視空間ドリルと見当識ドリルの違い【認知症 OT】

臨床手技・プロトコル
記事内に広告が含まれています。
B_InArticle_Body

視空間ドリルと見当識ドリルは「何を見るか」で使い分けます

紙面課題は、比較記事だけでなく「運用」と「配布物」までそろえると現場で回しやすくなります。
紙面ドリル集を見る

親記事:紙面ドリル運用プロトコル

各論:視空間ドリル見当識ドリル

視空間ドリルは「探す・見つける・位置関係を処理する」場面を観察し、見当識ドリルは「時・場所・状況をどの程度つかめているか」を確認します。どちらも認知症 OT の紙面課題として使えますが、見ている機能が違うため、同じ記録軸で扱うと次回設定がぶれやすくなります。

この記事では、視空間ドリルと見当識ドリルの違い、開始レベル、記録の残し方を比較します。読むことで「今日はどちらを使うか」「何を観察するか」「次回に何を変えるか」を決めやすくなります。

違いは「探索・配置」か「時・場所・状況」かで判断します

選定の基準は、難易度ではなく観察したい機能です。探索の偏りや配置エラーを見たい日は視空間ドリル、日付・場所・状況理解の安定性を見たい日は見当識ドリルを選ぶと、記録と次回設定がつながりやすくなります。

認知症 OT における視空間ドリルと見当識ドリルの使い分け
比較項目 視空間ドリル 見当識ドリル
主目的 探索・位置関係・構成の把握 時・場所・状況の把握
見る場面 探す、照合する、配置する、図形を処理する 日付、時間帯、場所、予定、場面の意味を答える
観察の主軸 見落とし位置、探索開始点、再指示量 誤りやすい領域、手がかりの種類、応答の安定性
向いている場面 視探索や配置エラーが目立つとき 日課・時間・場所の混乱が目立つとき
記録の要点 正答数に加えて探索過程を残す 正答数に加えて手がかりの種類を残す
視空間ドリルと見当識ドリルの選び方

3 分で決める選び方は「主訴→観察軸→変更点」の順です

迷ったときは、先に課題名を選ぶのではなく、今日の主訴を 1 つに絞ります。主訴が「見落とす・配置で迷う」なら視空間、「日付・場所・予定が曖昧」なら見当識を優先します。

  1. 主訴を 1 つに絞る:探索・配置を見るのか、時・場所・状況を見るのかを決める。
  2. 観察軸を決める:視空間は偏りと再指示量、見当識は誤り傾向と手がかり量を残す。
  3. 変更点を 1 つにする:課題量・時間・ルール・手がかりのうち、変える要素を 1 つだけにする。

開始レベルは L1 から入り、変更は 1 要素ずつにします

初回は原則 L1 から開始し、成功体験と拒否の少なさを優先します。進級は正答率だけでなく、手がかり量・中断・疲労徴候を合わせて判断します。

L1〜L3 の開始・進級目安(視空間/見当識 共通運用)
レベル 開始の目安 進級の目安 注意点
L1 初回、拒否・疲労が出やすい 短い手がかりで 7〜8 割程度安定 説明を短く固定する
L2 通常フォロー 誤り傾向が減る 変更は 1 要素のみ
L3 負荷耐性・切替確認 中断少なく安定 疲労増なら L2 に戻す

記録は「正答+過程+支援+次回変更」で残します

紙面課題は、点数だけでは次回の調整につながりません。視空間では探索の偏り、見当識では手がかりの種類を残すと、次に何を変えるかが決まりやすくなります。

視空間/見当識ドリルで残す記録の最小セット
記録項目 視空間ドリル 見当識ドリル
結果 正答数・誤り数 正答数・誤り数
過程 探索開始点・見落とし位置 誤りやすい領域
支援 指さし・枠線・分割提示 選択肢・ヒント語
安全 中断・疲労・拒否 中断・疲労・拒否

現場の詰まりどころは「目的混在・変更過多・点数だけ」です

この章だけ先に見る:
よくある失敗
回避手順
関連:注意課題ドリル

失敗しやすいのは、同じ日に課題量・時間・手がかりを一度に変えてしまう場面です。何が改善要因だったのか分からなくなるため、次回設定が感覚的になります。

回避手順(目的→説明→記録を固定)

  1. 開始前:今日見る主目的を 1 文で共有する。
  2. 実施中:変更は 1 要素だけにする。
  3. 終了後:正答、過程、支援、中断・疲労を同じ順で残す。

よくある失敗(早見)

視空間・見当識ドリル運用の失敗と対策
よくある失敗 起きる理由 対策
同日に複数変更する 比較できなくなる 変更は 1 要素のみ
目的が曖昧 記録軸が混在する 開始前に主目的を共有
点数だけ記録する 次回設定に使えない 過程と支援も残す
評価や記録が個人任せになりやすい場合は、学び方や相談環境も整理しておくと運用しやすくなります。
PT キャリアガイドを見る

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

どちらを先に実施すべきですか?

探索や配置エラーが目立つ場合は視空間ドリル、日付・場所・予定の混乱が目立つ場合は見当識ドリルを優先します。

同じ日に両方実施してもよいですか?

可能です。ただし順番を固定し、当日の変更要素は 1 つだけにします。

進級は正答率だけで判断してよいですか?

正答率だけでなく、手がかり量、中断、疲労徴候を合わせて判断します。

短時間セッションで省略してよい項目はありますか?

課題数は減らしても構いませんが、記録項目(正答・過程・支援・中断)は残す方が次回につながります。

次の一手

まずは 2 週間、どちらか 1 つを主軸にして同条件で追跡してください。全体設計は 認知症 OT 紙面ドリル運用プロトコル、配布整理は 認知症 OT 紙面ドリル集 で確認できます。


参考文献

  1. Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30367-6
  2. 日本作業療法士協会. 認知症に関する情報・実践資料. https://www.jaot.or.jp/

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

タイトルとURLをコピーしました