血液ガス(ABG)の読み方|PT向け3手順と記録シート

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血液ガス(ABG)は「酸塩基→代償→酸素化」の順で読みます

ABGは、pHで方向を決め、PaCO2・HCO3−から主な障害と期待代償を確認し、最後に酸素条件とPaO2を評価します。
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血液ガス(ABG)では、pH、PaCO2、HCO3−から酸塩基平衡と換気を整理し、PaO2から酸素化を評価します。PTがまず身につけたいのは病名を当てることではなく、数値を一定の順番で読み、異常の方向と矛盾をチームへ共有することです。

本記事では、4つの基本パターン、期待代償量、Winterの式、pHが正常域にある場合の見方を、3手順で整理します。人工呼吸器設定や疾患別治療ではなく、ABGの解釈と記録に特化した内容です。

先に結論:①pHでアシデミア・アルカレミアの方向を確認し、②PaCO2とHCO3−から主な障害と期待代償を判定し、③酸素条件とPaO2・SpO2の整合を確認します。pHが正常域でも、PaCO2とHCO3−が異常なら、期待代償量との比較が必要です。

血液ガスをpH、PaCO2・HCO3−、酸素条件とPaO2の3ステップで読む方法
血液ガスは、pH、主因と代償、酸素化の順に固定して読みます。

血液ガスの読み方|3ステップ

読む前に採血種別と酸素条件を確認します

ABGは、数値を読む前の条件が不明だと解釈が変わります。少なくとも、動脈血か静脈血か、酸素投与条件、採血時の体位と直前の活動を確認してください。

血液ガスを読む前に確認する条件
確認項目 確認する内容 判断への影響
採血種別 ABGかVBGか VBGのPO2は酸素化評価に使用しない
酸素条件 室内気、デバイス、流量、FiO2 PaO2の意味が変わる
採血・分析条件 空気混入、分析遅延、転記間違い pH、PaCO2、PaO2が変化しうる
体位・直前の状態 臥位、座位、運動後、処置後など 換気や酸素化の比較条件が変わる
経過 過去のABG、呼吸器疾患、腎機能、薬剤 急性・慢性や混合障害の判断に必要

① pHとPaCO2・HCO3−から基本パターンを決めます

最初にpHを確認します。pH 7.35未満はアシデミア、7.45超はアルカレミアです。アシドーシスとアルカローシスは、pHを酸性側またはアルカリ性側へ動かす病態を表します。

次に、PaCO2とHCO3−のどちらがpHの変化を説明するかを確認します。

酸塩基平衡障害の4つの基本パターン
基本パターン pH 一次変化 代償方向
呼吸性アシドーシス 低下 PaCO2上昇 HCO3−上昇
代謝性アシドーシス 低下 HCO3−低下 PaCO2低下
呼吸性アルカローシス 上昇 PaCO2低下 HCO3−低下
代謝性アルカローシス 上昇 HCO3−上昇 PaCO2上昇

pHが正常域にある場合も、PaCO2とHCO3−を確認します。両方が異常だから直ちに混合障害と決めるのではなく、次のステップで期待代償量に収まるかを判定します。

② 期待代償量と比較します

代償方向へ動いていることだけでは、適切な代償とは判断できません。実測値が期待される範囲から外れる場合は、別の酸塩基平衡障害が併存している可能性を考えます。

単純性酸塩基平衡障害で期待される代償量の目安
一次性障害 期待される代償 範囲から外れた場合
代謝性アシドーシス 期待PaCO2 = 1.5 × HCO3− + 8(±2) 高ければ呼吸性アシドーシス、低ければ呼吸性アルカローシスの併存を考える
代謝性アルカローシス HCO3−が1 mEq/L上昇するごとにPaCO2が約0.6 mmHg上昇 上昇が過大・過小なら呼吸性障害の併存を考える
急性呼吸性アシドーシス PaCO2が10 mmHg上昇するごとにHCO3−が約1 mEq/L上昇 期待量との差から代謝性障害や経過を確認する
慢性呼吸性アシドーシス PaCO2が10 mmHg上昇するごとにHCO3−が約3.5 mEq/L上昇 過去値と比較し、急性増悪や代謝性障害を確認する
急性呼吸性アルカローシス PaCO2が10 mmHg低下するごとにHCO3−が約2 mEq/L低下 期待量との差から代謝性障害や経過を確認する
慢性呼吸性アルカローシス PaCO2が10 mmHg低下するごとにHCO3−が約5 mEq/L低下 過去値と臨床経過をあわせて判断する

代償は原因を治しているわけではなく、pHの変化を小さくする反応です。単純性障害では、代償だけでpHが反対側まで行き過ぎることはありません。

代謝性アシドーシスならアニオンギャップを確認します

代謝性アシドーシスを認めた場合は、血清Na、Cl、HCO3−を用いてアニオンギャップを確認します。

AG = Na −(Cl + HCO3−)

基準値は検査方法や施設によって異なります。低アルブミン血症ではAGが見かけ上低くなるため、アルブミン値も確認します。血液ガスにNaやClが含まれていない場合は、血液生化学検査との併読が必要です。

③ 酸素条件とPaO2・SpO2を確認します

ABGで酸素化を確認するときは、PaO2を酸素条件とセットで読みます。SpO2はパルスオキシメータで測定する関連指標であり、PaO2と同じ値を表しているわけではありません。

おおまかな目安では、PaO2 60 mmHg前後で酸素飽和度は約90%です。この付近より低下すると酸素解離曲線が急になり、PaO2のわずかな低下でも飽和度が大きく下がりやすくなります。一方、飽和度が高い領域では曲線が平坦になり、SpO2だけではPaO2の変化を把握しにくくなります。

PaO2を評価するときは、室内気か酸素投与中かを必ず併記します。必要に応じてA–aDO2を確認すると、低換気や吸入酸素濃度の低下と、換気血流比不均衡・拡散障害・シャントなどを整理しやすくなります。ただし、年齢やFiO2によって基準が変わるため、単一の数値だけで判断しません。

血液ガスの正常値

以下は成人・室内気における一般的な参考範囲です。施設の検査基準、年齢、標高、酸素条件、病態によって異なります。

血液ガスと関連指標の基準目安
項目 参考範囲 単位 読み方
pH 7.35〜7.45 酸塩基平衡の方向を確認する
PaCO2 35〜45 mmHg 肺胞換気を反映する
HCO3− 22〜26 mEq/L 代謝性成分を確認する
BE −2〜+2 mEq/L 代謝性変化の方向を補助的に確認する
PaO2 80〜100 mmHg 年齢や酸素条件とあわせて評価する
SpO2 96〜99 健常成人の参考値。治療目標とは区別する

SpO2の管理目標は、疾患、CO2貯留リスク、医師の指示によって異なります。表の参考範囲を、そのまま全患者の酸素投与目標として使用しないでください。

血液ガスで迷いやすい判断の境界

血液ガスでは、数値が代償方向へ動いているかだけでなく、期待される変化量に収まっているかを確認することが重要です。

ABG解釈で起きやすい読み違いと確認方法
読み違い 問題点 確認方法
pHが正常だから異常なし 代償された障害や混合障害を見落とす PaCO2、HCO3−、期待代償量を確認する
代償方向なら単純性障害 代償量が過大・過小でも見逃す 実測値を期待代償範囲と比較する
VBGのPO2で酸素化を判断 静脈血PO2は動脈血酸素化を表さない SpO2、酸素条件、必要時ABGを確認する
PaO2だけを記録する 酸素投与条件が分からない 室内気、デバイス、流量、FiO2を併記する
SpO2だけを過信する 体動、低灌流、センサー不良などの影響を受ける 波形、末梢循環、PaO2、臨床症状を照合する

記録は「条件+酸塩基+代償+酸素化」で1行にします

解釈した結果は、数字だけを並べず、次の順番で記録すると共有しやすくなります。

  1. 条件:ABGまたはVBG、室内気または酸素デバイス・流量
  2. 酸塩基:アシデミア・アルカレミアと一次性障害
  3. 代償:期待範囲内か、単純性障害では説明しにくいか
  4. 酸素化:PaO2・SpO2と酸素条件

記録例:「ABG、室内気。アシデミアを伴う呼吸性アシドーシス。HCO3−は代償方向だが、急性・慢性の単純な期待範囲に一致せず。低酸素血症を認めるため速やかに共有した。」

