がんリハの記録は「対象・状態・実施・反応・方針」を残す
がん患者リハビリテーション料の実施計画・記録では、がん患者であることだけでなく、対象となる治療状況、医師の指示、当日のリスク、実施内容、患者反応をつなげて残すことが重要です。「歩行練習を実施」だけでは、なぜ必要で、なぜその負荷量にしたのかを説明できません。本記事では、がんリハを担当するPT・OT・STに向けて、計画書の組み立て方、日々の記載例、変更・中止時の書き方、記載漏れを防ぐPDFを実務順に整理します。制度上の判断は、最新の告示・通知・疑義解釈、届出内容、院内運用に照らして確認してください。
がんリハの実施計画・記録で最初に確認する6項目
最初に確認するのは、対象患者、医師指示、実施者、リスク、目標、実施内容の6項目です。
がんの診断名だけでは、リハの必要性や当日の臨床判断までは伝わりません。手術、化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植などの治療状況と、離床低下、ADL低下、疼痛、倦怠感、嚥下障害などの課題を結びつけます。
対象患者、施設基準、研修要件など、算定可否の全体像を確認したい場合は、先にがん患者リハビリテーション料の対象・研修・算定要件を確認してください。本記事では、対象確認後の計画・記録作成に焦点を当てます。
| 確認項目 | 確認する内容 | 記録に残す内容 |
|---|---|---|
| 対象患者 | 治療内容、入院目的、リハの必要性 | 対象と判断した治療状況と機能・生活上の課題 |
| 医師指示 | 目的、禁忌、運動負荷、注意点、報告基準 | 指示内容と実施時に配慮した事項 |
| 実施者・体制 | 担当職種、研修修了状況、情報共有方法 | 担当者、職種、確認日、共有事項 |
| リスク | 疼痛、倦怠感、血液データ、骨転移、感染、治療予定 | 実施前の状態、負荷変更や中止の根拠 |
| 目標 | 離床、ADL、症状緩和、活動維持、退院後生活 | 短期目標、生活目標、達成を判断する指標 |
| 実施内容 | 介入内容、実施量、介助量、休憩、患者反応 | 実施した内容と結果、次回の方針 |

日々の記録は5ステップで整理する
日々の記録は「対象根拠→当日の状態→実施内容→患者反応→次回方針」の5ステップで整理すると、短くても判断根拠が伝わります。
毎回すべてを長文で書く必要はありません。前回から変わった状態、負荷量を決めた理由、介入後の反応を優先して残します。特に、疼痛や倦怠感による負荷変更、検査・治療予定による短縮、安全面からの中止は、理由と報告先を記録します。

| ステップ | 書く内容 | 短い表現例 |
|---|---|---|
| 1. 対象根拠 | 治療状況とリハが必要な課題 | 術後の活動量低下に対し、離床と歩行再獲得を目的に介入 |
| 2. 当日の状態 | 疼痛、倦怠感、バイタル、治療予定、必要な検査値 | 疼痛NRS 3、倦怠感軽度、安静時バイタルに著変なし |
| 3. 実施内容 | 練習内容、距離、回数、介助量、休憩 | 端座位5分後、病棟内歩行30mを見守りで2回実施 |
| 4. 患者反応 | 症状、バイタル、疲労、疼痛、動作の変化 | 終了時Borg 3、疼痛増悪およびふらつきなし |
| 5. 次回方針 | 継続、進行、負荷変更、再評価、共有事項 | 次回は歩行距離と病棟ADLでの再現性を確認する |
現場でのポイント:療養病棟や全身状態が変動しやすい患者では、前回と同じ練習を行ったかよりも、「今日は何が違い、その状態に対して何を調整したか」を残すと、多職種が経過を追いやすくなります。
実施計画は「治療状況→課題→目標→介入→再評価」で書く
実施計画は、治療状況から再評価までの因果関係が読み取れるように書きます。
「術後のため離床する」だけではなく、「術後疼痛と倦怠感により活動量が低下し、退院に必要な病棟歩行が困難であるため、症状を確認しながら離床を進める」という形にすると、介入の必要性が伝わります。
| 項目 | 記載内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 1. 治療状況 | 手術、化学療法、放射線治療、移植、緩和ケアなど | 化学療法後で倦怠感が強く、病棟内の活動量が低下している |
| 2. 課題 | 筋力、持久力、歩行、ADL、嚥下、疼痛、疲労など | 歩行耐久性の低下により、病棟内移動に休憩と見守りを要する |
