血液ガスの読み方|PT 向けに最短で解釈する手順と正常値

評価
記事内に広告が含まれています。

血液ガスの読み方とは?PT が読む目的(結論)

PT キャリアガイド|最短の進め方を見る

血液ガス( ABG )は、酸塩基( pH ・ PaCO₂ ・ HCO₃⁻ )と酸素化( PaO₂ / SpO₂ )を同時に評価でき、急性期から回復期までリスク把握・介入優先度の決定・効果判定に直結します。本記事は「読み方(解釈手順)」に特化し、初学者でも迷わない 3 ステップを提示します。なお呼吸評価の全体像は 呼吸評価ハブ に統一しています(本文内インライン内部リンクは本項のみ)。

スニペット用まとめ( 1 スク )
血液ガスの読み方( 3 手順 ):① 酸塩基… pH 7.35–7.45 を基準に、呼吸性= PaCO₂代謝性= HCO₃⁻ を主因とみる/② 代償…主因と同方向に変化していれば代償の可能性、矛盾があれば混合障害を疑う/③ 酸素化… PaO₂ と SpO₂ の整合を確認(低下時は原因推定と介入要否を検討)。
正常値目安:pH 7.35–7.45、PaCO₂ 35–45 mmHg、HCO₃⁻ 22–26 mEq/L、PaO₂ 80–100 mmHg、BE −2〜+2 mEq/L、SpO₂ ≥ 96 %(室内気・成人)。

血液ガスの読み方:3 ステップ

① 酸塩基の一次判定( pH → 主因を特定)

まず pH をみて、アシドーシス( < 7.35 )かアルカローシス( > 7.45 )かを判定します。次に変化の主因が呼吸性( PaCO₂ )代謝性( HCO₃⁻ )かを同時にみます。例:pH 低下+ PaCO₂ 上昇=呼吸性アシドーシス、pH 低下+ HCO₃⁻ 低下=代謝性アシドーシス。

② 代償の有無(方向の整合を確認)

主因と同方向の二次的変化があれば代償の可能性が高く、矛盾があれば混合障害を疑います(例:代謝性アシドーシスでは PaCO₂ は低下方向=過換気で代償)。急性・慢性で代償量は異なるため、矛盾が強い場合は混在や別病態(敗血症・乳酸アシドーシス・嘔吐後のアルカローシス併存など)を想定します。

③ 酸素化の評価( PaO₂ / SpO₂ /必要に応じ A–aDO₂ )

PaO₂ と SpO₂ の整合を確認し、低下があれば V/Q 不均衡・拡散障害・低換気などを推定します。FiO₂ を把握できる場合は A–aDO₂(アルベオラー–アーテリアル較差)で肺胞–動脈レベルの障害を推測します。SpO₂ は体動・灌流不良・異常ヘモグロビンで誤差が出るため、値の背景を常に点検します。

正常値(最小限・単位付き)

※ 年齢・ FiO₂ ・採血条件で変動します(室内気・成人の目安)。表は横にスクロールできます。
血液ガスと関連指標の基準目安(成人・室内気)
項目 基準範囲 単位 メモ
pH 7.35–7.45 酸性 < 7.35 / アルカリ性 > 7.45
PaCO₂ 35–45 mmHg 呼吸性の主指標
HCO₃⁻ 22–26 mEq/L 代謝性の主指標
BE −2 〜 +2 mEq/L 代謝性の全体傾向
PaO₂ 80–100 mmHg 高齢でやや低下
SpO₂ ≳ 96 % 酸素解離曲線に依存

ダウンロード(A4 配布物)

※ クリックして開いてからブラウザの「印刷」で A4 に出力できます(余白は既定で最適化済み)。

ケースで当てはめ(ショート 2 例)

例 1| COPD 増悪を疑うケース

ABG: pH 7.30 / PaCO₂ 60 mmHg / HCO₃⁻ 28 mEq/L / PaO₂ 55 mmHg(室内気)/ SpO₂ 88 %。
解釈: pH 低下+ PaCO₂ 上昇=呼吸性アシドーシス。HCO₃⁻ は上昇=代償方向(慢性の関与を示唆)。PaO₂ / SpO₂ 低下あり。対応観点: 体位・呼吸介助・排痰、酸素投与の適正化(施設基準に従う)、医師へ迅速共有。

例 2| 代謝性アシドーシスを疑うケース

ABG: pH 7.25 / PaCO₂ 30 mmHg / HCO₃⁻ 14 mEq/L / PaO₂ 90 mmHg / SpO₂ 97 %。
解釈: pH 低下+ HCO₃⁻ 低下=代謝性アシドーシス。PaCO₂ は低下=代償方向(過換気)。AG(アニオンギャップ)評価で乳酸アシドーシス・ケトアシドーシス・腎不全などを鑑別。

よくある誤り・注意点

  • 単位の混在: PaCO₂ / PaO₂ は mmHg、HCO₃⁻ / BE は mEq/L。表記ゆれに注意。
  • 採血条件: 空気混入・分析遅延・体温補正の未確認で値が歪む(特に PaO₂ / pH )。
  • SpO₂ の過信: 体動・灌流不良・一酸化炭素血症・メト Hb で誤差が大きい。
  • 代償の量を“正常”と誤解: 代償は原因の是正ではなく、混合障害の否定にもならない
  • AG・ A–aDO₂ の“乱用”: 計算値は前提( FiO₂ ・アルブミンなど)に依存。前後の臨床文脈と併読。

FAQ

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

PaO₂ と SpO₂ のおおよその関係は?

酸素解離曲線の性質上、PaO₂ ≈ 60 mmHg で SpO₂ ≈ 90 % が概ねの目安です。以後の上昇は SpO₂ が 96–100 % に“張り付き”やすく、PaO₂ の変化を反映しにくくなります。Perfusion 不良や異常 Hb では乖離し得ます。

代謝性アシドーシス時、PaCO₂ はどう動く?

一般に低下方向(過換気)に動きます。急性では低下量が不十分なことがあり、矛盾が大きければ混合障害を検討します。

PT が ABG から即座に決めるべきことは?

安全確認と介入優先度の決定です。低酸素血症の有無、体位・呼吸介助・排痰の要否、運動処方の可否・中止基準の判断など。異常値は医師・看護と迅速に共有します。

参考文献

  1. Yee J, Frinak S, Mohiuddin N, Uduman J. Fundamentals of Arterial Blood Gas Interpretation. Kidney360. 2022;3(8):1458–1466. doi:10.34067/KID.0008102021. PubMedPMC
  2. Cowley NJ, Owen A, Bion JF. Interpreting arterial blood gas results. BMJ. 2013;346:f16. doi:10.1136/bmj.f16. PubMed
  3. Sood P, Paul G, Puri S. Interpretation of arterial blood gas. Indian J Crit Care Med. 2010;14:57–64. doi:10.4103/0972-5229.68215. PubMedPMC
  4. Hantzidiamantis PJ, Amaro E. StatPearls(Physiology, Alveolar to Arterial Oxygen Gradient). Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan. PubMed
  5. Castro D. StatPearls(Arterial Blood Gas). Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024. NCBI Bookshelf

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました