BMI の限界と使いどころ|ズレる 4 パターンと実務フロー

栄養・嚥下
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BMI は「体格の入口」ですが、結論は“推移+中身+機能”で固めます

BMI( Body Mass Index )は、体格を一瞬で共有できる便利な指標です。一方で、筋肉量・脂肪・水分を区別できないため、臨床では「 BMI が普通だから安心」「 BMI が高いから栄養は良い」のように、判断がズレやすい場面があります。

結論として、PT/OT/ST の実務では BMI を“結論”にせず、①体重推移 ②体液の交絡(浮腫・脱水)③筋量の目安 ④機能指標の順で確度を上げると、見落としと過剰介入が減ります。

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BMI とは?(計算式と、最初に押さえる結論)

BMI は、体重( kg )を身長( m )の 2 乗で割った体格指数です。研究・疫学だけでなく、病棟・在宅の実務でも「低体重/過体重の層別」に使われます。

ただし結論として、BMI は単発値よりも“入口の層別”に向きます。栄養・体液・治療の変動がある症例では、BMI だけで判断せず、次章の「外す典型」と「補助指標」を必ず足します。

  • BMI = 体重( kg ) ÷ 身長( m )× 身長( m )
  • 身長が推定値(膝高など)の場合は、推定法を固定し、継時比較は同一法で行います。

BMI が役立つ場面(“使いどころ”を限定すると強い)

BMI は、初期評価の短時間スクリーニングや、チーム内の共通言語として有用です。特に「まず誰を拾うか(優先度づけ)」の場面で力を発揮します。

  • 入院・初回訪問の入口:低体重/過体重の層別と、追加評価の優先度を決める
  • 栄養スクリーニングの構成要素:BMI を含むツール(例:MUST など)で情報をそろえる
  • 介入方針の“背景説明”:負荷設定や転倒リスクの背景として共有しやすい

BMI で外す 4 パターン(限界を先に押さえる)

BMI は“体重”を分母(身長)で割った指標なので、体重の中身(筋肉・脂肪・水分)を区別できません。つまり、同じ BMI でも状態が全く違うことが起こります。

BMI がズレやすい代表場面( PT/OT/ST の解釈ミスを減らす早見 )
パターン 何が起きる? BMI の落とし穴 次に足す 1 指標(最小)
浮腫(心不全・腎不全など) 体液貯留で体重が増える “栄養が良い”と誤解しやすい 浮腫所見(下腿圧痕など)+体重推移
脱水・摂取低下 短期で体重が落ちる 短期低下を“低栄養”と断定しやすい 摂取量+バイタル/ BUN/Cr など
サルコペニア肥満 筋量が少なく脂肪が多い BMI が“普通”でも筋力・機能が低い 握力 または CC(下腿周囲長)
身長の測定誤差 円背・拘縮で身長が取りづらい BMI が過大/過小になりやすい 推定身長の方法固定(膝高など)

※表は横にスクロールできます。

PT/OT/ST 実務:BMI を“結論にしない”運用フロー

おすすめは、BMI を入口にして、体重推移 → 体液の交絡 → 筋量の目安 → 機能の順で確度を上げるやり方です。これで「見落とし」と「過剰介入」を減らせます。

BMI を入口にした「迷わない 5 ステップ」(病棟〜在宅の最小セット)
ステップ やること ポイント(判断がブレない一言) 記録の型(例)
1 BMI を算出 単発値は“入口の層別”に限定 BMI:xx.x(身長:実測/推定、方法:○○)
2 体重推移を確認 直近 1 週間〜 6 か月の“変化量”を優先 体重:xx.x → xx.x(期間:○週)
3 体液の交絡を除外 浮腫・脱水・治療(点滴/利尿/透析)を先に疑う 下腿圧痕(+/−)、点滴/利尿:あり
4 筋量/筋機能を足す “普通 BMI ”でも筋低下を見逃さない 握力:xx kg、CC:xx cm、歩行:○○
5 次アクションを決める 連携・負荷・再評価間隔までセット NST/管理栄養士連携、再評価:○週後

※表は横にスクロールできます。

現場の詰まりどころ(ありがちなつまずきと対処)

ここは「読ませるゾーン」です。BMI を入口にしたときに起きやすいミスは、“単発値で結論を急ぐ”ことです。下の 3 つで迷いを止めます。

よくある失敗:BMI を“結論”にしてしまう

  • 入院初日(初回訪問)の BMI だけで判断:体重推移(期間)を必ず取る
  • 浮腫を見落として「栄養改善」と誤解:所見(下腿圧痕など)と治療背景を同時に確認
  • 身長が毎回違って BMI がブレる:推定身長の方法を固定し、記録欄に明記
  • “普通 BMI ”だから安心:サルコペニア肥満を疑い、握力・CC・歩行機能を足す

回避のチェック:最低限そろえる 6 点

BMI 解釈のチェックリスト( 6 点だけで迷いを減らす )
チェック 見る理由 OK の目安 NG のときの次の一手
体重は単発か?推移か? 単発は誤解しやすい 期間つきで比較できる 基準日を決めて推移を固定
浮腫所見は? 体液で体重が増える 所見が記録されている 圧痕/靴下跡/呼吸苦などを併記
脱水サインは? 短期低下を栄養と誤認 摂取量・バイタルがある 水分評価→条件固定で再測定
身長は実測か推定か? BMI が過大/過小になる 方法が固定されている 推定法を 1 つに統一し明記
筋量/筋機能の指標は? “普通 BMI ”の見逃し 握力 or CC がある どちらか 1 つを必ず追加
次アクションが決まっている? 評価で止まるのが最悪 連携・負荷・再評価がセット NST/栄養連携+再評価間隔を決める

※表は横にスクロールできます。

FAQ(よくある質問)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

BMI が普通でも、筋力が弱い人はどう見ますか?

BMI は体重の中身(筋肉・脂肪・水分)を区別できません。まずはサルコペニア肥満や廃用を疑い、握力、CC(下腿周囲長)、歩行速度、椅子立ち上がりなどの機能指標を足して、筋量/筋機能の低下を見落とさない運用が安全です。

浮腫があるとき、BMI は使えますか?

入口としては使えますが、結論にはしません。体液貯留で体重が増えるため、BMI が高く見えても栄養状態が良いとは限りません。体重推移、所見(下腿圧痕など)、利尿や摂取状況を合わせて解釈します。

身長が測れない(円背・拘縮)ときは?

膝高などで推定身長を用いる場合は、院内(または事業所)で方法を一本化し、推定法を記録に残します。継時比較では「同じ方法で繰り返す」ことが前提です。

高齢者で“減量”を勧めるべきですか?

BMI だけで決めず、転倒・筋力低下・摂取量・併存疾患を合わせて判断します。過度な減量は筋量低下を招きやすいため、栄養・運動・安全管理をセットで考えるのが基本です。

次の一手(迷ったら、ここから 1 つだけ)

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  1. Sweatt K, et al. Strengths and Limitations of BMI in the Diagnosis of Obesity: What is the Path Forward? Curr Obes Rep. 2024. doi: 10.1007/s13679-024-00580-1 / PubMed: 38958869
  2. Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002 / PubMed: 30181091
  3. Volkert D, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2019. doi: 10.1016/j.clnu.2018.05.024 / PubMed: 30005900
  4. Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis ( EWGSOP2 ). Age Ageing. 2019;48(1):16-31. doi: 10.1093/ageing/afy169 / PubMed: 30312372
  5. Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment ( AWGS 2019 ). J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi: 10.1016/j.jamda.2019.12.012 / PubMed: 32033882

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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