| 3. 目標 | 短期目標と退院後の生活目標 | 病棟内50mを休憩1回以内、見守りで歩行する |
| 4. 介入 | 離床、歩行、ADL、呼吸、嚥下、環境調整、家族指導 | 自覚症状を確認しながら、歩行練習と立位ADL練習を行う |
| 5. 再評価 | 評価指標、確認時期、方針変更の条件 | 疼痛、疲労、歩行距離、介助量を1週間後に再評価する |
実施計画の記載例
化学療法後の倦怠感と活動量低下により、病棟内歩行時に休憩と見守りを要している。退院後の屋内移動再獲得に向け、疼痛、倦怠感、バイタルサインを確認しながら歩行練習と立位ADL練習を実施する。短期目標は、病棟内50mを休憩1回以内、見守りで歩行できることとする。1週間後に歩行距離、休憩回数、介助量、症状変化を再評価する。
上記は構成例です。患者の治療内容、病態、医師の指示、院内書式に合わせて調整してください。
記録に最低限入れたい項目
記録には、対象根拠、医師指示、当日の状態、実施内容、反応、変更理由、次回方針を入れます。
すべてを毎回同じ分量で書くのではなく、当日の判断に影響した情報を選びます。検査値についても、数値を機械的に並べるのではなく、運動負荷や感染対策、転倒・出血リスクなどの判断に用いた情報を院内基準に沿って記録します。
| 項目 | 記載する内容 | 短い記載例 |
|---|---|---|
| 対象根拠 | 治療状況、入院目的、リハの必要性 | 術後離床と退院に必要な歩行能力の再獲得を目的とする |
| 医師指示 | 目的、禁忌、負荷制限、注意点、報告基準 | 骨転移部位への過負荷を避け、疼痛増悪時は中止・報告する |
| 当日の状態 | 疼痛、倦怠感、バイタル、治療予定、必要な検査値 | 倦怠感軽度。自覚症状を確認しながら負荷量を調整する |
| 実施内容 | 練習内容、実施量、介助量、休憩、変更点 | 病棟内歩行30mを2回、休憩1回、見守りで実施 |
| 反応 | 症状、バイタル、疲労、疼痛、動作変化 | 終了後に疲労・疼痛の増悪なく、歩行時のふらつきなし |
| 方針 | 次回の負荷、再評価項目、共有事項 | 次回は歩行距離を延長し、病棟移動時の再現性を確認する |
記載例:短すぎる記録をどう直すか
短すぎる記録は、観察結果と判断理由を1つずつ足すだけでも改善できます。
記録を長文化するのではなく、「なぜ実施したか」「何を確認したか」「実施後どうだったか」が分かる状態を目指します。
| 場面 | 短すぎる記録 | 改善例 |
|---|---|---|
| 術後離床 | 離床訓練実施 | 術後2日目。疼痛NRS 3、起立時に軽度ふらつきあり。端座位5分、立位2回、病棟内20m歩行を軽介助で実施。歩行後に疼痛増悪なし。 |
| 化学療法中 | 筋力訓練実施 | 化学療法後で倦怠感あり。自覚症状を確認しながら下肢運動と歩行30mを実施。終了後に倦怠感の増悪なし。 |
| 緩和期 | ADL練習実施 | 在宅生活で希望するトイレ動作を確認。方向転換時に疼痛増強あり、手すり使用と移動距離を短くする方法を本人・家族へ説明した。 |
| 内容変更 | 疲労のため軽負荷に変更 | 開始前から倦怠感が前回より強いため、歩行練習をベッド周囲の立位練習へ変更。症状増悪なく終了し、病棟看護師へ当日の活動量を共有した。 |
| 中止判断 | 体調不良で中止 | 開始前から倦怠感が強く、安静時SpO2が通常より低値で推移。医師・看護師へ報告し、本日の離床を見送った。全身状態を確認して翌日再評価する。 |
変更・中止時は「状態・判断・対応・共有」を残す
予定した内容を変更・中止したときは、状態、判断、対応、共有先の4点を残します。
「体調不良」「本人拒否」だけでは、何が起きてどのように安全を確保したかが分かりません。症状や観察所見を記録し、実施内容を変更したのか、全面的に中止したのか、誰へ報告したのかを明確にします。
| 項目 | 確認すること | 記載例 |
|---|---|---|
| 状態 | 症状、バイタル、疼痛、倦怠感、患者の訴え | 開始前から呼吸苦と倦怠感が通常より強い |
| 判断 | 継続、軽減、変更、中断、中止の判断 | 歩行練習は安全に実施困難と判断した |
| 対応 | 休息、再測定、内容変更、処置依頼 | 安静臥床とし、バイタルを再確認した |