ケースで読み方を確認します

以下は読み方を確認するための学習例です。実際の判断では、症状、経過、過去値、電解質、乳酸、腎機能、治療内容をあわせて確認してください。

例1|呼吸性アシドーシス

条件:ABG、室内気

数値:pH 7.30 / PaCO2 60 mmHg / HCO3− 28 mEq/L / PaO2 55 mmHg / SpO2 88%

ステップ1:pH 7.30のためアシデミアです。PaCO2が上昇しているため、一次性障害は呼吸性アシドーシスと考えます。

ステップ2:PaCO2が基準の40 mmHgから20 mmHg上昇しています。急性ならHCO3−は約26 mEq/L、慢性なら約31 mEq/Lが目安です。実測値28 mEq/Lはどちらにも明確には一致しないため、過去値や発症経過を確認します。

ステップ3:室内気でPaO2 55 mmHg、SpO2 88%であり、低酸素血症を伴っています。

共有例:「室内気ABGでアシデミアを伴う高二酸化炭素血症と低酸素血症を認めます。リハ負荷は見合わせ、速やかに医師・看護師へ共有します。」

例2|代謝性アシドーシス

条件:ABG、室内気

数値:pH 7.25 / PaCO2 28 mmHg / HCO3− 12 mEq/L / PaO2 90 mmHg / SpO2 97%

ステップ1:pH 7.25のためアシデミアです。HCO3−が低下しているため、一次性障害は代謝性アシドーシスと考えます。

ステップ2:Winterの式では、期待PaCO2は1.5 × 12 + 8 = 26 mmHg、許容範囲は約24〜28 mmHgです。実測PaCO2は28 mmHgであり、呼吸性代償は期待範囲内です。

追加確認:Na、Cl、アルブミンを確認し、アニオンギャップを計算します。乳酸、血糖・ケトン、腎機能などは臨床像に応じて確認します。

共有例:「代謝性アシドーシスで、PaCO2は期待代償範囲内です。室内気で酸素化は保たれています。AGと原因検索に必要な検査結果を確認します。」

例3|pHが正常域でも混合障害を疑うケース

数値:pH 7.40 / PaCO2 60 mmHg / HCO3− 36 mEq/L

pHは正常域ですが、PaCO2とHCO3−はいずれも上昇しています。PaCO2が60 mmHgの慢性呼吸性アシドーシスであれば、HCO3−はおおよそ31 mEq/Lが期待されます。

実測HCO3−は36 mEq/Lと期待値より高いため、慢性呼吸性アシドーシスだけでは説明しにくく、代謝性アルカローシスの併存を考えます。

ポイント:pHが正常域かどうかではなく、PaCO2とHCO3−が期待代償量に一致するかを確認します。

ABG記録シートPDF

採血条件、酸塩基平衡、代償、酸素化、再評価内容をA4用紙1枚へ整理できる記録シートです。数値だけでなく、酸素条件や解釈を一緒に残したい場面で使用できます。

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PDFを表示できない場合は、こちらからABG記録シートPDFを開いてください

印刷する場合はA4・縦で出力できます。再評価では、前回と今回の酸素条件、体位、採血タイミングがそろっているかも確認してください。

よくある質問

pHが正常域なら異常なしですか?

異常なしとは限りません。適切に代償された単純性障害や、複数の障害が相殺された混合性障害があります。PaCO2とHCO3−を確認し、期待代償量と比較してください。

PaCO2とHCO3−が両方ずれていれば混合障害ですか?

両方が異常というだけでは決められません。単純性障害でも代償によって両方が変化します。実測値が期待代償範囲から外れる場合に、別の一次性障害の併存を考えます。

代謝性アシドーシスではPaCO2をどう評価しますか?

期待PaCO2 = 1.5 × HCO3− + 8(±2)を目安にします。実測PaCO2が期待値より高ければ呼吸性アシドーシス、低ければ呼吸性アルカローシスの併存を考えます。

VBGでも酸塩基平衡を確認できますか?

VBGはpHやCO2の傾向を確認する目的で使用されることがありますが、静脈血PO2を動脈血酸素化の評価には使用できません。採血種別を確認し、酸素化はSpO2や必要時のABGとあわせて判断します。

PaO2 60 mmHgとSpO2 90%は常に一致しますか?

おおまかな目安であり、常に一致するわけではありません。pH、体温、PaCO2、ヘモグロビン、末梢循環、測定誤差などで関係が変わります。酸素条件と臨床所見をあわせて確認してください。

次の一手

呼吸評価全体の順番と使い分けを整理する場合は、呼吸理学療法の評価項目を確認してください。

ABGの結果をその日のリハ実施可否や報告へつなげる場合は、血ガス初期対応|新人PTの5分フローへ進みます。


参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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