ホーエン・ヤール分類の評価方法| 3・4 の違いと記録のコツ

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ホーエン・ヤール重症度分類( H&Y )とは?(PD の重症度を共有する軸)

結論:迷ったら「薬剤状態 → pull test の記録 → ステージ共有」の順で固定すると、 III/IV の判定ブレが減ります。

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関連:PD の理学療法評価(一覧と選び方)
次に読む:MDS-UPDRS と UPDRS の違い・使い分け

Hoehn & Yahr(ホーエン・ヤール)重症度分類(以下、 H&Y )は、パーキンソン病( PD )の重症度を 5 段階で示す代表的な分類です。ステージ I(片側優位)からステージ V(車椅子常用/臥床がち)までを、チームで共有するための「要約の共通言語」として使います。

臨床で詰まりやすいのは、2.5 ↔ 3(自力回復か、介助が必要か)と、3 ↔ 4(屋内移動が“自立中心”か“介助前提”か)の境目です。本記事は、この境目をカルテに残せる形で整理します。

記録シート( A4 PDF )

院内での申し送りや再評価の再現性を上げるために、条件固定( ON/OFF など )→ 記録 → 再評価を 1 枚にまとめた記録シートを用意しました。印刷してファイルに入れておくと、評価条件が揃いやすくなります。

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ステージ分類の早見表( 5 段階+改訂 1.5/2.5 )

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

ホーエン・ヤール重症度分類(成人・臨床現場向け簡易要約/ 2026 年 3 月時点)
ステージ 主症状の目安 歩行・転倒 ADL PT の重点
I 片側優位の症状(振戦・固縮・寡動) 独歩可/転倒リスクは低め 自立 可動性(体幹回旋)と運動習慣の立ち上げ、過用の予防
II 両側症状だがバランス障害なし 屋内独歩可/方向転換は概ね安定 多くは自立 歩行戦略、外的キュー(視覚/聴覚)、環境の軽微調整
III 姿勢反射障害あり(立ち直り低下) 転倒リスク上昇/方向転換で不安定 一部で見守り〜部分介助 転倒予防(方向転換・反応的バランス)、補助具選定、住環境
IV 重度の姿勢障害/すくみ歩行などが顕著 屋内でも補助具・介助が必要 多くで介助 立ち上がり・移乗の分解、介助者教育、福祉用具・褥瘡予防
V 車椅子常用または臥床がち 移乗・体位変換に全介助〜最大介助 全介助 拘縮・褥瘡・呼吸/嚥下など二次障害予防、ポジショニング
  • 1.5:片側症状に体幹(軸)症状が加わる( unilateral + axial )
  • 2.5:軽度両側症状で、pull test で後退しても自力で回復できる( recovery on pull test )

覚え方は、I・II=転倒が少ない自立期、III=姿勢反射障害で転倒が増える境目、IV・V=介助と福祉用具が前提の期です。まずこの大枠をそろえると、カンファレンスで説明が通りやすくなります。

判定の注意点(誤判定を防ぐコツ)

H&Y は短時間で使える一方、評価条件の取り違えでステージが過大・過小評価されがちです。特に「 III なのか IV なのか」で迷う場面が多いため、下の項目をカルテに定型で残すと再現性が上がります。

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H&Y の誤判定を減らす 5 点(成人・実務)
詰まりポイント 起きやすいズレ 対策(運用) カルテに残す最小セット
薬剤状態 ON/OFF が混在して比較不能 評価条件を固定し、必要なら両条件で取る 例:III(ON)/内服から90 分
pull test 歩数だけで判断してブレる 自力回復介助が必要かを優先して記録 例:2 歩後退・介助要(条件も併記)
2.5 と 3 「後退= 3 」で誤判定 2.5=自力で回復3 以上=介助なしでは転倒しうる 自力回復:可/不可(介助の有無)
左右差・軸症状 片側優位+体幹症状を II 扱い 片側優位で軸症状が目立つなら1.5を検討 軸:回旋低下/前傾/体幹固縮 など
補助具 補助具の有無で III ↔ IV が揺れる 常用補助具と介助条件を固定し、同条件で再評価 杖/歩行器/見守り or 介助(誰が)

ステージ別の PT 目標例(ワンポイント)

  • I:体幹可動性(回旋)と運動習慣の立ち上げ(ホームエクササイズの定着)。
  • II:外的キュー(視覚・聴覚)+方向転換の課題化、家庭内の軽微な環境調整。
  • III:転倒予防(反応的バランス・旋回)、補助具最適化、住環境の具体化。
  • IV:立ち上がり・移乗の分解、介助者教育、福祉用具と動線の包括調整。
  • V:褥瘡・拘縮・呼吸/嚥下を含む二次障害予防、ポジショニング、座位耐久の確保。

ポイントは「ステージ」だけで決め切らず、転倒歴、補助具、住環境、家族支援をセットで言語化し、評価 → 目標 → 介入 → 再評価のサイクルに落とし込むことです。

現場の詰まりどころ(よくある誤解と対策)

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H&Y で起きやすい誤解と、最小の対策(実務)
よくある誤解 なぜ起きる? 最小の対策 記録の一言
「すくみ歩行=必ず III 以上」 すくみは軽症でも出る(誘発場面で変動) 姿勢反射障害は pull test で別枠に確認 すくみ:誘発(狭所/旋回)+安全条件
「3 と 4 の線引きが曖昧」 角度や見た目だけで判断しがち 屋内移動が “自立中心” か “介助前提” かで整理 屋内:補助具( )+介助(見守り/介助)
「歩数だけで 3 を決める」 pull test の記録が抽象的になりやすい 自力回復の可否(介助の有無)を優先して残す pull:2 歩後退・介助要(条件:足幅/合図)

関連指標との関係( MDS-UPDRS・ QOL スケールなど )

H&Y は重症度の要約を共有するのが得意です。一方で、症状別の詳細な追跡(運動症状、日常生活、非運動、合併症など)は包括尺度が向きます。QOL は「生活での困りごと」を拾い、介入の優先順位づけに役立ちます。

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H&Y/包括評価/QOL の役割分担(要約)
代表 得意なこと 実務の使いどころ
重症度の要約 H&Y 病期を短時間で共有 申し送り/カンファで「いまどの段階か」をそろえる
症状の追跡 包括評価(例:UPDRS 系) 症状別に変化を追える 治療反応性、介入前後比較、研究・診療の整理
生活の困りごと QOL(例:PDQ 系) 主観的な困難を拾う 目標の優先順位、在宅・生活期の説明に強い

記録テンプレ(コピペ用)

H&Y:III(ON)/内服から:90 分/pull test:2 歩後退・介助要/補助具:T 字杖常用/転倒:過去 3 か月 2 回/メモ:旋回で不安定、外的キューで改善

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

改訂 H&Y の「 1.5 」「 2.5 」は何が違いますか?

1.5 は片側症状に体幹(軸)症状が加わる状態です。2.5 は軽度の両側症状で、pull test で後退しても自力で回復できる状態を示します。原法の 5 段階だけでは拾いにくかった「軽症〜中等症のグラデーション」を共有しやすくする区分です。

ステージ 3 と 4 の違いが曖昧になります。

ステージ 3 は「姿勢反射障害があり転倒リスクは上がるが、屋内移動や生活は “自立中心” を保ちやすい」レベル、ステージ 4 は「屋内でも補助具や介助が “前提” になり、介助量が増える」レベルと整理するとぶれにくいです。見た目(前傾角度など)より、どの範囲で一人で動けるかで決めると安定します。

pull test は何歩下がれば「 III 」になりますか?

歩数だけで一律に決めるより、自力で回復できたかの記録が重要です。運用の目安として、2.5 は後退しても自力で回復できるのが前提で、3 以上は介助なしでは転倒しうる(または介助を要する)状態として整理すると安定します。安全確保のうえ、条件(足幅、合図、介助者位置)をできるだけ統一しましょう。

ON・OFF のどちらで評価しますか?

施設方針に従いますが、最優先は評価時の薬剤状態( ON/OFF )を必ず併記することです。可能であれば ON・OFF の両方を取り、H&Y がどの程度変化するかを追うと、生活上の困りごと(転倒・すくみ)の説明が通りやすくなります。

H&Y は介入効果の追跡に向いていますか?

H&Y は要約なので、短期で細かな変化を追う用途には限界があります。経時変化を追うなら「同一条件( ON/OFF、補助具、介助)で固定して取る」ことが前提で、必要に応じて症状別の尺度や QOL と組み合わせると解像度が上がります。

次の一手(運用を 1 つ進める)

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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チェック後の進め方を見る(PT キャリアガイド)


参考文献

  1. Hoehn MM, Yahr MD. Parkinsonism: onset, progression and mortality. Neurology. 1967;17(5):427-442. doi:10.1212/WNL.17.5.427
  2. Goetz CG, Poewe W, Rascol O, et al. Movement Disorder Society Task Force report on the Hoehn and Yahr staging scale: status and recommendations. Mov Disord. 2004;19(9):1020-1028. doi:10.1002/mds.20213
  3. Goetz CG, Tilley BC, Shaftman SR, et al. Movement Disorder Society-sponsored revision of the Unified Parkinson’s Disease Rating Scale (MDS-UPDRS). Mov Disord. 2008;23(15):2129-2170. doi:10.1002/mds.22340

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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