| 共有 | 医師、看護師、他職種、家族への報告 | 病棟看護師と担当医へ状態および中止判断を報告した |
| 再評価 | 次に確認する状態と時期 | 症状と治療予定を確認し、翌日に実施可否を再評価する |
具体的な中止基準や報告基準は、病態、治療内容、医師の指示、院内基準によって異なります。一律の数値だけで判断せず、患者ごとの通常値や症状変化も含めて確認してください。
PT・OT・STで記録の焦点を分ける
PT・OT・STが同じ患者に関わる場合は、共通目標を共有しながら、職種ごとの評価と介入目的を分けて記録します。
すべての職種が同じ全身状態を繰り返し記載するのではなく、共通するリスクは共有し、各職種が何を評価し、どの生活課題へ介入したかを明確にします。
| 職種 | 主な焦点 | 記録に入れたい内容 |
|---|---|---|
| PT | 離床、歩行、筋力、持久力、呼吸・循環、転倒予防 | 歩行距離、介助量、休憩、自覚症状、疼痛、バイタル変化 |
| OT | ADL、上肢機能、役割、生活動作、環境調整 | 更衣、排泄、入浴、家事、動作方法、環境と介助量 |
| ST | 嚥下、発声、構音、コミュニケーション、高次脳機能 | 食形態、摂取状況、むせ、疲労、意思疎通、指導内容 |
| 多職種共有 | 治療方針、共通リスク、生活目標、退院支援 | 共有した課題、担当、方針変更、次回の確認事項 |
よくある記載ミスと直し方
最も避けたいのは、「がんリハ実施」とだけ書いて記録を終えることです。
この書き方では、対象根拠、医師指示、負荷量を決めた理由、患者反応が読み取れません。以下の失敗を部署内で共有し、最低限の記録項目をそろえます。
| よくあるミス | 不足する情報 | 直し方 |
|---|---|---|
| 対象根拠がない | なぜがんリハとして介入するのか | 治療状況と機能・生活上の課題をつなげる |
| 医師指示が反映されていない | 禁忌、負荷制限、報告基準への対応 | 指示を転記するだけでなく、実施時の配慮を書く |
| 検査値だけを並べる | 数値をどう判断に用いたか | 負荷変更やリスク判断との関係を書く |
| 実施内容だけで終わる | 患者反応と介入効果 | 終了後の症状、動作変化、次回方針を加える |
| 変更理由がない | 予定と異なる介入になった根拠 | 当日の状態、判断、変更内容をセットで残す |
| 共有内容が残らない | 多職種で確認した方針 | 共有相手、共有内容、次の対応を簡潔に記録する |
がんリハ記載漏れチェックシートPDF
記載漏れを防ぐには、実施計画と日々の記録を同じ確認項目で見直せるチェックシートが役立ちます。
A4・1枚の「がんリハ記載漏れチェックシート」には、対象患者、医師指示、リスク、目標、実施内容、患者反応、共有事項などをまとめています。院内書式の代わりではなく、作成後のセルフチェックや部署内教育に使用してください。
PDFの中身をプレビューする
請求前・院内点検で確認したい整合性
請求前や院内点検では、個々の記載項目だけでなく、指示、計画、実施、単位数、患者反応がつながっているかを確認します。
実施計画と日々の介入が一致しない場合や、予定を変更した理由が残っていない場合は、後から経過を説明しにくくなります。制度上求められる内容は、最新の告示・通知・疑義解釈と自施設の届出・運用で確認してください。
| 確認項目 | 確認したい状態 | 不十分な場合の対応 |
|---|---|---|
| 対象確認 | 対象となる治療状況とリハの必要性が追える | 診断名だけでなく、治療内容と課題を確認する |
| 医師指示 | 目的、禁忌、制限、報告基準が共有されている | 指示元と最新の指示内容を確認する |
| 実施計画 | 目標と日々の介入内容が対応している | 現状に合わない目標・介入は再評価する |
| 実施時間・単位 | 実施時間、内容、単位数に矛盾がない | 中断・短縮・変更があれば理由を確認する |
| リスク管理 | 当日の状態と負荷設定の関係が分かる | 症状、観察結果、対応、報告先を補足する |
| 患者反応 | 介入後の変化と次回方針が記録されている | 結果と再評価項目を明確にする |
| 多職種共有 | 重要な方針変更や生活目標が共有されている | 共有相手、内容、担当を簡潔に残す |
部署内では6項目を標準化する
