いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めて訪問して下さった方はよろしくお願いします。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「血液ガス分析」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
臨床で呼吸を評価するうえで血液ガス分析は必要不可欠になります。呼吸の評価は視診や触診で判断できることもありますが、基本的には体内のガス交換によって行われるものになるため、血液を採取することにより気づくことができる情報も少なくありません。
そんな呼吸評価になりますが、人工呼吸器の設定では、SIMV や CPAP、血液ガス分析でも PaO2 や PaCO2、SaO2 など覚えきれないほどの用語が登場します。また、これらの用語はいずれも呼吸において重要性が高く、呼吸を正確にアセスメントするためには欠かせない指標となります。
このような背景もあり、呼吸評価に苦手意識がある方や、呼吸リハビリテーションに興味はあるけど挫折してしまった方も少なからずいらっしゃると思います。そこで、血液ガス分析についてわかりやすく解説した記事を作成しました!
こちらの記事を読むことで血液ガス分析に出てくる用語についての理解が深まり、呼吸のアセスメントや呼吸リハビリテーションへの一助となれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【理学療法士の転職はマイナビコメディカル】
理学療法士は 2013 年頃より毎年 10,000 人程度が国家試験に合格し続けています。これは医療系の専門職の中では看護師に次ぐ有資格者の増加率となっており、1966 年にはじめての理学療法士が誕生した歴史の浅さを考えれば異例の勢いと言えます。
人数が増えることは組織力の強化として良い要素もありますが、厚生労働省からは 2019 年の時点で理学療法士の供給数は需要数を上回っていると報告されており、2040 年度には理学療法士の供給数は需要数の約 1.5 倍になると推測されています。このような背景もあり、理学療法士の給与、年収は一般職と比較して恵まれているとはいえず、多くの理学療法士の深刻な悩みに繋がっています。
しかし、給与や年収などは職場や企業に大きく左右されるものです。今、働いている環境よりも恵まれた、自分が納得できる労働環境は高い確率で身近にあります。100 歳まで生きるのが当たり前といわれる時代を豊かに生きるためには、福利厚生や退職金制度なども考慮して就職先を決定するべきです。しかし、理学療法士が増え続けていくことを考慮すると恵まれた労働環境も次第に少なくなっていくことが予想されます。だからこそ、今のうちに自分が理学療法士として働く上で納得できるような就職先を探すべきではないでしょうか?
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呼吸評価の基礎知識
呼吸の評価には、PaO2 や PaCO2、SaO2 などのローマ数字、記号が必ずといっていいほど出てきます。
いずれも重要な指標となりますが、このあたりに関しては苦手意識がある人が多いと思います。
筆者の経験からこれらを単純に暗記することは、なかなか難しいことであり、理論的に覚えた方が効果的といえます。
PaO2 を例にしてわかりやすい覚え方、考え方を解説していきます。
PaO2 の P の部分
PaO2 の P の部分は「気体(液体)の状態」を表しています。
PaO2 を例にあげると PaO2 の P は Partial pressure(分圧)になりますので、何らかの気体が、大気中でどの程度の割合を占めているのか?ということを判断する指標になります。
PaO2 の P の部分には Partial pressure(分圧)だけではなく、ほかにも FIO2 の F や SaO2 の S のように、いくつか種類があります。
- P:Partial pressure(分圧:mmHg)
- F:Fraction(気体濃度:%)
- S:Saturation(気体飽和度:%)
- C:Content(含有量:mL/dL)
- D:Delivery(供給量:mL/min/m²)
最も左側に位置するローマ数字は「気体の状態」を表していることを理解することで、何を意味したデータであるのかを読み取りやすくなると考えられます。
PaO2 の a の部分
