ホーエン・ヤール重症度分類とは?PDの病期を共有する指標
結論:H&Yは、左右差、姿勢反射障害、身体的自立、立位・歩行能力からパーキンソン病の病期を共有する分類です。判定時は薬剤状態と評価条件を併記します。
Hoehn & Yahr(ホーエン・ヤール)重症度分類(以下、H&Y)は、パーキンソン病の病期をステージI〜Vで示す分類です。改訂版では1.5と2.5が追加され、片側症状、両側症状、姿勢反射障害、身体的自立、立位・歩行能力をもとに重症度を共有します。
判定で特に迷いやすいのは、pull test後に回復できる2.5と姿勢不安定を認めるIII、身体的に自立しているIIIと重度障害を認めるIVの境目です。本記事では、各ステージの定義、判定時の注意点、カルテ記録例を、A4記録シートとともに整理します。
ホーエン・ヤール重症度分類の記録シート
記録シートでは、H&Yのステージだけでなく、薬剤状態、評価時刻、pull test、補助具、介助条件、転倒歴を1枚にまとめられます。再評価では同じ条件をそろえることで、薬効や環境条件による違いと病期の変化を区別しやすくなります。
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ホーエン・ヤール重症度分類の早見表
H&Yの原法はI〜Vの5段階です。臨床や研究では、ステージ1.5と2.5を加えた改訂H&Yも使用されています。ステージIIIは姿勢不安定を認めるものの身体的には自立、ステージIVは重度障害があるものの介助なしで立位・歩行が可能、ステージVは介助がなければ車椅子または臥床状態と定義されます。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| ステージ | 分類の定義 | 判定の中心 | PT評価で追加確認する項目 |
|---|---|---|---|
| I | 片側のみの症状 | 症状が片側に限局している | 寡動、固縮、振戦、姿勢、歩行、運動習慣 |
| 1.5 | 片側症状に体幹・軸症状を伴う | 片側性に加えて軸症状がある | 体幹回旋、姿勢、起居動作、方向転換 |
| II | 両側性の症状があるが、バランス障害はない | 両側性かつ姿勢反射障害を認めない | 歩幅、歩行速度、旋回、二重課題、すくみ |
| 2.5 | 軽度の両側性障害があり、pull test後に回復できる | 後方外乱後に自ら姿勢を回復できる | 反応ステップ、回復方法、足幅、評価条件 |
| III | 軽度〜中等度の両側性障害と姿勢不安定があるが、身体的には自立している | 姿勢反射障害がある一方、身体的自立を保つ | 転倒歴、反応的バランス、旋回、補助具、生活範囲 |
| IV | 重度障害があるが、介助なしで立位・歩行が可能 | 障害は重度だが、立位・歩行能力を残す | 実用的な移動範囲、起立、移乗、すくみ、介助量、福祉用具 |
| V | 介助がなければ車椅子または臥床状態 | 立位・歩行に介助を要し、移動が車椅子・ベッド中心 | 移乗、座位保持、拘縮、褥瘡、呼吸、嚥下、介助方法 |
重要:H&Yは病期を要約する分類です。ADLの介助量、転倒回数、歩行速度、すくみ歩行、認知機能、非運動症状を詳細に評価する尺度ではありません。ステージが同じでも、実際の生活機能や必要な支援は異なります。
2.5とIII、IIIとIVの違い
境界で迷ったときは、後退歩数や見た目だけで決めず、各ステージの定義に戻ります。2.5/IIIでは姿勢反応と身体的自立、III/IVでは障害の重さと立位・歩行能力を分けて確認します。

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| 境界 | 低いステージ | 高いステージ | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 2.5/III | 2.5:pull test後に自ら回復できる | III:姿勢不安定を認めるが身体的には自立 | 反応ステップ、姿勢回復、検者の介入、身体的自立、評価条件 |
| III/IV | III:軽度〜中等度の両側性障害で、身体的には自立 | IV:障害は重度だが、介助なしで立位・歩行が可能 | 障害の重症度、実用的な移動能力、立位・歩行能力、日常生活での支援 |
| IV/V | IV:介助なしで立位・歩行が可能 | V:介助がなければ車椅子または臥床状態 | 介助なしで立位・歩行できるか |
ステージIVであっても、定義上は介助なしで立位・歩行が可能です。実生活で見守りや介助を受けていることだけを理由に、機械的にIVまたはVへ分類しないよう注意します。
判定条件をそろえて誤判定を防ぐ
