血液ガス(ABG)の読み方|PTが迷わない 3 手順と記録シート

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血液ガス( ABG )の読み方|このページの結論

血液ガスは「酸塩基 → 代償 → 酸素化」の順に固定すると、解釈のブレが一気に減ります。 呼吸評価ハブへ戻る 関連:呼吸理学療法の評価項目
関連:血ガス初期対応|新人 PT の 5 分フロー

血液ガス( ABG )は、酸塩基( pH ・ PaCO2 ・ HCO3- )酸素化( PaO2 ・ SpO2 )を同時に確認できる指標です。PT がまず押さえたいのは、「病名を当てること」ではなく、今の呼吸・循環リスクをどう整理して共有するかです。

本記事で答えるのは、血液ガスの読み方、正常値、代償、酸素化の見方です。人工呼吸器設定や疾患別の初期対応は最小限にとどめ、読み方に特化して整理します。

先に結論
血液ガスは、① pH で方向を決める、② PaCO2 / HCO3- で主因と代償をみる、③ PaO2 / SpO2 / FiO2 で酸素化を確認する、の 3 手順で読むと迷いにくくなります。pH が正常域でも、PaCO2 と HCO3- が両方ずれていれば混合障害を疑います。

血液ガスの読み方| 3 ステップ

読む前の前提チェック( 30 秒 )

ABG は、数値そのものよりも前提条件の取りこぼしで読み違えやすい検査です。まずは酸素条件、採血条件、体位、直前の処置や活動量をそろえてから読み始めると、解釈が安定します。

ABG を読む前に確認したい前提( PT 向け)
チェック項目 見るポイント ひとことメモ
酸素条件 室内気 / デバイス / 流量 / FiO2 の目安 PaO2 の解釈が変わる
採血条件 動脈 / 静脈、空気混入、分析遅延 特に PaO2 と pH がぶれやすい
体位・直前の状態 臥位 / 座位、運動直後、呼吸介助後など PaCO2 と酸素化が変動しうる
臨床像 低換気、過換気、感染、ショック、腎機能低下など 混合障害の当たりをつける

① 酸塩基の一次判定( pH → 主因を特定)

最初に pH をみて、アシドーシス( < 7.35 )アルカローシス( > 7.45 )かを決めます。次に、主因が呼吸性( PaCO2 )代謝性( HCO3- )かを確認します。たとえば、pH 低下+ PaCO2 上昇なら呼吸性アシドーシス、pH 低下+ HCO3- 低下なら代謝性アシドーシスです。

② 代償の有無(方向の整合を確認)

主因に対して、もう一方が代償方向へ動いていれば代償の可能性が高く、方向が合わなければ混合障害を疑います。代償は「正常化」ではなく、あくまでズレを打ち消そうとする反応です。pH が正常でも、PaCO2 と HCO3- の両方がずれていれば単純に正常とは言えません。

呼吸性障害の代償量の目安(成人・ PaCO2 40 mmHg / HCO3- 24 mEq/L を基準)
状態 PaCO2 10 mmHg 変化あたりの HCO3- 変化 ポイント
急性 呼吸性アシドーシス + 1 mEq/L 短時間の緩衝が中心
慢性 呼吸性アシドーシス + 4〜5 mEq/L 腎性代償が乗る
急性 呼吸性アルカローシス − 2 mEq/L 短時間の緩衝が中心
慢性 呼吸性アルカローシス − 4〜5 mEq/L 腎性代償が乗る

代謝性アシドーシスでは、混合障害の見落としを減らすために、期待 PaCO2 ≒ 1.5 × HCO3- + 8( ± 2 ) を目安にします。期待より高ければ呼吸性アシドーシス合併、低ければ呼吸性アルカローシス合併を考えます。

③ 酸素化の評価( PaO2 / SpO2 / 必要に応じ A–a gradient )

最後に、PaO2 と SpO2 の整合を確認します。SpO2 90 % 前後では PaO2 はおおよそ 60 mmHg、SpO2 97 % 付近からは曲線が平坦になり、SpO2 だけでは PaO2 の変化を追いにくくなります。FiO2 が分かる場合は、必要に応じて A–a gradient を使うと、低換気なのか、肺胞〜動脈レベルの障害なのかを切り分けやすくなります。

正常値(最小限・単位付き)

※ 室内気・成人の目安です。年齢、FiO2、採血条件で変動します。表は横にスクロールできます。

血液ガスと関連指標の基準目安(成人・室内気)
項目 基準範囲 単位 メモ
pH 7.35–7.45 酸性 < 7.35 / アルカリ性 > 7.45
PaCO2 35–45 mmHg 呼吸性の主指標
HCO3- 22–26 mEq/L 代謝性の主指標
BE − 2 〜 + 2 mEq/L 代謝性の全体傾向
PaO2 80–100 mmHg 高齢でやや低下しうる
SpO2 96〜99 % 酸素解離曲線の影響を受ける

現場の詰まりどころ

ABG は、知識不足よりも読む順番が毎回変わることで止まりやすい領域です。迷ったときは、下の 2 点に戻してください。

よくある失敗( OK / NG )

数値の暗記より、順番を固定して矛盾を拾うことのほうが再現性は高いです。特に、pH だけで正常と判断すること、酸素投与条件を書かずに酸素化を論じること、SpO2 を単独で過信することが典型的です。

