BMI は「体格の入口」ですが、結論は“推移+中身+機能”で固めます
BMI( Body Mass Index )は、体格を一瞬で共有できる便利な指標です。一方で、筋肉量・脂肪・水分を区別できないため、臨床では「 BMI が普通だから安心」「 BMI が高いから栄養は良い」のように、判断がズレやすい場面があります。
結論として、PT/OT/ST の実務では BMI を“結論”にせず、①体重推移 ②体液の交絡(浮腫・脱水)③筋量の目安 ④機能指標の順で確度を上げると、見落としと過剰介入が減ります。
同ジャンルの全体像から整理したい方へ
栄養・嚥下ハブで「スクリーニング→計画→モニタリング」を先に見る
関連(総論):栄養スクリーニング運用プロトコル( 10 分フロー )
BMI とは?(計算式と、最初に押さえる結論)
BMI は、体重( kg )を身長( m )の 2 乗で割った体格指数です。研究・疫学だけでなく、病棟・在宅の実務でも「低体重/過体重の層別」に使われます。
ただし結論として、BMI は単発値よりも“入口の層別”に向きます。栄養・体液・治療の変動がある症例では、BMI だけで判断せず、次章の「外す典型」と「補助指標」を必ず足します。
- BMI = 体重( kg ) ÷ 身長( m )× 身長( m )
- 身長が推定値(膝高など)の場合は、推定法を固定し、継時比較は同一法で行います。
BMI が役立つ場面(“使いどころ”を限定すると強い)
BMI は、初期評価の短時間スクリーニングや、チーム内の共通言語として有用です。特に「まず誰を拾うか(優先度づけ)」の場面で力を発揮します。
- 入院・初回訪問の入口:低体重/過体重の層別と、追加評価の優先度を決める
- 栄養スクリーニングの構成要素:BMI を含むツール(例:MUST など)で情報をそろえる
- 介入方針の“背景説明”:負荷設定や転倒リスクの背景として共有しやすい
BMI で外す 4 パターン(限界を先に押さえる)
BMI は“体重”を分母(身長)で割った指標なので、体重の中身(筋肉・脂肪・水分)を区別できません。つまり、同じ BMI でも状態が全く違うことが起こります。
| パターン | 何が起きる? | BMI の落とし穴 | 次に足す 1 指標(最小) |
|---|---|---|---|
| 浮腫(心不全・腎不全など) | 体液貯留で体重が増える | “栄養が良い”と誤解しやすい | 浮腫所見(下腿圧痕など)+体重推移 |
| 脱水・摂取低下 | 短期で体重が落ちる | 短期低下を“低栄養”と断定しやすい | 摂取量+バイタル/ BUN/Cr など |
| サルコペニア肥満 | 筋量が少なく脂肪が多い | BMI が“普通”でも筋力・機能が低い | 握力 または CC(下腿周囲長) |
| 身長の測定誤差 | 円背・拘縮で身長が取りづらい | BMI が過大/過小になりやすい | 推定身長の方法固定(膝高など) |
※表は横にスクロールできます。
PT/OT/ST 実務:BMI を“結論にしない”運用フロー
おすすめは、BMI を入口にして、体重推移 → 体液の交絡 → 筋量の目安 → 機能の順で確度を上げるやり方です。これで「見落とし」と「過剰介入」を減らせます。
| ステップ | やること | ポイント(判断がブレない一言) | 記録の型(例) |
|---|---|---|---|
| 1 | BMI を算出 | 単発値は“入口の層別”に限定 | BMI:xx.x(身長:実測/推定、方法:○○) |
| 2 | 体重推移を確認 | 直近 1 週間〜 6 か月の“変化量”を優先 | 体重:xx.x → xx.x(期間:○週) |
| 3 | 体液の交絡を除外 | 浮腫・脱水・治療(点滴/利尿/透析)を先に疑う | 下腿圧痕(+/−)、点滴/利尿:あり |
| 4 | 筋量/筋機能を足す | “普通 BMI ”でも筋低下を見逃さない | 握力:xx kg、CC:xx cm、歩行:○○ |
| 5 | 次アクションを決める | 連携・負荷・再評価間隔までセット | NST/管理栄養士連携、再評価:○週後 |
※表は横にスクロールできます。
現場の詰まりどころ(ありがちなつまずきと対処)
ここは「読ませるゾーン」です。BMI を入口にしたときに起きやすいミスは、“単発値で結論を急ぐ”ことです。下の 3 つで迷いを止めます。
よくある失敗:BMI を“結論”にしてしまう
- 入院初日(初回訪問)の BMI だけで判断:体重推移(期間)を必ず取る
- 浮腫を見落として「栄養改善」と誤解:所見(下腿圧痕など)と治療背景を同時に確認