H&Yを再評価に使用する場合は、薬剤状態、評価時刻、補助具、介助条件をそろえます。ステージだけを記載すると、病期の変化なのか、ON/OFFや環境条件による変動なのかを後から判断できません。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 確認項目 | 起きやすい問題 | 記録方法 |
|---|---|---|
| 薬剤状態 | ONとOFFが混在し、前回と比較できない | ON/OFF、内服からの経過時間、評価時刻を記載する |
| pull test | 後退歩数だけが記録され、回復方法が分からない | 歩数、姿勢回復、検者の介入、安全条件を記載する |
| 補助具 | 補助具の有無によって移動能力の印象が変わる | 常用補助具と評価時に使用した補助具を記載する |
| 介助条件 | 見守り、接触介助、身体介助が区別されない | 介助内容と介助者が行った操作を具体的に記載する |
| 身体的自立 | ADL全体の自立と、H&Y上の身体的自立が混同される | 立位、歩行、起居、移乗、生活範囲を分けて記載する |
pull testは歩数だけで判定しない
改訂H&Yのステージ2.5には、pull test後に回復できることが含まれます。ただし、後退した歩数だけをH&Yのステージへ直接置き換えるものではありません。
検者は安全を確保し、対象者が外乱を理解した状態で実施します。記録では「2歩」「3歩」といった歩数に加えて、自ら安定したか、検者が支えたか、開始姿勢や足幅はどうだったかを残します。
MDS-UPDRS Part IIIの姿勢安定性項目を使用する場合は、MDS-UPDRSの標準化された実施方法と採点基準に従います。H&YとMDS-UPDRSは関連しますが、両者の判定を同一のものとして扱わないようにします。
H&YからPT評価と介入へつなげる方法
H&YだけでPT目標や介入内容を決めることはできません。ステージは病期の共有に使用し、転倒歴、歩行、バランス、起居・移乗、認知機能、非運動症状、生活環境を追加評価して介入計画へつなげます。
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| ステージ | 追加して確認したい項目 | 介入を検討する視点 |
|---|---|---|
| I〜1.5 | 左右差、体幹回旋、姿勢、運動習慣、活動量 | 運動習慣、体幹・四肢の可動性、セルフマネジメント |
| II〜2.5 | 歩幅、旋回、二重課題、すくみ、反応ステップ | 外的キュー、方向転換、歩行戦略、転倒予防教育 |
| III | 転倒歴、反応的バランス、補助具、屋外移動、住環境 | 転倒予防、補助具、環境調整、多職種・家族との共有 |
| IV | 立ち上がり、移乗、実用歩行、すくみ、疲労、介助量 | 残存する立位・歩行能力の活用、安全な移乗、福祉用具、介助方法 |
| V | 座位保持、移乗、関節可動域、皮膚、呼吸、嚥下 | ポジショニング、拘縮・褥瘡予防、座位・移乗支援、二次障害予防 |
同じステージでも、転倒歴、ON/OFF変動、認知機能、住環境、家族支援によって必要な介入は変わります。H&Yは「評価の終了点」ではなく、追加評価を選ぶための入口として使用します。
現場で起きやすい誤解
H&Yでは、すくみ歩行、補助具、ADL介助量をステージ定義そのものと混同しやすいため注意が必要です。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| よくある誤解 | 修正方法 | 追加記録 |
|---|---|---|
| すくみ歩行があれば必ずIII以上 | すくみ歩行と姿勢反射障害を分けて評価する | 誘発場面、頻度、ON/OFF、転倒との関係 |
| pull testの歩数だけで2.5/IIIを決める | 姿勢回復、検者の介入、身体的自立を含めて判断する | 歩数、自力回復、検者の介入、実施条件 |
| 介助を受けていればステージIV | 介助の有無だけでなく、H&Yの定義に沿って判断する | 立位・歩行能力、障害の重さ、介助の目的 |
| ステージIVは歩行に介助が必要 | IVは重度障害があるものの、介助なしで立位・歩行が可能と定義される | 介助なしで可能な距離、場面、補助具、実用性 |
| ステージが同じなら介入内容も同じ | 転倒歴、歩行、認知、非運動症状、生活環境を追加評価する | 個別の問題点、目標、再評価項目 |
H&YとMDS-UPDRS・QOL尺度の使い分け
H&Yは病期を短時間で要約するのに適しています。一方、個別症状の重症度や短期間の変化を詳しく追う場合は、MDS-UPDRSなどの包括評価を組み合わせます。生活上の主観的な困難は、PDQ系などのQOL尺度で補完します。