PaO2 の a の部分は「気体(液体)が存在する場所」を表しています。PaO2 の P の部分は「気体(液体)の状態」になりますが、その気体(液体)が身体のどこにあるものなのか?ということが PaO2 の a の部分に注目することで判断することができます。
PaO2 を例にあげると、PaO2 の a は arterial(動脈血)の a になりますので、動脈血から呼吸の状態を判断する指標ということになります。
PaO2 の a の部分には arterial(動脈血)だけではなく、ほかにも FIO2 の I や ScvO2 の cv のように、いくつか種類があります。
- A:Alveolar(肺胞気:肺胞内の気体)
- I:Inspiratory(吸入気:口鼻から吸入する気体)
- E:expiratory(呼出気:口鼻から呼出する気体)
- a:arterial(動脈血)
- v:venous(静脈血)
- p:pulsation(脈拍)
- cv:central venous(中心静脈血)
- v(vバー):mixed venous(混合静脈血:肺動脈血)
また、PaO2 の a の部分に位置するローマ数字には大文字の場合と小文字の場合があり、大文字が気体、小文字が液体を表しています。そのため、大文字か小文字なのかについても意識して確認する必要があります。
PaO2 の P の部分で「気体(液体)の状態」を、PaO2 の a の部分で「気体(液体)が存在する場所」がわかります。この 2 つの理解ができれば、残す作業は「その気体は何なのか?」というところになります。
PaO2 の O2 の部分
PaO2 の O2 の部分は「気体の種類」を表しています。
血液内のガスには、窒素(N2)酸素(O2)二酸化炭素(CO2)が含まれていることから、PaO2 の O2 の部分には、O2 か CO2 のいずれかが当てはまります。
何故、窒素は血液ガス分析にあまり出てこないのか、と考える方もいらっしゃると思います。大気の成分は、窒素(N2)が約 78 %、酸素(O2)が約 21 %、その他の成分(CO2 など)が 約 1 %で構成されています。
そして、大気と同様に血液内に含まれる成分の多くも窒素(N2)となります。しかし、窒素(N2)は細胞代謝にほとんど影響を与えない成分となります。こういった背景もあり、血液ガス分析で重要となる成分は O2 と CO2 ということになります。
呼吸評価 用語集
ここまでの情報が整理できれば、血液ガス分析についての理解も深まったのではないかと考えられます。以下に、今までの内容を組み込みながら呼吸評価に欠かすことができない用語についてまとめていきます。
FIO2
FIO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- F:Fraction(気体濃度:%)
- I:Inspiratory(吸入気:口鼻から吸入する気体)
- O2:酸素
つまり、FIO2 とは吸入酸素濃度になります。
FIO2(吸入酸素濃度)とは、空気中における酸素濃度の割合になります。
吸入中酸素濃度のことで、対象者が吸入している大気(ガス)に酸素がどれくらい含まれているかを示します。
通常(ルームエアー)であれば大気の酸素濃度は 21 %であるため、FIO2(吸入酸素濃度)は 0.21 となります。
一方、酸素を投与していれば大気の酸素濃度以上の酸素濃度が吸入されることになるため、FIO2(吸入酸素濃度)は 0.21 よりも高くなります。
対象者の換気能力に応じて吸入気酸素濃度は変化します。おおよその目安にはなりますが、鼻カニューレにより酸素投与をおこなった場合には FIO2(吸入酸素濃度)は以下のような数値となります。
- 1 L/分 → FIO2 0.24
- 2 L/分 → FIO2 0.28
- 3 L/分 → FIO2 0.32
- 4 L/分 → FIO2 0.36
- 5 L/分 → FIO2 0.40
FIO2 は酸素化の評価指標となる P/F 比を算出するときにも必要となるため、必ず理解しておきましょう。
SpO2
SpO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- S:Saturation(気体飽和度:%)
- p:pulsation(脈拍)
- O2:酸素
つまり、SpO2 とは経皮的酸素飽和度になります。
SpO2(経皮的酸素飽和度)とは、心臓から全身に運ばれる血液(動脈血)の中を流れているヘモグロビンの何 % に酸素が結合しているのかを皮膚を通して(経皮的に)調べた値となります。
PaO2