- 身長が毎回違って BMI がブレる:推定身長の方法を固定し、記録欄に明記
- “普通 BMI ”だから安心:サルコペニア肥満を疑い、握力・CC・歩行機能を足す
回避のチェック:最低限そろえる 6 点
| チェック | 見る理由 | OK の目安 | NG のときの次の一手 |
|---|---|---|---|
| 体重は単発か?推移か? | 単発は誤解しやすい | 期間つきで比較できる | 基準日を決めて推移を固定 |
| 浮腫所見は? | 体液で体重が増える | 所見が記録されている | 圧痕/靴下跡/呼吸苦などを併記 |
| 脱水サインは? | 短期低下を栄養と誤認 | 摂取量・バイタルがある | 水分評価→条件固定で再測定 |
| 身長は実測か推定か? | BMI が過大/過小になる | 方法が固定されている | 推定法を 1 つに統一し明記 |
| 筋量/筋機能の指標は? | “普通 BMI ”の見逃し | 握力 or CC がある | どちらか 1 つを必ず追加 |
| 次アクションが決まっている? | 評価で止まるのが最悪 | 連携・負荷・再評価がセット | NST/栄養連携+再評価間隔を決める |
※表は横にスクロールできます。
FAQ(よくある質問)
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BMI が普通でも、筋力が弱い人はどう見ますか?
BMI は体重の中身(筋肉・脂肪・水分)を区別できません。まずはサルコペニア肥満や廃用を疑い、握力、CC(下腿周囲長)、歩行速度、椅子立ち上がりなどの機能指標を足して、筋量/筋機能の低下を見落とさない運用が安全です。
浮腫があるとき、BMI は使えますか?
入口としては使えますが、結論にはしません。体液貯留で体重が増えるため、BMI が高く見えても栄養状態が良いとは限りません。体重推移、所見(下腿圧痕など)、利尿や摂取状況を合わせて解釈します。
身長が測れない(円背・拘縮)ときは?
膝高などで推定身長を用いる場合は、院内(または事業所)で方法を一本化し、推定法を記録に残します。継時比較では「同じ方法で繰り返す」ことが前提です。
高齢者で“減量”を勧めるべきですか?
BMI だけで決めず、転倒・筋力低下・摂取量・併存疾患を合わせて判断します。過度な減量は筋量低下を招きやすいため、栄養・運動・安全管理をセットで考えるのが基本です。
次の一手(迷ったら、ここから 1 つだけ)
- 運用を整える:栄養スクリーニング運用プロトコル( 10 分フロー )で、入口→次工程を固定する
- 共有の型を作る:GNRI の IBW( BMI 22 / Lorentz )を 1 つに固定して、経時比較のブレを消す
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Sweatt K, et al. Strengths and Limitations of BMI in the Diagnosis of Obesity: What is the Path Forward? Curr Obes Rep. 2024. doi: 10.1007/s13679-024-00580-1 / PubMed: 38958869
- Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002 / PubMed: 30181091
- Volkert D, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2019. doi: 10.1016/j.clnu.2018.05.024 / PubMed: 30005900
- Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis ( EWGSOP2 ). Age Ageing. 2019;48(1):16-31. doi: 10.1093/ageing/afy169 / PubMed: 30312372
- Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment ( AWGS 2019 ). J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi: 10.1016/j.jamda.2019.12.012 / PubMed: 32033882
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