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| 評価の枠 | 代表例 | 得意なこと | 実務での使いどころ |
|---|---|---|---|
| 病期の要約 | H&Y | 病期を短時間で共有する | 申し送り、カンファレンス、対象者背景の整理 |
| 症状別の評価 | MDS-UPDRS・UPDRS | 運動症状、日常生活、非運動症状、運動合併症を整理する | 治療反応、介入前後、経時変化の確認 |
| 生活上の困難 | PDQ系など | 本人が感じている生活上の問題を把握する | 目標設定、生活期支援、介入の優先順位づけ |
H&Yは段階数が少なく、病期を大きく要約する尺度です。短期的な介入効果や症状別の小さな変化をH&Yだけで追跡するのではなく、評価目的に合った尺度を併用します。
カルテ記録テンプレ
ステージだけでなく、評価条件と観察内容を一緒に残します。数値や所見は、実際の評価結果へ置き換えて使用してください。
H&Y:III(ON)
評価時刻:10時30分/内服から90分
pull test:後方へ2歩、姿勢回復に検者の支持を要した
立位・歩行:T字杖で屋内歩行可能
補助具・介助:T字杖常用、旋回時見守り
転倒歴:過去3か月に2回
所見:狭所と旋回ですくみを認め、視覚的キューで改善
pull testの結果だけでH&Yを決めず、左右性、両側性、姿勢不安定、身体的自立、立位・歩行能力を含めてステージを判断します。
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
原法と改訂ホーエン・ヤール分類は何が違いますか?
原法はステージI〜Vの5段階です。改訂H&Yでは、片側症状に軸症状を伴う1.5と、軽度の両側性障害がありpull test後に回復できる2.5が追加されています。使用した分類を記録上で明確にすると、1.5や2.5の有無による混乱を防げます。
ステージ2.5とIIIは何が違いますか?
2.5は、軽度の両側性障害があり、pull test後に自ら回復できる状態です。IIIは、軽度〜中等度の両側性障害と姿勢不安定があるものの、身体的には自立している状態です。後退歩数だけではなく、姿勢回復、検者の介入、身体的自立を含めて判断します。
ステージIIIとIVは何が違いますか?
IIIは、姿勢不安定があるものの身体的には自立している段階です。IVは障害が重度ですが、介助なしで立位・歩行が可能な段階です。単に見守りやADL介助を受けているかではなく、障害の重さと立位・歩行能力を確認します。
ステージIVでは歩行介助が必要ですか?
H&Yの定義上、ステージIVは重度障害があるものの、介助なしで立位・歩行が可能です。ただし、実生活では安全確保のために補助具、見守り、部分介助を利用している場合があります。分類上の定義と、実際に提供している支援を分けて記録してください。
ONとOFFのどちらで評価しますか?
目的と施設の運用に応じて決めますが、評価時の薬剤状態を必ず併記します。再評価では同じ薬剤状態と時間条件をそろえることが基本です。両方を評価する場合は、ONとOFFの結果を分けて記載します。
H&Yは介入効果の追跡に向いていますか?
H&Yは病期を大きく要約する尺度であり、短期間の細かな変化を捉える用途には限界があります。介入効果を確認する場合は、同じ条件でH&Yを記録しつつ、歩行、バランス、転倒、ADL、MDS-UPDRS、QOLなど、介入目標に対応した評価を組み合わせます。
次の一手
参考文献
- Hoehn MM, Yahr MD. Parkinsonism: onset, progression and mortality. Neurology. 1967;17(5):427-442. doi:10.1212/WNL.17.5.427
- Goetz CG, Poewe W, Rascol O, et al. Movement Disorder Society Task Force report on the Hoehn and Yahr staging scale: status and recommendations. Mov Disord. 2004;19(9):1020-1028. doi:10.1002/mds.20213
- Goetz CG, Tilley BC, Shaftman SR, et al. Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS). Mov Disord. 2008;23(15):2129-2170. doi:10.1002/mds.22340
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