ABG 解釈で起きやすいミスと対策( PT 向け)
NG(よくあるミス) なぜ起きる? OK(対策) 記録ポイント
pH だけで「正常」と判断 混合障害で相殺される pH → 主因 → 代償 → 酸素化の順で固定 「PaCO2 と HCO3- が両方ずれ」
酸素投与条件が抜けたまま酸素化を判断 前提( FiO2 )が不明 酸素デバイス・流量を先に記載 「室内気」「 O2 2 L/分(鼻)」
SpO2 を過信 体動・灌流不良・異常 Hb で誤差 波形、末梢循環、PaO2 との整合も確認 「体動あり」「灌流不良あり」
代償を「正常化」と誤解 代償=原因の是正ではない 代償は“方向の整合”として読む 「代償あり/矛盾あり」
採血条件を考えない PaO2 / pH が歪みうる 採血〜分析の経過も確認する 「分析遅延」「空気混入疑い」

迷わない回避手順

  1. 前提を 1 行で残す: 室内気か、酸素デバイスは何か、採血のタイミングはいつか。
  2. 順番を固定する: pH → PaCO2 / HCO3- → PaO2 / SpO2 の順で毎回読む。
  3. 結論を 1 行にする: 「何型で、代償はあるか、酸素化はどうか」を申し送り文に変換する。

ケースで当てはめ

例 1| COPD 増悪を疑うケース

ABG: pH 7.30 / PaCO2 60 mmHg / HCO3- 28 mEq/L / PaO2 55 mmHg(室内気)/ SpO2 88 %

解釈: pH 低下+ PaCO2 上昇より呼吸性アシドーシスです。HCO3- は上昇しており、代償方向の変化があります。PaO2 / SpO2 低下もあり、酸素化障害を伴っています。

共有の 1 行: 「室内気で呼吸性アシドーシス、代償あり、低酸素血症あり。体位・排痰・呼吸介助を優先し、速やかに共有。」

例 2| 代謝性アシドーシスを疑うケース

ABG: pH 7.25 / PaCO2 30 mmHg / HCO3- 14 mEq/L / PaO2 90 mmHg / SpO2 97 %

解釈: pH 低下+ HCO3- 低下より代謝性アシドーシスです。PaCO2 は低下しており、過換気による代償方向と考えられます。酸素化は大きく崩れていません。

共有の 1 行: 「代謝性アシドーシスで呼吸性代償あり、酸素化は保たれる。電解質・腎機能・乳酸と併読して原因確認。」

ダウンロード( A4 記録シート PDF )

ABG の読み方をベッドサイドでそのまま使えるように、A4 1 枚完結の記録シート PDFを用意しました。前提条件、酸塩基、代償、酸素化、所見メモを 1 枚で残したいときに使いやすい構成です。

ABG 記録シート PDF を開く

ABG 記録シート PDF を記事内でプレビューする

印刷して使う場合は A4 ・縦でそのまま出力できます。再評価時は、酸素条件や採血タイミングもあわせて残すと比較しやすくなります。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

PaO2 と SpO2 のおおよその関係は?

おおまかな目安として、PaO2 60 mmHg 前後で SpO2 90 % 前後です。SpO2 が 97 % 付近を超えると酸素解離曲線は平坦になり、PaO2 の変化を反映しにくくなります。体動、低灌流、異常ヘモグロビンでは乖離しうるため、背景の確認が必要です。

pH が正常なら「異常なし」と考えてよいですか?

いいえ。混合障害で相殺されると、pH が正常域でも PaCO2 と HCO3- が両方ずれていることがあります。pH だけで終わらず、主因と代償の方向まで確認してください。

代謝性アシドーシスのとき、PaCO2 はどう動きますか?

一般に低下方向(過換気)に動きます。期待 PaCO2 ≒ 1.5 × HCO3- + 8( ± 2 )から大きく外れる場合は、呼吸性障害の合併を検討します。

PT が ABG からまず共有すべきことは何ですか?

何型か、代償はあるか、酸素化は崩れているかの 3 点です。加えて、室内気か酸素投与中か、体位や採血直前の状況も一緒に残すと、チームで判断をそろえやすくなります。

次の一手

続けて全体像を整理するなら、まず 呼吸理学療法の評価項目 を確認してください。

その日の安全判断までつなげるなら、血ガス初期対応|新人 PT の 5 分フロー が続きます。


参考文献

  1. Yee J, Frinak S, Mohiuddin N, Uduman J. Fundamentals of Arterial Blood Gas Interpretation. Kidney360. 2022;3(8):1458-1466. doi: 10.34067/KID.0008102021. PubMed: 36176645
  2. Cowley NJ, Owen A, Bion JF. Interpreting arterial blood gas results. BMJ. 2013;346:f16. doi: 10.1136/bmj.f16. PubMed: 23325867
  3. Sood P, Paul G, Puri S. Interpretation of arterial blood gas. Indian J Crit Care Med. 2010;14(2):57-64. doi: 10.4103/0972-5229.68215. PubMed: 20859488
  4. Habib T, Nair A, Murphy S, Saeed H, Ishaya N. Mastering blood gas interpretation: A practical guide for primary care providers. S Afr Fam Pract (2004). 2025;67(1):e1-e7. doi: 10.4102/safp.v67i1.6058. PubMed: 40336441
  5. Hantzidiamantis PJ, Amaro E. Physiology, Alveolar to Arterial Oxygen Gradient. [Updated 2023 Jun 5]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. PubMed: 31424737
  6. Wick KD, Matthay MA, Ware LB. Pulse oximetry for the diagnosis and management of acute respiratory distress syndrome. Lancet Respir Med. 2022;10(11):1086-1098. doi: 10.1016/S2213-2600(22)00058-3. PubMed: 36049490

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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