 正常に上昇する | 前負荷増加に応じて拍出量が増えやすい | 循環調整が働きやすい |
| 平坦化する | 前負荷が増えても拍出量が増えにくい | 心不全や過負荷に注意 |
| 低い位置にある | 同じ前負荷でも拍出量が少ない | 心収縮力低下を考える |
図として覚えるよりも、「前負荷が増えても、心臓の状態によって拍出量の反応は変わる」と理解することが大切です。
PTが臨床でどう考えるか
PTがFrank-Starling機序そのものを測定する場面は多くありません。
しかし、リハビリ中の循環反応を考えるときには役立ちます。
| 場面 | 考えたいこと |
|---|---|
| 起立時のふらつき | 静脈還流低下、前負荷低下、心拍出量低下を考える |
| 心不全患者の息切れ | 前負荷増加、うっ血、拍出量低下を考える |
| 浮腫・体重増加 | 水分貯留や前負荷過剰を考える |
| 運動負荷中の血圧低下 | 心拍出量が需要に追いついていない可能性を考える |
| 回復が遅い | 心肺負荷が大きい可能性を考える |
血液量が増えれば、必ず心機能が上がるわけではありません。
心不全や循環器疾患がある場合は、前負荷の増加が拍出量増加ではなく、うっ血や息切れとして現れることがあります。
リハビリ中に確認したいポイント
Frank-Starling機序を臨床で考えるときは、バイタルと症状を合わせて確認します。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 血圧 | 安静時、起立時、運動後の変化を見る |
| 脈拍 | 増え方、戻り方、不整の有無を見る |
| 息切れ | 運動負荷に対して強すぎないか確認する |
| 浮腫 | 水分貯留やうっ血の可能性を考える |
| 体重変化 | 心不全増悪や水分貯留のサインとして見る |
| 回復時間 | 休息後に症状やバイタルが戻るか確認する |
特に、心不全患者さんでは、息切れ、浮腫、体重増加、血圧変化、脈拍変化をセットで確認することが大切です。
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Frank-Starling機序を理解したあとは、前負荷・後負荷、心拍出量、心不全の見方も合わせて整理しておくと、臨床で使いやすくなります。
- 前負荷・後負荷とは?違いをわかりやすく解説
- 心拍出量(CO)とは?意味・基準値・計算式
- 駆出率(EF)とは?心機能をみる基本指標
循環生理をつなげて理解すると、リハビリ中のバイタル変化や運動負荷量を整理しやすくなります。
まとめ:Frank-Starling機序は前負荷と拍出量の関係
Frank-Starling機序とは、心臓に戻る血液量が増えると心筋が伸張され、その伸びに応じて収縮力が高まりやすくなる仕組みです。
前負荷が適度に増えると、一回拍出量や心拍出量が増えやすくなります。
一方で、心不全では前負荷が増えても拍出量が十分に増えず、うっ血、浮腫、息切れにつながることがあります。
PTが臨床で見るときは、血圧、脈拍、息切れ、浮腫、体重変化、回復時間を合わせて確認することが大切です。
Frank-Starling機序を理解すると、前負荷、心拍出量、心不全患者さんの運動負荷を考えやすくなります。
よくある質問:Frank-Starling機序とは何ですか?
Frank-Starling機序とは、心臓に戻る血液量が増えると心筋が伸張され、その伸びに応じて収縮力が高まりやすくなる仕組みです。
Frank-Starling機序と前負荷の関係は何ですか?
前負荷は心臓に戻る血液量に関係します。前負荷が増えると心筋が伸張され、Frank-Starling機序によって一回拍出量が増えやすくなります。
Frank-Starling機序で心拍出量は増えますか?
正常な心臓では、前負荷が適度に増えることで一回拍出量が増え、結果として心拍出量も増えやすくなります。
心不全ではFrank-Starling機序はどうなりますか?
心不全では、前負荷が増えても収縮力が十分に高まらず、心拍出量が増えにくくなることがあります。その結果、うっ血、浮腫、息切れにつながる場合があります。
PTはFrank-Starling機序をどう臨床で考えればよいですか?
血圧、脈拍、息切れ、浮腫、体重変化、回復時間を合わせて確認し、前負荷や心拍出量の変化を推測します。心不全患者さんでは特に過負荷に注意します。