部署内で標準化するなら、「対象根拠・医師指示・当日の状態・実施内容・患者反応・次回方針」の6項目から始めます。
最初から詳細なマニュアルを作るより、記録に最低限入れる要素、変更・中止時の報告方法、記録を確認する担当者を決めたほうが運用しやすくなります。新人PTや異動直後のスタッフにも、完成した文章を暗記させるのではなく、6項目を患者ごとに組み立てる方法を共有します。
| 運用項目 | 決めておきたいこと | 実務での運用例 |
|---|---|---|
| 対象患者の確認 | 誰が、いつ、何を根拠に確認するか | 入院時、術前、治療開始時に候補患者を確認する |
| 指示の共有 | 指示、禁忌、報告基準をどこで確認するか | 診療録、カンファレンス、病棟申し送りで共有する |
| 記録項目 | 日々の記録に最低限入れる内容 | 対象、状態、実施、反応、方針を共通項目にする |
| 変更・中止時 | 判断基準、報告先、記録方法 | 状態、判断、対応、共有の順に記録する |
| 記録確認 | 誰が、どの頻度で見直すか | 主任・リーダーが定期的にサンプルを確認する |
| 教育 | 記載例をどう共有・更新するか | 実際の記録を匿名化し、良い点と不足点を共有する |
がんリハの実施計画・記録に関するよくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
がんリハでは専用の実施計画書が必要ですか?
使用する書式や記録場所は、制度上の要件と施設の運用によって異なります。書式名だけで判断せず、対象根拠、医師指示、リスク、目標、実施内容、評価、説明など、必要な情報を一連の記録として確認できるかを院内担当者と照合してください。
がんリハの記録には何を書けばよいですか?
基本は、対象根拠、医師指示、当日の状態、実施内容、患者反応、変更理由、次回方針です。毎回長文にする必要はありませんが、治療状況とリハの目的、当日の判断がつながるように書きます。
検査値は毎回すべて記載する必要がありますか?
検査値の確認方法や記録範囲は、治療内容、患者状態、医師の指示、院内基準によって異なります。数値を一律に並べるのではなく、その日の実施可否や負荷量の判断に用いた情報と判断結果を残すことが重要です。
疲労や疼痛で実施内容を変更した場合はどう書きますか?
症状や観察結果、変更前に予定していた内容、実際に行った内容、変更後の反応を記録します。中止した場合は、対応と報告先、再評価予定も残します。
カンファレンス内容はどこまで記録しますか?
発言をすべて書き起こす必要はありません。共有したリスク、生活目標、方針変更、担当、次回の確認事項など、患者支援に影響する結論を簡潔に残します。
請求前にはどこを確認すればよいですか?
対象患者の該当性、医師指示、実施者、計画と日々の記録の整合性、実施時間・単位数、変更・中止理由、患者反応、多職種共有を確認します。最終的な算定判断は、最新の告示・通知・疑義解釈、自施設の届出内容、院内運用に従ってください。
次の一手
まずは、がんリハ記載漏れチェックシートを使い、直近の記録に「対象根拠」「医師指示」「当日の状態」「実施内容」「患者反応」「次回方針」がそろっているか確認してください。記録例をそのまま転記するのではなく、自施設の書式と患者ごとの状態に合わせて調整します。
記録を標準化できない原因が教育・確認体制にある場合
記録方法が担当者任せになり、質問できる相手や確認体制がない場合は、個人の書き方だけでなく職場環境を整理することも必要です。
参考文献
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 2026. 厚生労働省の改定資料を確認する
- 厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について. 保医発0305第6号. 2026.
- 厚生労働省. 疑義解釈資料の送付について(その1). 2026 Mar 23. 疑義解釈資料を確認する
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について. 2026 Jun 19. 訂正通知を確認する
- 日本理学療法士協会. がんのリハビリテーション研修会. 研修会情報を確認する
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