PaO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- P:Partial pressure(分圧:mmHg)
- a:arterial(動脈血)
- O2:酸素
つまり、PaO2 とは動脈血酸素分圧になります。
PaO2(動脈血酸素分圧)とは、動脈血中に溶け込んだ酸素が持つ圧力のことを表します。言い換えれば、動脈血中に溶け込んだ酸素の量ということになります。
PaO2 の単位は Torr になります。Torr はイタリアの科学者であるトリチェリ博士の名前に由来したものであり、1 Torr = 1 mmHg となります。
PaO2 は酸素化の良し悪しの判断材料となります。良し悪しの境目としては、PaO2 が 60 Torr 以上であることが 1 つの指標となります。
PaO2 の正常値は、年齢や疾患、病態によっても左右されるため一概にはいえませんが、一般的には 80 ~ 100 Torr となります。
PaO2 の値が 80 ~ 100 Torr を正常値、60 Torr 以下の場合には呼吸不全(低酸素血症)と判断することができます。
SaO2
SaO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- S:Saturation(気体飽和度:%)
- a:arterial(動脈血)
- O2:酸素
つまり SaO2 とは、動脈血酸素飽和度になります。
SaO2(動脈血酸素飽和度)とは動脈血中の総ヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンが占めている割合のことです。
SaO2 と SpO2 との違いとしては、皮膚を通して簡易的に測定した動脈血酸素飽和度が SpO2、血液ガス分析などにより動脈血を採取して測定した動脈血酸素飽和度が SaO2 となります。そのため、測定の精度は SaO2 の方が高くなります。
SpO2 は簡易的な測定値にはなりますが、SaO2 と SpO2 は強く相関しており、SaO2 と SpO2 の値はほとんど同じになります。
また、動脈血中の総ヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンの割合(SaO2 や SpO2)を考える時に欠かせない指標が PaO2(動脈血酸素分圧)になります。
PaO2(動脈血酸素分圧)は赤血球中のヘモグロビン分子に酸素を結合させる駆動力として機能しています。この酸素とヘモグロビンとの結合率を示したものが酸素解離曲線になります。
酸素解離曲線は、縦軸にヘモグロビンと結合している SaO2(動脈血酸素飽和度)を、横軸に PaO2(動脈血酸素分圧)をとると、S字状(シグモイド曲線)となります。
正常時では、PaO2(動脈血酸素分圧)が 100 mmHg の時に、SaO2(動脈血酸素飽和度)は 98 % となります。
曲線は水平に近く酸素分圧が少し低下しても酸素飽和度は維持されている為、抹消組織までの酸素運搬機能は高い状態となります。
しかしながら、低酸素血症となる PaO2(動脈血酸素分圧)60 mmHg になると SaO2(動脈血酸素飽和度)は 89 %となり、それ以降は PaO2 が少し下がるだけでも SaO2 は一気に下がります。
- PaO2:100 mmHg →SaO2 98 %
- PaO2:90 mmHg →SaO2 97 %
- PaO2:80 mmHg →SaO2 95 %
- PaO2:70 mmHg →SaO2 93 %
- PaO2:60 mmHg →SaO2 89 %
- PaO2:50 mmHg →SaO2 83 %
- PaO2:40 mmHg →SaO2 75 %
- PaO2:30 mmHg →SaO2 57 %
- PaO2:20 mmHg →SaO2 35 %
- PaO2:10 mmHg →SaO2 13 %
基本的には SaO2 と PaO2 の相関性の高さから成り立つ酸素解離曲線によって、SaO2 と PaO2 のそれぞれの値を予測することができますが、血液中に過剰な一酸化炭素がある場合や、生体の変化でアシドーシスやアルカローシスの状態にある場合には酸素解離曲線が逸脱することがあることを理解しておく必要があります。
PaCO2
PaCO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- P:Partial pressure(分圧:mmHg)
- a:arterial(動脈血)
- CO2:二酸化酸素
つまり、PaCO2 とは動脈血二酸化炭素分圧になります。
PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)とは、動脈血中に溶け込んだ二酸化炭素が持つ圧力のことを表します。言い換えれば、動脈血中に溶け込んだ二酸化炭素の量ということになります。
PaO2 が酸素化の指標である一方、PaCO2 は肺胞の換気能力を表します。PaCO2 の正常値は、35 ~ 45 Torr とされています。
PaCO2 の値が 35 Torr 以下の場合は肺胞過換気、45 Torr 以上であれば肺胞低換気と判断することができます。
CaO2
CaO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- C:Content(含有量:mL/dL)
- a:arterial(動脈血)
- O2:酸素
つまり、CaO2 とは動脈血酸素含有量になります。
酸素化の指標として欠かすことができない血液ガスとして、PaO2 や SaO2 があげられますが、もう 1 つ知っておくとよいのが CaO2(動脈血酸素含有量)になります。
CaO2 とは、単位量の血液の中に酸素がどのくらい含まれているかの絶対値になります。
PaO2(動脈血酸素分圧)が高ければ、Hb(ヘモグロビン)と結合する酸素の量も増加するため、SaO2(SpO2)も増加します。
しかし、これらの値が高くても、貧血によって Hb(ヘモグロビン)の総量が少なければ、血液に十分な酸素が含まれていない可能性があります。こういった場合、CaO2 の値により、酸素化が十分であるかを見極めることができます。
CaO2 は以下の計算式により算出することができます。
CaO2 = 1.34 × Hb × SaO2 + 0.003 × PaO2
CaO2 の正常値は 12 ~ 22 mL/dL とされています。
PAO2
PAO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- P:Partial pressure(分圧:mmHg)
- A:Alveolar(肺胞気:肺胞内の気体)
- O2:酸素
つまり、PAO2 とは肺胞気酸素分圧になります。
PAO2(肺胞気酸素分圧)とは、吸気が肺胞に達したときの酸素分圧であり、大気からある程度の値の推測ができます。
1 気圧は 760 Torr であり、大気を吸入した場合、肺胞に至るまでに完全に加湿されます。この時の飽和水蒸気圧が 47 Torr であることから 760 Torr から 47 Torr は水蒸気で置き換わります。
その上で、大気中の酸素の割合が約 21 %となるため、肺胞に到達する直前の酸素分圧(P IO2)は「(760 Torr − 47 Torr)× 0.21 ≒ 150 Torr」となります。
更に肺胞内には体内の代謝で産生された二酸化炭素があり、二酸化炭素分圧が約 40 Torr であることから、「150 Torr − 40 Torr = 110 Torr」となります。
そのため、個人差はもちろんありますが PAO2(肺胞気酸素分圧)の正常値は 110 Torr 程度と説明することができます。
ScvO2
ScvO2 をわかりやすく表すと以下のようになります。
- S:Saturation(気体飽和度:%)
- cv:central venous(中心静脈血)
- O2:酸素
つまり、ScvO2 とは中心静脈血酸素飽和度になります。
ScvO2(中心静脈血酸素飽和度)とは、中心静脈血(上大静脈血)から採取した静脈血の酸素飽和度となり、酸素供給バランスをリアルタイムで判断することに優れた指標となります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「血液ガス分析」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで血液ガス分析に出てくる用語についての理解が深まり、呼吸のアセスメントや呼吸リハビリテーションへの一助となれば幸いです。
参考文献
- 藤木亜衣.中平敦士.血液ガス用語一覧.みんなの呼吸器 Respica.2023,vol.21,no.1,p26-32.
- 一和多俊男.呼吸不全の病態生理.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2017年,第26巻,第3号,p422-426.
- 陳和夫.酸素療法と非侵襲的換気.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2015年,第25巻,第2号,p168-173.